EternalKnight
絶望の来訪者/届く祈り
<SIDE-Kyoya->
「よく持ちこたえてくれたな、ツバサ――それから、叶だよな? ツバサの新しい能力か、その反応のデカさは?」
傷つきながらも何とか武器を構えるツバサ達と、余裕の表情で構えを既に解いている敵の間に立って、背後にいるツバサに言葉を投げかける――その間も、敵から視線は外さない。
「《旧神聖典》の派生型の能力です――新しい力を使って、相手が手を抜いててもこの様ですけど……」
一対一ではクロノすら圧倒した敵を、SSSとSSの二人掛りでとはいえ、永遠の騎士となってから僅か100年の二人がここまで抑えられたと言うのは奇跡に近い。
人数で言えば三人でと言う事になるだろうが、聖具の能力で一人増えているのならば、それは二人で抑えたと考えて良い。
――もっとも、発動者と同規模のエーテル密度の複製を生み出せる能力等、先程反応を補足するまで存在を考慮する事すらしていなかったが。
手を抜かれたとツバサは言っているが、それでも経験の差やクロノに聞いた話から考えられる敵の戦力を考えれば、殺されずにココまで時間を稼いだというだけで十分な成果だろう。
「相手の強さはクロノから大体聞いてる、生き残っただけで十分だ。で、こうして出てきといてなんだが、後は任せろとか、そういう気の利いたカッコいい台詞は残念ながら俺の口からは言えない。悪いが一緒に、あの化け物と戦ってくれるか?」
「断る理由なんて無いですよ――初めから、そのつもりでしたから」
はっきり言って、俺とクロノが協力してくらいでは、あの化け物を倒す事も退ける事も叶わない。そして、倒す事も退ける事も出来ないなら、辿るべき末路は敗北と死しか在り得ない。
俺とクロノの二人で無理なら、他の今宮殿に残っているメンバーが束になった所で、あの化け物に届くとは考えられない。故に――全ての戦力を持って挑む。今、この場に居る守護者と、協力者であるネロの力を合わせて、あの化け物を倒す。
その為には経験が浅いとは言え、俺とクロノを除く唯一のSSSであるツバサの力が必要不可欠なのだ。
「よく言った――まぁ、断った所で、奴さんが見逃してくれる訳じゃぁねぇんだし、当然っちゃ当然の選択なんだろうけどな」
先の戦いで、クロノを容易に破ったあの化け物を退けたのはゼノンだ。つまりは、ゼノンに勝てる条件を揃えれば、あの化け物を退けるぐらいは可能だ、と言う事になる。
最も、ゼノンが居てもおかしくは無い宮殿に、再度仕掛けてきた所を見るに、少なくともなんらかの手は打って来てはいるのだろうが、そんな急激に強くなる方法があるとは思えない以上、あくまでゼノンへの対策を用意した、ぐらいの考えでいいだろう。
とは言え、ゼノンはセルさんの居ない現状の守護者ではその強さの底が未知数であるレオンを除けば最高の戦力だ。それに届く程の戦力を用意しなければいけないというのはやはり難しいものがある。
それでも戦う以外に道はない。降伏も、敗北も、逃走もそのどれを選んだ所で結果は変わらない。
「話は終わったかァ? 散々人を待たせといて、その上で話し込むってのァ良い度胸だなァ、SSS? とりあえず聞いとくぜェ――テメェの名はなんだ?」
名を名乗れ、か。クロノに聞いた通りだな。そういう作法は聞いた事が無いがそういうノリは――嫌いじゃぁ無い。
「守護者幹部、SSSクラス聖具《至高》の契約者、キョウヤ=トラフィシア。至高の心キョウヤだ。こっちは名乗ったんだ、当然そっちも名乗ってくれるんだろうな?」
能力や強さや聖具の名なんかはクロノに聞いたが、あの化け物自身の名前までは聞いていない。必要な情報では無いといえば必要な情報じゃないが――こちらだけ名乗らせるというのはフェアじゃない。
「王下七魔獣第二位、準最高位聖具《刹那》の契約者、刹那を駆る者カノン。カノン=アトライブだ。ゼノンの野郎と同じ幹部を名乗るって事ァ、期待しても良いんだよな?」
