EternalKnight
<救世主に許された一振りの剣>
<SCENE091>
目前に無数の氷の弾丸が迫って来る――
何度やったて……全部防いで隙えおついて反撃の糸口を見つける。
脳内で強固な盾をイメージする。
「クリエイション!」
前面に盾が瞬時に構築される――
負担は微塵も体にかからない。
[パキィィン!]
氷の弾丸は盾に衝突して砕け散る――
この程度の威力なら……俺の盾の強度なら問題ない。
「残念だったねぇ……一度防がれた攻撃を何度もすると思うかい?」
(気をつけろ相棒……前からだけじゃ無いぞ!)
「!?」
気づいたときにはすでに遅く――
氷の弾丸が俺の背中に数発被弾した。
「グゥッ!?」
鋭利な刃物のような氷の先端が背中に突き刺さる――
接触の衝撃で砕け散ちった氷の破片が更なる傷を俺に与える。
(よくできた能力だな)
そんなことを言ってる場合じゃないだろ、相棒……
「僕のEndedOfGlacierはどこからでも氷を精製できる能力――」
「君に勝ち目は始めから無いんだよ」
相棒のクリエイションは敵の能力で攻撃には転用できない。
相手は俺に対する遠距離攻撃が可能、接近戦は同等――
どうすれば……
って……《原初》お前進化したのに追加の技は無いのか?
(――あるかも知れないが……今は使い方が俺にもわからん)
気合で思い出せ、時間は稼ぐ。
(それが勝利に貢献できるものかどうかはわからんぞ?)
それでも、今はそれに賭けるしか無い。
(わかった、しばらく持たせろよ?)
「反応なし、それとも相談でもしてるのか――」
「どっちにしても……君は僕には勝てないんだよ、紅蓮?」
「強気でいられるのも……今のうちだ」
「もう一度いくぞ? 今度はかわしきれるかな?」
氷の弾丸が次々と現れる――
前後左右と頭上、全方位からの攻撃か――
脳内をクリアにしてイメージを膨らませていく。
弾丸が一斉に射出される、攻撃法さえわかれば……どうって事無い。
全方位からの攻撃……それを防ぐには全方位への防御だ!
「クリエイション!」
ドーム状の盾を構築する。
人を一人包み隠す程のサイズはもはや盾とは言えないが……
[パキィィン!]
氷の弾丸は全てドームを突き破ることなく砕け散る。
構成が完璧で無いモノは一定時間経つと消滅する。
その法則によりドームが消滅しきった瞬間――
氷の弾丸が再び降り注ぐ。
「!?」
高速で脳内のイメージを広げて――
[パキィィン]
「!?」
気付いた時には……俺の足元が凍りついていた。
どうして?
そんな疑問が……僅かな隙を生み――
氷の弾丸が俺の体に直撃した。

<Interlude-アレン->
[ギィィン!]
《聖剣》はあっさりと止められる。
「無駄だよ、その程度の力で――」
「いや、どんな力でも俺の結界を破ることは出来ない」
「まだだ!」
全身の力を《聖剣》に流し込む。
《聖剣》は周囲のエーテルも吸収して金色の輝きを纏っていく――
「何をしても無駄だって言ってるだろ?」
「黙れぇ!」
輝く《聖剣》を全力で結界に叩きつける――
[キィィィン!]
が……結界はびくともしない。
「くそ、くそ、くそぉ!」
「無駄なんだよ……この結界は突破されない運命を内包しているからね」
「うぉぉぉぉおおお!!」
《聖剣》の輝きが薄れていく……
(まさか、ここまでの差とは……)
そして……《聖剣》の光は完全に消えてしまう。
「そろそろ、こっちから行くぞ?」
結界の外に輝くナイフのような物がいくつも完成していく。
「そんなモノォ!」
輝くナイフが打ち出される。
《覚醒》により強化された速度で《聖剣》を振るいナイフを叩き落としていく。
「残念でした、そんな簡単に防げる攻撃を……すると思ったかい?」
「何?」
叩き落したナイフは……再び動き出し俺に向かってくる!?
「どうなってんだよ!」
「それは君に当たるって運命を内包させてるからね――」
「君に当たるまでいつまでも動き続けるのさ」
馬鹿な!?
その一瞬の隙にナイフが体に刺さっていく――
その数は軽く二十本を超えている。
「つぅ……」
俺に刺さったいくつものナイフは……地面に落ちていく。
「くそぉ」
全身に二十箇所以上の傷……さすがに放置はきついな――
「SummonRegenerate」
輝く光が俺の傷を癒していく、正確には傷を負う前に時間を戻す。
すぐさま《再生》を待機状態に戻す。
「さぁ、仕切りなおしだ」
「複数契約……いや、違う。能力のコピーか?」
(そんなことはしてないんだがな?)
さて、これからどうしたらいい?
あの結界を突破しない限りどうすることも出来ない……
「さて……どうしたもんかな」

