EternalKnight
葛藤
<SIDE-Leon->
一人が自分の意見を出した後は、割と直ぐに他のメンバー達も自分の考えを話してくれた。
まぁ、幹部に認められてるとは言え、突然現れた奴がリーダーなってそいつに言いたい事を迷わずいえる奴が居るのかと問われれば微妙なので、それについては触れない事にするとして、今聞いた意見を纏めると――
まず《情報屋》に行きたいと志願してきたメンバーの数だが、コレが最初に意見を出してくれた銀髪以外にはフェイン一人であわせて三人。
そして《宿》へ行きたいと志願してきたメンバーはユフィと黒髪の巫女の少女、そしてその彼女の事しか見えていない変態と、長い銀髪を束ね腰に刀を挿している女の四人となった。
まぁ、今の段階では希望した場所に確定で行かせてやる事が決定した訳ではないが、折角希望を出してくれたのだから出来うる限り叶えてやりたい。
――と、言うか《宿》側のメンバーが俺と、元より考えていたネロ、それにクロノ、加えてエリスが入って八人になるのが少し多すぎる気がするが《情報屋》の方の人数は多すぎる訳ではない。
まぁ、誰か一人幹部を戦力としてつけると四人になるが、その人数ならまだ許容範囲といえる。宮殿に残るといっているメンバーは今ココに五人居て、幹部が二人居残れば七人か。やっぱり《宿》側のメンバーは多すぎるな、これだと。
クロノを残してやればエリスも残る事になるので、《宿》向かうのが六人、残るのが九人といい感じになるのだが、クロノをつれて行かないとそれはそれで面倒になる。
特に、共闘してくれるのなら破壊者だろうと構わないと俺は考えている訳だが、考えの読めない破壊者を仲間に加えて、背中から攻撃されたのでは洒落にならない。
と、言うか仮にハグレの永遠者であっても、顔馴染みであるアルアやベアトリス等以外は、絶対に信用していいと言う訳でもない。――故に、クロノを外すという選択肢は正直かなり選びづらい。
或いは、クロノを置いていって、宮殿に戻るまでは警戒しておくと言う手もある。
少々面倒だし、警戒していると思われれば信頼して貰うのが難しくなるだろうが、宮殿が手薄になるのとそれを比べてどうなのか、と言う事を考えるとどっちもどっちな気がするのも確かだ。
そういう意味ではやはり連れて行くのが一番面倒が無くていいのだが……そうなると宮殿の守りを固める為に他のメンバーに残って貰わざるを得なくなる。
ついてきた連中を警戒しなければいけないのは面倒だが、面倒でも不可能な事では無い以上、俺自身が感じる面倒と言うのを理由にメンバーの割り振りを考えるのは、組織の代表者としての考えとしては失格だろう。
或いは、希望者を外すって手もある。まぁそうなるとまず真っ先に考えられるのはユフィだろう。ってかよくよく考えりゃなんでさっき誰も意見出さずに話が止まった時に意見を出してくれなかったんだ、アイツ?
まぁ、俺と顔馴染みだって事は他の連中にも分かってる事だから、他の連中の言い出し難さは殆どかわらなかったんだろうが……
他に手があるとすれば、ネロを残して行くって方法になるが……俺の目から離れた、しかも《必滅》の本体が封じられてるこの場所にネロを残していくのは幾らなんでも危険すぎる。
そういう意味では希望者を可能な限り優先しようとすれば、巫女の少女と変態と銀髪侍女と俺、それからネロの五人と言う組み合わせが最小の人数になるのだが、コレで決定にすれば、まぁユフィが文句を言ってくるのは間違いない――よなぁ?