「悪いな、俺はゼノンやお前程に馬鹿強くは無い。だが――俺達全員でテメェの期待には応えてやる。卑怯だとかなんとか、そう思いたいなら勝手に思えよ――俺に言わせれば聖具の能力が馬鹿強いテメェの方が卑怯だって話だしな?」
と、言うかコイツ今さらりとかなりやばい事を言わなかったか? この化け物で二位、だと? コイツより強い奴がまだ居るって事かよ……どうなってるんだ。そいつの相手は、少なくともゼノンかレオンの居る時じゃなきゃ本当にやばいかも知れない。
「カハッ――卑怯だとは言わねェよ、つーかそもそも数で押すってのは常套手段だろォが。つーか、相手の数を気にする奴が、単独で敵の根城に突っ込んでくる訳ねェだろォが。俺ァ楽しめさえすりゃ相手の数なんざ一々気にする程、小物じゃねェンだよ」
「そりゃ良かった、負けた後から卑怯だとかなんとか言われる心配は無い訳だ。単身で拠点に仕掛けて来るなんざ正気の沙汰じゃないから、どんな馬鹿かと思ったが、それを理解する頭くらいはあるんだな? それとも、お前に指示を出した奴が馬鹿なのか?」
掛かるとは思えないが、挑発はしておく――乗ってくれればそれに越した事は無いが、まぁ恐らくそんな簡単にはいかないだろう。
「あァ、上からも単身で突っ込むなとは言われたぜェ。まぁ、ンなこたァどうでもいいんだ。安い挑発も止めとけ、ンなもんに乗るほど俺ァ馬鹿じゃねェよ。つーか、ペラ回してる時間があるならさっさと始めようぜ、キョウヤ――俺を楽しませてくれンだろ?」
「あぁ、死ぬ程楽しませてやるよ、この戦闘狂――」
補助能力なんかはここに来る前に全員もろもろ展開してきたが、消費がキツイ《HeartOfSupremacy》は今はまだ展開していない。
加えて言うのなら、ツバサに補正を掻ける為に《ToGloriousFuture》ももう一度展開したい訳だが、カノンに下手に接近されるとカノンにも能力の補正が掛かってしまう。ココは、もう少し発動を待つべきだろう。例えば――
「所で、俺にばかり意識を向けてて平気なのか?」
俺との会話に意識を向けさせている間に仕掛けたクロノ攻撃でカノンが怯んだ瞬間、なんかが出来ればよかったのだが――
「あァ、心配は要らねェよ」
――カノンの背後から迫ったクロノの横薙ぎの一撃は、一瞬ブレて、次の瞬間には少しだけ前に出ていた様にしか見えなかったカノンの回避動作によって、容易く回避されてしまった。
「周囲にのエーテルの流れから意識を外さないのは、多人数戦での常識だろォが?」
言いながら回避動作から流れる様な動作で、背後から迫ったクロノへと反撃する様に《刹那》を振るい、攻撃動作後のクロノへと仕掛ける。
それをなんとか刃を戻す事で防いだクロノの腹部に、カノンの右足が叩き込まれ、そのままクロノは蹴り飛ばされた。
少し苛立たしげに、カノンが蹴り飛ばされたクロノへと視線を向けながら「おいおい、反応が鈍くなってねェかァ、クロノ? 前にやったときはあんな蹴りに当たらなかっただろォがよォ?」そんな事を言う。
恐らくまだ消費の激しい《HeavenlyRiver》は使っていないんだろうが、俺の《ToGloriousFuture》や《HeavenlyRiver》に比べればまだマシだが、それでも消費の多い《FusionOfStarAndMoonAndSun》の補正があってあのザマだ。
話には聞いていたが、予想以上の化け物っぷりだな、畜生。コイツを一人で倒したゼノンの出鱈目さも相当だが、今はそんな事よりも目の前の化け物にどう対処するべきなのか、だ。
「さて、クロノは本調子じゃァねェみてェだし、今度はテメェの味見をしてやるよ、キョウヤ――さっさと全員で俺を楽しませてくれないと、全滅しちまうぜ、お前等?」
蹴り飛ばされた勢いをようやく殺したクロノが体勢を立て直す前に、クロノから視線を切り、今度は俺に視線を向けながらカノンがその口元を歪ませながらそう言った。
まず、先程の回避で見せられた超絶的なスピードをどうにかしない事には、本当に打つ手が無い訳だが――今ココにいるメンバーで敵のスピードを制限できる奴なんて居たか?
