EternalKnight
<運命の壁>
<SCENE103>
最後の詠唱を終える。
周囲のエーテルが瞬間的に収束していく。
後はただ、この刃で……《真紅》で敵を貫き、技の名を紡ぐのみ――
この一撃は倒すのではなく、……殺す一撃。
「させんぞぉ!!」
そして、次の瞬間、炎を裂き現れる刃が……俺にあたらなければ――
何かが……目の前を通りぬけた。
リューガの斬撃……あたらなかった、ただ運がよかっただけ。
だが、たとえ奇跡でも……運がよかっただけであったとしても――
やっとつかんだ最初で最後のチャンスに違いは無い。
ならば、護れるだけの人を……真紅を護る為に――
いや、真紅と共に戦うって行く為に!
炎に、炎の向こうにいるリューガに……
全力を込めて刃を突き出した。
[ドスッ……]
炎の奥に確かな感触……あたった!
勝利の確立は……90%に到達する。
コレで……いい。
そうすると決めたんだ、ソレが俺の誓いだから――
(お兄ちゃんは自分の決めた道を行けばいいよ――)
(私は、お兄ちゃんと一緒に戦っていくだけ)
迷わない、自分の決めた道を歩み続けるんだ。
これから永久に……真紅と――
「サブ……リメイション!」
俺は技の名を紡いだ――
全身の紅蓮に輝くオーラが……剣に一気に流れ込んでいく。
[キュィィィィィィン]
そして、俺達が使える最強の……究極の技が発動した。
[カッ……]
突き刺した真紅が異常なまでの閃光を放った。

<Interlude-アレン->
「リズィ、援護を……」
リズィが後ろに下がる。二人で戦っても勝てるかどうかは解らない。
「解ってるよ、あっちゃん」
最大量の半分も力は戻っていない――
だけど、勝つ。勝たなければいけない。
やっとだ、やっと見つけたんだ――
俺が、護れなかった世界の……みんなの想いの為に――
負けられない。いや、勝たなければいけない――
ソレが俺に出来る……唯一の償いだから。
「行くぞ!」
(契約者よ……さっきよりも勝てる見込みは無いぞ?)
それでも、やるんだよ!
(――好きにしろ、我はただ汝の心を救うのみ)
迷惑かけてスマン。
(我が好きでやっていることだ、気にするな)
「来いよ、やるんだろ?」
「びびってたのは、どこの誰だ?」
「今の貴様には力が残っていない。仮にあっても短時間しか持続できない力など……敵ではない」
「へ……言ってくれるな」
突然、ロギアと一緒に居た男の反応が消えた?
かなりの量あったオーラの反応が……一瞬で無くなったのだ。
「――リューガが負けただと?」
ロギアが呟く、味方の敗北に驚きを隠しきれていない。
「どうやら……お仲間はグレンに負けたみたいだな」
「馬鹿な……なったばかりの新米が、リューガを倒すだと?」
(契約者よ、わかっていると思うが――)
(いくら強かったとしても新米では《運命》には勝てんぞ?)
解ってる。でも協力してもらえれば――
勝てる可能性がほんの少しでも上がるかもしれない。
(――まぁそうだが)
「リューガが負けたか、だが……所詮奴は俺より弱い」
ロギアが呟きながらこちらに歩み寄ってくる。
「仮に新米が貴様らに加わっても……俺の勝利は揺ぎ無い」
「それに……リューガを倒した事で相当疲弊している筈……」
自分にでも言い聞かせているのだろうか?
「――来い、二対一でも三対一でも俺が勝つ!」
依然として結界を張り続けるロギアを前に《聖剣》を構える。
「お前は……ここで、俺が……いや、俺達が倒す!」
「やれるものならやってみろ!」
俺は《聖剣》を構えて走り出した――