<SCENE092>
俺の体にいくつもの衝撃が走る。
「ヅァッ……」
全方位からの氷の弾丸によるタコ殴りを受ける。
「クッソォ……どう、なってんだよぉ」
体が思ったように動かない。
足元は凍結して一歩も動けない――
それに全身のいたる所が氷結している。
「誰が突然足元を凍らせれないって言った? 油断大敵だな」
「まだ……まだだぁ!」
「諦めが悪いねぇ? そんな体で何が出来るって言うんだい?」
まだなのかよ……相棒?
(まだもう少し……時間がかかる)
「まぁ、粘ってくれればその分楽しめるんだけどね?」
「まだだ、まだまだ、まだいける!」
全身からオーラが溢れ出す、が……蒼二は余裕の表情を崩さない。
「まだそんなに頑張るのかい?」
「――いくらオーラがあったて動けないなら無駄だよ?」
絶対に負けられない――
共に戦うと、必ず戻ると……そんな約束が、俺にはあるから。
「もう一度行くよ? 準備はいいかい?」
氷の弾丸が再びいくつも現れる――
まだなのか? これ以上はいくらなんでも――
そして、そんな想いとは裏腹に……弾丸はまたも射出された。
弾丸が迫る、足元は氷結してかわせない。
いや……全身が所々氷結している以上――
叩き落とす事も不可能だろう。
クリエイションで防いでも――
構成限界を超えてドームが崩れた瞬間に弾丸が当たる。
それでも、諦めたりはしない――
最後の瞬間まで相棒を信じて……言葉を紡ぐ。
「クリエイション」
俺は相棒を信じてドームが展開した――

<Interlude-アレン->
仕方ない……《救い》切り札を使うぞ?
(正気か? アレは使った後の反動が大きい――)
(それに持続時間も……どんなに粘っても三分がいいところであろう?)
それでも……《聖剣》と《覚醒》を限界まで行使して駄目だったんだ――
残された手は……アレしかない。
「さぁ、他のコピー能力を見せてみろよ?」
向こうも……急かしてるみたいだし、行くぞ?
(汝の判断に任す、好きにするがいい)
勝つには……もうコレしかないから――
《聖剣》と《覚醒》を待機状態に戻す。
「――Ultimate」
意識を集中させて……紡ぐ。
「――Sword」
力を一点に集めて……紡ぐ。
「――Of」
ただ一振りの剣を呼ぶために……祝詞を紡ぐ。
「――Messiah」
そして……全てを救う――
救世主に許された一振りの剣が現れる――

<SCENE093>
[パキィィン]
ドームが氷の弾丸を防ぐ――
しかしドームが構成限界を超えて少しずつ崩れだす。
最後の瞬間まで、生きている間は……諦めるわけには行かない。
だがしかし……ドームはついに完全に崩れ去る――
最後の希望である、相棒の声は聞こえない。
弾丸の雨が……再び俺に迫って――
氷の弾丸はまるで嵐のように俺の体を殴りつけてくる。
嵐がやんだとき……体の六割以上が凍りつき――
かろうじて凍らなかった四割も――
もはや動くことも不可能に思える程……傷だらけだ。
まだ……まだ立っている、生きている。
「ま……だ、まだ――だ」
「いい加減諦めなよ、君はよくやったと思うよ?」
「まだ……だ、まだ、やれる」
「ふぅ……いたぶっても諦めないんじゃ……何も面白くない」
「――もう始末するか」
黒い刃が迫る――
こんな所で、終わるのか?
諦めない――
この命が尽きるまで……相棒を信じる。
景色が一瞬で黒く塗りつぶされる――
あぁ、やっとか――
(待たせた、相棒……)
……遅いぞ、この馬鹿ッ
(愚痴は後だ、術式と概念を送る――)
(しっかりと脳内で処理しろよ?)
散々待たしといてソレかよっ……まぁいい、頼む。
(行くぞ?)
相棒の声とともに……脳内に流れ込む情報――
――始まりの炎
――始まりへ返る炎
――始まりに還す炎
ソレが……新たな力《StartOfFlame》
(――理解できたか?)
あぁ、コレならいける……か?
強力な力だけど――
消費するオーラ量が半端じゃない。
(強い力には必ずリスクが生じるものだろ?)
解ったよ、さぁ……反撃と行くか?
(おうよ!)
景色が元に戻っていく――
黒い刃が、俺に止めを刺す刃が……迫る。
「StartOfFlame」
新たな力……始まりの炎の力を、刃が振り下ろされる直前に発動させた。

