EternalKnight
思案
<SIDE-Leon->
(所でな、レオン?)
急に改まってなんだよ、シュウ?
(いや、今後の方針もさっき決まってたみたいだし、流石にそろそろ沈黙を解くべきなんじゃないのかと、俺は思うわけだが――)
……一つだけいいか、シュウ? 俺がお前と話してたり、今後の方針を考えてて黙ってた時間ってドレくらいになる?
(正確なところまではわからんが、三分弱だな。コレだけ長く沈黙が続くと俺も流石に気を使うわ、守護者の団員に。ってか最近自分で気づいてた事が多かったのにどうしたんだ、今回は?)
いや、なんだろうな、ホントに。俺にもよく分からん。って――それはもう良いんだ、取りあえず今は決めた事を伝える事を先決させるべきだろ、どう考えても。
(流石にそれには同意しよう。と、言うか決めた事とは何だ? 仲間を探す当てが二箇所ほどあるとかなんとか言っていた気がするが? そこに頼みにでも行くのか? あぁ、因みに応えなくていいぞ、俺の独り言だからな。どうせ今から話すんだろう?)
応えなくてもその反応に対して何か考えちまった時点でその思考がお前に届く訳だから、最後のつけたしとか意味無いだろ……まぁ、そんな事は兎も角、俺が黙っていた間その沈黙に耐えていた守護者のメンバーに今後の方針を話すとしよう。
「悪い、少し今後の事を考えてた。ちょいと深く考え出すと周りが見えなくなる性分なんでその辺を理解してくれると助かる。で、これからどうしていくかなんだが、まず《呪詛》の率いる魔獣の群れと戦う為に少しでも多く戦力を確保しようと思ってる」
その俺の言葉に、眼鏡をかけた情報屋の常連(フェインだろう? もう忘れたのか、レオン?)……フェインが反応する。
「魔獣の群れと戦う為に戦力を確保するって――当てはあるんですか? 魔獣の数なんて、それこそ計り知れない程多いんですよ? 単純な数の比なら、残っている守護者の数百倍……いや、千倍以上いてもおかしくない」
確かに、全ての世界に存在する魔獣の数ならそれ程居てもおかしくは無い。いや、寧ろもっと多いかもしれない――が、全てが《呪詛》の配下となって《輪廻の門》に集合している訳ではないのは考えるまでも無く分かっている事だ。何故なら――
「絶対数ならそうだろうが《呪詛》が陣取ってる《輪廻の門》にそれだけの数が居るって事はまず無い。そもそも下位の魔獣には意志が無いし、何より弱い。永遠の騎士なら本当に瞬殺出来る程度の雑魚を《呪詛》が態々用意してるとは俺には到底思えない」
故に、《輪廻の門》に集められているのは最低でも三階位以上の魔獣と言う事になる。そして、そこまでの位階に上がれる魔獣の数が、そこまで多いとは俺にはとてもじゃないが思えない。
「居ても、第三位階以上の魔獣が合わせて今の守護者の十倍程度が関の山だろう――と、俺は考えてる」
もっとも、それは少なくとも永遠の騎士と戦えると考えられる敵が数の上で十倍は存在していると言う事であり、戦力比的に厳しい事には何の代わりも無いのだが。まぁ、だからこそ一人でも多くの仲間が欲しいのだが……
「それから、さっきお前が言ってた当てはあるのかって話だが、一応当てはある。そこでこっちの話を聞いて手伝ってくれる奴がどの程度居るのかまでは、俺には分からないがな?」
正直な所、守護者の拠点を除いてあの場所以外に多数の永遠者が集まる可能性がある場所を俺は知らない――もっとも100年程も引きこもっていなければそんな事も無かったのかも知れないが、今更そんな事を悔やんだ所で意味は無い。
まぁ、恐らく引きこもっていなくても結果はほぼ変わらなかっただろうが……と、そこまで思考した段階で「ひょとして、その当てと言うのは《宿》の事ですか?」と、フェインの声が聞こえたので思考を止めて、その問いに答える。
「その通りだが、よく分かったな? 否……人数が不確定で永遠者が多く集まる場所なんざ、あそこ以外にはまず無いだろうし、それから考えりゃあそこを知ってさえいれば誰にでも予測は可能って事か、要するに」
「えぇ、貴方の言うとおり、私の知る限りでは不特定多数の永遠の騎士が集まる場所と言うのは、宮殿と破壊者の拠点を除けばあの場所くらいですからね――しかし、アルアさんは中立の存在で、手を貸して貰える可能性は低いと思いますが……」
