EternalKnight
下級聖具?
<SIDE-Leon->
「で、具体的に俺は何をすれば良いんだ?」
守護者のリーダーの座を再び与えられたのは良いが、はっきり言って何をすればいいのか検討が付かない。
過去にリーダーの様な事をやっていた頃が在ったと言っても、あくまでメンバーの中心的な存在だったと言うだけな訳であって、特の誰かに命令を出していた訳じゃない。故に、何をすればいいのかがまず分からない。
「貴方のしたい様にすればいいと思うけど、まずはアレじゃない? 団員に自己紹介と現状の説明するのが優先すべき事だと思うけど?」
「なるほど。まぁ、それは優先してやっておくべきだな、確かに――その後の事はそれが終わってから考えれば良いか」
とは言え、他に思いつく事といえば守護者の現状の戦力把握ぐらいしかない。
もっともネロに聞いた《呪詛》側の有する戦力を考えれば、こちら側の戦力がそれに勝っている可能性は限りなく零だ。しかも、その戦力が相手の有する戦力の予想出来る最低ラインだと言うのがつらい。
《呪詛》を含めた敵側の幹部をほぼ全員その計算の中に含んでいるとは言え、それよりも下にどれだけの敵が居るかは予想出来ない。
否、そもそも幹部の枠はこの間の戦いで何人か抜けた筈なので、少しはマシになっているかもしれない――が、それも結局は希望的観測に過ぎない。
「ココにいる私達の前でそういう態度を取るのは構わないが、他のメンバーにはくれぐれもそんな姿を見せるなよ? トップの不安は組織全体に伝播するのだからな」
「それぐらい分かってるさ、ゼノン。今はまだ自分が組織のトップだって事に慣れてないだけだ」
これから先、それに慣れるかは定かでは無いけれど――否、慣れなければ行けない。ゼノンの言ったとおり、トップの不安は組織全体に影響を与えるのだから。
しかし、リーダーである事は認めてくれたみたいだが、俺に対する態度のキツさは依然変わる様子は無い。いや、前に比べれば少しはマシになっている様に感じなくもないが。
「なら、外で周囲の警戒をしてくれてるメンバーは全員呼んじゃっていいかしら? 残念ながら、そこまで人数が残ってる訳じゃないみたいだし、レオンも何度も説明するのは面倒でしょう? 周囲への警戒は、私達でやれば十分すぎるくらいだと思うのだけど?」
「まぁ、今の状況だとそれがベストの選択になるかね?」
今現在、宮殿の外で周囲への警戒を行っているのは、先程の戦いに生き残ったメンバーと言う事になるのだが、その人数が何人であれ、余程の人数でなければフィリア達幹部とクロノの四人が入れ替われば、彼等が警戒していた範囲をカバーする事など容易だろう。
そうであるなら、見張りの入れ替えと言うのは何の問題も無いし、ついでに言うなら生き残ったメンバーへの説明も一回で済む。やはり、現状ではフィリアの提示してきた案が最善だと思える――もっとも、考えればもっと良い案が浮かぶかも知れないのだが。
「なら、外で見張りしてる連中に今すぐに念でも飛ばしてココに呼べばいいか?」
「ちょっと待て、キョウヤ。流石にこのタイミングで敵なんて事はないんだろうが、絶対に無いとも言い切れない。それを考えるとお前等が外まで出て、それから外に居る連中がこっちに入ってきた方が確実だ」
時間は惜しいが、警戒網に穴を空けて敵に侵入される可能性を考えればそれにも目を瞑るしか無い。何せ連中は一人でも忍び込ませられれば、そこからゲートを展開して長距離転移で大量の敵が宮殿内部に忍び込むと言う最悪の事態に陥りかねない。
そうなってしまえば、唯でさえ先程の戦闘で消耗しているメンバーがやられないと言う保証は無い。と、言うか確実に何名かが命を落とすだろう。下手すれば幹部クラス以外は全滅なんてこともありえる。
そこまで行けば後はもうジリ貧だ。どれだけの戦力を個人で保有しようと、それには限りがある。一人で出来る事には絶対に限りがあるのだ。だからこそ俺は他者の力を求め守護者を結成させて、世界を共に守る為の同士を集めた。
「あぁ――悪い、そんな風には考えてなかった。確かに、交代のタイミングを突かれたら今度こそホントにヤバイよな。俺達は兎も角、外に居るメンバーなんかは」
