EternalKnight
絶望の来訪者/戦闘準備
<SIDE-Kanon->
『分かった、まぁ、精々頑張るがいい――期待はしないで、お前の帰還を待っておく事にしよう』
期待しないで、ねぇ? まぁ、王様の話を聞く限りじゃ確かにヤバそうな感じだが――
「手前ェの命を危機に晒すからこそ……そォいうスリルがあるからこそ、最ッ高ォに楽しめて、今この瞬間よりも強ェ未来の自分に辿り着けるんじゃァねェかよ、なァ《刹那》!」
己が力の名を叫ぶ――もう見つかっているのだろうが、守護者の連中に俺はココだと知らせる様に、守護者の拠点に居るであろうクロノと、宿敵であるゼノンに俺の来訪を伝えるように。
最も、俺の方から補足出来る範囲内に入っただけなので、この叫び声が守護者の連中に届いているとは思えないだが、それはまぁ、気分の問題だ。
王様の念には答えを返さない。用件は伝えたし、俺の独断専行は認められた。これ以上の念話は時間の無駄以外の何でもありはしないのだ。
と、言うか下手に長く話していて王様に気づかれる訳には行かなかったのだ、引き返す事が出来なかった訳ではないと言う、その事実に。
先程の状況では俺は守護者の連中に既に見つかってしまっていたが――今も見つかったままなのだが――俺が本気で戦うのを避けて離脱しようとすれば、それに追えるのはゼノン以外にはあり得なかったのだ。
俺とゼノンの速度は同等、或いは魔獣となった今は俺の方が上かもしれないが、それは兎も角、ゼノンが俺を追ってくれば最終的に《輪廻の門》の周辺で王下達全員でゼノンに仕掛けるという状況が発生しえた。
そうなれば長年持ち越してきたゼノンとの真の決着に他者の介入を挟む事に成りかねない、そんな事は絶対に許されない。ゼノンとの戦いは飽きを感じさせる程古くから続いているが、だからこそ、決着に他の介入などあってはならないのだ。
そして、そもそもゼノンが追ってこなければそれで終わりであり、俺が《輪廻の門》に戻ってそれで話は片付いていただろう。
つまり、俺に引き返せという旨の命を出すのが王様にとっての最良の選択だったのだ。そういう事実に王様が気づけば確実に王様は俺に戻って来いと指示していただろう。
そして、その命を聞く気が無い俺は呪いとやらで始末されていたかも知れなかったのだ。最も使える駒を減らしたくないと考えるからこそ戻る事を命じているのだから、俺の考える最悪の未来は訪れなかったかもしれない。
あの王様であればそんな非効率な事はしないとは思ってはいる。だが運命とやらを操作する力を持った所で、万が一の可能性というのは回避できないのだ――その万が一で、王様の気まぐれで殺されてしまっては、流石に洒落にならない。
死ぬのが怖い訳ではない。だが、無意味に死ぬのは御免被る。俺の望みは遥か昔から唯一つしかない。俺は何処まで高みに上れるのか、その果てにある場所に至りたい、唯それだけなのだ。
全力を賭して戦って敗れて死ぬのならば、俺の果てはそこだったという事になるのだから。そういう意味では、或いは――俺の求めていた果ては、遥か後方にあるのかも知れない。
「かはッ――見つけてる癖に仕掛けて来ねェから、柄にもねェ事考えちまったじゃァねェかよ、守護者の皆さんよォ?」
或いは、まだ見つかっていないのか? いや、そんな筈は無い。俺が守護者の拠点に居る永遠の騎士の反応を捕捉出来ている以上、ゼノンがそれに気づいていないなんて事はあり得ない。
それに加えて守護者の中で最も知覚範囲が広いのがゼノンだという話も聞いたことは無い以上、今の時点で俺が発見されていない筈が無いのだ。
ならば、何故仕掛けて来ないのか? その答えを俺が知る由は無いし、仕掛けて来ないのなら、こちらから仕掛けるしか無い。或いは、仕掛けて来れない程に先程の戦いで疲弊したのかも知れないが、それは俺の知る所では無い。
「いやァ、そう考えたってェおかしいぜこりゃァ、幾らなんでもまだ動きが無いなんてェ事があり得んのかァ?」
ゼノンが守護者の拠点に居るのは間違い無いと踏んでいたので、守護者の反応を二人分見つけた時点で俺は守護者側に見つかったと自分で判断したのだ。
そして、王様との念話の事もあったので話が終わるまでその場に留まっており、今もその場所で止まったままなのだが、まさかまだ守護者の連中には見つかっていない、と言うのか?
