EternalKnight
<双極の星>
<SCENE098>
真紅も俺に向かって走って――
俺の胸に飛び込んで来た。
俺は、その小さな体をしっかりと抱きとめた。
「真紅……会いたかった――」
「お兄ちゃん……私もだよぉ」
「でも……どうして真紅がここに?」
「ソレはね、ここが《原初》さんの心情空間だからなの」
「どういうことだ?」
説明になってない気がする……
「私はお兄ちゃんをかばって斬られた後――」
「まぁ……死んじゃった後ね?」
「すまない……」
俺の力が、あの時……もう少しあれば――
「そのことはもういいんだよ、私がしたくてしたことだし」
本当に気にしていないと――
そう笑顔で言ってくれる。
「真紅……」
「あ……説明の途中だったよね?」
「悪い、話の腰を折っちまったな」
「いいんだよ。それでね、その後――」
「魂の器……体が死んじゃった以上、魂の行き先は一つしかないよね?」
「天国……か?」
「そんな感じだと思う」
「でもね? 私は天国に行くことなんかより――」
「たとえ魂だけでも、お兄ちゃんと一緒に居たいと思ったの」
真紅が言葉を紡いでいく。
「そう思ってたらね? お兄ちゃんが挫けそうになってて――」
「応援した、私にはソレしか出来なかったから」
「その応援が、俺に届いた……ってことか?」
「――今更だけど、あんときはありがとな、真紅」
「えへへ」
照れたように微笑む……そうだ、俺はこの笑顔を守りたいんだ。
「そこからの過程は知ってる」
「――でも、どうしてここに居るかの説明になってないぞ?」
「それはね、《創造》さんが壊された時――」
「私の器にもひびが入ってたでしょ?」
ついさっきのことだな。
「それで、私の魂ごと器を《創造》さんに取り込んでもらったの」
「それで……相棒は進化したのか?」
「うん、そうだと思う、他にも原因はあるかもしれないけど――」
「他にも?」
「それは《原初》さんに直接聞いたほうが言いと思うけど……」
「で、取り込まれたから、今ここに居るって事か?」
「そう、それでね、次からは私も一緒に戦うことが出来るの」
「……え?」
今までも一緒に戦ってきた、その上で一緒にと言うのは――
「会長さんの持ってた聖具で《原初》さんの内包できるオーラ量を超えるんだって」
「それって、関係あるのか? 一緒に戦える事に?」
「今までも一緒に戦ってただろ?」
「あのね、今まで私の声、ほとんどお兄ちゃんに届かなかったよね?」
「ソレは……確かにそうだけど」
「コレからは戦う時でも、休んでる時も話が今みたいに出来るの」
「ホントか!」
「うん、だからこれからはホントの意味で一緒に戦って行けるんだよ?」
「――まぁ……私は今の外見とは違うけど」
そんなことが大切なんじゃない……
真紅と一緒に、魂が一緒に居られるって事だけが大切なんだ。
「これから……か、永遠に戦い続ける事になるんだよな」
「そうだね、でも私はお兄ちゃんと一緒になら、頑張れると思う」
うれしい事を言ってくれるじゃないか。
「さて、《原初》も待ってるし、そろそろ行くか?」
「そうだね、あんまり待たせると悪いしね」
「それに、話なら……これからいくらでも出来るだろうしな?」
「うん」
俺は入ってきた扉に引き返す、真紅と一緒に……
そして《原初》の元に帰って来た――
「案外早かったな、相棒?」
意外そうに《原初》がつぶやく。
「お兄ちゃんに……そっくり?」
「あぁ、髪と眼の色以外は俺その者だ――」
「他者であるお前が見てそう思うなら尚更な」
「さて、そろそろ戻るが……その前に」
「なんだよ?」
「我は今回また進化して名前が変わった」
早いな……
「名前は?」
「お前の妹と俺、二つの剣が揃って一つの聖具の名を持つ――」
「まぁ、二刀一対と言うやつだな」
早く名前言えよ……
「呼び方は……今まで通りでいいな?」
「かまわん……で、二本揃って新たな名を《双極》と言う」
「《双極》か、まぁ呼び方は変えないから問題ないか」
「私は……《双極》さんだと私も含むことになるんだよんね?」
「まぁそうなるな、好きなように読んだら?」
「うーん、なら……銀さん?」
「髪の色からか?」
「まぁ、別になんと読んでくれてもいい」
「じゃあ、よろしくね? 銀さん」
「あぁ、ソレと相棒、もう二つ、通り名と新たな技についてだが……」
「アレンさんの《救世主》、見たいなやつか?」
「おう、これからは《双極の星グレン》と名乗れ」
「……ダサくないか? それ――」
「我慢しろ、それより技の情報はコレから送るぞ?」
こちらが返事をする前に……膨大な量の情報が脳内に流れ込んでくる。
――溶解させる剣。
――灼熱の防壁。
――昇華。
――氷河の柩。
――凍結による無力化。
――絶対零度。
氷を使った技が増えてるな――
会長の聖具の力か?
「大体は解ったか?」
「おう、なかなか使いやすそうなのが多いな」
「数が多いのでな、しっかりと把握してうまく使い分けろよ?」
「解ったよ、じゃぁ行くか?」
「大丈夫? お兄ちゃん、たくさんあるよ?」
そんなに心配しなくても……
「大丈夫だって」
「そろそろここから出るぞ?」
「そうだな、行くか」
視界が少しずつ……白で覆われていく。
――霧みたいだな。
そして……意識が少しずつ薄れていった。

