EternalKnight
会話
<SIDE-Guren->
メンバーの割り振りが決まってからは、全てが驚くような速さで決まった。
《情報屋》とやらに同伴するのも直ぐにゼノンさんに決まり、先程の話し合いから物の三十分も経たない内に《宿》と《情報屋》へ向かう事に成っていたメンバーは、それぞれの目的地へ出発してしまった。
レオンさん曰く、敵がいつ動き出すか分からない以上、こちらの戦力を出来る限り早く整えたいという事らしいのだが、それにしたって行動が速い。
話し合い自体にはかなりの時間を掛けていた――明確には、話自体が余り進まずに全体的にグダグダしていたのだ――が、いざするべき事が決まってからの行動の速さは凄まじい。
セルさんが守護者の首領を勤めていた際の守護者の行動が遅いと言うつもりは無いが、レオンさんが首領に成った事によって守護者の行動速度は以前よりも速くなるのは容易に想像できた。
とは言え、今回はレオンさん本人が言っていた様に緊急の事態であって、常時この速度で守護者が行動に出る訳でも無いという可能性も十分にある。と、言うかそう考える方が自然だろう。
普段からあの速度で行動に出れれば凄いと思うが、それはそれで考えなしに動きすぎと言う気がする。もっとも、動こうと思えばそれだけ早く動けるという事がそもそも重要なので、普段が多少遅くてもそう問題にはならないのだろうが――
と、言うかこの戦いに勝たなければ、そもそもその普段が訪れないかもしれないのだから、可能な限り速く動こうと考えるのは当然の反応なのかもしれない。
(まぁ、なんにしても待つ事しかできんよ、今の俺達には。今回の行動で味方がどの程度増えるかは分からないが、結果がどうだった所でそれを受け止めて戦う事しか俺達には出来ない。《終焉》の契約者曰くそういう話だっただろう?)
そうだな――俺達に出来るのは、この後に控えてる戦いで最善を尽くす事だけ、だよな。
SSSクラスの聖具とそれを超えるEXクラスが入り乱れる戦場で、SSクラスの俺が何処までやれるかは分からないが、それでもやるしかない。
敵の目的はなんだか分からないが、最高位であるEXクラスを全て手中に収めようとしている事だけは確かだ。
そこまでの力を求めて何をするのか想像する事は出来ないが、それでも、魔獣を生み出した様な奴にそんな力を与えるのが如何に危険かは、最早考えるまでもない事だろう。
と、そんな事を考えていると「何か考え事ですか?」とツバサが話しかけてきた。
「いや、別に大した事じゃねぇさ。それよりも、一応今は宮殿回りの警戒任務中だろ? 俺と話してていいのか? つーか、俺もお前と同じ警戒任中だから話をするのは拙いと思うんだが?」
「それについては、ある程度エーテルの探知範囲は広げてるんで大丈夫ですよ。自分の担当範囲はカバーしてます――それが問題だってんなら普段の体制も問題だって話になるだろうから、誰にも文句は言われないと思いますよ?」
まぁ、ツバサのいう事は一理ある。エーテルを探知する力で担当範囲をカバー出来てるのなら、それで問題ないだろう。
実際、普段の宮殿なら周囲への警戒は広域探知能力を持つセトさんが一人で行っているのであって、外には常時一人か二人が居るだけだし、その一人二人だって、宮殿入り口の門で見張りをしているだけでしかない訳だし。
一応、今は敵の再襲撃に備えて名目の見張りなのだが、それも万が一の状況への警戒であって、今のタイミングで敵が仕掛けてくる事はまずあり得ない、らしい。実際は敵の状況など想像する事しか出来ないのだから、予想でしか無いのだろうが。
「そりゃ、文句は誰も言わないだろうけどな」
決戦を備えている以上、誰だって少なからず休みたいとは思っている筈だ。そんな中で宮殿周囲の警戒の任を与えられた――もとい、押し付けられた俺達が話をしていた所で、任せられた仕事をこなしていれば誰も文句は言ってこないだろう。
そう、押し付けられたのだ、俺も、ツバサも。つーかいくらSSSのツバサが居るからって二人っておかしいだろ……俺等が一番新参なんだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
(いや、そこは仕方ないで済ましていいのか、相棒?)
