EternalKnight
合流開始
<SIDE-Guren->
「あー、リルに指摘されるって事は相当思いつめた顔してたのか、俺?」
確かに思い悩んでいたが、まさかリルに指摘されるとは思っていなかった。何より、すぐ隣に居たシンクよりも先にリルに指摘されたという事の意味を考えると少々気まずい。
『シンクに指摘を躊躇わせるほど、リルに指摘されるほど、俺は思いつめた顔でもしていたのだろう――それも、相棒やシンクが気にするなと言ってくれた事柄でだ』
そんな自分に軽く自己嫌悪するが、それを引っ張った所で意味は無いので、気持ちを切り替えて、俺達の元にたどり着いたリルとフェインさんに視線を向ける。
「そうですね、少なくとも一目見るだけで何かに思い悩んでいる様には見て取れましたが?」
俺の紡いだ言葉にフェインさんが応じる――自分の中で簡単な決着をつけたつもりだったが、やはり一人で勝手に幕を引くには勝手だったのか、心に埋めた話題はあっさりと掘り起こされた。
だがしかし、仲間達が何と言った所で、結局は俺自身の心の問題に過ぎない。故に、自分自身で折り合いをつけるか、あるいは実際に強くなるしかない。
「いや、なんかすいません。こっちの事なんでさっきのは忘れてください。たぶん、どれだけ考えても答えは出ないと思うんで」
(だから、気にするなと言っているだろう。俺達の力はお前の力だし、お前の力は俺達の力なんだ。強くなりたいと思う事はいい事だが、強さは全てじゃないって事ぐらい、お前になら分かるだろ?)
……分かってるさ、それぐらい。そう相棒に応じて、それ以上の思考の深みに嵌る前に考える事を切り上げる。
『結局どれだけ強さを求めても、俺自身の力で辿り着ける領域なんてものはたかが知れている。結局は相棒やシンクの力に依存するしかないのだ。ならば、その力を最大限に生かせる様になろう。そう纏めて、今度こそ本当にこの件に関しての思考を放棄した』
「そうですか。まぁ、悩むのは自由ですが、程ほどにした方がいいですよ。妹さんも心配しているようですし、ね?」
フェインさんにそう言われて、思わずシンクの方へと視線を向ける。その先に、どう応じれば良いのか困り果てて、その結果生み出された様な半端な笑顔で笑うシンクの表情が見えた。
――馬鹿か、俺は。シンクにあんな顔をさせてどうする? 少なくともシンクにあんな表情をさせてまで悩む程の事なのか? 否、断じてそんな筈がない。
「みたいですね――反省します。あぁ、そういえば無事なようで何よりです、フェインさん。リルの方も無事みたいで良かった」
兎も角、これ以上考えるのは止めだ。と、言うか今後はもうあんな下らない事は考えない方が良い。そんな事よりも、今は他のメンバー達と合流すべきだろう。
「あなた達も、特に目立った負傷なんかは無かった様で何よりです。ですが、だからと言って皆が私達の様に無事だとは、どう楽観的に考えても思えない」
「でしょうね――少なくとも死傷者が居ないって事はない」
俺達だって傷を負わなかった訳ではない。今現在傷が無いのは単純に自身の能力で治癒を行ったからに過ぎない。それに、戦いが始まってすぐに少なくとも破壊者側のSSSクラス――《刹那》とか言っていたか?――に、少なくとも誰か一人が殺されている。
その後の被害が零だったなら良いとは思うが、それも考えにくい――と、言うかそんな考えは甘すぎる。
俺はこの戦いで破壊者を二人滅ぼしている、その二人を殺したからこそ、俺は今も生きている。そして、こちら側が一方的に勝利したとは俺には思えない。
最終的に破壊者側の撤退という形で幕を引いたこの戦いだが、コレだけ大規模な戦いで、死傷者が出ていない理屈は無い。
運というのもあったのだろうが、俺程度の実力でも敵を殺し、生き残れるのだ。敵に同じ様に生き残った者が居てもおかしくは無いし、俺より強い奴ならば、俺が生き残っている以上生きている可能性の方が高い。
破壊者側の撤退――徒党を組むのではなく、個々の破壊者が散り散りになって撤退を行ったという事実もまた、念頭に置くべきだ。つまりは撤退できるだけの余力を残していた者が居る、という事実。
コレだけの規模の戦いで、撤退出来る程の余力を残していた敵が、守護者を一人たりとも突破できなかったと、そんな事が有り得るだろう? 否だ――そうあって欲しいとは思うが、そんな事が有り得るとはとてもじゃないが思えない。
「ですので、安否の確認も兼ねて近場の仲間から合流しようとしたしだいです」
「で、探査範囲を広げていった結果、一番近い距離に居たのが俺達だったと、そう言う事ですね?」