そもそも、今の人数――幹部を含めて20人前後の今の人数ですら、その総数が未知の《呪詛》の引き連れる軍勢と戦うには少なすぎるのだ、それがこれ以上減ると言う展開だけはなんとしても避けたい。
正確に現状を伝え、その上で全員が今以上の力を得られるように、可能な範囲でアドバイスなんかをして出せる限りの力を引き出し、可能ならハグレの永遠者にも協力を要請する。
広域次元世界全体の危機であると言うのなら、ハグレの永遠者も幾人かは力を貸してくれるだろう――とは言え、ハグレの永遠者の居そうな場所など俺は二箇所しか知らない。
もっとも、その内の一箇所になら結構な人数のハグレが居るのはほぼ間違いないのだが。
「いや、分かってくれるならそれで良いんだ。けどまぁ、流石にそれは俺が心配しすぎなだけなんじゃねぇかとは思うけどな」
「いやいや、慎重すぎるぐらいの方がリーダーには向いてると思うぜ、俺は? 俺だったら何も考えずに一気にメンバー入れ替えるだろうから、レオンの言うとおり奇襲受けたら、間違いなく壊滅するだろうし」
表情を崩して笑いながら、キョウヤは俺の言葉にそう応える。その言葉にフィリアが苦笑しながら「キョウヤ、それは笑いながら言う事じゃないわよ? けどそうね、確かに慎重すぎるぐらいな方がいいと私も思うわ」と意見を述べる。
「まぁ、慎重なのに越した事は無いだろうが、かと言って慎重に成り過ぎるのも問題だろう? 慎重に成ってタイミングを見計らい続けて、その結果タイミングを逃せば元も子もない」
そのフィリアの言葉に、やはり少し不機嫌そうなゼノンが応え「それはそうだが、レオンならその心配も皆無だろう? そも、そのタイミングを見誤らない為の慎重さだと思うのだが?」それにクロノがそう反論する。
「まぁ、あの人達が認めた相手なのだから、それぐらいは出来て当然だろうがな――否、そうでなくては困る。私が言ったのは、万が一の可能性という奴だ、あまり気にするな」
「万が一、ねぇ? つーか、ゼノンはレオンの事を認めてるのか認めていないのか微妙だよな? 尊敬してた三人に認められてたレオンを認めるとか言ってた割には未だにレオンへの態度とかあんまり変わってないしさ?」
確かに、キョウヤの言わんとしている事は分かるが、急に態度が変わるとこっちとしてもやりづらいので今のままで良いと思うのだが――そうだな、確かにゼノンの性格を考えれば、認めた相手への態度として俺への態度はらしくないと言える。
守護者の結成時に俺がその中心に居た事を知ってなお態度が変わらないとなると、ゼノンが俺を嫌っている理由に、守護者に関係していないのにセルと仲が良く、信頼されていたという事実が関係なかった事になる。
正直、それが一番可能性としてあると思って居たんだが……そうでないとなると何が原因なのだろうか? 別にゼノンに嫌われるような事をした覚えはないし、誰かに似ているからだとか、そういう事を気にする奴じゃないのも知っている。
引っかかる部分はあるが、ホントに分からない物は仕方ないので、今まで通り気にしない様にするしか無い。まぁ、分かったらどうという訳でも無いのだが。
「どういう態度だろうと別に構わないだろ? この際だからはっきり言っておくが、私はレオンをリーダーに相応しいと認めた、命令に背く気も邪魔立てをする気も無い――だが、それだけだ。馴れ合う気は無いといえば言葉は悪いが、そうとしか表現出来ない」
やはり、これ以上は考えるだけ無駄だろう。どうしても好きになれない奴と言うのは誰にだって一人や二人は居るだろうし、ゼノンにとって俺がそういう存在なら、互いの関係を変える事はこの先きっと不可能だ。
「まぁ、それならそれでもいいさ――と、言うか早く外の警備に行って、外に居るメンバーを呼んできてくれ。俺が言えた義理じゃないんだろうが、何をするにも早いに越した事は無いだろ?」
いつ動き出すか分からない《呪詛》引き連れる魔獣の軍勢――どれだけの規模なのかも分からないそれを相手取るのに、こちら側が守勢に回るという事は可能な限り避けたい。
もっとも、最高位――《完全なる六》のどれか一つでも完全に開放されれば、俺はそれを察知できる。と、言うよりは《完全なる六》に属す聖具には少なくとも同位の存在である他の五つの活動状況を察知できる様になっている。
