EternalKnight
伝えるべき真実
<SIDE-Leon->
聖具の能力や特性で無いとすると、次に考えられるのは本人の技能と言う可能性に成る。だしかし、彼自身の能力はあの黒い筒の生成だし……って、もう聞いた方が早いんじゃないか?
いや、ちょっと待て、そういえば軽く忘れてたけどあいつって魔獣としての特性も持ってるんだろう? だったらエーテル探知だと考えれば、別段おかしい事でも無い。
俺の推論が当たっているかどうかの答えを聞こうかと思ったが、壁に開けられた巨大な通路―――強いて言うなら穴だが――の奥から話し声が聞こえ始めたのでそれについて聞くのも諦めた。
まぁ別に聞きづらい質問じゃないし、やってくる彼らへの説明が終った後にでも聞けば良いだろうと、俺はそう結論付けた。
(大変だ、大変だぞレオン! ネロの持ってる聖具の正体なんだが――)
あぁ、それはもう本人に聞いた。で、ある程度話し合って決めた事があるからそれについては勝手に読み取ってくれ。俺は今から守護者の残りに説明をしなきゃいけないからな。
つーか今回結構早かったな、シュウの奴。まぁ、デカイ情報を掴んでそれを一刻も早く俺に伝える為に頑張ってくれたんだろう、きっと。
(ちょっと待てレオン――もう聞いてるって何だそれ、それじゃあアレか? 俺の苦労は無駄だったって事か?)
お前がアカシックに干渉したから向こうが話してくれたってのもあるから、一概に無駄って訳じゃないけどな。
(つーか何お前、アカシックの情報の海から衝撃の情報見つけて急いで戻ってきた相方に対して、その態度は酷くないか?)
否、だから無駄だったとは言ってないだろ? 事実お前がアカシックへ干渉してなかったらもう暫くは話してくれなかっただろうし。
(もう暫く?暫くって何だお前、俺が頑張らなくてもじきに話してくれたとでも思ってるのか?)
まぁ、それは――なぁ? 別にアイツとは知らない中じゃないしさ。困ったら向こうから話を持ちかけてきてくれただろ、それがいつになったかは分からなかったけど。
(いや、お前はそこまでアイツと仲が言い訳でも無いだろ? それに、どうせ俺も似たようなものだから結局は俺の活躍って事だろ?)
はいはい分かったよ、分かりました。今回《必滅》が話をしてくれたのはお前のお陰だな、間違いない。
(なんでそんなに投げやりに言うんだよ、お前本心では全然そんな事思ってないだろ!)
『そりゃシュウがしつこいから仕方なく認めてやっただけだけどさ』
そんな訳ないだろ――シュウにはいつもいつもすごく感謝してるぞ、俺は? 大体、お前は俺と心の声で念話してるんだから、俺の考えなんて包み隠さずお前に伝わってるじないか。
(なんかもう胡散臭くて仕方ないんだよ、つーか本当に隠したいと思ってる事は聖具側にも伝わらん事ぐらい、お前は知ってるだろうが! つーか今も現在進行形で本心では俺になんか罵詈雑言を浴びせてるんだろ、畜生!)
……つーかお前、なんかテンションおかしくないか? 一体どうしたよ?
(あぁ? 俺は別にいつもと変わらないだろ?)
いや、なんか明らかにおかしい。ちょっと落ち着けシュウ。お前アカシックに潜って無理したせいでなんか変な情報に性格引っ張られて無いか? いや、元の性格から乖離している訳じゃないが、なんか妙にテンションとか高くなってる気がするんだが、今のお前?
(そんなもん自分では自覚症状とかねぇからわからねぇっての――つーか仮にそうだったとしてもそれが原因なら時間をおけばいつも通りになるよ、普通に。流石に干渉しただけで自我を上書きされる程俺は脆く無いさ)
まぁ、それなら良いんだけどさ。つーかもうなんか違和感多すぎるから少し黙ってろ、お前。どうせ暫くはやってくる守護者の残りメンバーに話をしなきゃいけないしな。お前が喋りだすと、進む話も進まないだろう?
