EternalKnight
<可能性>
<SCENE100>
再びリューガが剣を構える。
一刀両断……あの神速の一撃の攻略法は今だ見えない。
「どうした? 次は仕留めるつもりで行くぞ。一度見せたやったのだ、簡単に……死んでくれるなよ?」
新しい力は、どれもこの状況では役に立ちそうに無い。
防壁など……あの一撃の前ではないも同然。
他のどんな技も、発動前に術者である俺がやられては発動できない。
何も策が無い。放たれるプレッシャーを前に……一歩後ずさる。
「策なしか……もう少し楽しみたかったが、仕方ないか――」
リューガが動く――
次にあの一撃が放たれれば、俺は……終わる。
「残念だ。出会うのがもう少し遅ければ、さらに良い戦いができたであろうがな……」
(お兄ちゃん!)
そうだ……真紅もいるんだ。
死ねない、死ぬわけには行かない――
だけど……どうすればあの一撃を防げる?
いや、一度放たれたら……あの斬撃を俺の力で止める事もかわすことも出来ない。
なら……答えは一つ――
撃たせなければいいだけの事。
神速の刃が振り下ろされる直前に……能力を――
詠唱を無視してでもIgnitionBarrierを発動させるしかない。
「いくぞ?」
リューガが地を蹴り、神速の一撃を放つため俺に近づいてくる。
極限まで高められた神経でリューガの動きを追う。
その剣が放たれるまでは、かろうじて見える――
刹那の攻防……一瞬のミスでも、次の瞬間に死んでいるだろう。
リューガとの距離が……刃が振り降りろされる直前の距離になる――
(今だ!)
技名を紡ぐ事すらも不可能な一瞬。
最良の手段――
IgnitionBarrier……灼熱の防壁を――

<Interlude-リズィ->
あっちゃんの元に……全力で走っていく。
《運命》が少しづつ追いついてくるのがわかる――
「その速度だとすぐに追いつくぞ?」
元々遮蔽物の無いこの空間では、気配を消しても見つかってしまう。
だったら……見つかる直前まで気配を消して移動して、見つかったらもう……あっちゃんの方に全力で逃げるしかない。
今はもうすでに《運命》に見つかり逃げている。
あっちゃんのいる場所までの距離は……まだ遠い。
このペースだと……辿り着く前に追いつかれるだろう。
(追いつかれるなら……足止めするまでですよ、リズィ?)
「そうよね……なら、SacredBullet」
詠唱……私が使える最強の攻撃能力を発動する。
(もともと攻撃用の能力はコレだけだけど……)
その通りなんだけど――
唯一の攻撃能力なんだから……それなりに自信はある。
小さな弾丸をオーラを消費して構築する。数は十発――
(倒すまでは行かないでしょうが……足止めにはなるはずです)
オーラで組み上げフォースを持って弾丸を打ち出す――
もちろん今この瞬間も走ってあっちゃんの元に向かっている。
そして……超高速で弾丸を打ち出す――
この弾丸は一定距離内なら私の意のままに動く。
つまり、弾丸は超高速のまま……ありえない軌道を取らせ、様々な方向から《運命》に着弾させる事も可能――
(そのとおりです。いえ……ソレこそが私の能力の真骨頂)
弾丸での様々な方向からの同時攻撃――
その命令以後は走る事に集中できる。
弾丸は予定通りの場所で曲がり……《運命》に回避不可能な軌道で迫る。
「くぅ……」
いかに《運命》といえど、防御せざるを得ない。
[[[[[[[[[[キィン]]]]]]]]]]
十発の弾丸は全て同時に着弾する。
倒せなくても……防御している間は停止しているはず。
その隙に《運命》との距離をほんの少しでも広げる――
あっちゃんの元にたどり着く為に――