<SCENE104>
俺の持つ、ほぼ全てのオーラを吸い上げた《真紅》が閃光を放つ――
「いっけぇぇぇぇぇぇええええええ!!!」
「っぐ……ぐぉぉぁぁああぁぁっ・・・・」
リューガの絶叫が響き……消えて行く――
Sublimation……俺達が使える最強の技。
膨大な量のエーテル関連物を全てエーテルに変換し敵を貫いた真紅から流し込む技。
流し込まれたエーテルを内部で暴れさせ対象が昇華――
つまり気体に変えるまで熱を持たせる究極の技。
発動すれば敵を気体に還すまで熱量を与え続ける、究極の技。
閃光が晴れる、そこには……もちろん何も残っていなかった。
いや、金の粒子がそこらじゅうに浮いているな――
「勝った……のか?」
(反応は……無いみたいだね)
そうか……勝ったのか。
意識はまだ保てる。オーラは少しは残ってるようだ――
「っと、腕を直さないとな、どんどんオーラが漏れちまう」
《真紅》を地面に突き刺し、少し離れた所に落ちている相棒を拾う。
(よくやった、相棒)
真紅が居てくれたからな――
(まぁ、そんなことより……さっさと腕を直せ。オーラが漏れ出しているぞ?)
あぁ、そうだったな。
「Creation……」
腕が修復されていく――
右手が直った。右腕に相棒を持ち替えて《真紅》を拾いに行く。
(お兄ちゃん……疲れてるみたいだけど大丈夫?)
大丈夫だ……と言いたいとこだけど、キツイな。
(無理は良くないな――)
(周囲に散っている《鬼神》のエーテルを取り込めば、少しはマシになろう)
どうすんればいいんだ?
(意識を集中して深呼吸を何度かすれば良い――)
(エーテルの濃度が濃くなってるから、それで回復できる)
「スゥ………ハァ………ッ」
息を吐き、大きく吸う――
少しずつ全身がオーラで満たされていく。
しばらく深呼吸を続けていると――
(コレが限界だな、それ以上は回復できん)
コレが今、回復できる限界か――
全快までは程遠いけど、さっきよりよっぽどましかな。
(む……救世主達はまだ戦っているようだ)
マジかよ。三人中二人は俺が相手したのに――
残り一人に二人で勝てないのかよ?
(いや、救世主はお前より強い……ソレが倒せないって事は――)
相手もとてつもなく強いって事か……
(どうするの? お兄ちゃん)
俺が行って助けになるかわからないけど――
(行くのか……いや、お前なら当然の事か)
あぁ……護れるだけの人を、俺は俺が護りたいと思った人を護る。
(ならば、行くぞ?)
俺は、アレンさんの反応があるほうに向かった。

<Interlude-アレン->
《聖剣》と《覚醒》を同時に使用してロギアに斬りかかる。
[キィン]
《聖剣》の一撃はあっけなく結界に阻まれる――
「どうした? そんな攻撃じゃ俺には傷一つつけられんぞ!」
そんなことは言われなくても解ってる――
それでも、腕を止めずに剣を振り続ける。
[キィン、キィン、キィン]
どうせなら三人で戦ったほうがいい――
グレンが来るまでは持ちこたえる。
「そろそろ、反撃に移るぞ?」
何!?
(契約者よ、後ろだ!)
「あっちゃん、後ろ!」
回避も、詠唱も間に合わない!
光の雨に俺を背後から貫かれる――
「ッ……」
痛みで《聖剣》を振る腕は止まり……俺は地面に倒れる。
「おいおい、もう終わりかよ?」
結界の中でロギアが嘲笑する。
「あっちゃん!」
(《再生》……使うのか?)
このくらいならまだやれる――
《再生》は一回で使うオーラが多い、まだ使うわけにはいかない――
《聖剣》を支えにして立ち上がり《運命》……ロギアを見据える。
「あっちゃん……今治すね?」
「まつんだリズィ。まだ……まだいい」
「でも……」
ロギアを見据えているので、リズィの顔は確認できない。
今は、まだ早い……リズィの能力はもっと温存すべきだ。
「治さずに、俺とやるってのか?」
「その通りだ……って、言ったらどうすんだ?」
《聖剣》を構え、ロギアをさらに強く見据える……
「おいおい、新米の増援に期待して能力の温存かよ? 馬鹿馬鹿しい」
「グレンの能力しだいだぜ?ホントに馬鹿馬鹿しいのか解るのは?」
「新米にそこまで希望を繋ぐようじゃ……お前もオシマイだな」
(確かにその通りかも知れんな――)
それでも、今はそれに望みを繋ぐしかないんだ――