確かに俺が今確認できるのは二人分の反応だけで、その反応は先程の位置からまるで動いていない。外部から、味方ではないSSSクラスの反応が近づいてきているのを見つけたときの反応として、そんな事がありえるのだろうか?
否、あり得ない。真っ当な神経をしていれば、まず何かしらのアクションを起こすのが普通だ。補足できた二人の内、片方はSSSだとエーテルの反応を見れば分かるが、自分が同じ位階だからと言って知らないSSSの接近で何のアクションも見せないのはおかしい。
俺の事をSSSだと認識できていない可能性――も、零だろう。別に俺は自分の反応を隠そうとはしていないし、SSSにもなれば、他との違いなどエーテルの保持量で一目瞭然なのだ。
そこから導き出される結論は――俺がまだ見つかっていないという事を意味する。
考えても見れば、俺はゼノンを捕捉した訳ではないのだ、ならば俺がゼノンを見つければゼノンも俺を見つけるという法則によって、俺が守護者に見つかったという事実は生まれなくなる。
まぁ、そうであるなら答えは簡単だ、守護者らしき二人分の反応にもっと近づけばいい。そうすれば必然的に守護者の拠点に近づく事になり、その中に居るであろうゼノンの反応を捉えられる。
もっとも、今の時点で拠点の外にいるSSSに見つかるか見つからないかぎりぎりのラインである可能性が高いので、ゼノンの反応を捕捉する前にSSSに見つかるかも知れないのだが――それはそれで別に構わない。
ゼノンやクロノと戦う前に、守護者に所属する彼等以外のSSSを味見するのもいいだろう。最もSSSであれば楽しめると言う訳でもないので、期待が外れる可能性もあるのだが、そのときはゼノンなりクロノと殺りあって憂さ晴らしをすればいいだけだ。
まだ見つかっていないという事実は、王様にはこちらから報告でもしなきゃバレる事でも無いし、そもそも既に許可は下りているのだ、今更気にする事ではない。
「それじゃァ、楽しませて貰おうかァ、まだ見ぬ守護者のSSSさんよォ?」
言って、俺はさらに守護者の拠点へ向けて――否、未だ何もせずその場に留まっている守護者二人分の反応に向かって俺は再び移動を開始した。

<SIDE-Guren->
「いや、しかしSSSって大変なんだな、ホントに」
先程までツバサが出ていた仕事の内容を聞いて、つくづくそう思う。本人は特に大変な仕事では無かったとかなんとか言っているが、俺に言わせて貰えば、限りなく困難な仕事だと言えるだろう。
つーかその内容の仕事出されて、手早く片付けてその世界で物見遊山してくる暇があったとかもう、ね? SSSとSSの差って奴を思いっきり感じさせられてしまう訳なのだ。別に、ツバサの方には何の悪意も無いのだが。
「そうでも無いですよ? グレンさんにそう聞こえるのはクラスの差のせいなんじゃないですかね? 結局仕事って振られる人の実力を見て与えられる訳ですし?」
――とは言え、それはまぁ仕方の無い事だとある意味割り切っているので、別に構いはしない。どれだけ妬んでも聖具のクラスは上がらないし、上がった所で、今の俺に言わせれば軽く死ねそうな仕事を与えられるだけな訳だし。
「まぁ、それはそうだけどな――それでも、俺は物見遊山出来る程余裕がある仕事とか振られた事無いぞ、今まで?」
とは言え、仕事で向かう世界の中では物見遊山でもしようと思える程の場所というのも、そこまで多くは無いのだが。
「そりゃ、俺だって今回は仕事がたまたま直ぐに片付いたってだけですって、毎回そういう仕事が回ってきてる訳じゃないですよ、別に?」
「まぁ、貴重の人材であるSSSを無駄に向かわせる事なんてまず無いだろうから、本当にたまたま何だろうとは思うけ「グレンさん!」
俺の言葉を遮る様に、ツバサが突然声を出す――その表情には先程まで話していた時のそれとまるで違う、危機迫る様な物だった。今、この瞬間においてそういう表情になる理由は、一つしか思い浮かばなかった。
「人数と大体のクラスは分かるか? ココからなら念を飛ばせば宮殿の中に居る誰かには届くから少しでも情報が欲しい、大体の数と平均的なクラスだけで良いから分かるか?」
敵の来訪、それを見張る為に俺達はココにいるのだから、ツバサの表情が変わった事の原因はそれしか考えられなかった。