俺の知る限りじゃ、今はもう居ない実質万能なセルさんと、ゼノンと、後は時間とエーテルさえあれば万能なフェインぐらいしか居ない。
ゼノンが居ればそもそもこんな状況にはならないだろうし、フェインもゼノンと一緒に情報屋へと行っていて今は居ない。このままでは、本当にカノンの言う通りフィリア以外は全滅と言う状況すらありえる。
諦めに飲まれかけた俺の心に誰かが紡ぐ「《Prayer》」そんな響きが聞こえた――

<SIDE-Kanon->
「《Prayer》」
と、その響きが聞こえた瞬間、ゼノンとの戦いで何度も感じてきたのと同種の――否、何度も感じてきたそれに限りなく近い、それでいて元の力よりも明らかに劣化した停滞感が俺の体を包んだ。
「ンだ、こりゃァ?」
似ている――否、似ているなんて物じゃぁ無い。コレは、この感覚は明らかにゼノンの《TimeSlump》の物だ。しかし、奴の時の枷の力はこんな生半可な物ではなかった筈だし、そもそも俺に知覚できる範囲にゼノンの反応は無い。
そして、俺の知覚範囲外から能力を掛けているという可能性もまず在り得ない。距離が開いているから能力の質が下がっている、と考えられなくも無いが、奴の性格ならばそんなまどろっこしい事をせずに直接戦いを挑んでくる筈だ。
発動者がゼノンでは無いのは間違いないが、あの能力はゼノンの物で間違いない――つまりは、何らかの能力の模倣能力か他者の力を借り受ける能力の類と考えるのが妥当な所だろう。そう考えれば質が落ちているのにも納得がいく。
「まァ良い――こっちの力が少し制限されちまうがァ、枷を相手に与えるのも能力な訳だし、何より、こっちの方が俺が楽しめそうだしなァ?」
劣化した《TimeSlump》でとは言え、時の枷に拘束された今の俺なら《刹那》の能力を最大まで引き出し、俺自身が全力になってもそこまで強くは無いだろう。それでも、並みの相手に負ける気は一切無いが。
「早速楽しい事をしてくれたじゃねェかよ、守護者の皆様よォ? だが、ンな程度で俺を止められるたァ思うなよォ? 何処まで俺と戦える? 何処まで俺を楽しませてくれる? 何処まで俺について来れる? さァ、お前等の全力を見せてくれよ、なァオィ!」
実際に動いてみないとどの程度までスピードが出るかは分からないが、それでもクロノよりも下回っている事は無いだろう。と、言うかゼノンの《TimeSlump》で拘束されていても、クロノよりは多少早く動ける自信はある。
その事から考えても、劣化した《TimeSlump》に拘束されている今、この状況下で敵方で一番速いであろうクロノよりもこちらの速度が劣っているという事は在り得ない。
とは言え、相手はクロノ一人では無い――油断するつもりは毛頭無いが、絶対的な速さというアドバンテージを失った今、数に押されるという可能性は十分に在りうる。
まぁ、考えても仕方が無い。全力を尽くして挑み、楽しみ、勝利する。俺に出来る事と、俺のすべき事はそれ以外には在り得ない。
「いわれなくても、見せてやる――私達の力を」その声が聞こえると同時に、背後から俺の首を狙った一撃が放たれる――が、エーテルの流れから接近されている事を把握していた俺からすれば、それは奇襲でもなんでもない。
吹飛ばされた状態から体勢を立て直し、再度俺に向かってきたクロノの放つ一撃を振り返り様に片手で持った《刹那》で阻み、それを受け流しながら、空いた左手をクロノの顔面に叩き込もうと拳を放つ。
だが、その一撃がクロノの顔に突き刺さる事はなく「スピードが目に見えて落ちたな、カノン?」そんな台詞を口にするクロノの左手に受け止められていた。
「それでも、テメェよりは速ェよ……結局その先読みみてェな力は聖具の能力なのか? まァ、どっちでも構わねェが、ようやく本調子に戻ったみてェだなァ、クロノ?」
止められた拳を引き戻る事も忘れて、クロノに言葉を投げかける。
「答えるとでも?」
「いンやァ、聞いてみただけだ――よ!」
そのクロノの言葉に返事をしながら、掴まれた左手を引き戻しながら右手の《刹那》で背後から迫ってきていたキョウヤの短刀を覆うフォースの刃を受け止め、体を反転させる勢いを右足に乗せてそのままキョウヤの胴体を蹴り飛ばす様にその足を振りぬく。
スピードでもクロノに劣るらしく、加えてクロノの様な先読みが出来ないであろうキョウヤに、その一撃を防ぐ術は無かったらしく、放った右中段の蹴りは綺麗にキョウヤの体に突き刺さり、その体を吹飛ばした。だが――
「キョウヤの攻撃を防ぐ為とは言え、私に背を向けるのは得策では無いな?」
そんな言葉と同時に放たれたクロノの一太刀を「俺の方が速ェから問題無ェよ!」そう叫びながら振り向き様に《刹那》でなんとか受け流した。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――3/7
PerfectSix――2/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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あきゅろす。
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