故に《呪詛》は未だに《根源》を完全に開放していないというのが確定的に明らかだ。ならばこそ、早く動いて早くなんとかしなければいけない。
少なくとも、《根源》が完全に開放されれば、それを察知して他の《完全なる六》が活動を再開してしまう可能性がある。《根源》の様に分割して封印したものに関しては安心出来るが、その処置を施したのは《根源》と《必滅》の二つだけだ。
俺としては《真理》もそうしたかったのだが、完全に制圧できた《根源》や協力的だった《必滅》と違い《真理》にはそれが出来なかった。故に、可能な範囲でその力を封じ、誰にも発見されぬようにそれを隠した。誰にも、何者にも見つからない様に。
「ふむ、それもそうか。ならばさっさと行くとしよう。外の連中には、口頭でココへ向かうように言っておけば良いんだな?」
言いながら、俺に背を向けてゼノンは言う、その背中を追う様に、フィリアとキョウヤとクロノも俺に背を向けて歩き出した。
「ついでに言うと少しぐらい事情を説明しておきてくれ――まだ挨拶して無い奴も居ると思うから」
そういって、俺は外へと出て行くフィリア達の背中を見送った。そして、先程全く喋ってなかったネロに声をかける。
「っと、付いて行く様子が無いから分かってると思うが、ネロはココに残ってもらうぞ? 俺も全員にしたわけじゃないが、挨拶ってのは大切だからな」
「あぁ、分かってる。と、言うかあの面子に俺が混ざったら明らかに実力不足だと思うんだが? 一人がSS持ちのLv9で、残りは三人ともSSSだろ? 第四位階の下級聖具使いじゃ明らかに浮くだろ、絶対」
それは比べる対象が規格外すぎるだけだと思うが、本人が気にしているなら突っ込むだけ野暮だろう。と、言うかそういう意味で考えるとこいつもかなり無謀な事をする。
SSSクラスを見て、肩を並べるには自分は実力不足だと自ら認めておいて、挑む相手はSSSクラスだというのだから無謀という以外に表現のしようがない。
「と、言うかお前、自分の聖具を下級聖具だとか言ってたがクラスはどうなってるんだ?」
反応から察すにC〜B程度の物だとは思うが、CとBでは大きな差がある。普通ならこうして世界を渡り歩いている時点でBだと分かるのだが、コイツの場合は魔獣としての能力で世界を移動できる。
――故に、俺にはどちらか分からない。もっとも、分かった所で相手がSSSであるなら大きな意味など無いのだが……
「そういえば、俺も聞いた事が無かったような……別に今までは名乗る相手も居なかったし」
「はぁ!? って――すまん、思わず変な声を出しちまった。いやでも、自分の聖具のクラスを知らないって、それは幾らなんでも冗談だろう? つーか仮に本当だとしても、自分の聖具に聞きゃわかるだろ?」
あまりに信じがたい事実に、つい勢いよく喋りすぎてしまう。だが、実際問題本当にありえない話なのだ。永遠者に近い能力を持ちながら契約者が自身の聖具のクラスを知らないって、ありえないだろ?
「それもそうか、なら――《NameLess》」
ネロがそう紡ぐと同時に、彼の両手に黒い棒状の物体が出現する。話の流れから察すにそれが彼の聖具なのだろうが? そんな風に考えながらよく見てみれば、ネロが現れていた際に使っていた長方形の銃のグリップと同じ形状をしているのが分かった。
となると、アレを軸にエーテルで多種の武装を形成するタイプの聖具と考えるのだ妥当だろうか? しかし、そうだとすると待機状態での形状はなんだったのだろうか? 彼の所持品が分解され再構築された反応は特に感じなかったのだが。
と、そんな事を考えていると「えっと、よく分からないんだけど、なんか言えないだの、忘れただの言ってるんですが、コイツ?」自分の手に握られた黒いグリップを軽く持ち上げながらそんな事を言ってきた。
忘れたって――ありえないだろ? つーか言いたくないって言ってる時点で覚えてるだろ、それ。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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