EternalKnight
信頼
<SIDE-Leon->
「えーっと、つまりさっきの戦いは破壊者の《宿命》が最高位の《根源》って聖具に戻ろうとして引き起こされて、その《根源》を狙っていた《呪詛》って魔獣の親玉に全部持っていかれたって事で良いんですよね?」
今回の戦いについて、一通り話が済んだ段階で、眼鏡をかけた黒髪の守護者――名前は思い出せないが、爺の所の常連だった奴――がそう纏めてくれた。
詳しく説明すれば他にも色々な思惑などがあるのだろうが、まぁ分かりやすく言うならそれ以上は深く説明しない方が良いだろうと判断して「あぁ、要約するとそういう事になる」と、俺は黒髪眼鏡の言葉を肯定した。
だがしかし、ココまでの説明は前座に過ぎない。否、ココまでの説明が必要なかった訳では決して無いが、俺がもっとも彼等に伝えるべき事が残っている。即ち――
「でだ、セルが死んだ事によって、守護者の首領って地位に空きが出来た訳なんだけど、そこには俺が埋まる事になった」
――俺が守護者のリーダーになったという事実と、何故幹部の繰り上がりではなく、突然現れた俺がその役を務める事になったのかの説明だ。
幹部の三人達とはもう話が付いている以上、今ココにいるメンバーがどれだけ反対しようと、今の立場は変わらない。だがしかし、どうせやるのなら守護者のメンバー全員に認めてもらった上でその役を勤めたい――簡単に認めてもらえるとは、思っていないが。
少なくとも広場に居た連中なんかに対してクラスを偽ったりして嘘を付いている。
今の位階――限定化を行っていない状態での位階――についてはまだ話していないが、話すまでもなくあの時とは別次元の保持量なのは調べようとしなくても明らかで、こんな保持量でSクラスな訳が無いのは誰の目にも明らかだった。
「まぁ、貴方の今のエーテル密度ならそうなって当然でしょうね。その量から考えての推論ですけど貴方も最高位と見て問題ないですか?」
「あぁ、俺は最高位《終焉》の契約者だ――さっきの広場での挨拶で語った《最果》ってのは限定状態での仮の名前だ。今は状況が状況だから限定化を解いてるが、基本的にはあっちの状態で今まではやってきた」
その言葉に、先程まで黙っていた他の永遠者達がざわめき始める。まぁ、これまで事実上最強だったSSSクラスすら上回るEXクラスが目の前に居るのだから、ざわめきの一つぐらいは起きて当然なのだろうが。
に、しても――今話している黒髪眼鏡は随分と落ち着いているように見えるが、コイツはコイツで何者だ? 単に肝が据わってるだけという可能性も無い訳じゃないんだろうが。
と、言うかこいつは反対じゃないのだろうか? 特に驚いた様子もなく話を受け入れてるみたいだが……
「最高位とは言え、突然現れて、その上嘘をついてた俺がリーダーになると聞いて、なんとも思わないのか?」
不意に気になって、自分からその話を投げかけてしまう。が、結果としてはそれでよかったのかもしれない。
反論をするには、皮切りになる最初の一人が必要なのだ――自分がその役をするのは少しズルイ気もするが、誰も反対の意見を出さない以上は自分でその皮切りになってみるしかない。
「えぇ、私は特に。幹部の三人が私達を外に呼びに来た時点で、私が反対した所で意味は無いのは明白ですしね。それに、強大な敵と戦わなければならない今、組織としての力を落とす訳にはいかないでしょう?」
「それは、そうだが――だからこそ意見のある奴にはそれを素直に言って欲しい。信頼関係が築けていないのも、組織としての戦力低下に繋がるからな」
彼の言っている事は正しい、だがしかしその発言によって他のメンバーが反論しづらくなってのは言うまでも無い。一応俺からフォローはしてみたが、それは苦しい形の物でしかない。
こんな形で作られた信頼関係が組織の力を上げるとは思えない。もっとも、だからといって組織としての戦力が下がる訳でもない。しかしこの場合はそれが問題なのだ。
もとより彼我の戦力差は絶望的に開いている、その上で此方の数が簡単に増やせないのなら、対抗する為には他の力が必要になってくる。
