EternalKnight
絶望の来訪者/創世
<SIDE-Guren->
何も無い、何も感じられない、何も残っていない。コレが《死》なのか、或いは別の何かなのか、俺には分からない。そもそも何も感じない、自分が存在している事さえも曖昧に思える。
(無事か、相棒?)
声が、聞こえた。聞きなれた、だけれど何かが違う気がする、その声が聞こえてきた。瞬間、切り取られたように消失していた無数の感覚が、俺の元へと帰って来た。
相棒との繋がりを感じる。切り裂かれた痛みも感じられる。自分がココに居る事を実感出来る。……俺は、生きてるのか?
(何を言ってるんだ、生きてるから俺とこうして話が出来てるんだろ? もっとも――俺の方は死にかけたんだけどな)
その割には元気そうじゃねぇかよ、相棒。つーかお前、壊されたんじゃねェのか? そもそもシンクは――
(妹が心配なのは解るが、先ずは話を聞け、自分の今おかれている状況を理解しろ。俺だって今まで一緒に戦ってきたシンクを失いたくは無い。その気持ちはお前と一緒なんだ)
……分かった。それで、どうなってるんだ、今は?
(覚えてるだろうが、お前が敵に切り伏せられて瀕死になり、俺は砕かれた。それによって核を失った《双極》の片割れであるシンクはその形を維持できなくなってきている――あぁ、因みにだが、俺に把握できてるのは俺達の現状だけだぞ?)
俺達以外が今どうなってるかは分からないって事か?
(その通りだ。とは言え、あの化け物じみた強さの《刹那》とその契約者が簡単に倒せる筈無いだろうから、まだ戦いは続いてるんだろうけどな。まぁ、気にはなるが先ずはシンクを助けるのを優先すべきだと俺は思うわけだが、異論はあるか?)
無いに決まってるだろ、相棒。と、言うか、お前が生きてるならシンクは助かるんじゃないのか?
(俺が今まで通りに生きていたのなら、確かに今の時点でシンクは助かっただろうな。だが、残念ながら俺は今までとは少し違う。お前になら分かると思うんだが?)
確かに、違和感は在る。けどお前はお前だろ、力が増してるとは思うけど、それ以外に今までと何が違うんだよ?
(お前に会う前の事を思い出して、その頃の力を取り戻した――変化で言えばそれだけなんだけどな。それだけと言える程小さな変化じゃ無いんだ、コレが)
俺に会う前の事って――
(数千年前の話だ、過去の事は今はどうでも良い。それよりもお前ならもう気付いているだろう? 力が増している、と言うのには感じているのだろう?)
確かに力が増している様に感じる。否、コレは増しているなんて感覚ではない。SSクラスだった頃をはるかに凌駕する力が、全身に漲って来ている。確かに、コレだけの力なら小さな変化とは言えない。
(まぁ、大幅に能力が底上げされたのは認めよう。だが、俺が言いたいのはそういう事ではないんだ、相棒。封印していた力と記憶が戻った事で、俺のクラスは本来在るべき最上位に戻った――重要なのはその一点だ)
最上位、だって? お前今最上位になったとか言ったか?
(言った、力を取り戻した俺の真の名は最上位の《創世》、なんだが別に最上位だからって偉ぶる気は無いし今まで通りの関係で良い――だが、俺達がどう思おうと周囲からすれば最上位であると言う事の意味は大きい。そしてそれはシンクにとっても同じ事だ)
ちょっと待て、話が全く見えないぞ、相棒。お前が最上位である事とシンクに一体何の関係があるんだよ?
(言っただろう? そもそも《双極》の片割れで在ったからこそシンクは安定して存在出来ていたのだと。逆も同じ事だったんだよ、要するにシンクが居たからこそ俺も安定していたんだ)
って、事は何か? お前が《創世》になって一つの聖具として安定した事で、シンクの力が不要になったから切り離されたって、そういう事かよ? でもそれなら、最初はシンクだって一つの聖具として安定してたじゃねぇか。
(そうだ、最初はある程度安定していたんだ。お前が作った聖具の器にその魂を収める事でな? だが考えてみろ、あの当時の力で創った器の脆さで、その器が長く持つとお前に思えるか?)
確かに、長くは持たないかも知れない。けど、持たないなら何度だって創り直せば良いだろう?
(そう、何度もと言うのは同意しかねるが、器が無いのなら創り直せば良い、事実はただそれだけだ――なぁ、相棒俺の名前、なんだったか覚えてるか? 今さっき名乗った奴だが)
流石に覚えてるよ、最上位の《創世》だろ――って事は、まさか!?
(あの当時の力で創った器では脆かった、だが、今の俺の力で新たに器を創ればどうなる? 世界を創り出す程の力で聖具を一つ創ったら、どうなると思うよ相棒?)
そりゃお前、すげぇ聖具に成るに決まってるじゃねぇか、相棒。
(よし、ならまずココから出て器をなくしたシンクの入るべき器を創り直そうじゃないか、と、その前に――俺の力をお前に理解してもらうぞ、相棒。とは言え根本の所は変わっていないんだがな?)
