EternalKnight
王下七魔獣
<SIDE-Curse->
小さくつぶやいた後、大剣を持っていない左手で頭を掻きながら何事か考えているのか眉間に皺を寄せて数秒唸り、それで今後の事を決め、それを宣言するかの様に男は口を開く。
「どう言う風に消滅させられるかってェのが気になるのは確かなんだが――死ぬ可能性が高ェ掛けして、他の事が出来成くなるってェのは俺も避けたい――だからよォ、取りあえずテメェに挑むのは他が終わってからにしようと思うんだが、どうだ?」
私の意思一つでその存在を消せると、そう伝えたのに《刹那》の担い手はそんな事を全く気にせずに、そんな風に言葉を紡ぐ。
「つまり、部下になってやるから自分を殺すな、その上で、勝手に行動させてくれ――と、そう言っているのか?」
「その通りだ。因みに勝手な行動とテメェは解釈した様だが、基本的にはテメェの命令を聞いてやる。でないと《部下》になる、とは言えない。もっとも、基本的にであって、自分のしたい事がある場合はそちらを優先――ってな条件でどうだ?」
面白い――想像以上に面白い男だ、コイツは。その男が条件付きでとは言え部下になる事を認めてくれたのだ、断る理由が無い。しかし、条件を提示して俺に交渉を持ちかけてくるとは……なかなかどうして、本当に面白い男だ。
「良かろう、状況によっては自由な行動を行う事を認めた上で、お前をこの瞬間より我が部下――王下七魔獣の一員として認めよう、《刹那》の担い手……と、言うのも違和感があるな? お前、名は何と言うのだ?」
「あァ? 俺の名前だァ? そういや名乗ってなかったか? 俺の名はカノン、カノン=アトライブ。SSSクラス聖具、《刹那》の契約者、刹那を駆る者カノンだ、どんだけの付き合いになるかわらねェが、よろしく頼むぜ、王様」
そう言いながら、ニヤリと笑うカノンが差し出した右手に応える為に、俺も右手を差し出してその手を取った。
「……なんや二人で盛り上がってる所悪いんやけど――もしかせんでも、ウチの事忘れてへんか?」
握手を交わした瞬間、呆れた様な色を孕んだそんな声が聞こえてきた――そういえば、彼女も居たのだったか?
SSSクラスの聖具持ちなのはエーテルの保持量等で分かるのだが、初めからある程度こちらに友好的だった上、カノンに比べればそこまで部下に引き入れたいと思えるような人材では無かった為、軽く忘れていた。
「さてなァ? 少なくとも俺は覚えては居たぜェ《災渦》? 別にテメェの事を気にしちゃいなかっただけだ」
「覚えてたのに気にしてないて……それはそれで酷ないか?」
ほぼ忘れていたに等しかった俺は酷い奴、と言う事で言いのだろうか? 別に彼女の評価など気にはしないのだが。
「そんな事よりもだ、サイカとか言ったか? 俺の部下になるつもりなら己が聖具名と名を俺に告げろ。そのつもりが無いのなら、別に強要はしないがな」
「なんやウチの扱いって酷ないか? てか、さっきの《刹那》にしては話聞いてて王様の部下にならへんとか言う奴ってまず居らへんと思うんやけど、その辺どうなんやろう?」
まぁ、少なくとも全てを話した上で俺の部下にならなかった者は今の所居ないのは確かだ。強いて言うなら先程のカノンとの交渉が今までで一番危うい橋だった――と言うぐらいか?