何かしらの戦術や情報など、そういった形として存在しない物――そういった力を可能な限り用いる必要がある。そしてそういった力の内、一度用意できたならまず無くならない物がある、それが信頼関係を築く事だ。
戦術などに比べて目立った働きこそしないかもしれないが、だからこそどんな状況でも付いて回る力でもある。
特に、永遠の騎士等はその精神状態がオーラの発生量などに直結している為、信頼できる仲間が居るという安心感がもたらす効果は大きい。
それ自体は既に守護者の中でしっかりと出来ている。問題は俺が彼等にとっての信頼できる統率者となっているか、だ。
仲間が居る事によって得られる安心感と、自分達を率いる頼もしい統率者が居る事では得られる安心感の質が違う――故に、俺は守護者のリーダーとして、彼等に信頼される必要がある。もっともそれも、今の話の流れでは難しそうだが……
「なぁ、意見って意味で一つ言わせて貰いたいんだけどさ。レオンさん、アンタ嘘を付いてた自分が簡単に信頼される筈が無い、とか思ってないか?」
半ば信頼を得る事に諦めに近い気持ちを持ち始めたその時、赤い髪の守護者――確か一つの聖具に二つの魂を宿らせた例外的な聖具を持っていた奴――がそう言って来た。
「そりゃアンタが俺達を騙そうとして嘘付いたってんならそりゃ問題だろうけどさ、そんなつもりで嘘をついた訳じゃないだろ? 詳しく説明とかされて無いけどさ、俺にはアンタが人を理由もなく嘘をつく様な奴には見えない」
「手前もグレン殿と同じ意見です。レオン殿とは広場で初めて出会いましたが、少なくとも悪意のある虚言を言う様な方では無いと手前も考えております」
赤髪――そういえばグレンとか言った――の守護者の言葉に続くように、銀髪碧眼の女守護者が言葉を続ける。確かに必要だからついた嘘で、悪意があった訳ではない。だがしかし、嘘は嘘であってそれ以外の何でもない。
あの場で全てを説明していれば、今こんな状況に陥る事は無かった。彼等になら真実を話しても問題は無かった筈なのに、俺は嘘をついた――その事実は変わらない。変える事など出来ない。
(口出ししないと約束していたが、あえて口出しさせてもらうぞ、レオン? リーダーの役職に就く事が決まってから、お前は考えすぎだ。いつもの様に適当にやる訳にもいかんのだろうが、そんな風に気を張り詰めすぎていると、直ぐに自滅する事になるぞ?)
確かに、そうかもしれないが……適当になんてやれる訳無いだろ、広域次元世界の全ての未来がかかってるんだぞ?
(お前は本当に馬鹿だな? 思い出してみろ、お前は何の為に守護者に協力を求めるんだ? 一人では《呪詛》に勝てないから力を借りようと思ったんだろう? 一人で気張ってるだけじゃ無理だって結論にはもう一度辿り着いてるのに、何で一人で背負い込む?)
それは……
(そもそも、信頼ってのはお前が何かをすればそれに伴って得られるものなのか? そんなんじゃないだろ、信頼ってのはされるものであって決してしてもらうものなんかじゃない。なぁ、そうだろ?)
あぁ、そうだな――俺が色々と気にしすぎてたってのは、よーくわかった。けどまさか、シュウにこんな説教をされる日が来るとは思ってなかったよ、俺は。やっぱアカシックに干渉した影響がまだ出てるんじゃないか?
(確かに自覚症状がないだけでその可能性は高いな。言っておいてなんだが、今にして思うととても俺らしい発言じゃあなかったしな。つーか勢いで言ったけどちょっと恥ずいんだが……今のはクサ過ぎだろ、どう考えても)
いや、確かにクサい台詞だったけどよ、そこまで気にしなくても良いだろ? お前の言葉のお陰で、俺は一人で訳分からん論理を展開して自滅するのを避けられたんだし。
(そんなフォローは良いから、さっさと話を聞いてる守護者の連中に言葉を返せ。俺とこうして念話をしてる間はお前は仏頂面で黙りこくってるだけだって事実を忘れたのか、レオン?)
シュウの方から念話を終わらせようとしてくるって……良い事にしろ悪い事にしろ、近い内に何かがあるな。
(いや守護者の拠点が襲撃されて、フェディスが殺されて《根源》が奪われて、魔獣を引き連れた《呪詛》に宣戦布告されといて、近い内に何かあるな、じゃねぇよ!)