<SCENE105>
(そういえばお兄ちゃん、一つ言い忘れてたけど――)
なんだよ、真紅?
(私、人間だった頃の身体に戻れるの、ちょっと効率は悪いけど――)
何?
(私の身体は私が一番よく知ってる――)
(だから、私の持つ身体の情報を使って銀さんの力で私の器を作るの)
そこにお前の魂を移すと――
でも魂の移動なんて出来るのか?
(違うよ、簡単に言うなら今の私の形を人間だった頃の身体に戻すって事)
ほんとか? ならこの闘いを終らせて、みんなで騒ごう。
お前も一緒にやれるだろ?
(でもたくさんオーラが要るよ?)
(――形を作り変えるときに結構使うみたい)
どれぐらい?
(今のお兄ちゃんの持ってるオーラ全部の九割くらい……かな?)
そうか……かなり消費するって事か――
まぁ、それは全部片付いてからだ。
(そうだな、使うほどオーラはあまっていないしな)
そこで会話を打ち切り移動に専念することにした――

<Interlude-???->
「あらあら……《運命》も余裕を見せてるわねぇ?」
虹色の世界……門の中、早い話が世界と世界を繋ぐ空間だが――
そこに漂いながら《運命》達の戦闘映像を見ている。
(SSSクラスがSSクラスとSクラスに消滅させられればいい恥です)
「確かに……そうよねぇ――」
消滅までは無くても追い詰められる――
「油断したならあるわよね? そういう事も?」
(そうですね――)
「まぁ……だいぶ前からさだめてたことなんだけどね?」
(過程まではわかりませんよ?)
(――ほぼ確実にさだめた通りになりますが)
「そんなの気にしたりしないわ、過程なんてどうだっっていいのよ」
(そうでしたね……過程など気にしない――)
(全ては一つ結末の為――)
「大丈夫、後必要な材料は二つ――」
「すぐに、本当の姿に戻してあげるわ」
(はい、ソレがあなたと私が望む事――)
「そう、私はあのヒトを殺せるだけの力が、あなたの本当の力が必要なのよ?」
(私は封印される前に戻れるなら――)
(あなたにいくらでも力を貸しましょう)
「そうね、あなたの本来の力――」
「全ての根源たる力は私にも絶対に必要なの」
あのヒトを殺す為にはね――

<SCENE106>
間に合った!
少し先でアレンさん達が戦っている。
押されてるみたいだな――
(みたいだな)
正直……俺は役に立てるのだろうか?
(お兄ちゃんなら……きっと大丈夫)
そう信じたいとこだな――
どうやらあそこに居る三人とも俺には気付いているみたいだ。
不意打ちも無理か――
(初めからそんな考えはどうかと思うな?)
俺と相手の実力差を説明したのはお前だろうが――
(お兄ちゃん、銀さん?)
っと、もう目の前だな……正々堂々行くか?
(好きにしろ、ばれているならソレも良かろう)
すぐ近くに俺がたどり着いた時にはお互いに一時的に距離を取って休息をとっていた。
「「来たか」」
アレンさん……それにアレンさんと戦っていた男がこちらを見ながら言った。
「こんな奴に、リューガは負けたのか――」
リューガ……さっき殺したヒトのことか――
こんな奴……か、見下されてるな、やっぱり。
(オーラ量から考えれば当然のことだが、三対一なのにずいぶんな余裕だな、相手も)
すぐにでも余裕で居られなくしてやるぞ、相棒、真紅。
(当然、そのつもりだ)(まかせて、お兄ちゃん)
二本の剣を構える――
「雑魚はいくら集まっても同じ……俺に勝てはしない!」
「やって見なきゃ――」
足に力を込める……
「わかんねーだろ!」
俺は一気に地面を弾き、敵との距離を近づける。
StartOfFlameを発動させていないので速度は少し遅いかもしれない――
だが相手は迫る俺を前に……微動だにしない?
理由はわからないけど……叩き斬る!
《双極》を男に向かって叩きつける……が――
[[ガキィィィン!]]
剣は男を切り裂く前に止まった。
――コレは結界!?
反撃を受けないようにすぐに後方に飛ぶ。
(そのようだ、しかもかなり強力と見える)
「どうした? どうする事もできんだろ?」
男が笑いながらこちらを見ている。
「やってみる必要など無く、俺の勝利は磐石なんだよ」
(確かに、あれほどの結界は……そうは破れん――)
(救世主が勝てなかったのはその為か……)
そこまで強力な結界なのか……ならSublimationで焼き尽くす。
(無理だ、アレは刺した剣の側面からエーテルを送り込む技だ。刺せない以上は使えん)
くそ、打つ手なしかよ……

to be continued・・・

<Back>//<Next>

27/31ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!