<Interlude-アレン->
紫紺に白のラインを引いた手袋型の聖具《救い》。
その能力は、消滅寸前の聖具を文字の通り救う事――
それによりその聖具を自らの内に内包――
自身の契約者により自由に引き出すことの出来る能力。
それが、様々な能力を使う事の出来る《救い》の正体。
しかし……一つだけ例外がある。
それが《救世主にのみ許された一振りの剣》だ。
救世主の名を冠するのは、偏にこの剣の為――
――内包した聖具達を救う。
つまり内包した全ての剣より強くなければならないのだ。
「恐るべきオーラ量だ、この《運命》すら凌ぐほどのな!」
理解していても、未だに余裕を見せるのかよ。
よっぽどあの結界の強度に自身があるらしいな?
(急げよ?)
っと――時間が無いんだ、急がなきゃな。
一瞬《運命》に視線を移して――
地面を軽く蹴るー―
《運命》との距離が一瞬――
ソレこそ、コンマ1秒未満で詰め――
全力で《救い》の剣を叩きつける。
[バチィィィン!!!]
「速いな……だがスピードでは、この結界は突破できん!」
まだ駄目か……ならば――
有り余るようなオーラ、ソレをフォースに変換し剣に纏わせていく。
今の破壊力は……ざっと輝きを纏った《聖剣》の十倍強――
その剣を神速で何度も叩きつける。
[バチ! バチ! バチ! バチィィィン!!!]
「まだ解らないのか? この結界は突破されない運命を持ってるんだよ」
そんなもの……関係あるか!
「UltimateSevenに匹敵する力がなければ、この結界は破れない」
「――さっさと諦めな?」
「関係あるかよ! そんなことぉぉ!!」
(主、これ以上は汝が危ない。出力を下げろ!)
まだだ……まだコレは全力の半分以下の力しか出せてねぇ!
(やめろ! 全力を使えば……汝の体が持たんぞ!)
持つ、いや……持たせて見せる。
全力で勝てたとしても、死んじまったらリズィが悲しむんだから。
俺は……絶対に死なないし、負けない!
「ウォォォォォォオオオオオッッ!!!」
《救い》の剣が持てる全ての力を捻り出す。
オーラが溢れ出す――
いや、限界を超えたオーラに全身が悲鳴を上げる。
有り余るオーラを可能な限りマナとフォースに圧縮して――
《救い》の剣に限界までフォースとマナを纏わせる。
「何!!? まさか、貴様が――」
爆発的なオーラに《運命》もおびえ始める。
「貴様の聖具がUltimateSevenの一つのだというのか!」
「そんなもんじゃ……ねぇよ――」
全身に走る激痛と脳の回路が焼き切れるような感覚――
ソレに耐えながら、尚も力を挙げていく。
「そうだ――」
「そんな聖具はUltimateSevenを記した記述には書かれていなかった!」
《運命》が自分に言い聞かせるように叫ぶ。
今までの人を見下した態度はどこへ行った?
「だが……それなら貴様は、貴様のその力はなんだと言うんだ!」
教えてやるよ――
「コレは……俺達の――」
「いや……お前に踏みにじられた、全て命の想いを――」
《救い》の剣を高々と掲げる。
「その想いを、その想いを背負った、力だぁぁぁぁああああ!!!」
《救い》の剣は……《運命》の結界と衝突した――

<SCENE094>
炎が……絶望を薙ぎ払う穢れなき始まりの炎が……舞う。
「どうなっているんだ?」
「――まさかこの期に及んでまだ力を隠し持っていたと言うのかい?」
切り裂かれる……ただし刃は完全に振りぬかれていない。
深々と傷が体に残る。……しかし、まったく問題ない。
――始まりの炎。
反撃の狼煙になる始まりの炎――
炎のような紅蓮のオーラが、全身を包み込み力が漲っていく。
――始まりへ返る炎。
全身の傷と凍結……
それら全てが全て炎がによって癒されていく。
……いや戻っていく、始まりへ返る炎によって――
「ばかな……そこまでの力がいったいどこから?」
「切り札は……最後まで取っとくもんだぜ?」
地面を蹴り、蒼二に近づく。
「っく! よるなぁ!」
距離を詰めきる前に……蒼二が氷の弾丸を打ち出す。
――が、弾丸は俺に触れる前に紅蓮のオーラに触れて溶けていく。
いや、オーラに触れた瞬間に固体から気体に還っている。
――始まりに還す炎。
文字通り物質を固体から気体に還す――
《固体》として存在する物質を《気体》と言う《始まり》に還す炎。
さすがに水のような沸点の低い物だけだが――
この三つが《StartOfFlame》の力。
俺に触れようとする弾丸は全て《気体》すなわち《無》へと還る。
もちろん、接近する勢いはなんら変わらない。
弾丸で俺の勢いを殺せないことを悟ったのか――
蒼二が黒い剣を構えようとする……が、遅い!
「はぁぁぁあああ!!!」
紅蓮のオーラを纏った《原初》を全ての力を込めて――
自身の出せる最高の速度で振りぬいた。
「バキィィィン!!!」
激しい音と閃光が……辺りを包んだ――

to be continued・・・

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