<Interlude-リューガ->
決まったか……勝ったのは一番。
――狩るのは拙者に決まったな。
反応が不安定だな……進化している最中か?
そもそも十本分で進化するはず。
途中で三本が取り込まれなかったので進化しないはずだが――
まぁ、そんなことはどうでもいい。
より強いモノと戦えるなら……拙者はソレでよいしな。
「娘よ」
「なんですか? どうやら……紅蓮君は勝ったみたいですが」
少なからず味方の勝利に余裕を感じているようだが……
「なに、その紅蓮とやらに今から拙者が戦いを挑みに行くのだ」
「……え?」
「何を驚いている? 拙者の目的は強い者との戦い……」
「そんな! 彼はまだ《EternalKnight》じゃないんですよ!」
「今現在進化している、おそらくSSの階位のモノにな?」
「でも……あの子はあなたと戦うほどの力は!」
「SSの階位の所持者――」
「そしてコノ戦いを勝ち抜いた……それだけでも戦う価値はある」
「――そんなことより娘よ、自分の仲間を忘れておるぞ?」
「……!?」
顔色が青ざめていく――
ようやく自分の同僚がやられた事に気がついたようだ。
いや、伴侶……か?
――あの青ざめ方は以上だ。
「今から助けに行くなら好きにしろ――」
「拙者は少年の相手をしに行くのでな?」
そういい残して、拙者は少年の気配がする方に向かった。

<Interlude-リズィ->
「あっちゃんの気配が……」
弱々しいけど……まだ消えてない。
「よかったぁ……」
でも、どうして? 《運命》は命を見逃したりするほど甘かったの?
あっちゃんがもし勝ったのなら、《運命》の反応は消えるはず……
そういえば《運命》は今どこに?
……こっちに近づいて来てる!?
――どうして?
あっちゃんが勝てなかった相手に、私は勝てるだろうか?
「そんなの……無理だよ」
ならどうするべきなの?
答えは、あっちゃんを助けることだと思う――
私のHealingSacredPrecinctsなら――
ほぼどんな傷でも、たとえオーラの消費であっても回復できる。
あっちゃんの所まで……《運命》に捕まらずにいけるだろうか?
「あっちゃんの所まで……私はたどり着かなきゃいけない――」
私が、あっちゃんを助けるんだ!
そう決めた途端……私の体は動き出した。
あっちゃんの元に向かって――

