EternalKnight
<壁の向こう、そして――>
<SCENE107>
「どうした、こないのか? さっきまでの威勢はどうした!」
男が挑発するような口調で言う――
くそッ結界さえ無ければ……
「来ないなら……こちらから行くぞ?」
次の瞬間――
結界の周囲に光の刃がいくつか現れ、同時に打ち出される。
[キィン、キィン、キィン]
「くっ……」
俺は自分に迫る刃を二本の剣で何とか全て弾き落とす。
残りの刃はアレンさん達に迫っていたが、結局全て打ち落とされた。
「やるじゃないか……なら、もう少し強い攻撃でもしようかな?」
(完全になめられているな――)
くっそぉ、ふざけやがて。
(どうするの? お兄ちゃん)
解らない、どうすればいいんだよ……
なんにせよ、あの結界を破らないことにはどうにも出来ない――
「そらそら、行くぞ!」
先ほどより強い光を放つ刃が空中に現れ――
またも同時に撃ち出される。
その刃を先ほどと同様に全て打ち落とす。
――おかしい、これのどこがさっきよりも強い攻撃なんだ?
地面に落ちた光の刃を見つめた、その瞬間――
!?
勢いを殺され地面に落ちた筈の刃が――
突然息を吹き返したかのように動き出し、俺の体を貫いた。
「グッ……」
くっそ、そんな攻撃ありかよ……
(お兄ちゃん!)
一瞬ぐらついた体が倒れないように踏ん張らせる。
傷口から少しずつオーラが流れ出す――
(救世主達はどうやら全て防いだようだな)
喰らってんのは俺だけかよ……情けねぇ。
(傷口を塞ごうか? 応急手当でしかないが……)
頼む――
傷口が塞がりオーラの流出が止まる。
――痛みは消えないのか?
(応急処置だと言ったろう?)
そうだった……さて、どうしたものかな。
(あの結界の中に武器を作ることって出来ないのかな?)
その手があるか……いけるか、相棒?
(何らかの効果があれば駄目だろうが――)
(試して見る価値はありそうだ)
試すしかない……か、無駄なオーラ消費は抑えたいけど仕方ない。
瞬時に剣を脳内に思い描き、紡ぐ――
「Creation……」
気付かれないようにできるだけ小声で――
しかし、剣は作り出されない。
どうなってんだ?
(どうやら結界はエーテル関連物の干渉を遮断する機能もついているようだな)
――コレも駄目か。
(ごめんね、お兄ちゃん……)
奴の結界の効果が少しでも分かっただけでよしとしよう。
(しかしこのままだと……一方的に攻撃されるだけだぞ?)
そうだよ……コレじゃぁ喰らってばっかりじゃねぇかよ
どうすればいい、この状況を打開するには――

<Interlude-アレン->
このままじゃオーラを消費していくだけだ。
ならば……仕掛ける!
「リズィ、回復頼む……」
「うん、わかった」
リズィが目を閉じてゆっくりと紡ぐ――
「HealingSacredPrecincts」
さて……俺も行くか。
リズィの能力で回復していく最中にロギアを睨む。
思考がクリアになっていく。
「Ultimate――」
《聖剣》と《覚醒》を待機状態に戻す。
「Sword――」
リズィの力で体の傷が癒えて行く。
「――Of」
少しずつ全身に力が返って来る。
「Messiah――」
瞳を閉じて……紡ぐ。
救世主にのみ許された一振りの剣を召還する為に――
圧倒的なオーラを内に含んだその剣が……構築されていく。
その剣を取り、溢れ出すオーラを全身に纏う。
「!? 馬鹿な、まだその剣を作るだけの力があったのか?!」
爆発的な量のオーラが全身に行き渡り……体が軋む。
「はぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
「だが、さっきの結果を忘れたのか? それでも突破するのがやっとだろうが!」
《救い》の剣の力を限界まで引き上げていく。
突破すれば、グレンがどうにか反撃の糸口を見つけてくれるだろう。
一人で《運命》と共に居た熟練の《EternalKnight》に勝てたんだから――
そう信じて、引き上げていく、全身は疾うに悲鳴を上げている。
それでもリズィの力のお陰で軋む体は先程の時よりはましだ……
――どっちにしても持つのはあと数十秒。
この一撃で状況が変わらなければ……俺達の負けだ。
だからこそ……この一撃に全てを賭ける!
「グレン! 今から俺が結界を破る、後は任せたぞ!」
リズィは俺の回復にほぼ全てのオーラをつぎ込んでいる――
だから攻撃には参加出来ない。
だから、アイツに……グレンに全てを託す。