「名乗らないという事は、部下になる意思が無い、と判断して良いのか?」
「いやいやいや、ちょい待ってぇな王様。さっきのウチの言葉聞いとったやろ? あの話聞かされて部下にならへん奴なんて居らんって――ウチだってその例外になるつもりなんて無いって」
……口だけは良く動くな、コイツは。
「えっと、ウチはトクォ、トクォ=リルルフォン。準最高位聖具《災渦》の契約者や。よろしくたのんます、王様」
冷や汗を流しながら、まくし立てる様にトクォはそう言いながら俺に軽く頭を下げたのだった。

<SIDE-Leon->
《呪詛》の居る場所はわかっている……のだが、幾ら敵の方が絶対に的に多いと言うのがわかっていても、如何せんこちらの数が少なすぎる。
今ココにいる俺とネロを含めた16人……否、一人はグレンの聖具だから契約者は15人か? それに外に居る幹部三人にクロノとエリスをあわせた5人、あわせても20人しか居ない。
ツバサの様に襲撃時に外へ出ていた者の事や、転移で宮殿を離れたセトの事も考えればもう少しは集まりそうだが、それでも合計で30人を超える人数が集まるとも思っていない。これでは、幾ら何でも少なすぎる。
かと言って、今から新しい聖具使いを探し守護者に引き入れる事も出来るとは思えない――そもそも時間が無いのだ、何よりも時間が。
可能ならば《呪詛》が《根源》を復活させる前にこちらから仕掛けたいが、恐らくそれは不可能だ。全ての素材が《呪詛》の元にそろっている今、未だに完成させていない事の方が不思議な位だと言っても良い。
どうせ《根源》の復活を止められないのなら、この際それは諦めてハグレの永遠者達に協力を仰いで人数を増やし戦力を巨大化させた方が良いのかもしれない。
或いは《根源》の復活と同時に出現する《時空》を味方につけるというのも無い訳では無いが……リターンも大きいがそれはそれで万が一の場合のリスクが高すぎるので止めて置いた方が無難だろう。
俺以外にはまず突破不可能である時の迷宮の深部にある《時空》を態々表舞台に上げる必要など何処にも無い。
不完全な状態でも四つが活動状態なら復活する《創世》、そして完全な状態の聖具が四つを超えると共鳴反応により封印が解かれると考えて間違いない《真理》。
今の所は辛うじてどちらも封印状態にあるが、なにかの弾みで封印が解ける可能性が無い訳ではない。特に、今現在の位置が判明していない《創世》の所在が気になる。
《創世》自体は俺の仲間と考えて間違いないのだが、その封印の解除条件は四つが活動状態にある事と、己が消滅の危機に瀕した場合の二つなのだ。もしこの第二の条件が満たされた場合、自動的に《創世》の封印が解けてしまう。
そうなれば、《終焉》《根源》《創世》の三つか完全な状態になることになり《時空》が活動状態になる、と言う事になる。故に、やはり《時空》の封印は解くべきではない。
しかし、問題はそれだけではない。これは当人にも話していない事だが、実の所《必滅》の封印は完全ではない。今は活動状態でさえないが、力を集約した際にはそれが制御できるか否かを問わず、限りなく完全な状態に近くなってしまうのだ。
普通に封印をしていれば、恐らくこんな事にはならなかったのだろうが、聖具自身の力と魂を分けて封印しようとしたのが失敗だったのか、魂側が力を引き出そうとすればするほど、力を封じている器からそれが流れ出してしまうのだ。
事実、力も魂も均等になる様に分割して封印した《根源》の断片である聖具ではそんな事は起きなかった。とは言え、実例が二件しか存在しない為、結局の所どちらが異常だったのかは俺にも分かりはしないのだが。
幸いな事に《創世》が復活しそうな気配は無い。故に、現状は《必滅》が力を引き出さないか見張って居れば特に問題は無い。出来る事ならば《創世》が封印されている状態の聖具を探しておきたいのだが、ヒントも何も無い状況ではそんな事も不可能だろう。
ならばやはり、今すべき事は残りの守護者との合流と、可能ならばハグレや、場合によっては破壊者を一人でも多く味方につける事をしておくべきだろう。
《呪詛》の引き連れる魔獣の大群に挑める様に守護者という組織を拡張する――それが今の守護者のリーダーとして俺に出来る、或いはするべき事なのだと、そう思う。《呪詛》は倒さねばならない世界の大敵なのだから。
組織の拡張とは言った物の、結局やるべき事はより多くの仲間、或いは協力者を作ると言う事に他ならない。そして、その為に何をすればいいのか? その答えに辿り着くのに、そう多くの時間は掛からなかった。

<SIDE-Curse->
ようやく新たに加わって二人との挨拶を済ませた俺は、今居る広大なフロアから王下のメンバーを追い出そうとしたのだが、その過程で問われたフェナハの質問の答えを出す為に、王下を追い出すのを諦めた。
「で、カノンとトクォの正式な王下入りが決まっちゃったけど、あてらのも含めて序列はどうしましょか? 正直あては回復させれへん傷を貰っちゃった辺り、序列が下がってそうで聞きたくは無いんですけどね?」
――序列か。確かに一気に人数が二人も増え、加えて一人が負傷し、総合的な戦力が大幅に以前と変わった今、以前の序列を引きずる意味や必要性はまるで無い。
純粋に、持っていると想定できる戦力が巨大である順に並べているに過ぎないのだが、今のメンバーだとどうなのだろうか?