確かにフェインの言う通り、アルアは中立の存在であって、守護者の味方でも破壊者の味方でも無い。無論の事ながらハグレの味方と言う訳でもない――が、広域次元世界の全てを敵に回している《呪詛》の味方でも無い。
否、寧ろ全ての世界の敵である《呪詛》だけが、明確にアルアの敵と呼べる存在なのかもしれない。何より、フェインはアイツ等の性格を分かっていない。
「いいや、手を貸してくれる可能性は高いぞ。つーか貸してくれると見て間違いない。アルアは兎も角、ベアトリスは中立とか言ってる割に正義感が強いからな? んで、ベアトリスが動くなら親馬鹿のアルアも必ず動く。まぁ、パターンだ」
「成る程……確かに、ベアトリスさんなら今回の話をするだけで協力してくれると言いそうですね。ですけど、彼女が動いたからって本当にアルアさんも動くんですか? そういう話は聞きませんけど……」
そりゃ、アルアが動いたって話が出回ると都合が悪いだろうから、そういう話は聞かないだろう。実際の所は、手伝った後にそのことを口止めしてるってだけなんだろうが。
「そりゃお前、一応中立を名乗って、特定の勢力や人物に加担しないってのを掲げて《宿》なんて場所を維持してるんだから、そういう話が噂としてでも流れるのを防ぐ為に色々とやってるからなんじゃないのか?」
つーか、この間あった時にベアトリスの為に《宿》外で戦って死に掛けたとか言ってたしな、普通に。
俺の知ってる事例はそれだけだが、言い方的にはそこまで珍しい事でもなさげに言っていた様な気もするから、俺が《宿》に訪れなくなってからは割かし何度か似た様な事があった可能性が非常に高い。
中立を名乗る手前、最初の一回は本当に動いていいのか悩むのだろうが、一度でも動いた事があるのなら、それと似た状況を作り出せば動かす事は難しくない――と、俺は考えている。
(友人を利用しようとするとか最低だな、お前)
……話が拗れるから黙ってろシュウ。つーか、そもそもこんな風に色々と考えるまでも無く手伝ってくれそうな気がするんだけどな? 流石に、広域次元世界全ての脅威になる存在と戦うのに中立もクソ無いだろうし。
いや、それ以前に――ココで幾ら考えようがアルアが動くか否かは結局本人が決める事でしかない。こちらの誘いにアルアが乗るにしても乗らないにしても、結局多くの永遠者が集まっていそうな当てなんて《宿》以外には無い訳だし。
もう一つの当てである爺の所は、あくまで爺本人との交渉と、少数で良いから手伝ってくれそうな永遠者のグループの情報を集める為にしか役立たない為、期待値はかなり低い。故に《情報屋》には出向くかは分からないが《宿》には確実に出向く必要がある。
《根源》の完全開放には間に合わないのはまず間違いないので、現状ではそこまで急く訳では無いが、かと言って時間を掛けると《呪詛》側の戦力もそれに応じて増強されるのだから、ゆっくりと戦力を整える訳にも行かない。
とは言え《輪廻の門》の広さの関係から数だけで見れば敵の上限はほぼ変わらない為、《呪詛》側の戦力の増強手段は《輪廻の門》内部に存在する魔獣の階位を引き上げるか、聖具を与えると言う方法ぐらいでしか強化は望めない筈だ。
魔獣の位階を上げる方法がどんなものかは知らないが、少なくとも簡単に上げれるものでは無い事だけは想像できる。そも、そんな事が可能なら《呪詛》の直属の魔獣の位階が最高位で無い筈が無い。
聖具の階位の変化は単順にエーテルの保持量を増やせば良いだけだ。後は何かしらのきっかけがあれば、SSクラスまで聖具の位階はあがる。
そこから先――準最高位になる為には、先程までの様にエーテルが必要であるのに加えて、その聖具に内包された魂の質が求められる。詰まる所、その時点で他の準最高位に利用されて居ない洗礼因子に適応している事が準最高位になる為の方法となっている。
最高位に関しては、現状で新たにその座につく聖具が現れる事は無い。そもそも、アレは広域次元世界の意思によって選ばれた準最高位に与えられる力であって、エーテルの保持量やきっかけがどうと言う物じゃあない。