それでも《宿》側五人で《情報屋》側が四人、宮殿に残るのが十人ならまぁ人数比的には申し分ない。
ユフィに文句を言われる事と、《宿》で見つけてきたメンバーを宮殿に居るクロノに見せるまで警戒しておかなければいけないと言う程度の面倒事をこなせば良いバランスでメンバーを振れるなら、まぁそれが俺に出来る最善だろう。
そこまで決まれば、後は《情報屋》側の戦力の強化として同行させる幹部クラスを選ぶ事だけしか決める事が無いが――コレは、さっき一人で考えていた際に決めたゼノンに任せれば良いだろう。
まぁ、ゼノンが無理そうならキョウヤでも良いのだが――同じSSSでも、クロノはエリスがついて来るだろうから選択肢には入れられないのだが。
二人の意見は聞いていないが、どちらかは動いてくれるだろう、流石に。と、
言うか《情報屋》に向かわせる戦力に関しては、敵に襲撃される理由なんて無い訳だから別に護衛が必要ないといえば必要ないってのもあるんだが……それでも最悪のケースは想定しておいた方が良いと言うのもまた事実だ。
状況から判断を軽んじて《情報屋》に向かわせたら、そちらが全滅した、なんて事になったら笑い話にもならない。戦力を増やそうと行動して、逆に戦力が減らされた等と言う状況は絶対に作りたくない。
唯でさえこちらの総数は少ないのだ、逆に《呪詛》側が戦力を分散してこちらに手を出してきた所を、各個撃破して敵の戦力を減らすぐらいの気持ちで居なくてはならない。そして、その為にはやはり各組に相応の戦力が必要になってくる、と言う話だ。
もっとも、俺には《呪詛》側が必ずしも動くとは断言出来る訳ではない――まぁ、動かないなら動かないで、こちらは被害を殆ど出さずに戦力を増強できるのでそれはそれでありがたいのだが。
と、黙っていても誰にも伝わるはずが無い。いい加減俺の黙り込む癖にも慣れたのか、守護者のメンバー達は小声で何かを話してその間の時間を潰していた。
まだ考えている振りをして、その会話を聞き取る事も不可能ではなかったが別段そうする理由も無かったのでそんな事は実行に移さずに、決まった事を伝える事にした。
「《宿》と《情報屋》に向かうメンバーは取りあえず決まった。幹部連中にも一人動いてもらうつもりだから、その一枠は今は伝えられないんだけが、一応コレで最終決定のつもりだ」
俺が喋りだすと同時に、囁く様に続けられていた会話は途切れ、全員が俺の言葉に意識を傾けてくれたのが分かった。
こういう組織としての結束力というか協調性はセルの教育の賜物なのだろう――俺が組織のトップに立っていたならば、情け無い話だが、間違いなくこうはならなかったと断言出来る。と、まぁそれはさておき話の続きだ。
「さっき出された希望に関してはユフィの意見以外は全員、希望通りの場所へ向かってもらう。ユフィには、悪いが宮殿に残ってもらう事になるけどな」
「ちょっと待つにゃ、レオン。にゃ、にゃんで私の希望だけ通ってにゃいんだにゃ?」
うん……まぁ、コレは予想通りの反応だ。寧ろこうならない可能性の方が低かったといって良い程に予想されうる未来だった。故に、それに対する答えは用意してある。とは言え、単に事実を話すだけだが。
「人数の関係と、後は昔から知ってるからってのが理由だ。別にお前の希望なら通さなくても良いとか、そんな風に考えた訳じゃない。単に他のメンバー達とは交流を深めなきゃいけないと思うが、お前とはもう十分に話せるからその必要が無いってだけだ」
「レオン……それ、結局は私だから希望を通さにゃくても良いっていってる様にしかきこえにゃいにゃよ?」
いや、そんな事は無いだろ?
「――兎も角《宿》の方はそれに加えて俺とネロが出向く事に決定で、《情報屋》の方は希望が通った三人と後は幹部、ゼノンかキョウヤのどっちか一人の四人に向かってもらうつもりだ、何か意見か質問は?」
「意見はありまくるにゃよ! にゃんで希望した私がダメで、希望して無いそこの魔獣の彼がついて行くにゃんて事になってるんだにゃ?」
まさかここまで食い下がってくるとは思って無かった……つーかネロを連れて行く事の言い訳なんて考えて無いぞ、そういえば。本人の前で本当の理由を言う訳にも行かないし――どうすりゃ良いんだ、この場合?