<SCENE101>
剣を振り下ろす直前のリューガと俺の中間点の地面から炎が吹き上がる。
「ぬッ!」
炎がリューガの視界を多い尽くしている筈……攻撃はしてこないだろう。
あの攻撃は……回避不可能だ。
なら斬撃が放たれる前に視界から俺の姿を消せばいい。
後方に跳躍しようと地面を蹴った瞬間――
刃が……その炎を裂き現れる。
(馬鹿な!?)
灼熱の壁が現れた直後、すぐに斬撃を放たなければ、あのタイミングで刃は現れない。
しかも刃が放たれた位置は数瞬ほど前まで俺の右肩があった場所だった。
「……冗談きついぞ、全く」
一瞬でも遅ければ――
相棒を持つ右腕は斬り落されて絶体絶命のピンチだったろう。
「……何か策を思いつくまでの時間稼ぎか? だが同じ事が何度も通用すると思うなよ?」
リューガがゆっくりと近づいてくる……
手の内はもうばれた……何か、何か無いのか?
近づいてくる――
ばれてるなら……どこで使おうと同じ。
完全に近づかれる前に……IgnitionBarrierを――
(お兄ちゃん!)
!?
目の前に飛来してくるのは……二本のリューガの剣!?
寸前のところで体勢を崩しながらもなんとかそれをかわす。
武器を棄てた? 違う、やつは武器をいくらでも出せるんだ。
――なら、この一撃は……
(相棒!)
そう、本命の一撃につなぐフェイント。
すぐそこに……必殺の一撃の有効範囲内に俺を捕らえたリューガがいる。
そして……神速の刃は、俺に向かって再び振り下ろされた……
あまりの速度に斬られた感触も無い――
しかし……刃は確実に振り下ろされた後だった。
止まっていた時間が動き出すように……俺の手が肩口から落ちていく。
もちろんその手で握った相棒も一緒に――
「取った……」
[ゴトッン]
無常にも右腕は地面に落ち、相棒も手から離れて地面に転がる。
「ク……ソォ」
追撃の一撃を避ける為、地面を蹴り右腕の無いままリューガから離れる。
地面に落ちた俺の右腕と傷口から流れる血は光の粒子に変わっていく――
俺が先ほど居た位置には、相棒と俺の右腕だったモノがころがっていた。
「終わりだな、修羅を越える力は賞賛に値するが……その力では拙者に届かなかった。ただそれだけのコトだ」
「ふざけんな……まだやれる!」
(もう無理だよ、お兄ちゃん)
「片腕と一本の剣でか? 万全で勝つ事の出来なかった御主には……不可能だ」
ふざけてるのはどっちだよ。勝者の余裕てやつか?
それにな真紅、俺は決めたんだ。護れるだけの人を護るって、そこにはもちろん一緒に戦うお前も入ってるんだ。
今でも、ずっとずっと俺が一番護りたいのは……お前なんだよ!
だから、あきらめんなよ……お前まで。
「俺達はまだ、最後まで戦っちゃいないぜ?」
「……最後までやると言うのなら、全力でその想いに答えよう!」
(解ったよ……お兄ちゃん。最後まで一緒に……私も一緒に戦う!)
あぁ、一緒に戦うんだ。
「手負いの獣ほど強いってのを見せてやるよ」
「その状態で挑むからには……その命と魂、全てを燃やして来い!」
「当たり前だぁぁ!!」
俺は、俺の意思の……信念の為に戦うんだから!
どうせ負けて元々、それなら力をありったけ全部使ってやる!
(負けて元々なんて考えちゃ駄目、勝つんでしょ?)
そうだったな。言い出した俺がそんなんでどうすんだか――
真紅の声で、心が後押しされる。
全身を覆っていた紅蓮に輝くオーラが……より輝きを増す。
ほんの一瞬、脳裏に一つの可能性が――
1%に満たないけど、勝機が見えた気がした。
勝つにはソレしかないか――
なら、たとえ1%の確立でも……それに掛ける!
(見つけたんだね?)
失敗するかもしれないけど――
(ソレが最善なんだったら……ソレで良いんだよ)
あぁ、たとえこの一撃が失敗しても――
悔いだけは……残さない!
この声と……真紅、お前と一緒なら何だって、出来る!
全身を包む紅蓮のオーラはよりいっそ強く……紅く輝く。
(ちょっと、恥ずかしいな……)
気にすんなよ、今更だ。
「Melting……Sword」
紡ぐ。1%程の勝機を掴む為に――
《真紅》は炎のような紅い輝きに包まれていく。
その炎は紅から蒼に変わる――
「行くぜぇ!」
「来い、汝の全力……拙者がしかと受け止めよう!」
「ハァァァァァアアアア!!」
地面を蹴り、今までの最速で距離を詰めて――
蒼く輝く紅い剣をリューガに叩きつけた。

