EternalKnight
四竦み
<SIDE-Leon->
「――とまぁ、現状で俺が知ってる情報は掻い摘んでだが全部説明したつもりなんだが、何か聞きたいことはあるか?」
途中、ネロにも確認を取る様に、彼から得た情報も含めてゼノン達に話し、その最後をそんな言葉で締める。
「……」
しかし、話を聞いていた三人は全員そろって言葉に詰まっていた。まぁ、内容が内容だけに仕方ないとは思うし、逆の立場だったなら俺も言葉に詰まっていただろう。
と、言うかクロノが何一つ反論しない事によって、今の話が全て事実であるという事の裏付けとして機能している形だろう。
そうでなければゼノン辺りが真っ先に否定してくる様な今まで隠していた事実も纏めて話した訳だし。
――と、言うかクロノが何も言って来ない事から、ようやくネロの話の真偽を確かめられた。これで、少なくともネロの言っている事は彼にとっての事実であるという事と、彼が味方である、という事が確定情報になった。
少なくとも敵の刺客では無い事が分かっているなら、今後の方針を彼が知った所で問題は無い。これでようやく今後の事を決める為の話し合いが出来る。まぁ、幹部であるゼノンとキョウヤには話さなければ話し合いもクソも無かったと言うのも事実だが。
反応は確認したが万が一の可能性を考え、その話に移る前にクロノに視線で確認を取ってみる――が、言葉につまり眉を顰めて思案しているクロノは気づかない。
声の一つでも出して呼びかければ直なのだろうが、他のメンバーは兎も角、ネロにそれを確認しようとしているのがバレるのは後の雰囲気を考えると良くないのは態々考えるまでも無い。
こういう時に、本当に念話は必要だと思うのだが、今の所、守護者共有の念の周波を知らないので、クロノに念を飛ばす事は出来ない。まぁ、暫くすれば気付くのだろうが、それまでに続くであろう沈黙が苦しい。
(お前はいつも俺との会話に没頭してその苦しい沈黙を振りまいてるんだけどな、いつも)
『相手にすると付け上がるので無視する事にする。つーか、何で俺は今までそうしてこなかったのだろう』
しかし、予想に反してすぐにクロノは俺からの視線に気づき、その意味を察した様にコクリと小さく頷いた。
流石に状況から考えて何故自分がココに呼ばれたのか、ぐらいの事は流石に判断してくれたらしい。と、言うかそれぐらいは出来ると信じているから態々視線で確認を取ったのだが。
(いや、それはお前が視線で伝えるぐらいしか出来なかっただけだろ? 実際の所)
『……相手にすると付け上がるので無視する事にする。うん、そうするべきだ』
(あー、なんつーか今更で悪いがその思考も読めてるぞ、レオン)
何、お前今なんて言ったの?
(だから、お前は隠してるつもりなのかもしれないが、俺には丸々聞こえてるぞと、そう言っただけだが?)
いやいやいや、無いから。そんな事出来るはずねぇよ、馬鹿な事言ってるんじゃねぇよ、シュウ。
(あぁ、そうだな。確かに俺にはお前がさっき何を考えていたかは分からん可能性はある。だが、どちらにせよ何かを考えていた事は今の一言で暴露してしまっている訳だが、その辺はどう思うよ?)
な、くっそ……騙しやがったな、シュウ。
(うん? だから言ってるだろう、分からない可能性はあるとな。実際お前が隠そうとしている思考が俺に漏れていないという保障は何処にも無い。言っておくが普通の聖具なら、等とくだらない事を言うなよ? 俺はそこらの普通のとは出来が違うんだよ)
テメェ、人を弄って遊ぶのもいい加減に――って、なんでまたいつの間にかお前と話してるんだよ、今はそんな事してる場合じゃねぇって事ぐらいお前なら分かるだろうが。
(何、このぐらいの時間なら問題ないだろ、どうせもう暫くは全員黙ったままで話なんぞ進まないんだし)
いや、だから俺はクロノに確認が取れ次第、その沈黙を破って話を進めようとしていた訳なんだが?
(そうなのか? その割にはまだお前は確認してから一言も言葉を発していないと思うんだが?)
なぁシュウ、一体誰のせいだと思ってるんだ?
(さて、誰のせいだろうな? あぁ、話をしていないレオン自身のせいとかか?)