なら……仕方ないと諦める以外に方法があったのなら教えてくれ、相棒。
(……あー、正直すまんかった)
そう、他に良い方法が無かった、単にそれだけの理由で、俺とツバサは宮殿周囲の警戒の任についているのだ。新参だからと言うのは結局の所断りきれなかった理由に過ぎない。
大半のメンバーがさっきの戦闘で少なからず負傷を負っているなか、俺の負っていたダメージは比較的少なかったのだ。
負傷と言っても動けな程のものでは無いのが大半で、他の人達でも宮殿周囲への警戒と言うのは可能だったのは間違いない――が、そうする事で控えている決戦に影響を出してしまうのは非常によろしくない――故に、傷が浅い俺達が選ばれたのだ。
つーか、他の傷が浅いメンバーが幹部二人という状況では、他に選択肢は無かったといって良いだろう。因みに、ツバサに関しては戦闘に参加していなかったので無傷だったので、元から断りようが無かったのは間違いない。
とは言え別に周囲へ警戒をしておくだけの任だし、そこまで大変な物では無い。強いて言うなら暇なのが最大の悩みなのだが――
「なら問題ないじゃないですか? どうせ暇なんだし、適当になんか話題探して駄弁りましょうよ――最近お互い任務に出たりで入れ違いが多くてあんまり話とかしてなかったじゃないですか?」
話し相手が居ればそうでも無いだろう。最も、元からシンクと相棒と言う話し相手が居るので、絶対的に暇という事は無かったのだろうが、それでもいつでも話せる二人と話すよりは、久しく話すツバサとの話の方が話題には困らないと言うものだろう。
「そういえばそうだな――なら、盛り上がりすぎて警戒の任を忘れない程度に、話でもしようか?」

<SIDE-Leon->
あの後、ゼノンに話を持ちかけると驚くほどあっさりと――とは言え、別に断られる理由も無かったのだからある意味当然だが――ゼノンは《情報屋》に向かう事に納得してくれた。
そのお陰もあってか、アルアの《宿》を目指す俺達も、爺さんの《情報屋》を目指すゼノン一行も既に守護者の拠点である宮殿を既に出発していた。
因みに、宮殿から見た概ねの方向は同じなので途中までなら同じ方向へ進む事も出来たのだが、少しでも時間を短縮する為と言うゼノンの言葉によって、互いに目的地へは最短距離で移動すると言う話になり、既に《情報屋》を目指すメンバーは近くには居ない。
まぁ、それは兎も角として、急ごうとは思っていたがここまでスムーズに話が進むとは正直思っていなかった。
……ネロの件に関してだけは未だに少し不安だが、今更思い悩んでも無駄なのは分かりきっている為、素直に諦める事にする。まぁ、諦めなければいけない様になった原因であるユフィはそんな事も知らずに《宿》に向けて俺の隣を移動しているのだが。
かといって、今更ユフィを責める事にも意味は無い。今すべき事は《宿》に辿り着くまでの間に同伴してくれた他の守護者メンバーと話でも何でもして、少しでも交流を深める事だ。
元々、そういう理由で《宿》へ行きたいメンバーと言うのを聞いてみた訳だし、ユフィ以外の三人とは《宿》に着くまでの間に少しでも交流を深めておきたい。
帰りは帰りで《宿》で見つけた新しい仲間が居る可能性と、その仲間と話す必要がある事からも、出来うる限り行きの間に話しておきたい――とは言え他のメンバーの足並みに揃えている為か《宿》まではまだまだ遠いし、時間は多くある。
それでもやると決めたからにはさっさと行動に移そう。こちらから振れる話題は少ないが、後に取っておいてもろくな事にならないのは明白な訳だし。
「折角五人で一緒に行動してるんだからさ、何か話さないか、皆? 勿論移動は止めずに、だけど」
兎に角、四人――ユフィに関しては今更交流を深めるもクソも無いので実質は三人――に向けて俺はそんな言葉を放つ。
「にゃ、私は別に全然構わにゃいにゃ。と、言うかにゃんかいつも黙りこんで一人で考えてるレオンにしては、随分珍しい事も言うんだにゃ?」
真っ先に反応してきたのは当然の様にユフィで――
それに次いで「丁度、手前も手持ち無沙汰でありましたし、丁度良い機会ですので、手前もレオン殿と話したい事か幾つかあります」と、トキハが応えをくれる。
そして「そうね、どうせ黙り込んでても意味なんて無いし、私も混ぜてもらおうかしらね――その話って奴に?」クオンがそう応えるとそれにつられる様に「クオンちゃんが参加するならお兄さんも参加させてもらうぜ、その話」とユーリが反応する。