と、そんな事はどうでも良いのだ。今はそう、魔獣がその階位を上げるにはどうすれば良いのか――と、そういう話だった。
要するに《呪詛》側にどの程度までなら時間を与えて良いのか、と言う事に繋がるわけだが、少なくとも魔獣の位階を上げる方法が聖具と同じとは俺には思えなかった。
つまり、単純なエーテルの保持量に左右される訳ではない、と言う事だ。或いは、聖具と同じで単純に何かきっかけがいるのかもしれないのだが。いや……それも無いか。
先程の戦いで《呪詛》が《EndLessEnd》を防いだ際に使っていた二人の内、片方は最高位の魔獣だったがもう一方は見た目からして最高位ではなかった。その二人の事を《王下》と呼んでいたにもかかわらず、だ。
先程ネロに聞いた話では《王下七魔獣》と言うのは《呪詛》の側近ともいえる強力な七人の魔獣らしいので、その中の一人――使い潰されたとは言え側近として扱う部下を、強化する方法があるにもかかわらず強化しないほど《呪詛》は甘い敵では無い。
そして、エーテル量が単純に物を言うのなら、結晶を精製してそれを与える、と言う方法でエーテルの譲渡が可能である事から、エーテル量が魔獣としての位階を引き上げる事に繋がるとは俺には思えない。
だが、そうなると全く他の方法と言うのが思いつかない訳だが……一体魔獣はどうやってその位階を上げているのか? イコールでは無いにしても、階位が上がる毎にエーテルの保持量が多い傾向にある事から、全く無関係って事も無いんだろうけど……
(と、言うか……裏技が無いのが分かったのなら、魔獣の階位を上げる方法は他ならぬ魔獣に聞けばいいんじゃないのか?)
魔獣に聞くって、どうやってだよ? そんな事教えてくれる奴とか居るのか?
(いや、お前は何を言ってるんだ? 居るだろ、協力的な奴が直ぐ隣に? 四位を名乗ってて外見的特徴も四位のそれと一致してるから嘘では無いだろうし、流石にその位階に居てクラスを上げる条件を知らないって事も無いだろ?)
……《必滅》の封印状態の聖具の契約者だって意識してたから軽く忘れかけてたが、そういえばそうだった。と、なればネロに聞けばそれも分かる様になる訳だが、今していた話題はそういう話では無い。
(と、言うかアルアがこちらの誘いを受けてくれるか否かと言う話から思考が飛躍しすぎな気がするんだが?)
誰のせいでこういう風になったと思ってるんだ、シュウ?
(自分のせいだろ? 本当に一人で考え出した止まらん癖はどうやっても治らんものだな)
そんな癖がついたのが誰のせいかって言ってんだよ……って、だからそんな事は良いんだ。今は《宿》の話――そうだろ?
(ふむ、流石にまた数分待たせる訳にも行かんし――今回はこの辺で黙っておいてやろう)
『流石にこれ以上は無視する気で居たんだが、まぁシュウが納得してくれたのならそれに越した事は無いだろう』
「それは兎も角、悠長に仲間を集めるだけの時間があるとは俺は思ってないし、可能ならすぐにでも《宿》に俺を含む何人かで行きたいと思ってるんだが、どう思う?」
「いや、それは私じゃなくて幹部のお三方と話してくださいよ――なんかさっきから私一人でレオンさんの相手をしてますけど、私はあくまで平団員なんですよ?」
幹部の三人に、ねぇ? けど、アルアと話をする為に俺は《宿》に向かう必要があるから、そこにもう一人幹部を動かす、と言う訳には行かない。
「外の連中と一緒に《宿》に行けってか? そうは行かないから先に話してるんだよ。俺は諸事情で絶対に《宿》に行かなきゃ行けないけど、他の幹部には《宿》には理由が無い。で、大勢で行っても仕方ないから話すのは誰を連れて行くか決まってからで良い」
非常時なのだから幹部は宮殿から動かないとかなんとか言う気は無いが――と、言うか現行の首領である俺からして宮殿から離れる気でいるのだが――流石に全軍で《輪廻の門》へ向かう前に宮殿を開ける訳にも行かない。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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