<SCENE108>
「グレン! 今から結界を破る、後は任せる!」
アレンさんが……とてつもないオーラ量を放つ剣を構えて叫んだ。
(結界を破る? いや、確かにアレなら可能かもしれん)
だけど、どうする?
結界が破れたところで……俺にどうにかする事が出来るのか?
(お兄ちゃん、あきらめちゃ駄目だよ)
――そうだな、その通りだよ。
だから、見つけるんだ――
……結界を破った後、奴の隙をついて再び結界が張られる前に奴を倒す手段を――
(今まで使っていなかった事を考えるとチャンスは一度きりだろう)
解ってる……だからこそ――
今持てる全ての情報で最良の選択肢をすること。
脳の回路を限界まで走らせる……探せ、探せ、探せ、探せ、探せ!
Sublimationで攻撃することは出来ないだろう
敵も木偶の坊じゃない――
一撃必殺など、あたらなければ意味が無い。
だから探す、俺達を勝利へ導く一手を――

<Interlude-???->
救世主達の様子から見ても……そろそろだろう。
なにせ救世主が切り札を切ったのだ……
「そろそろね、私達も動こうかしら?」
(そうですね・・・動きましょうか、フェディス)
これでまた一歩……あの人の力に近づける。
兄さんを殺したあの人に――
「いきましょう《宿命》――」
「念願の瞬間を手放すわけにはいかないものね?」
(そうです、私達の望む結果を掴む為の重要な所ですもの……)
そして、私達の力が元に戻ったら――
兄さんに代わって私があの人を殺してあげるの……
(私達の力が元に戻ればそれも容易い事です)
まってなさい、レオン……いや、今は聖主だったのよね?
(はい、聖主は今はおそらく一つしか聖具を持っていない。たいした事はありません)
完全になれば、すぐにでも見つけて殺しに行ってやるんだから。
(つい無駄話をしてしまいましたね――)
(早くしないとチャンスを逃がすかも知れませんよ?)
「そうね、行きましょう」
私は門を開いた――

<Interlude-アレン->
溢れ出すオーラを……ただ、剣に纏わせる――
限界を超えて溢れ出すオーラが……全身を軋ませる。
それでも、一瞬の為に……あの結界を突破する為に――
ただ、持てる力の全てを持って、この一撃を打ち込むのみ!
「行くぞぉ!」
足に力を込め……弾く。
莫大な量のオーラで強化された俺は、一瞬でロギアとの距離を詰める。
絶好のタイミングと距離で……刃を振り下ろした。
[キィィィィィィン!!]
結界と刃が激しく衝突して、少しずつ結界が軋んでいく。
――行ける!
体が限界を迎える前に……このまま結界を突き破る!
「ウォォォォォオオオオ!!!」
「馬鹿な……そんな馬鹿なぁ!」
全身のオーラを剣にのみ集中させて、ただ全力を込める。
[キィィィィィィン……]
そして……結界は救いの剣によって音も無く崩れ去った。
「一度ならず、二度も結界が破られるだとぉぉっ!?」
ロギアの叫び声が聞こえる――
まずい……もう、力がはいらねぇ――
どうすることも出来ずに俺は……前のめりに倒れた。

<Interlude-ロギア->
俺の結界が破られた……
――が、破った男は目の前で力なく崩れ落ちる。
だが今は……この男よりも!
意識を新米の坊主に向ける――
三人中二人は力を使い果たして倒れている。
つまり今行動できるのはアイツだけ。
!?
目前に剣が迫る、創造された二本の剣が俺に迫る……が。
「その程度!」
[ガキィン、ガキィィン]
《運命》で二本の剣を叩き落す。
次の攻撃をされる前に結界を張る、そうすれば俺の勝ちは決まりだ!
「Destiny……」
「Creation!」
!? 新米がいきなり叫ぶ。
両手には変わらず二本の剣を握ている。
何を創った?
いや、今は早く結界を完成させる!
「Territory!」
瞬時に結界が構築されていく……コレで俺の勝利は確定した――
「案外あっけない終わりだったなぁ! さぁ止めと行こうかぁ?」
「そう……だな、だけど……勝ったのは……俺達だ」
何を言って――
[ドスッ]
な……に?
背後から何かに貫かれる。
いったい何に?
――ここは……結界の中だぞ?
俺を貫いた何かは光の粒子に変わって消えていった。
何故だ、結界を張ったのに……攻撃が?
「ギャァァァアアアア!!」
それどころじゃない……痛いイタイいたいイタイ痛いイタイッ!!
《EternalKnight》になってから一度も傷を負った事の無い俺が――
たかがSSクラスの新米ごときに傷を負わされるだとぉ――
「何……を、何を……しや・・・がった。この……クソ……餓鬼がぁ!!」