わかった、手短に頼む。
(焦るなよ、今居るここは心情世界だ、ココに来てからは周囲の時間は殆ど流れてない――焦らなくたってシンクの魂が輪廻の門に送られるまでにはまだ時間がある、じゃあ始めるぞ?)
――創造。
――創造。
――創造。
脳内に情報が流れ込んでくる感覚。だけど、コレは……一つだけ――なのに、その一つの情報量が膨大すぎる。
(理解出来たか? 本来の意味で創造という行為を行う事の意味が?)
あぁ、大体は理解した。ってかこれ、今まで良くあれだけの知識量で不完全とはいえ創造なんて事出来てたな……そもそも永遠の騎士に成る前はその知識すら碌に無い状態でやってただろ、《Creation》とか……
(故に、不完全な状態で、且つ大幅にエーテルを消費していたのだがな)
迷惑かけたな、相棒。
(言うな、そもそもそれが聖具の仕事だ――理解出来たらなさっさとシンクを助けに行くぞ、相棒。その後は《刹那》への反撃だ)
そうだな、ココで話してても仕方ない。シンクを助けて、《刹那》に一人で攻めてきた事を後悔させてやろう。
相棒へ向けてそんな言葉を送ると同時に視界が少しずつ霧に包まれるように白で覆われ始め、意識が少しずつ本来あるべき世界で覚醒する為に薄れていった。

<SIDE-Leon->
共にアルアの居る《宿》を目指すメンバーと会話を交わしていた俺の鼓動が、その一瞬だけ大きく高鳴り脈を撃った。全身を構成するエーテルが震えるのを感じるその震えが歓喜に寄る物なのか、怯えに寄る物なのか、俺には未だに分からない。
兎も角、それは全くの予想外のタイミングで引き起こされた。感じ取ったのは《完全なる六》同士の共鳴現象で、それが意味していたのは《創世》の復活だった。
「――嘘だろ?」
そんな事は在り得ないと、そう否定したくて不意に言葉が漏れる。だが、どう否定しようとした所で先程の共鳴現象を感じ取っている以上《創世》の復活は間違い様の無い事実だ。
何でこのタイミングでそんな事になる? 《創世》の封印が解けるという事は、力と記録を封じ込めた器が破壊されるかもしれない危機に直面した場合だけだった筈だろう、このタイミングでどうしてそんな都合の悪い事になる?
その条件から、どんなタイミングでも発生しえたその可能性が今この瞬間に発生したという事実が唯の偶然だとしても、俺の不安をかき立てる。
「んにゃ? 何が嘘にゃんだにゃ、レオン?」
会話の流れを無視した俺の呟きに、当然の様にユフィが絡んでくる。まぁ、状況を正しく理解して貰えるほうが楽だし、何よりも俺の正体を既に教えている以上、そもそも隠す理由が無い。
「三つ目の《完全なる六》の封印が解けた、のを感じ取った。場所は――」
(……細かい場所までは分からんが、守護者の拠点付近だ)
な!? 待てよ、シュウ。幾らなんでもこんな時に冗談は――
(冗談ならどれだけ良かっただろうな……)
――分かった。守護者の拠点付近だな。なら、守護者の誰かの聖具が《創世》の封印体だったって考えても良いかもしれないな。
(それは希望的観測でしかないだろ? このタイミングに守護者を潰そうと襲撃を掛けて来た敵対者が返り討ちにあい、それによって封印が解けたと言う可能性もあるぞ?)
否、その可能性はまず無い。今の状況を察するに守護者の誰かの聖具の封印が解けて《創世》が復活したってのが最悪のパターンだ。
(その根拠は?)
守護者の拠点にはネロ達も居るんだ。《必滅》の存在を忘れたのかよ、シュウ? 敵が《創世》――最上位だってのに、黙って見てると思うのか、お前は?
