EternalKnight
七鍵
<SIDE-Leon->
戦いの始まる前から宮殿の外に出ていた者達が帰ってくるのも見込めるし、何より先程の戦いで宮殿からの脱出の為に転移したセトも戻ってくる。
戦力としては全くアテにはなら無いが、彼女の詮索能力は俺の知る限り随一であり《輪廻の門》へと攻め込む際には非常に役立つのは間違い無い。
そもそも、破壊者の拠点と違い守護者の拠点である宮殿の位置は、少し長く生きている永遠者なら誰でも知っていると言って良い程に場所が知れ渡っている。
そこに集う戦力の大半がその世界から離れればどうなるのか? 現状では破壊者もかなりの被害を受けているので絶対にそうなるとは言い難いが、敵対者に狙われる可能性が非常に高くなるのは考えるまでも無い事だろう。
最悪なのは《呪詛》の率いる魔獣の軍勢が責めてくるパターンな訳だが……まぁ、それはまず無いだろう。奴の目的を考えれば、次に狙われやすいのは俺な訳だし。
無論、だからといって、守勢に回るつもりも毛頭無い――が、攻めさせないと言う意味では、狙いを付けられないように俺は出来る限り一箇所に留まらない方が良いのかもしれない。
もっとも、俺以外の《完全なる六》の覚醒や復活が確認されればそちらを狙う可能性もあるのだが、そんな状況が起こる事は、理論的に限りなく零に近い筈なのであり得ないだろう。
確立を制御できるとはいえ、そもそも零で無いかどうかが怪しい確立を弄る事までは流石に不可能な筈だ。《根源》に可能なのは、コンマ1%以下の可能性を限りなく100%に近づけられる能力であり、あらゆる可能性を捻じ曲げるほど絶対の力と言う訳ではない。
元より零か百である可能性を捻じ曲げる事は流石の《根源》にも不可能な筈だ。そして、どれだけ運命を操作できると言えど、何処に存在しているかさえ分からない物の封印を解ける程、万能と言う訳でもない。
《完全なる六》の一柱と言われ様と、所詮はその程度でしかない。無論、程度が知れているというその理屈は俺の持つ《終焉》や残りの《完全なる六》の聖具にも言える事なのだが。
《時空》が封じられている《時の迷宮》の位置は流石に直ぐにでも見つけられるだろうが、時間と空間の捻じ曲がったあの迷宮を運命操作で乗り切る事は不可能では無いにしても、簡単なことではない。
そも、自身が絶対の優位性を保っている上、所在がほぼ割れている俺の持つ《終焉》があれば労せず《時の迷宮》を突破できる事を考えると、やはり先に狙われるのは《終焉》であると考えた方が自然だ。
そういう意味では、俺についてくるのはそれなりの実力者でる必要があるのだが、やはり宮殿の守りも残しておきたい事から幹部クラスのメンバーを連れて行く訳には行かない。
ならば、どうするのが良いのだろうか? ネロと《必滅》の封印形態である《無銘》なんかは俺が共にいた方が万が一の心配も無いから連れて行った方が良いんだが――そんな風に考えていると、唐突にシュウを通してそれを感じ取った。
俺自身の鼓動が一度だけ大きく高鳴り脈を撃ち、それによって全身を構成するエーテルが歓喜する様に、あるいは怯えるように震え上がる。
この感覚を、俺は知っていた。近く絶対にこの現象が来ると分かってはいた――が、それでも訪れない事を僅かながらに望んでいたそれは《完全なる六》同士の共鳴現象で、それを感じるという事は即ち《根源》の完全復活を意味していた。