『……ヤバイな、弄る側の立場って超楽しいじゃん』
ってそうじゃなかった、守護者連中に言い返すなりなんなりしないと……
「うん、そうだな。悪かった、ちょとリーダーって奴の責任を感じすぎてたのかもしれん。さっきの言葉は忘れてくれ。ただ、何かしら意見のある奴は気兼ねなく言ってくれると、色々やりやすくなって助かる」
とりあえず、先程までのネガティブさに対する言い訳と、それから信頼したりされたりする為の会話の糸口になるかもしれない、最初の一歩を踏み出す事をサポートする為の言葉を付け加えておく。
もっとも、この程度の努力で腹を割った話し合いなどが出来るとは、微塵も思っていないが。
とかなんとか考えていると、巨大な反応がこちらへ向かってきているのを補足した。反応の大きさ的にはSSSクラスと見て良いのだろうが、俺はこの反応の主を知らないという事だけは間違いない。
外にはフィリア達守護者の幹部が居るので近づいてきている反応が敵だという可能性は非常に薄いのだが……等と考えていると「どうしたんだにゃ、レオン? 不思議そうにゃ顔して入り口の方にゃんか見て?」と、ユフィに言葉を掛けられる。
他の連中の感知範囲にはまだ入っていないのか、俺以外は誰一人としてそれに反応しない……が、さっきも考えたように、宮殿の入り口やその周囲を今見張っているのは幹部三人を含む五人だ。万に一つも見落とすような規模の反応では無い。
大方、守護者のメンバーで先程まで外へ何かしらの任務なりを与えられていて、今戻ってきた、という所だろうか? SSSが外に仕事に出るというのも珍しい気はするのだが。
「いや、なんかSSSクラスの反応がこっちに向かってきてるんだよ。それも、少なくとも俺が知らない奴の反応がさ。ってか、近づいてきてるから、もう少しすればそっちでも知覚できるんじゃないか?」
「にゃー……SSSって事は、ツバサかにゃ? 守護者に居るSSSでレオンと面識のにゃいのって他にはいにゃかったし、幹部達が見張ってる中で宮殿内に入れる様にゃ敵にゃら感知できる訳もにゃいしにゃー」
俺とほぼ同じ見解のユフィにはどうやら思い当たる相手が居るらしい。そういえば、爺さんの所で聞いた情報だと守護者勢の《旧神》ってのが拠点から離れてるって話だったな、そういえば。
「にゃにゃ、こっちでも補足したにゃ。この反応はツバサで間違いないにゃよ、レオン」
と、ユフィの声が聞こえてきた。間違いないとか言ってるが、仮に間違いだったとしたら大変な事だったと思うんだが、その辺は自覚があるんだろうか? いや、俺も別に心配とかしてなかったけどさ。
それにしても、SSSなのに外での仕事を一人で任されるってどうなんだろうか?
SSSが動かなければ成らないと判断される規模の敵なら最低SSS以外にも何人かはSSクラスの戦力をつけると思うのだが……ユフィの一人で帰ってきて当然、みたいな態度から考えて、そのツバサとやらと一緒に出たSSクラスとかは居ないんじゃないかと思う。
そう考えると、まだ守護者に入って間もない新人で相手が格下ばかりの任務に出てたって考えるのが妥当か――いや、入ってからどれくらいの期間を新人と呼ぶかは全然察しがつかないけどさ、俺には。
「つーかユフィ、いくらBクラスとは言え、流石に永遠の騎士やっててその知覚範囲は狭くないか? たぶんお前が最後だぞ、そのツバサとやらを知覚したの?」
知覚の出来る範囲は聖具や特性やクラスなんかの影響を受けるが、それでも契約者の努力である程度までなら広げる事は可能だ。仮に聖具自体の適正が最低として、その上でBランクだという事を考慮しても、今のユフィの知覚範囲はまだまだ広げられる。
もっとも、非常に残念ながら今は悠長にそんな特訓をしている暇は無いし、その欠点は他のメンバーと行動すればそこまで目立つ訳でも無い。と、言うかよくよく考えるとそれがあるからコイツの知覚範囲って狭いままなのかもしれない。
Bクラスなら、少なくとも一人で任務に出る事はありえないのだから。と、言うか他の守護者の誰でも良かったから、俺にそれを伝えて欲しかった……やはり、信頼というのは短時間で結べるものじゃない。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

<Back>//<Next>

11/118ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!