(なるほど、確かにそれを考えれば《創世》が敵側に回っている可能性は限りなく低いと考えて問題ないか……)
コレでこちらの最上位は二つ、《完全なる六》の封印が三つ解けている事は問題だが《呪詛》側よりも大きく有利になった事になる。
流石に俺が《宿》に行って戻ってくるまでに《輪廻の門》から宮殿まで移動できるとは思わない。そこから考えれば、恐らく《呪詛》が次に狙うのは《終焉》ではなく《時空》と言う事になる。
だが《終焉》が無ければ時の迷宮をそう簡単には突破できない。故に、仕掛けるなら《時空》を手に入れる前しかないだろう。
もっとも、仮にこちらが《輪廻の門》に辿り着く前に《呪詛》が《時空》を手に入れた所で、こちらには《必滅》がある。
その封印を解けば《真理》が復活してしまうが、封印を解くのを《呪詛》の目前で行えば、その場における戦力はこちらの方が上になり《呪詛》を倒す事は出来るだろう。
そして《呪詛》を倒せればこちらの戦力ではない残る《完全なる六》は《真理》だけとなり、それを封印する事も容易になる――と、ココまで上手く事が運ぶとは思えないが、それでも絶望的に見えた状況が改善されたのは間違いない。
そういう意味では《創世》の復活は吉報なのかも知れない。最も、何処の誰の物か分からない状態で復活したというのなら、最悪以外の何でもなかったのは言うまでも無い事だが。
「レオン? どうしてそんなに黙ってるんだにゃ? 場所はどこにゃのか速く教えて欲しいにゃよ?」
考えている間また黙っていたせいか。心配そうにユフィが俺の顔を覗き込んでくる。
「あぁ、悪い少し考えを纏めてた。で、最上位が現れた場所なんだが、宮殿の付近の何処かだ。と、言うか恐らく守護者の誰かの聖具に封印されてた《創世》が復活したみたいだ」
「守護者の誰かの聖具とはどういう事でしょう? レオン殿には誰の物かは分からないのでしょうか? それならば何故守護者の誰かの物だと断定できたのですか?」
俺の言葉に、不思議そうにトキハが問いを投げてくる――コレはまた、ずいぶんと答え辛い質問だな、どうも。《必滅》の事を教える訳には行かない以上、本当の事を言う訳にはいかないし、どう答えるのがベストなんだろうか?
嘘をついて墓穴を掘るのも馬鹿らしいしが、本当の事を言ってそれが何らかの形でネロに伝わるのも拙い。
《創世》が復活した今《必滅》の復活は《真理》を封印しておく為の最後の防衛線であり、《呪詛》と見えるその瞬間まで絶対に封印を解かせる訳にはいかない。
「守護者の拠点の近くだから守護者の誰かの物って言っただけだ。《呪詛》側って事は奴等の拠点である《輪廻の門》と宮殿の位置関係からまず在り得ないし、破壊者は前の戦いで壊滅状態の筈だからな――宮殿の近くに居るから守護者だって判断しただけだ」
「そうであるのなら、手前は守護者の誰かの物ではないかもしれないと言う可能性を考慮すべきだと考えます。実際、前回の戦いに参加していなかった破壊者も幾らかは居るでしょうし、距離と言うのも転移能力等の存在を考えれば当てにはならぬでしょう?」
鋭いな、彼女――だが確定に近い情報が彼女達の中で不確定になっただけで、俺が《必滅》の事を黙っている事については何も感づかれては居ないしまぁ、ココはこれで良いだろう。
「確かに、それも一理あるか――だがどうする? 《宿》へ向かうのを諦めて宮殿へ引き返すか? こういう事は言いたくないが、もし仮に敵が《創世》を手に入れていたとして、今から戻って間に合うのか?」
「それは……」
俺の言葉にトキハが言い淀む。このまま行けば説き伏せられる。《創世》が復活した今、《呪詛》が《時空》を手に入れるまでが新たなタイムリミットだ――それまでに仕掛けられれば、態々《真理》を復活させてしまうまでも無く事は片付く。
「最悪を想定するのは悪い事じゃないが、ネガティブに考えすぎるのは悪い事だ。元々俺達の目的は仲間を増やす事だし、最悪の展開になって《創世》と戦うのなら仲間は多い方が良い。なら――どうするべきかの答えは出てるだろ?」
「承知しました。元より今の守護者の最高責任者は貴方ですから、手前はその決定に従いましょう。手前も、叶うのなら仲間が誰も減っていないのを望んでいます故――」
真実を教える訳には行かないとは言え、丸め込むのはあまりいい気がしない……と、言うか仮に敵が《創世》を持っているのが分かっているなら、俺は真っ先にそちらに向かうのに、仲間にそれをさせないというのは一種の裏切りの様な気がする。
(それについては深く考えるな。お前はお前に出来る最善をしているだけだろう? 特に、お前は考え出したら止まらんからな――ネガティブになれば俺も手が付けられなくて困るのだ)
そりゃ悪かったな、シュウ。お前はお前で色々と楽観視しすぎだと俺は常々思う訳だが?
(お前がさっき言った言葉だろ、最悪を想定するのは悪くないが、ネガティブにはなるな、とな?)
だから、お前はポジティブすぎるって言ってるんだよ……
(それでも、常に最悪を想定はしているつもりだが? まぁ、先程のに関しては少し考えが甘かったのは認めるが)
まぁ、言っても仕方ないのは分かってるんだけどな、根暗なお前とか、お前じゃないだろうし。
(それは遠まわしに自分の考え方は悪くない、或いは考えを変える気は無いと、自分を肯定してないか?)
さて、どうだろうな?
『そう言って適当にシュウの念話をはぐらかして――』
「なら、急ごうか。アルアの待つ《宿》へ――とりあえず、仲間を増やす。なんにしても全てはそれからだ」
――そう、ユフィ達に言い放った。

TheOverSSS――18/28
UltimateSeven――4/7
PerfectSix――3/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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