「いや、それはお前、アレだよ。お前が言った通りだからだよ――ほら、コイツって一応魔獣だろ? 他の連中に色々言われるんじゃ無いかって心配でさ?」
「別に心配してもらわなくていいぞ? 魔獣なのは事実だし、俺はなんと言われようと構わないと思ってるから」
コイツは、余計な所で余計な事を――
「って本人は言ってるにゃけど、どうするんだにゃ、レオン? そもそも、今の守護者のメンバーのにゃかにはそんな細かい事を気にするようにゃ心の狭い人は一人もいにゃいにゃよ? まぁ、三十年程前までは一組居たんにゃけどにゃ」
どうする? どうやってネロを俺について来させれば良い? いや、この際俺についてこなくても良い、どうすればネロを宮殿から引き離せる? 一応宮殿から引き離せさえすれば、最悪の事態に陥る可能性は限りなく低くなるのでこの際それで良い。
そもそもの話、俺ですらアカシックを辿らなければ分からなかった程、《必滅》の意思と器は完璧に分離しているのだ。宮殿にさえ居なければ、俺が近くでその様子を見ていなくてはいけない理由は無いに等しい。
故に、俺が居ない状態で宮殿に留まらない――と言うのが現状でネロにとって欲しい行動なのだ。もっとも、流石にそんな事を言い出せばその理由を聞かれるのは明白なので、間違っても言ったりはしないが。
そういう意味では現状の状態もとてもでは無いが良えない。寧ろ最悪の一歩手前だ。宮殿に居て、尚且つ一番狙われやすい俺もそこに居るのだから、それが最悪に近くない筈が無い。
まぁ、それでも俺が気にしていれば下手なことにはならないだろうから、最悪では無いのだが。
本当の最悪は、今この状況で《呪詛》の軍勢に再襲撃され、その混乱で俺の注意がネロから外れると言うパターンなのだが、流石にそんなに直ぐに再攻撃を仕掛けて来るとは俺には思えなかった。
無論、可能性は零では無いのだが、かなり低い確率でしかないので気にしなくても良いだろう。そもそも奴直属戦力である王下とやらが先程の戦いで最低でも二人は消えた事も考えれば、やはり直ぐに動いてくるとは思えなかった。
と、今はそういう話では無い。兎も角、《完全なる六》がもう一つ目覚めてしまうという状況は絶対に避けたい以上、可能な限りそのリスクは減らしたいのだ。そしてその為にはネロには宮殿を離れてもらいたい。せめて、俺が宮殿を離れている間は。
「いや、だけどだなぁ……」
ネロがこの場に居なければ、ユフィや他のメンバーに事情を説明する事で納得してもらうという選択肢を選べるのだが、ネロがこの場に居る以上それは出来ない――が、このまま粘り続けても逆にネロ本人に怪しまれる可能性がある。
そうなってしまえば、俺は絶対に口を割らないにしても《必滅》の意思……《無銘》がネロに事実を教えかねない。そして、ネロがその事実を知れば《呪詛》と戦う為により強い力を求め、封印を解いてしまうという未来が容易に想像できる。
悩んでいる時間は無い――決断を下さなければいけない。ネロを襲撃される可能性が低いが最悪の場合《必滅》が復活してしまう宮殿に残していくか、或いは多少は疑念を持たれても良いから適当に言い訳して強引にネロを連れて行くか。
可能性で考えればどちらを選ぶべきなのかは明白だ。どちらの可能性の方がより《必滅》の復活と言う最悪の状況を生み出しにくいか等、考えるまでも無い程に分かりきっている。だから――
「……分かった、ネロを置いていって、ユフィを連れて行く事にする」
――ここは俺が折れた事にするしかない。元々回りが納得しにくそうな理由で自分の考えを通そうとしていたのだから、早めに折れた方がネロも妙な疑問を持たなくて済む。
正直な所、今の時点で宮殿が再襲撃される可能性はかなり低いのだし、それ以前に宮殿にはキョウヤかゼノンのどちらかにクロノとフィリア、それに加えてまだ成ってから日は浅いらしいがSSSクラスのツバサが残る事になっているのだ。
この戦力をどうこうされるとは考えにくいし、そもそもネロの《無銘》が《必滅》の意思である事は現状《無銘》自身と俺とシュウぐらいしか知らないのだから、セルの時の様にネロがピンポイントで狙われるという事もまずあり得ない。
そう考えると、やはり俺の考えは間違っては居ないと思える――まぁ、だからと言って本来取るはずだった選択肢が間違っていると思う訳でも無いのだが。
詰まる所、また俺は無駄に色々と考えていただけなのかも知れない。或いは、そう思う事で最悪の事態が発生するかも知れないという僅かな可能性から目を背けようとしているのかも知れないのだが――

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――3/7
PerfectSix――2/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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