『あぁ、もういいや面倒くせぇ。無視してたら余計に絡んでくるし、適当にあしらおう、マジで――って、コレも聞こえてるんだっけ? いや、聞こえてる振りをして俺を弄っただけだろ、絶対』
あー、はいはい。もういいよそれで
(うん? そういう反応をされると何か釈然としないが、これ以上は流石に時間の無駄だろうし、そろそろ弄るのは止めてやろう)
『なんかシュウが妙に上から目線で言ってる様な気がするには気のせいなんだろうか? いや、気のせいじゃないよな、絶対? まぁ、これ以上絡まれるのは面倒だし今は聞き流しておこう』
さて、気を取り直して話を進めなきゃ行けない訳だけど、何から話し合っていくべきか……まぁ、とりあえずはセルが死んで空いちまった守護者のリーダーを誰にするかって話からが妥当か。
「質問が無いから聞きたい事は無いと見なして話を進めさせてもらうぞ? まず、今後どうやって動いていくかを考える前に、空いちまった守護者の頭の座を決めたいと思う」
とりあえず、話がまとまる様にする為には筆頭となる者が必ず必要になってくる。話をスムーズに進めたいなら自分がその座に就くのが一番良いという事も分かる。
「レオンがやればいいんじゃない? 最高位だって事はさっき話しちゃった訳だし、クラス的にはあなたしか居ないと私は思うんだけど?」
そんな俺の思考を後押しするかの様に、周囲の沈黙にあわせて口を閉ざしていたフィリアが言葉を発する。まぁ、実際問題クラスで言うのならその通りなのだが、その意見が認められないと言う事は、容易に予想できた。
「ちょっと待ってくれフィリア、それは幾らなんでもあんまりだろう? まだ正式に守護者の一員になるかどうかすらも言っていないこいつを、守護者の首領の座に置くなんて間違ってる」
まぁ、真っ当に考えればその通りだ。現状では守護者のメンバーでは無い俺が守護者を束ねる座に収まるのは、どう考えたっておかしい。
今回のゼノンの発言は全面的に正しい。言い方こそ険のある物言いだったが、いつもの俺が気に食わない一身から突っ掛かって来ている訳ではなく、本当に守護者と言う組織の事を考えての発言だった様に聞こえた。
「ゼノンの言う通りだ、フィリア。俺個人としてはリーダーを務めた方が色々と楽だとは思うが、今まで居なかった奴がいきなり組織のトップに立つって言って、まともにそれで指揮を取れると思うか?」
「それは確かに難しいわよ、でもセルの代わり……いいえ、今セル以上の事が出来るのはあなたしか居ないと私は確信してるわ。ねぇ、ゼノン? 現状の守護者の実質的最高戦力の貴方が仮にリーダーになって、この事態を乗り切れると思う? 」
強い口調で言うフィリアの言葉に「それは……」と、言葉を詰まらせてしまう。
しかし実際問題それはどうなのだろう? 扱える総合的な戦力としては誰がトップに居ようが変わらないとは思うが、戦力が同じでも采配の振るい方しだいで幾らでもその力は膨れ上がるというのもまた事実だ。
しかし、それ言うのなら、今まで知識こそそれなりにあるものの、基本的に引きこもっていた俺にそんな才があるとも思えない。或いは、フィリアが俺を組織のリーダーにする為に、ゼノンを丸め込もうとしているだけなのかも知れないが。
兎も角、言葉に詰まったゼノンを畳み掛ける様にフィリアはさらに言葉を続ける。
「ひどい言い草かもしれないけど、あなたじゃ無理よ。既に《完全なる六》の一つである《根源》が《呪詛》の手に渡ってしまっている以上、それに対抗できるのは今の守護者には同じ《完全なる六》の所持者であるレオンしか居ないわ」
「しかし、幾ら強いからといって、新参者が首領になると言うのは……」と、フィリアの言葉に押し負けつつあるゼノンの声は徐々に小さくなり始める。
そしてその声は「あれ?」と、今まで黙っていたキョウヤの何かに気づいた様な音にかき消され完全に途絶えてしまった。
「つーかそれだったらレオンだってキツイだろ? 確か《終焉》つったら四竦みで《根源》に弱かった筈だし。まぁ、そういう風に言われてるだけで実際どうなのか知らないけどさ」
その言葉で、フィリアの言葉によって諦めかけていたゼノンが再び息を吹き返す。
「そういえば、私も聞いたことがあった。《完全なる六》の内の四つ、《終焉》と《根源》それに《必滅》と《時空》の能力は互いに抑制し合う為に四竦みの様な関係になっている、ってな。それで、事実はどうなんだ?」
その言葉は先程まで話していたフィリアではなく俺に向けて発せられた物だ。や、フィリアに向けても仕方ない問いだとは思うのも確かだが、勢いづいている時だけ強く当たられてもなぁ、とも思う。
ってか相変わらず俺の事が気に入らないんだな、ゼノンは。さっきの会話でも俺は自身でリーダーをやるべきじゃない、と言っていた筈なんだが……
まぁ、俺がリーダーをすべきでは無いと言うゼノンの意見を通すのなら、ココで嘘を付く必要は何処にも無い。故に彼の問いに「事実だ、俺の持つ《終焉》は《根源》とかなり相性が悪い」と、素直に応える。
(素直に、ねぇ? 認めたくない事だが、かなりどころか絶望的な差だ――の間違いなんじゃないか、レオン?)