フェインさんの言葉を遮って、少し前に自分が出した結論と同じ答えを続ける。そう問うた俺の言葉に応じてうなずきながらフェインさんは「そう言う事です」と言葉を紡ぐ。
やはり、考える事は大体一緒か。と、言うよりはこの状況下ではその考えに辿り着くのが一番妥当だ、と言うだけなのかもしれない。
そんな事を考えていると「それにしても――最初に見つけられたのがあなた達で良かった」と、心底安堵したように、フェインさんはそんな言葉を漏らした。
その言葉の真意を掴めずに「それは一体どういう……」と、問おうとしかけて、その言葉を止める。その言葉が紡がれた理由に気づいたからだ。
「ねぇねぇシンクちゃん、クオンちゃんが何処に居るのか知らない?」
「ごめんねリルちゃん、私達にもちょっと分からないの。でもこれから色んな人達を合流するみたいだし、きっとすぐに会えるよ」
フェインさんが俺達と最初に遭遇できて良かったと思った理由――それは、至極単純にリルの相手をする事に疲れたからに他ならなかった。

<SIDE-Leon->
「さて――それじゃあフィリア、クロノを呼び出してくれ。いや、この際だからクロノ以外に幹部の二人と数人……そうだな、致命傷じゃないレベルに負傷してる奴等を優先して何人か、ここまで呼んでくれ」
「いや、突然そんな事言われても困るんだけど? そもそも、私はセト程器用じゃないからそんな細かい事出来ないわよ?」
とりあえずネロの話の真偽の確認と、それから現状と今後どうやって動いていくかを話し合おうと思ってフィリアにそう頼むと、そんな風に拒否された。
いや、出来ないのだから拒否ではないのだが。 まぁ、こちらから言っておいてなんだが、冷静に考えればフィリアのクラスと聖具の特性から考えれば、その注文が無茶なのは明らかだ。
「って、言うか私には出来ないけど、能力セーブしてなかったらレオンになら出来るんじゃないの? 現状を考えたら、どうせ最上位だって事を隠すのも無理なんだろうし?」
「いや、俺じゃあそもそも念の届かない相手がいるし、それ以前にゼノンが俺の言う事を聞いてくれるとはとてもじゃないが思えない」
つーかやっぱり何度考えても俺がゼノンに嫌われている理由が分からない。ホントに何もしてないと思うんだが、あそこまで嫌われているんだから理由が無い筈もないしなぁ?
まぁ、それは過去何度と無く考えて、結局答えの出ていない謎なので放置するしかないのだが――
(と、言うかその疑問の答えを求めて諦めんの何回目だよ、お前)
さて、何回目だったか――最早数えるのもめんどくさい回数に成っているであろう事だけは確かなんだが……
「そう言われればそうだったわね……けど、だったらどうすればいいのかしら? って言うかレオン、どうしてあなたゼノンと仲悪いのよ? あなた達の間に立つ、私みたいな人の立場を考えて欲しいんだけど?」
「いや、そうは言われても俺は知らないっての。出来る事なら俺だって理由を知りてぇよ。ってか今はそんな事どうでも良いんだよ、兎に角クロノとキョウヤとゼノンを呼ぶ方法を考えなきゃ何も進まないって」
いや、強いて言うならクロノ一人が居れば目的自体は果たせるのだが、流石に幹部の二人には他の団員に説明する前に話しておかなければいけないと思う。
「うーん、やっぱりそうなるわよねぇ……セトも襲撃と同時に転移しちゃって帰ってきてないし、仕方ないから奥の手を使っちゃいましょうか」
なんだかめんどくさそうに、フィリアはそんな言葉を紡ぐ。
「奥の手ってなんだよ? 方法があるなら初めからそう言えば良いじゃねぇか」
「や、私としてはあんまり使いたく無いから奥の手って事なんだけど、急いでるんでしょ、レオン? なら仕方ないわよ。それで、クロノとゼノンとキョウヤ以外は誰を呼べば良いの?」
強いて呼ぶ必要があるのはその三人だけだが――さて、どうしたものかな。まぁ説明するのは俺じゃないし、最初はその三人だけで良いか。
「いや、やっぱり良いわ。呼ぶのはその三人だけにしてくれ――人数が増えるとお前の方も大変だろ?」
「あぁ、他はいいのね? そっちの方が覚えやすいし言いやすそうだからありがたいけど。それからねレオン、この方法って人数が増えても必要なエーテル量自体は殆ど一緒なのよ、だから気にする必要とかは無いけど、本当にいいのね?」
人数が増えても必要量が一緒? エーテル使用量が多いから奥の手とか呼んでた訳じゃないのか? と、そんな疑問が脳裏に浮かぶが「あぁ、それで良い」思考の海に沈む前に俺は短くそう告げた。
「オッケー、それじゃあ早速始めるわ、二人ともしっかりと耳塞いでてね」
耳を塞いでおけって一体何のつもりだ? つーか二人って俺とネロの事だよな?