(ひどい言い草だな――だがまぁ良い、少なくともグダグダな話を聞かされては守護者のメンバー達が可愛そうだし、話が終わるまでは黙っていてやろう)
って、行ってる間に早くもなんか喋り方が落ち着いてきたな。
『いや、話し方は兎も角らしくないのはそのままか、普段のシュウならこんな簡単に引き下がるわけ無いし。ってかそもそも他人の迷惑とか考えずに俺を弄るのが常だからな、寧ろ』
(しかし、幾ら急いでいたとは言え、まさか性格を歪まされるレベルに魂に負荷をかけているとはな……やはり、アカシックへの接続は危険だと言う事か)
『喋り方だけはもう殆ど元に戻ってて違和感も感じないし、俺を弄ろうとしない――あれ、こっちの性格のシュウの方が俺とは相性いいんじゃね?』
そんな事を考えている間に、ようやく部屋の入り口として穿たれた宮殿の外へと繋がる一本道の向こうから、先程の戦いで生き残った守護者のメンバーが姿を現した。
守護者を離れて数千年経ち、俺の知っている守護者メンバーはかなり少なくなっている筈だった。筈だったのだが――宮殿深部であるこのフロアに集まった面子は随分と見知った顔が多いように感じた。
と、言うか先程の戦闘が始まる前に広場で出会ったメンバーばかりで構成されている気がする。まぁ、顔と名前が全く一致しないのだが。
(相変わらずひどい記憶力だな、お前。ばかりな気がするのではなく、事実として先程広場で挨拶を交わしたメンバーが残っているんだよ、偶然にしては出来すぎていると俺は思うが、かといって何らかの意味があるとも俺には思えないがな)
ほっとけ。つーか一気に何人もの名前を覚えろって方が無茶なんだよ、二人や三人ずつで多少の時間を空けてもらえば覚えられるっての。
(まぁ、確かにロイドとライルの事なんかはしっかりと覚えれてたな。その後で合流した士団の構成員の名前はまるで覚えれてなかったようだが)
だからほっとけっての。そんな事よりも、残ったのが十一人だって事を気にするべきだろ? フィリア達や俺、それにネロを加えてもその数は二十に届かないって、きつくないか?
(ふむ、まさか自分から自然に会話の流れを戻すとは思っていなかった。レオン、お前俺がアカシックに干渉してる間に何をしたんだ?)
何もしてねぇっての。つーかお前、今の状況を理解してるのか? 幾らなんでもふざけ過ぎだぞ? それにさっき話が終わるまでは黙ってるって言っただろうが!
(黙っている云々については、まだ話を始めていないから問題ないと判断したまでだが、悪ふざけが過ぎたのは謝罪しよう――今の状況ぐらい俺も把握している。だが、アカシックから戻ってきた俺へのお前の態度があまりに酷いと感じたのでつい、な)
あー……まぁ、その点に関しては俺が悪かった。だから悪ふざけはコレぐらいにしとこう、これ以上はお互いの為にならない。
(そうだな、分かった。楽しみが減るが、今はそんな事を言っている場合では無いしな。今後暫くお前を弄るのは自重しておく)
で、だ。たった十数人で、かなりの数の戦力――連鎖して増えている魔獣を従える《呪詛》――に戦いを挑まなければならない事に少しの不安を抱く。
だが、抱いた所で《呪詛》に戦いを挑まざるを得ないのも事実だ。今の時点から不安になっていても仕方ない――と、自分に言い聞かせる様に思考して、俺は改めてこの宮殿深部へと訪れたメンバーに視線を向けた。
しかしその中に、絶対に生き残っていると確信していたエリスの姿が見えない。おかしい――クロノが生きていた以上、エリスが居ない筈は無いのだが……
そんな事を考えていると、深部に訪れたメンバーと代表してか「レオン――と、そっちの四位の魔獣がネロさんでよかったかにゃ? お待たせしたにゃ」と、その中に居たユフィが一歩前に出てそう言った。
最初に言葉を発したのがユフィである以上、階位などは兎も角として、ユフィが生き残ったメンバーを纏める役割になっていると考えて良いだろう。最も、選ばれた理由は俺と面識があるから、程度の事なのだろうが。
恐らくフィリアかキョウヤ辺りの気遣いなのだろうが、実にありがたい。ユフィが相手なら色々と此方の聞きたい事も聞きやすい。
「そんなには待ってないから気にするな。ところでエリスが居ないのはなんでだ? クロノが平然としてる以上、アイツが生き残ってないなんて事はありえないと思ってるんだが?」
「あぁ、エリスならもう傷は大分治ってきてるクロノに付き添ってるにゃよ――説明の方はクロノから聞くって言ってたにゃ。にゃんか、フィリアがレオンの事を昔から知ってるなら態々本人の話を聞く必要はにゃいとかにゃんとか言ってたにゃよ」