つーかコイツ、クオンの言葉にしか反応しないんだが、まさか他は完全に見えて無いんだろうか? いや、それ以前にお兄さんて……コイツの性格と言うか性癖と言うか、兎に角ユーリがロリコンなのは知っていたが、まさかココまでの重病だとは思わなかった。
とは言え、常識的に考えて他が見えてない訳ないし、聞こえていない訳も無い。先程の言葉も他を認識していないなら出ない言葉なのは明白だ。
詰まる所、他の事は聞こえていても完全に無視しても良い程にはまるで興味を抱いていないという事だろう。そう考えると単純に凄まじい集中力を持ってる事だよな、この変態……
つーかユーリも参加するなら何だかんだで《宿》を目指しているメンバー全員じゃないか、コレで。交流を深める為に、最悪一人づつとでも話そうと考えていたのだが、思いの他簡単にその必要がなくなってしまった。まぁ逆に喜ばしい事ではあるのだが。
そうこう考えている内に「にゃにゃ、ユーリも話に参加するのにゃら全員で話をするって事でいいのかにゃ? 私はそれで構わないけど、レオンとトキハはそれで良いかにゃ?」と、ユフィがそうやって話を進めて、問いを投げてくる。
その問いに俺は「全然構わないな、寧ろ話は大勢でする方が話題が尽きなくて良い」と応え、次いでトキハも「手前もそれで構いません」と応えた。

<SIDE-Fein->
《情報屋》へ向かう幹部メンバーがゼノンさんに決まり、直ぐに宮殿を出発した私達はひたすらに《情報屋》に向かって移動していた。
同じタイミングで出発した《宿》へ向かうメンバーとは目指す方向は概ね一緒だったが、ゼノンさんの言葉で《宿》に向かうメンバーとは直ぐに分かれた為、今は私を除けばアレンとリズィ、それにゼノンさんしか居ない。
正直な話、こんな事に成るなら最近会ってなかったからなんていう下らない理由で《情報屋》へ行きたい等と志願しなければ良かったと、今更ながら少し後悔してしまう。何故なら――話す相手が、居ないのだ。
ゼノンさんはついて来ている私達のペースに会わせて一番前を無言で移動しているし、その後を追う私の少し後ろではアレンとリズィが二人の世界を作ってしまっている。
別に回りが見えていないバカップルとか、流石にそういうレベルでは無いのだがそれでも本当に大事な用件がある訳でも無いのに二人の間に割ってはいるのは気がひける――と、周りにそう思わせる空気を二人は生み出していた。
無言で進むゼノンさんに話を振るのは不可能じゃないし、後ろで乳繰り合っている二人に比べればまだ話し掛けやすいだろう。
別に、仲が悪いと言う訳でも何でもないのだが、何故だかここ最近……いや、昨日話した時はそうでもなかったから今日からか? 兎も角、何故だか妙に機嫌が悪い様に見えるのでかなり話しづらい。理由は、私には皆目検討もつかないのだが。
(あの、マスター? どうしてもお暇なのでしたら、私がお相手しますが?)
なぁレア、気持ちはうれしいんだけど、割といつも話してる君と私との間に、何か話題が残ってるとでも思ってるのか?
(いえいえマスター、お忘れになられてませんか? 普段なら兎も角、今に関しては一つ話題がありますよ?)
話題? 何か君と話を膨らませられるネタなんてあったっけ、レア?
(あの、マスター? つい今しがた宮殿の前で別れたばかりの方の話ですよ? 分かりませんか?)
あぁ、成程――新首領の話か。しかし、それだと知り合いだったらしいゼノンさんに話を聞いた方が有意義だと思うんだが?
(今のゼノン殿に話しかける勇気がマスターにあるのならお好きにどうぞ? 私はあくまで聖具ですので、マスターの意志を尊重しますよ? ですが、誰とも話せなくて暇だと感じて尚マスターが黙っていたから、出しゃばって出てきたと言う事実をお忘れなく)
……要するに私がへたれているとでも言いたいのか、レア?
(要するにも何も、事実でしょう? 乳繰り合ってる二人には絡めず、不機嫌そうに黙り込んでる一人にも絡めない、コレでへたれじゃないと言い切れる訳があるとお思いですか、マスター?)
すまない――少し意地を張った。この際、暇が潰れるのなら、お前とでもなんでも話をしようじゃないか。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――3/7
PerfectSix――2/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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