先ずは序列一位だが、コレは考えるまでも無く《禁忌》……即ちレイビーだろう。総合的な能力も去ることながら、レイビー持つ聖具《禁忌》には事実上最強だと言って良い能力がある。故に、彼の一位は揺るがない。
序列二位、コレは恐らく《刹那》のカノンに与えれるべきだろう。彼の能力を俺はまるで知りもしないが、総合力で見ても強いレイビーを持ってしても、あの能力が無ければ彼には勝てないだろうと分かる、それ程までに強力な存在なのだ、彼は。
三位――は《躯骸》のケビンだろうか? コイツは聖具の能力は準最高位でも平凡程度なのだが、何よりも魔獣としての能力が強すぎる。流石にカノン程の相手には届かないだろうが、レイビーやカノン以外にあの巨人を淘汰できるとは思えない。
第四位は《破滅》のダージュになるだろうか? ココから下は能力の差が微妙なラインなのだが、その中で準最高位の聖具を持ちつつ魔獣としての最高位で特に何も問題を抱えていないのはコイツだけなので、この位置で良いだろう。
五位は先程の法則から《災渦》のトクォだろうか? とは言え俺はコイツの能力を知らないので、もう少し上の序列に居てもいいのかもしれないが……まぁ、どんな序列にした所で俺に何かを言って来る者は居ないだろうから、多少は適当で良いだろう。
第六位は残った《外神》のフェナハで良いだろう。準最高位聖具所持者であり、魔獣としても最高位なのだが、先程の戦いで《終焉》から治癒不可能な深いダメージを受けているのでこの序列にしておいた。
そして、残っているのは一人だけで、そもそも初めから序列七位である事は考えるまでも無い事だが七位は《軍勢》のアルカスで決まりだ。
そもそもアルカスは現状の王下の中で唯一準最高位聖具を持たない魔獣だ――彼が七位なのは誰がどう見ても明らかだろう。
だがしかし、仮に以降SSSクラスが我が部下になった所で、彼が王下から外れる事はまずありえない。汎用性の高い聖具の能力が存在している限り、七位と言う枠は事実上の特権階級になる。
最も、準最高位の聖具で近い性能の物を見つければその特権階級も廃止になるだけなのだが、そう簡単に行けば誰も苦労はしない。今の所はあの類の能力が手元にあるだけでも良しとするしかない。
「序列か……一位から順に、レイビー、カノン、ケビン、ダージュ、トクォ、フェナハ、アルカス――と言った所だろう? とは言え、カノンは兎も角トクォの方は実力が全く分からんので適当な順位なのは認めるがな」
「うわぁ……あて、六位まで落ちてるんですか? 確かにお腹に一発もろうてますけど、流石にそこまで落とされると正直あてでも凹みますよ、王様?」
適当と言ったのが悪かったのか、予想に反してフェナハが心外だとばかりに反論を口に出す。が、それに取り合うつもりは無い。
「お前が凹もうが凹むまいが俺には関係ない話だ――さぁ、話は済んだのだからさっさと出て行け。俺は今からココで暫く作業を行う――多少集中を要す作業故に、俺が許可するまでこのフロアに入る事は禁ずる、いいな?」
その俺の言葉に、反論を続けようとしたフェナハは押し黙ったのだが、今度はカノンが口を開く。
「別にココから出て行けってェのは構わねェんだけどよォ? さっき言ってた序列だかなんだかってェの、ありャ一体何だ? 聞いてた感じじゃァ強さの順って感じだったがァ?」
「概ねその通りだ、と言っておこう。他に質問があるならレイビーにでもしておけ、大概の事は応えられる筈だ――さぁ、用が済んだなら早く出て行け。もう一度は、言わせるなよ?」
睨むようにカノンに視線を向けて、カノンにそう言い放つ。傷を負っているフェナハ程度なら、なんとなれば消滅させればいいと思っていたが、面倒な会話をしてまで王下となる事を認めさせたカノンを消滅させるのは気が引ける。
最も、いざと言う時に命令を聞かない駒ほど使い難いものも無いので、なんとなれば消す事を惜しむつもりは無い。無論、駒として使い続けられるのが最良の未来である事は疑う必要の無い程明らかな事なのだが。
「わーッたからそういきり立ッてんじゃねェよ、王様ァ。俺ァ別に、死にたい訳じゃァねェんだよ、疑問に思った事を聞いただけで、他意はねェ。なんでェ、さっさと退散させてもらうとするさ」
周りの王下の六人その言い様に呆けている間に、カノンは俺に背を向け、フロアの出口へ向かって歩き出した。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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あきゅろす。
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