<Interlude-リズィ->
やっと……かろうじてあっちゃんの下に辿り着く。
しかし――
「なんだ……君からここにくるなら捕まえに行く必要も無かったねぇ?」
「リ……ズィ、悪……い、回復……頼む」
弱々しい声であっちゃんが喋る。
「うん、解ってる」
「やっぱ治療系能力か……」
《運命》の言葉を無視して詠唱を行う。
「HealingSacredPrecincts」
あっちゃんを白い光が包み……少しずつ元に戻していく。
「すまねぇ……リズィ、心配かけたな」
「うぅん、いいの」
「何? やるっての俺は二対一でもいいけど?」
「余裕だな? アレだけ追い詰められたてたのに……」
「今の貴様のオーラ量は僅か――」
「回復したと言っても動ける程度、限界量までは程遠い」
「くっ……解ってたのかよ」
そう、私のHealingSacredPrecinctsによるオーラ補給はたいした量ではない。
私が使った量と同じだけしか回復は出来ない。
「お前のあの莫大なオーラを回復出来る術を持っているなら――」
「お前はすぐにでもあの技で攻めてくるだろうからな?」
「……SummonExcalibur」
あっちゃんの手元に《聖剣》が現れる。
「SummonAwakening」
さらに右腕に銀の手甲《覚醒》が現れる。
「またそれか? そんなんじゃ俺には勝てないってまだわかんないのかい?」
「リズィ、援護を頼む――」
そういわれた私は後ろに下がる。
私の力ではあっちゃんをサポートすることしか出来ない……
「解ってるよ、あっちゃん」
二人で戦っても《運命》に勝てるかどうかは解らない。
でも、戦わなくちゃいけない――
ソレが私達の世界の人々の魂を救う為なのだから……

<SCENE102>
[ズバァァッ]
「ヌッ!」
俺の剣を止めようとしたリューガの剣をあっさりと切り裂く。
(まだだよ!)
わかってる!
そのまま片手で追撃を繰り出す……
――が、それはかわされる。
「我が剣を斬る……いや熱で溶解させるとは……な」
リューガが笑う――
「手負いの獣程……か。恐ろしいモノだな……だが、強ければ強いほど我が心が昂ぶるというもの!」
切断された剣を棄て、リューガはすぐさま新しい剣を取り出して構える。
「行くぞ!」
もう……最後の一手は動き始めている――
失敗したら終わりだ……だがそんなことは百も承知!
勝利の可能性が1%でもあるなら……それに全てを掛ける。
「ハァァァァアアアア!!!」
《真紅》を覆う蒼い炎は……白い輝きに変わっていく。
準備は整った……悔いだけは残さない!
(そう、絶対に悔いは残しちゃ駄目なんだから)
祝詞をあげる――
「炎よ駆けろ――」
1%……いや、もっと低いかもしれない。
「灼熱に輝き――」
それでも、ソレに掛けようと思った。
ソレしか思いつかなかっただけだけど――
(大丈夫、二人で戦うから、きっと勝てるよ)
「ほぅ……まだ技があったか……しかし、あるなら何故今まで使わなかった?」
こんな技、よっぽどの作戦か運でもないとあたらないからな……
それでも、それに掛けてみる価値はある。
「我が声に従いて――」
「祝詞をあげ続けるか……ならば――」
「どんな技であろうと我が必殺の一撃で切り伏せるのみ」
リューガが動き出す――
「全てを無へ還す――」
俺も動き出す――
そして、神速の刃が振り下ろされれる直前――
(任せて!)
地面から炎を吹き上がらせた。

<Interlude-リューガ->
突然、炎が吹き上がり視界が一面の炎になる。
またか!?
目をくらませて、今更何をするつもりだ?
奴は拙者を確実に倒そうとしている。
ならば……祝詞の時間稼ぎか?
「滅びの刃となれ――」
炎の壁の向こうから……祝詞が聞こえてくる。
やはり時間稼ぎか!
「させんぞぉ!!」
必殺の一撃を炎の壁に向け放つ――
刃は炎ごと切り裂くも手ごたえが無い。
ならば、もう一撃……
[ドスッ]
「!?」
突然、痛みが腹部に走る……捨て身の一撃か?
剣の刺さった場所はかなりの高熱を保っている……
――白い輝き、熱量を纏った剣。
しかし、それはあの輝きで説明できる。
なら祝詞は何の為に?
!?
すぐさま刺さった剣を引き抜いて離れなければ――
祝詞をあげる、その上での接近戦――
そこからはじき出される結論は……
「サブ……リメイション!」
爆発的な量のオーラが腹部の剣に収束していくのがわかる……
おそらく祝詞は今……紡ぎ終わったのだろう。
ならば……その一撃に耐えるのみ!
腹部を貫いた剣は閃光を放った――

to be continued・・・

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