聞こえてきたシュウの念は、茶化すような雰囲気などない真剣なもので、先程の俺の発言が如何に現実を見ていない妄言であるかを問い詰められて居るように聞こえる。
(ように聞こえるのではなく、意図してそうしているんだが?)
いや、心配してくれなくても、ちゃんと分かってるって。《終焉》じゃあ完全な状態の《根源》には絶対に届かない。相性が良いとか悪いとか、そういう次元じゃないって、そういう話だろ?
終焉は覆り、時空は終り、必滅は停まり、根源は滅ぶ。それは、完全なる六の内の四つにそれぞれ与えられた絶対の法則であり、その理を崩す事は即ちこの広域次元世界の全てを超越する事に等しい。
故に《終焉》は《根源》に勝てない。そのぐらいの事は理解している。
(だったら何故、相性が悪いなどという言い方をした? 俺達の能力が何一つ通じない上に、相手は問答無用でこちらの運命を操ってくるんだぞ? 勝てる見込み等、誰がどう考えようと零だろうが)
じゃあ聞くけどよ、シュウ。勝てる見込みが零だからって、諦めていいのか?
(そんな訳あるか、例え可能性が零でも奇跡が起こる可能性を操作されても、それでも引く訳には行かない)
だったら、態々絶望の種を蒔く必要は無いだろ? 俺一人じゃ無理な事でも、他の奴等と協力すればどうにか成るかも知れないだろ?
(……昔の話か。アレは《創世》や《時空》の力を借りれたからだろう? 準最高位が三つや四つ集まった所で《創世》と《時空》二つ分の代わりに成ると思うか? そもそも、SSSクラスが何人か居ても各個撃破されて終いだろ、どう考えても)
違う、俺が言ってるのはそういう事じゃないんだ、シュウ。
(――何?)
シュウの疑問に満ちた声に応える前に、俺の言葉によって沈黙してしまったフロアに、再びフィリアの声が「でも――相性以前に、準最高位では最高位に届かないって事の方が明白だと私は思うんだけど?」そう響く。
そしてそれに応じて「さっきと一緒だ。どうしてだ、どうしてそんなにレオンの肩を持つんだ、フィリア! どうせ相性が悪いと言うなら、誰がトップに立ったって同じだろ!」と、ゼノンの怒気を孕んだ声が響く。
そのゼノンの言葉に応じようとしたフィリアの言葉よりも先に「つーかさぁ、なんでゼノンもフィリアもそんなにムキになってるんだ? や、どっちの意見も分からない訳じゃねぇよ、別に」と。キョウヤの声が割って入る。
「ムキになどなっていない。ただ私は、幾ら面識があったからと言っても、突然やってきて突然首領の座に立つと言うのが他の団員の士気を下げかねないと思っただけだ」
「そりゃゼノンの言うとおり、最初は戸惑うでしょうけど、それでも一番実力がある人がトップに立つべきでしょ? 何より、突然やって来てって貴方は言ってるけどね、元々はセルが「フィリア!」
話さなくても良い様な事を口走ろうとしたその言葉を、彼女の名を大声で呼ぶ事で止める――が、遅すぎた。
否、或いはフィリアが喋りだした時点で手遅れだった。そんな半端な所で言葉を遮っても、半ばまで聞いた彼等が興味を持ったのなら――それを手遅れと呼ばずして何をそう呼ぶのか?

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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