「人数は一人、クラスは……SSSで間違いないと思います。それに、反応が魔獣の物に近い――ほぼ間違いなく、話に聞いてる王下とか言う奴だと思います」
「……冗談、って訳じゃないよな、それは」
一人だって部分まで聞いた時点で安堵しかけた俺が馬鹿だった、単なる通りすがりのハグレがツバサの探知範囲に入っただけなんじゃ無いかととか、そんな事を考えてしまった自分に腹が立つが、今はどうでも良い事だ。
このタイミングで王下が《一人で》攻めてくるのは最悪すぎる。
元よりそんなに多かった訳では無いメンバーが前回の襲撃で減り、仲間を増やす目的でさらに何人かが出払っている今の宮殿に残っている守護者の戦力では、単騎で拠点を攻めようと考えて、それを行動に移せる程の強さを持つ相手と戦うのは厳しい。
それでも、戦う以外に道は無い。
「いや、俺の方でも知覚したがこの反応は間違いなくSSSだ。ってか、コイツの聖具の反応って……嘘だろ、おい。アイツは破壊者なんじゃねぇのかよ!」
「えぇ? グレンさん、この反応を知ってるんですか?」
俺のその言葉にツバサが反応して来る、だが、アイツを相手に悠長に説明していて良いのか? 応えは、否だ。
「構えろ、ツバサ。敵が本気なら数秒で距離を詰められる。それから、敵の反応から意識を逸らすな――お前の反応速度でならどうか分からないが、相手がその気になれば俺には速すぎて反応が消えたようにしか認識できない」
とは言え、この距離なら逆に反応が消えたと認識できた瞬間に最大の注意を払い首を守れば、先の戦いで一撃で殺された同胞の様にやられる事はまず無いだろう。
「構えました――けど、本当にそんなにヤバイ相手なんですけ、グレンさん? 確かに凄いエーテルの量ですし、決して弱いとは思えませんけど、幾らなんでもこの距離を数秒で詰められるなんて事は――」
「いいから、出来る限り万全の状態にしとけ。宮殿で治療されてたクロノさんを見たろ? アレはそこまで来てるSSSにやられて出来た傷だ――コレぐらい言えば、分かってくれるか?」
その言葉でようやく相手のヤバさが理解出来たのか、ツバサが息を呑むのが分かった。SSS同士なのだから、クロノさんが負けた事は別段おかしな事ではないのだが、やはり唯単に脅威を伝えるよりも、比較する対象が居ればわかり易いのだろう。
とは言え、まぁ、その比較対象になったクロノさんに、模擬戦での話だがまだ一度も勝てた事が無いらしいと言う事を考えると、一気に緊張するのも無理はないだろう。
「そこまでの相手だって言うなら俺は兎も角、グレンさんは大丈夫なんですか?」
「さて、どうだろうな? 自分でも正直分からないけど、少なくとも死ぬつもりは無い。取りあえず今は宮殿に応援を呼びかけて、後は向こうが距離を一気に詰めて来ない事と、詰められたら援軍が来るまでの時間を稼ぐ事だけを考えてれば良いんじゃないか?」
最も、相手の能力の方向性的に、セルさんが居らず、ゼノンさんが出払っている今、援軍が来た所で絶対に勝てるとも思えないが――それでも俺とツバサだけで戦うのよりは何十倍もマシの筈だ。
考えている間にツバサがもう一度息を呑むのが分かった。
「分かりました、なら俺は、今の俺の全力で挑みます。グレンさんを死なせたりしません」
「人の心配よりも自分の心配をしてろよ。お互いに最善を尽くして生き残る、それがベストだろ?」
言って、俺は宮殿に向けて今の状況を伝える為の念を飛ばす。
【敵の接近を確認、数は一人だが最初の襲撃時に先陣を切って来たあのSSSで間違いない、距離はまだ少しあるが、相手の最大速度を考えればいつ交戦状態になってもおかしくは無い。出来る限り早く増援を求む】
応えを待たない一方的な送信だけだが、念話に意識を割ける程、悠長な状況じゃない。ココからは最善を尽くして生き残る事だけを考えるべきなのだから。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――3/7
PerfectSix――2/6
KeyToSeven――2/7
――to be continued.

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