成る程、確かに俺の事をある程度知っていて、その上でクロノからその話をされるならエリスなら直ぐに納得してくれるだろう。
「その理屈だと私も来る必要にゃかったと思うんにゃけど、流石に昔からレオンを知ってる人が一人も居ないと色々問題ににゃるとかキョウヤが言ってたにゃ」
まぁ、確かに昨日今日知り合った相手とか、初めて会う相手にこの人が今日から貴方達のリーダーですとか言われても反感買うだけかもしれないからなぁ……そういう意味じゃ、昔からの知り合いが一人は居たほうが良いって事か。
しかし、そういう風に考えるとやっぱ俺よりも他の誰かがやった方が良かったんじゃないか、リーダーの役職。今更返上する気もないけどさ。
「そういえば、さっきからセルさんの姿が見えにゃいし、反応も感じにゃいけど、一体何処にいるんだにゃ?」
……フィリア達がそれについては説明してくれているかもしれないと淡い期待はしていなかった訳ではないが、やはりというかなんというか、その事についての話は一切されていなかった。
まぁ、そりゃ話し難いよなぁ、そんな事。俺だって出来る事ならそれを伝える役目になどなりたくない――けど、それを告げてその上で自分が新たなリーダーである事を皆に伝える事こそが、リーダーとして俺が最初に果たすべき事なのだと、そう思った。
けれど、それを伝えてしまって良いのか? 今の守護者の面子がどれ程セルの強さを知っているのか分からないが、あのセルが死んでしまった――殺されたという事実を伝えて、それで本当に良いのか?
セルの強さを知っていた者ならば、下手をすればセルが負けたという事実だけで《呪詛》との戦いに参加できなくなる恐れがある。セルを殺す程の敵――それがどれ程絶望的な強さを持っているかの基準として、それ以上分かりやすい物も無い。
だけど、それでも嘘を付く訳にはいかない。無論、誤魔化す訳にもいかない。そもそも端から戦力差は数の上では絶望的なのだ、今更数人減ろうが関係は無い。
戦いたくないと思った者まで巻き込む気は無い。もっとも《呪詛》をのさばらせておく事は、この《広域次元世界》の崩壊に少なからず繋がっているのだろうが、戦いたくないと思う者にはそれを告げるつもりも無い。
そんな事を言われれば、参加せざるを得なくなる。ココにいるのは、己が欲で私腹を肥やせる力を持ちながら、それでも世界を守る為に集まった者達なのだから。
だから俺は「セルは居ない、さっきの戦いで死んだ」真実を告げる。
その言葉でユフィを含む生き残った守護者全員の表情にそれぞれ変化が訪れる。驚愕する者、眉を顰める者、目を伏せる者、そして少し悲しげな目をしながらも、その実安堵した様な表情をした者――
「……ユフィ?」
その表情の意味が俺には分からずに、俺はその表情を作り出したユフィの名を呼ぶ。セルが死んだと、俺はそう言ったんだぞ? 何故それで安心したような表情が作られたのか、俺には理解できない。
「安心したにゃよ、レオン。悪いにゃーとは思ったんにゃけど、幹部のみんにゃから頼まれてちょっとだけ試させてもらったにゃよ。リーダーとして、守護者のメンバーに真実を伝えられるのかをにゃ」
成る程、やけにあっさり全員の同意が得られたと思ったら、そういう事か。しかし、そうであるならコレで――俺は認められたという事だろう、少なくとも幹部の三人とクロノには。
「じゃあなんだ、お前は知ってたのか?」
「私だけが知らされてたにゃよ。一応ココに来てる中では一番古株だからってのが理由にゃんだけど。にゃんで、ほら、他のメンバーはさっきの話について聞きたくて仕方にゃいって顔をしてるにゃよ?」
そう言いながらユフィが指差した先には先程言葉を聞いた直後とは一変した表情の守護者のメンバー達の姿が見える。
「勿論、私もちゃんと説明は聞きたいにゃよ? セルさんが死んだって事と、レオンがこれからどうするにゃかって事しか私も聞かされてないしにゃー」
そう言うユフィの顔からも悲しげな目と安堵の色も消えていた――その声とは裏腹に、そこにあるのは唯、起こってしまった現実を受け止める為の真剣な表情だけだった。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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