EternalKnight
<決意と再会>
<SCENE095>
閃光がはれる――
燃え上がるような輝きを放っていたオーラが……消えていく。
「!?」
全身が軋む……
オーラの大量消費でだるさが来るとは思ってたけど――
この痛みは予想してなかった……
(能力によって強引に引き上げられた力に――)
(体がついていかなかったか……)
お前は……大丈夫か?
(自分の心配をしろ)
《原初》は……大丈夫だ、刃こぼれ一つ無い。
自分の状況を把握して、ゆっくりと振り返る。そこには――
黒い刃を構えた蒼二がたたずんでいた。
蒼二が口を開く――
「なんなんだっていうんだよ……反則じゃないか、そんな能力!」
その手に握られた黒い刃にはヒビが入っている。
蒼二にゆっくりと《原初》を構えて一歩ずつ歩み寄る。
全身を走る激痛が……ばれないように。
「形勢……逆転だな」
「くそ……くそ、くそぉぉ!」
「――なんで、なんでだ! 僕が君なんかに負けるわけ無い!」
「もう、いいだろ? 俺も命までは取りたくない、あきらめるんだ」
「だれが……誰が、君なんかに!」
周囲にとんでもない量の氷の弾丸が現れる――
脅しのつもりかも知れないけど……
「この距離で俺に攻撃しようとしたら、お前も――」
「うるさい、僕は誰にも負けないんだ、僕が最強なんだよ!」
「お前は……最強なんかじゃない、現に今……俺に負けただろ?」
「負けた? 何言ってるんだよ――」
「この力を……《終末》を手に入れた僕は、選ばれた人間なんだ!」
氷の弾丸は尚も増え続ける……
「君なんかに負けるはず無いんだよ!」
「――僕は誰にも負けないんだ! どんな奴でも僕には勝てないんだ!」
数千発にも及ぶであろう氷の弾丸は――
俺と蒼二の周りを完全に包囲した。
「だから……お前は存在しちゃいけないんだぁぁああ!!」
氷の弾丸が……一斉に動き出す。
ドームを作っても……今は蒼二がすぐそばにいる。
そのためドームは作ってもすぐに蒼二の能力で崩壊させられるだろう。
(相棒、もう一度StartOfFlameを……)
でも、それじゃあ蒼二が!
(いいから、今は自分が生き残ることだけを考えろ!)
「Start……OfFlame」
輝く紅蓮のオーラが体を包んでいく――
(アイツの事だ……自分から死ぬようなことはしない)
弾丸が迫る――
目の前は完全に氷の弾丸に塗りつぶされていて――
周囲の状況は確認できない。
弾丸は輝くオーラに触れる度に消滅していく。
そして、弾丸の嵐がやみ――
そこで俺が目にしたモノは……
全身から真っ赤な血を流し――
ヒビの入った剣で七割は凍りついた体を支えている蒼二だった。
(策なしで……同士討ちを狙ったのか――)
紅蓮に輝くオーラが消えていく。
「会長、大丈夫か!」
「負け……な……い、負けな……い、負け……ないん……だ――」
ぼろぼろの体で……それでもまだ――
弱々しい声で同じ言葉をうわ言のように繰り返す。
「僕は……負けな……い……ん――」
そこで、全ての動きが止まった。
(終わった……な)
そう……だな。
後は、蒼二の聖具……黒い刃を壊すだけだ。
朽ち果てた体を支えている黒い剣を――
《原初》で、横薙ぎにして砕いた。
黒い剣が支えていた凍りついた赤い骸は――
支えすらなくして……倒れる。
氷が何割か砕けた。もう何があっても――
紅い骸は起き上がらないだろう。
黒い刀身は粒子に変わり、銀の刃に吸い込まれていく。
「……じゃあな、会長」
赤い骸に背を向けて……
俺は最後の言葉送った。