<SCENE099>
意識が再び戻ると……そこは紅い骸のすぐそば――
つまり意識の消えた所だった。
左右の手には紅の剣と銀の剣が握られている。
形状は《原初》のままカラーがそれぞれ銀一色と赤一色になっている。
「すげぇな……」
オーラ量は今までの比じゃない。
(相棒、こっちに聖具の反応が近づいてくるぞ?)
「アレンさん達……じゃないよな」
(明らかに敵意に満ちているな……)
(これから……戦うんだね)
真紅のおどおどした声が聞こえてくる。
でも……大丈夫だ。決して負けはしないから。
(ホント?)
もう、お前と別れたりしない、ずっと一緒だ。
だから負けない、いや……負けれない。
(気迫は十分なようだな?)
「来たか……」
人影が近づいてくる。
身長180は超えているであろうその影は、俺の目の前で止まった。
「逃げずに待っていたか……それとも感知できなかったのか?」
「逃げてないだけだ、俺が勝つのに逃げる理由が見あたらねぇ」
そうだ、俺達三人なら負けはしない!
「中々の自信だな……失望させてくれるなよ?」
「もちろん……そのつもりは無い、俺はあんたを倒す!」
《双極》を……相棒と真紅を構える。
「我は闘鬼、ただ剣を取り敵を断つ、剣の都よりここに我が牙となる刃を呼ぶ」
男がつぶやくと男の手元に二本の剣が現れる。
「……行くぞ?」
男が動き出す――
一撃目の剣が頭上から振り下ろされ――
速い!?
[キィン!]
何とか反応して相棒で刃を止める。
――が、二撃目の刃がすぐさま横薙ぎに迫る。
[キィン!]
ギリギリの所で反応……《真紅》で刃を止める。
「反応速度は……中々だな」
「そりゃぁどうも……」
《双極》で攻撃を防いだ状態。
両手がふさがっている……まぁ、それは男も同じことだが。
「我は闘鬼、ただ剣を取り敵を断つ、剣の都よりここに我が牙となる刃を呼ぶ」
「!?」
頭上に剣が三本現れ、真上から降ってくる。
――が、速度はそんなに速くない。
脳内をクリアにして盾をイメージする。
「Creation」
頭上に盾が創造され、剣を弾く――
弾かれた剣は目標に届かず落下する。
「その能力は、やはり持ったままか……」
「何?」
(どう言うことだ?)
男が《双極》で止めていた剣を引き戻す。
「そろそろ……本格的に行くぞ?」
「何?」
あの速度で、本気じゃないってか?
――瞬間、目の前に斬撃が迫る。
(お兄ちゃん!)
(詠唱無視、いくぞ?)
頼む――
[ガキィィン!]
構築された歪な盾が斬撃を防ぐ。
(よかった……)
「いつ見ても厄介な能力だな――」
「しかし、今の速度でついてこれんなら……失望もいいところだ」
「ふざけんな、まだまだいけるよ!」
……StartOfFlameだ、相棒。
(仕方ないか……)
「StartOfFlame」
詠唱を終えると全身を紅蓮に輝くオーラが包み込む。
「ほう……」
男の口元が釣りあがる。
「行くぞぉ!」
地面を弾き、高速で男に近づき相棒を振り下ろす。
「ハァ!」
[ガキィン!]
男が刃を右手の刃で弾く……だが――
遅い!
男が弾いた瞬間に、真紅で横薙ぎに斬りつける。
[ガキィィン!]
横薙ぎの一撃も防がれる――
「クソッ」
連続で刃を振るうが、ことごとく《双極》での攻撃は弾かれる。
[キィン! キィン! キィン!]
剣戟が続く、その激しさは少しづつ増していく。
だがしかし、いくら速力を上げても……男は笑っている。
「面白い、新米がここまでの強さとは……《修羅》以上だ!」
大きく剣は弾かれて男が後方に跳躍する。
「名を聞いておこうか? その実力、番号で呼ぶのも忍びない」
「グレン……《双極の星グレン》だ!」
「そうか、双極の星か――」
「聞いたからには拙者も名乗ろう、我はリューガ、《鬼神リューガ》だ」
男が……リューガが剣を構える。
今までに無い……圧倒的な圧力。
(お兄ちゃん――)
「行くぞ? 我が秘剣、得と見よ!」
男が……地面を蹴って動き、そして――
!?
気付いた時には……男が俺のすぐ左隣にいた――
剣はすでに振り下ろされて……いる?
(どうなってるの……?)
真紅の疑問に満ちた声……次の瞬間、俺の左腕は地面に落ちた。
!? 馬鹿な! どうなってるんだ?
「我が秘剣……《一刀両断》だ」
「一撃で死なれてもつまらんのでな……さぁこの技を超えて見せよ」
笑みを浮かべ、リューガがこちらを見据える。
「グレンよ、御主の能力は知っている、早くその左腕を直せ!」
(今まで我等の戦いを見ていた……という事か――)
みたいだな、なら……出し惜しみする事も無いな。
「Creation」
斬り落された腕は、分解され再構築される。
地面に落ちた真紅を拾って構えなおす。
それにしても……だ、どうすればいい?
あの一撃……《一刀両断》、まさしく名前の通りの力――
(あの速度では、回避は出来んな)
それにアレだけの速度で振り下ろされる剣の破壊力は相当な物だろう。
(なら、防御も不可能だな)
どうすればいい?
新しい力のFreezingVanishなら――
(いや、奴のあの剣技は、聖具の能力ではない――)
何?
(おそらく……所持者の技能だ、エーテルの流れを感じなかった)
冗談だろ? いくら身体能力が強化されてるからって……
あの速度の一撃は――
いや、今は……思考を走らせる。
何か、何かコノ状況を打開できる方法はないか?

to be continued・・・

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