<SIDE-Curse->
今まで以上の膨大な量のエーテルが内包され、準最高位を超えて、最高位と呼ばれる領域に到達した事が目に見て判る程までに圧倒的な雰囲気を放つ《根源》を手に、俺はようやく一息つく。
「これで本当の意味での一つ目――か。だが、次のアテがある以上ココから忙しくなるのは間違いないだろうな。もっとも、それくらいは望む所なのだがな」
その為に、俺はこの聖具を自ら物にする必要がある。それも己が契約するという方法以外を用いて、だ。
ハッキリ言ってしまえば、俺の最終目標である《完全なる六》の全てを手に入れその力で《広域次元世界の意思》と対等な存在になるには、一つ一つと契約していくのでは途中で無理が出るのは明白なのだ。
それこそ、膨大な量のエーテルによって存在情報そのものがかき消され、ただの超高密度なエーテルの集合体に成り下がってしまう。
最高位の性能を考えれば、普通は三つも同時に契約しようとすればそうなってしまうのは間違いない。
もっとも、存在情報を消されずに四つの最高位と契約していた者も存在するようだが、それでも結局六つでは無い上、奇跡と呼べる程には幸運と偶然で、強力な存在情報の結びつきをしていたのだろう。
故に、俺が最高位を己が力として振るう為にはそれを制御する首輪が必要になって来るのだが、俺には《七鍵》がある。
七つの鍵。《完全なる六》にこの俺《呪詛》と呼ばれる聖具を加えた《究極の七》を収める為にのみ存在するその聖具は俺が時をかけて作り上げたこの計画の要といえる準最高位の聖具だ。
無論、準最高位とは言え《完全なる六》を全て収められる程の強度を得させる為に様々な物を犠牲にしている為、それ単体見た性能はたかが知れている、と言うか下級聖具にも劣る程脆弱だと言って良いかもしれない。
もっとも、《完全なる六》を収める器にさえなれば良いのだから、それ自体は些事でしかないのだが。
「さて――こうして考えている時間が勿体無いし……そろそろ始めるか」
誰にでもなく自分にそう言って、俺は自らの胸に手を伸ばし《根源》を握っていない右手を胸に当て、その腕を自ら胸の中に沈み込ませる。
エーテル全身を構成されているからこそ可能な芸当なのだが、当然気持ちの良い物では無い――が、自ら肉体の内側に沈み込ませた《七鍵》を体外に持ってくるのはどうしてもこの手順を踏む必要があるのだ。
もっとも、体内に沈み込ませ無ければ使えないという事でもないのだが、体の外にその存在を晒すのは弱点を晒すのに等しい為、とてもでは無いが俺には出来そうにない。
故に《完全なる六》を一つ手中に収める度に出し入れの手順を繰り返さなければならないのだが、まぁその程度の事は《広域次元世界の意思》と対等な存在になる為の試練と考えれば大した苦では無い。
そも《完全なる六》を集める所から考えても、神に等しい座に上る試練と考えれば総じて大した苦とは言えないだろう。もっとも、その大した苦と呼んだ事を成す為に、既に万に等しい年月を掛けた俺が言うのもなんではあるのだが。
まぁ、それは兎も角として、やるべき事は――要するに《根源》を《七鍵》に取り込む作業だが――済ませておくべきだろう。
右手の《七鍵》と左手の《根源》に交互に視線をやり意識を集中させる。元よりこの空間には雑音が入る余地が限りなく少ないが、そういう場所を用意しなければ成らない程には、コレより先の手順ではかなりの集中を要するのだ。
とは言え、集中が途切れた所で作業自体をやり直せば済むのでで、失敗が許されない訳では無い。無論、何度も繰り返すのは面倒なので、できれば一回で事を成したい所ではあるのだが――