<SCENE109>
「一度ならず、二度も結界が破られるだとぉぉっ!?」
宣言通り、アレンさんは男の結界を破った。
――もう後には引けない。
このチャンス……モノにしてみせる!!
手段は見つけた――
正直、成功するかはわからない。
でも、それでも……それ以外の手を今は思いつかないから――
それに全てを賭ける!
行くぞ、相棒、真紅!
(おう、行くぞ!)
(絶対に成功させるからね、お兄ちゃん)
「Creation……」
気付かれないように小声でつぶやき剣を二本作り上げる。
一本を射出、もう一本を手元に……
そして、射出とほぼ同じタイミングで《真紅》を投擲する。
男が顔をあげこちらを見つめる――
放たれた剣は当然のごとく気付かれて……
「その程度!」
[ガキィン、ガキィィン]
二本の剣はあっけなく弾かれる。だがコレは予定通り――
「Destiny……」
まずい……結界の詠唱!?
間に合わすんだ。そう――
後は……器を作るのみ――
「Creation!」
体に残ったオーラの九割以上が無くなっていく。
だけど……失敗は許されない、決めてみせる!
俺に残ったオーラを限りなく限界まで使い作り出したモノ――
紅の剣は瞬時に分解されて構築されていく――
紅の剣が形を変えていく。
そう、作り出したのは真紅の肉体。そしてもう一本、真紅の手元に剣を作り上げる。
「Territory!」
おそらく、今の瞬間を持って結界が完成したのだろう。
……だが関係ない。真紅は奴の結界の中に居るんだから――
「案外あっけない終わりだったなぁ! さぁ止めと行こうかぁ?」
「そう……だな、だけど……勝ったのは……俺達だ」
勝利を確信して余裕の男が一瞬表情を崩す。
そして、真紅が背後から男に刃を突き刺した――
貫いた後――
真紅の体とその手に握られた剣はすぐに構築限界を超えて光の粒子に還っていく。
「ギャァァァアアアア!!」
男が叫びを上げる・・・
「何……を、何を……しや・・・がった。この……クソ……餓鬼がぁ!!」
(相棒、奴の結界が崩壊したぞ?)
集中力を切らしたの……か?
だけど――これ以上俺は動けそうに無い。
真紅は不完全な構築式で呼び出した為に本体だった剣の形を残して結界の中に刺さっている。
「くっそ、お前等は皆殺しだ。楽に……殺してやるものかぁ!」
くっそ、どうすればいい?
確かにダメージは与えられた、だけど倒せてない――
手元に残った相棒で体を支える。
そのとき……突然男の隣に門が現れ――
門がゆっくりと開き、中から女の人が現れた。
「ッ……何をしにきた、《宿命》!」
男が叫ぶ。
「あら……何をしに来たとは失礼ねぇ? 少し手伝ってあげようと思っただけよ?」
「誰……だ?」
「あら、君が《運命》が開いた闘いの生き残り?」
「だっ……たら、どう……したって……言うんだ」
(相棒、正直あの男だけでも絶望的なんだ、もうどうすることもできん)
「いえ、別に……ソレより《運命》、回復させてあげようか?」
「――望みは……なんだ? 奴等は……俺が殺す……手を出すなよ」
「そうね……ここを閉じる時に出るエーテルでどう?」
「――良かろう」
「そこの坊やも心配しないでね?」
「ただ《運命》を回復させてあげるだけだから?」
(回復などされれば今度こそ終わりだ、相棒!)
だけど……どうやって止める?
(……ッ)
「じゃあ《運命》少しじっとしてなさい」
《宿命》と呼ばれた女が詠唱を始める――
くっそ、どうすればいいんだよ……
《運命》と《宿命》の周りを巨大な魔方陣が囲んでいく。
その状態でしばらく《宿命》が詠唱を続ける――
そして――
「AtTheTimeOfFate」
絶望となる言葉が紡がれた――

to be continued・・・

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