<Interlude-アレン->
《救い》の剣が、結界と衝突する――
「うぉぉぉぉおおおおお!!!」
[キィィィィィィン!!]
結界が……徐々に軋んで行く。
そして、《救い》の剣は、ついに結界を切り裂いて――
《運命》に刃を突き立てた。
「さぁ……コレで、終わりだぁ!」
「そんな馬鹿な……何で、何でなんだ!」
「終わり……だ」
刃を振り上げ……れない!?
「く……そぉ」
《救い》の剣が崩壊していく、そう……《時間切れ》だ。
そして……限界を超えた俺の体は、言うことを聞かなくなる――
「は……はは、そうだ。あれだけの力を使った反動が無いはずが無い!」
「――さぁ、反撃させてもらおうか?」
《運命》が、その手に持った黒い杖《運命》で俺を殴り飛ばす――
「ヅァッ……」
(アレだけの力を使っても……届かないのか――)
「ここまであせったのは久しぶりだったよ……名を聞こうか?」
「お前に……名乗る、名前は……無い」
「まぁいい、ならば私の名を教えてやろう――」
「我が名は《運命を操る者ロギア》、SSSクラス《運命》の担い手だ」
「くっそぉ……」
全身に激痛が走り、まともに動くことさえ出来ない。
「止めを刺すさす前に――」
「名前ぐらいは聞いておきたかったんだが……ん?」
突然《運命》は何かに気がついたように顔をあげた。
「どうやら決着が付いたようだな……勝ったのは一番」
「――掛けは奴の勝ち……か」
――確かに、紅蓮君が勝ったようだ。
もう一人の少年の聖具の反応が無くなってる。
「……なら、私は君と一緒にいた子を片付けに行こうかなぁ」
「ま……て」
「どういう事なのか知らないけど……」
「リューガの奴、しとめてないしな」
「待て……よ、まず俺を、倒してか……らだろ……うが」
「どうした?」
「君の前で彼女を殺すと言うアイデアが思い浮かんだんだが?」
「ふざ……けんな、俺はまだ――」
「そんな事言っても……君はもう立ち上がれないだろ?」
《運命》……いやロギアが俺を置いて歩き出し――
少し行ったところで振り返る。
「彼女をここまで連れてくるから……しばらく待ってるんだな」
「っ……くそぉ」
体は動かない――
(……すまなかった。我が力では《運命》に届かなかった)
別にいい、お前がいなけりゃ……あの時に終わってたんだ。
(だが、私がいなければ……こんな思いをせずに済んだのだぞ!)
いい、今は何とか立ち上がる手段を……
《再生》は、外傷の時間逆行修復だし――
外傷は皆無だが全身に激痛が走る、この状況はどう打開すればいいんだよ?
(どうすることもできん――)
くっそ……
時間は無情に過ぎていく、ただ最悪の瞬間に近づきながら……

<SCENE096>
何とかなった――
《原初》は砕け散った黒い剣の光を吸収していく。
左手の紅い指輪も光に変わって《原初》に吸収されていく。
コレで……よかったのだろうか?
相手がどんな人物だったにせよ――
俺は、人を殺したんだ。
(お前は……お前の信じる道を進めばいい)
信じる……道?
(そう、全てのモノを救うことなど誰にも出来ない)
どうして!
(正義は、護られるモノにとってだけの正義だと言うことだ)
……どう言うコトだ?
(何かを護る為には、必ず犠牲が必要なのだ)
犠牲? どうして。
(――なら、お前は何故、魔獣を倒していた?)
ソレは、力の無い人達を護るために決まってるだろ?
(そう、そのとおりだ――)
(お前は護る為に魔獣の命を犠牲にしたんだ)
!?
(それだけじゃない、お前は肉も魚も食うだろ?)
(ソレも、生き物を犠牲に……命を犠牲にしてるんだ)
仕方ないんじゃないのか!
魔獣は人を襲うし、肉も魚も食べないわけには……
(そう、生きる為、護る為には――)
(必ず犠牲が必要なんだ、だからお前は間違っていない)
(悩むな、無限の命を持つって事は――)
(同時にたくさんの命を奪う事になるんだ)
それでも俺は……
(自身の信念を貫けばいい、全てを護ることは……絶対に出来ない)
(取捨択一が出来ないなら、ソレができないなら――)
(ここで、俺との契約を切れ!)
全部が護れないなら――
俺は……護れるだけのモノを護りたい。
(ソレがお前の出した結論だと言うのなら――)
(それだけは、決して見失うなよ?)
全ては護れない――
そうだ、護れるだけのモノを護ればいいんだ。
その結論に至ったとき――
光を全て吸収しきった《原初》は眩い光に包まれた。
あまりの眩さに瞳を閉じる。
目蓋を透過する光に包まれていく――
いや、光は全身と同化していく。
体が融けていくような、そんな感覚に包まれる。
どうなってんだよ……コレ?
相棒からの返答は無く、俺の意識は少しずつ消えていっ……た。