<SIDE-NameLess->
レオンさんの話を隣で聞いていた俺の鼓動が一度だけ大きく脈打つ――同時に、全身を構成するエーテルが身震いするように震え上がる。それは余りにも唐突で、それが何を意味するのかが俺には分からなかった。
魔獣としての何かなのか、聖具の契約者としての何かなのか? 或いは、そのどちらも関係ない別の何かなのか? 何にしても、その現象が何を意味するのか分からない以上何も打つ手が無い。
魔獣としての何か以外であるなら、レオンさんにでも聞けば分かるのだろうが、他の守護者の団員達がいる今、その事を話題として切り出していいのだろうか?
何を持って最悪と言うのかは置いておくとして、最悪の場合を考慮するならレオンさんにだけ聞くべきだろう。取りあえず、ココでの話し合いが終わった後にレオンさんに聞いてみよう。
――そうするとそれまでどうすれば良いのかと言う話なのだが、それはまぁ、レオンさん達の話を聞きながら自己分析でもしていれば良いだろう。
それで何が原因か分かればそれに越した事は無いし、魔獣としての現象だった場合には、結局はそうやって自分で解決するしか無いわけだし。
(原因の特定が出来ていない身でこう言うのもあれですけど、僕はあまり気にしてなくても良いと思いますよ、マスター? 特に体の方に問題はないのでしょう?)
それはそうだけどな……万が一何かがあったらその時には手遅れな訳だし、用心しておくに越した事はないだろう?
(確かに、マスターの言うとおりですけど……全身のエーテルが震え上がったくらいで気にしすぎなんじゃありませんか?)
何だ《無銘》――いや《滅び》って呼べば良いのか? まぁそれはどうでも良いとして、今回は珍しく突っかかって来るな、お前?
(気のせいですよ、マスター。それから僕を呼ぶ時は《無銘》でお願いします。それはそうと、マスターは目的を果たす戦いの前で少し神経質に成りすぎているんじゃないですか? 先程の現象も、案外そのせいで気になっているのかもしれませんよ?)
可能性は否定できないし、神経質に成ってるかもしれないってのは認める――が、あんな現象が起これば神経質に成っていなくても気づくってのは間違いない。そして、そういう自体が始めて起こったから問題視してるんだよ、俺は。
(マスターがそう言うのなら、僕からいう事は何もありません)
悪いな、お前が気にしてくれてるってのは分かるんだが、どうにもさっきのが気になるんだ。お前の言うとおり気のせいだとか、神経質すぎるって理由だったら良いとは俺も思うだけなら思うんだけど――なんか思考を放棄してるみたいで嫌なんだよ、俺は。
(……マスター)
どうした? まだ何かあるのか《無銘》?
(いえ、何でもありません――お役に立てなくて申し訳ありませんと、謝っておきたかっただけです)
あんまり気にするな。だがまぁしかし《無銘》に分からないとすると、いよいよホントに魔獣としての何かの可能性が高いって事か……
等と、また押し黙ってしまったレオンさんの話が再会するまでの間、俺はそんな念話を《無銘》と繰り広げていた。

<SIDE-Leon->
まぁ《根源》の完全復活に関しては予想よりも遅かっただけで、予想外の展開と言う訳ではない。《根源》の復活前に《呪詛》を叩くという軽く夢物語に近い目標が潰えただけで、こちらが取るべき行動が変わる訳ではない。
そも《根源》の復活前に《輪廻の門》へ攻め込む事が出来たとしても、そこで待ち構えているであろう《呪詛》の部下達の存在がある以上、今のこちらの戦力では厳しい戦いだった事に違いは無いだろう。
もっとも《呪詛》の襲撃が終わった時点で守護者全員を速攻で纏めて《輪廻の門》へ向かった所で、今のタイミング――《根源》の復活――には間に合わなかったのだろうから、そう出来なかった事を悔やんでも仕方の無いし、そうする意味も無いだろう。
最も――呪詛の部下の相手をするのが辛くなるが、全員と言わず移動の早い者だけ連れて行けば、或いは《輪廻の門》までなら辿り着けただろうというのもまた、事実な訳だが。
唯でさえ人数が足りないのに、その上でさらに足の速い者と言う縛りをつけると、俺を含めてせいぜい十人――いや、それ以下程度の人数にしかならない。
足が速いと言うか、外の世界での移動速度が速いメンバーという事だが、それを揃えると速さに特化した聖具を除けば必然的に個々の戦力は高いメンバーにはなる。
そうなると、雑魚な魔獣を簡単に屠れるのは言うまでも無いのだが、唯でさえ数が厳しい所に単体でこちらの個人に匹敵するであろう《呪詛》の直属の王下とやらが混じってくると結果は火を見るよりも明らかだろう。
と――ネガティブに過ぎ去った可能性を考えても仕方ない。随分とまた黙って考え込んでいた様な気がするが――この際考えだすと軽く周りが見えなくなる人――と言う認識をしてもらった方が良いかもしれない。
(いや、実際問題そうなんだから良いかもしれないじゃなくて仕方ない事だろ、それは)
でだ、今は宿に誰を連れて行くかだったが。まず俺と、それから《必滅》の封印形態を持つネロは確定として後は、協力したいと言ってくれた連中が何かしらの敵意を抱いていないか確認する為にクロノも連れて行きたい。
まぁ――セットでエリスも着いてくるだろうがそれも特に問題は無い。あと一人ぐらい、出来れば交渉に向いてそうな奴が欲しいのだが……誰かいないだろうか?
もっとも、話その物を宿に来ている連中に投げかける役目はアルアに任せるつもりなので、別に最後の一人は必要ないといえば必要も無いのだが。

TheOverSSS――16/28
UltimateSeven――3/7
PerfectSix――2/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

<Back>//<Next>

17/118ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!