唐突なフィリアの言葉に戸惑いながら、横目で隣にいるネロの方へと視線を向けると、ネロの方は言われた様に何の疑いも無くその両手で耳を塞いでいた。
何の疑問も持たずに言われた通りにする辺り、本当に真面目な奴なのか、従順な振りをしているだけなのかのどちらかだという事は間違いないだろう。
そんな下らない事を考えながら、視線をフィリアに戻して、口元に棒状の何かを構えて、大きく息を吸い込むフィリアの姿を見て――理解する。
(なぁ、大根。俺は今しがたフィリアが何をするか理解できた気がするんだが)
奇遇だな、俺もなんだよシュウ。と、そんな会話を一瞬の間に交わす。無論の事だが、何の準備も無い状態で、そんな短時間で成すべき行動に移れる訳は無い。
その次の瞬間、宮殿内に発生した一瞬の爆音によって一切の音が途絶えた。
大気の振動を感じる、と言うか宮殿の壁が大きく震えている。
そして、フィリアはその手に握る棒状の何か――と、言うかマイク――に向けて口を大きく開けて何かを言っている。すぐ隣では、耳を必死に押さえ眉を潜めるネロの姿が見える。俺には、何も聞こえない。
(うむ、ものの見事に鼓膜を破られたようだな、大根。まぁ、すぐにでも直せるんだが、しばらくは我慢しておけ、うるさいだけだから)
んなこたぁ分かってるんだよ、シュウ。つか誰が好き好んでコノ爆音の中破れた鼓膜なんて再生するんだよ。
(あ、因みに分かってると思うがお前の肉体の再生権は俺にもあるんだぞ、一応。お前が意識刈り取られた時様に)
……まさか、まだフィリアが喋ってる今から俺の鼓膜を再生させる気かよ、お前。
(そうだと言ったら?)
すいません、勘弁してください。つか、治るって言っても鼓膜とかだと再生中は変な音が聞こえて気持ち悪いし、この爆音の中じゃどうせすぐに破れるし、そもそも破れたら多少は痛いんだよ、ホントに。
(ふむ、そんな事を聞いたら余計に再生したくなって仕舞うじゃないか、大根)
だからって治せって言ったら即効で治すだろうが、お前は!
(あぁ、無論だ。よく分かっているではないか、流石は我が契約者だ)
『駄目だコイツ――早くなんとかしないと。つーかコレで思うのは何度目か分からない事だが、俺はなんでこんな聖具と契約しているんだろうか? 俺の知る限りでは、シュウ程ノリが軽い聖具は存在しないのに』
つーかなんだ今の喋り方、我がとか言いやがって、一体何キャラのつもりだよ。
(何キャラのつもりも何も、特に何の意味も無いが? 俺はお前を弄りたいだけだし)
言ったよ、知ってたけど言いきりやがったよコイツ……いや、別に前からも普通に言ってた事だし分かってはいたけどさ。
等とシュウと言い争っている居る間に、フィリアの叫びは終わったらしく、彼女は何やらこちらに話しかけて来ていたのだが、無論の事ながら、鼓膜が破れているのでその言葉を聞き取る事は出来ない。
口の動きから言葉を読み取る読唇術でも覚えていれば何を言いたいのかぐらいは分かるのだが、あいにく俺にそんな技能は無い。故に、俺は破れた鼓膜を再生させ始めた。

TheOverSSS――15/28
UltimateSeven――2/7
PerfectSix――1/6
KeyToSeven――1/7
――to be continued.

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