<SCENE097>
意識が少しずつ戻って来る。
同時に体が組み上げられていくような……そんな感覚に包まれる。
あの時、相棒が《創造》から《原初》に進化した時――
あのときの左腕が修復されていくような……そんな感覚。
目蓋を開くと、今まさに右手の指先が構築され終わる瞬間だった。
「どうなってたんだ?」
「《EtarnalKnight》になる為の最後の仕上げだ」
相棒の声がする。
? なぜか違和感を感じる。
なんだ? 何がおかしい?
体の痛みが消えている……いつの間にか《原初》を持っていない。
違うな、痛みが消えてるのは、全身が分解されて構築されたから――
《原初》が無い……これも分解された時にその場に残ったのだろう。
じゃぁ……なんだ? この違和感は……
「無視をするな、相棒」
仕方ないだろ、妙な違和感を感じるんだから――
「相棒……聞こえてるか?」
なんだ、この違和感は一体――
「おい、相棒」
突然、後ろから肩を捉まれる。
「誰だよ、今考え事を――」
振り返ると、そこには――
俺がいた。いや髪が銀髪になってる俺……ってのが正しい表現か?
相棒……アレは?
「相棒? 何を驚いてるんだ?」
って……あれ?
相棒の声が目の銀髪の俺から聞こえる?
「あぁ、この姿か? 俺もこんな姿になったのは初めてだ」
「《原初》?」
「どうした? ところで俺の顔はどのようになっている?」
「自分では見れないんからな」
えっと、目の前にいる銀髪の俺は……《原初》ってコトか?
「ん、どうしたんだ、難しい顔して?」
「あぁ、悪い相棒、で……外見だっけ?」
「そうだ、どんな顔だ?」
「体格は解るんだが……顔はさすがに自分では見れない」
「俺だ……銀髪の」
「はぁ?」
「いや、だからお前の顔……銀髪の俺なんだよ」
あ……なんか冷たい目で見られてる――
ってか今までの会話の流れからもわかるが――
今は俺の考えてることは読まれて無いらしい。
「ホントだって……」
「……そうか」
「外見が無い俺が、心情空間内での姿が無い為、契約者のお前と同じ姿になったて事だろうな」
「銀髪なのは何でだ?」
「お前の髪は魂の質に呼応した色になる特色なのだろう」
なるほど、だから赤髪なのか……
普通の日本人なら黒のはずだしな――
よく見ると相棒の眼は銀灰色だった。
おそらく眼も同じ理論だろう。
「そういえば……心情空間ってなんだ?」
「我も来たのは三度目だが一度目にそう教えられた、我の内部だ」
「で、何で俺もここにいるんだ?」
「我が連れてきたのだ、《EtarnalKnight》となったお前に――」
「祝いに渡したいモノがあったからな?」
「そういえば……俺ってもう《EtarnalKnight》になっったのか?」
「うむ、先ほどお前の存在情報を書き換えたのでな、もう戻れんぞ?」
「覚悟してたことだ――」
「それにさっき自分のこれからの生き方……信念を決めたんだ」
「それでいい、さて、渡したいものは……あの扉の向こうだ」
一面の白い広間の隅を指差す《原初》。
その指の先、広間の隅には扉が一つだけあった。
「ここは時閉の世界のような場所なのでな、好きなだけいればいい」
どういうことだ?
「ただし、俺はここで待っていると言うことを忘れるなよ?」
「何のことだ? 長居するようなもんなのか?」
「行けば解る」
「ふぅ……」
なら、さっさと行くか。俺は扉に向かって走り出す。
距離はなぜか知らないけど結構ある――
《原初》を持っていないせいか、たいしたスピードが出ない。
やっとの事で扉にたどり着き、その扉に手を掛けて扉を開いていく。
その扉の向こうには……紅い部屋が広がっていた。
その部屋の中心に、人影を見つける――
その人影は――
紅い髪をした、その人影は――
紛れもなく……見覚えのある――
いや、忘れる訳が無い……少女の姿だったのだ。
「真紅!!!」
俺は声の限り叫んだ――
いや、叫ばずにはいられなかった。
俺は、真紅に……妹に向かって走り出した。

to be continued・・・

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