EternalKnight
<闖入者〜救世主と穢れ無き者〜>
<SCENE083>・・・夜
相棒が砕けて……光の粒子に変わっていく。
「冗談だろ、おい……相棒!」
「残念だ、まぁいいじゃないか、もう一本あるだろ君の聖具は?」
蒼二の目線の先――
そこに転がっている《真紅》を左手で拾って構える。
右手に握った《創造》は刀身はもうほとんど残っていない。
それなのに……俺はまだ相棒の柄を握り締めている。
「まぁ二本あって駄目だったんだ――」
「一本じゃ、もう無理だろうけどね」
――俺はどうすればいい?
《創造》が無い以上、クリエイションの使用も出来ない。
「さぁ……いくよ?」
どうすればいい? どうする?
――俺はどうすればいいんだよ!
蒼二が剣を構えて俺に向かって迫ってくる――
振り下ろされる、その刃をどう防げばいい?
右手《創造》は柄しか残っていない――
そんなモノで何ができるんだろうか?
左手の《真紅》で攻撃を止めても《創造》と同じ結末を迎えるだろう。
つまり《真紅》も破壊されるということ――
刃が迫る……どうしようも無いのか?
ならもう、諦めるしか……
【諦めちゃ駄目!】
真紅!?
――そうだ、諦めるわけにはいかねぇんだ!
お前と一緒に……戦うと俺は決めたんだから――
俺はお前の力を信じる!
「うぉぉぉおおおお!」
[ガキィィン!]
《真紅》で黒い剣を弾く。
行けるか?
「へぇ、まだやる? まぁ死にたくないならそうだろぉけどね。」
「――でも、さっきのでチェックメイトだ」
「……」
「自分の剣を見てごらんよ?」
《真紅》にはヒビが入っている。やっぱりもう……
駄目なのか? 今度こそ……
「あの魔獣を倒した時の能力は先に潰した方の物か?」
「――もしそうなら……勿体無い事したかな?」
《創造》は残った柄すらも、もはや八割が光る粒子に戻っている。
「仕方ない……他の相手を当たろうか――」
「期待してたんだけどねぇ? 君には」
黒い刃が振り上げられる、俺と《真紅》の命を刈り取る刃が……
「駄目なの……か?」
「さようなら、後始末は任せといてくれよ?」
黒い刃が真っ直ぐに振り落とされる――
いや……まだだ。
まだ砕ける寸前でも刃があるのに――
諦めることなんて、俺には出来ない。
[バキィィン!]
ヒビの入った《真紅》で攻撃を止める。
――が、やはりそれに耐え切れず《真紅》は砕けた。
黒い刃は、多少勢いが殺されたモノの軌道を保ち俺に迫り――
あっさりと、俺の左腕に刃が食い込み……
次の瞬間には俺の左腕は肉体から切り離されて……
――地面に転がった。
「ッガァァアア!!」
「腕を斬り落されても叫ぶのはそれだけかい? たいした根性だね」
相棒に続き《真紅》までもが光の粒子になっていく――
今度こそホントに手が残っていない、終わり……なのか?
「さて、じゃ始末するか――」
「怨むなら力の無い聖具と契約した自分を怨むんだね」
そういいながら、蒼二は黒い刃を振り上げる。
《創造》の柄の感触は無くなっていく――
左腕の-真紅-の感触は感じられない。
そりゃそうか、腕ごと落されたんだし。
痛みのせいか、それとも死の直前の恐怖からか――
思考は酷くすっきりとしている。
なのに……周りが黒くフェードアウトしていく。
自分と手に握ったかすかな《創造》の感触以外は何も感じられない。
生き残ろうって約束も果たせなかった。
無様で――カッコワルイな俺。
【――んだぁ?】
気のせいだろか、《創造》の声が聞こえた気がする。
【ふぁぁ……って相棒?】
相棒?
【人が寝てたのに起しやがって】
お前……そもそも人じゃないし
【そういう突っ込みは無し】
……そうか俺は死んだのか、だからお前がここにいるんだな?
【おいこら、勝手に殺すなよ】
だってお前は壊されて……
【うっ……確かに勘違いされても仕方ないか】
って……ことは生きてるのか?
【あぁ、しかし、少し居なくなってる間に……】
【ずいぶんこっ酷くやられたなぁ】
あぁ……俺の力じゃ無理だった、って話をそらすなよ?
【どうして俺が生きてるかって?】
そう、どうして?
【説明は面倒だから後――】
【それより今はあの猫かぶりを叩きのめしてやろうぜ】
そうだけど、どうやって?
仮にお前が生きててもも一本じゃ、どうしようもないんだ……
《真紅》は、さっき折れちまったんだよ……
【あぁ心配すんな、お前の妹の魂は消滅しない】
【相棒の俺が保障してやる、そして我等は絶対に勝てる】
……信じる。
いや、信じたい。それで俺はどうすればいい?
【お前は立ち上がってくれればいい――】
【それと、進化したから再契約がいるんだが?】
解った、契約だ……新しい名前は?
【俺の新しい名は-原初-だ】
所で……お前性格変わったなぁ。
【正確には元に戻った訳だが、長引きそうなので後回しでいいだろ?】
あぁ、別にかまわない。
【それじゃあ……行こうかぁ?】
あぁ、行くぞ相棒!
【紅蓮よ我は汝の刃となる、その契約を今ここに結ぼう――】
銀の光が体を包み世界が光を取り戻す。
消えかけた銀の剣の柄が――
そこらじゅうの散っていった光を集めていく。
「何が起こってるんだ……」
蒼二が振り上げた剣を振りかぶった状態のままで止めてつぶやく。
崩れた紅い剣から漏れ出す粒子も一緒になって集まっていく。
それどころか銀と紅の粒子は俺の左腕まで構築していき――
転がっていた俺の左腕は少しずつ分解されている。
構築してるのは銀と紅の光なのに……
どうして俺の腕が消えていくんだろうか?
まぁそんなことはどうでもいい――
今は、どうでもいい。
「何かって、お前を倒す準備にきまってんだろ?」
「ふざけるのもいい加減にしてくれよ」
呆れた表情で、蒼二は振り上げていた剣を振り下ろす。
まずいな、完成するのが……間に合わない。
(心配するな、まったく問題ない)
黒い刃が俺の体を切り裂く前に――
[ガキィィィン]
「何!?」
輝く銀と、どこまでも深い紅の二色で彩られた剣が黒い刃を止めた。
まだいくらか漂っている紅い粒子は俺の左指に集まって指輪の形になる。
ホントに間に合いやがった――
ソレはともかく――
「行くぜ相棒、俺とお前と真紅の力で、あの猫かぶりヤローをぶちのめしてやろうぜ!」
(初めから、俺もそのつもりだ!)
全身からかつて無いほどのオーラがあふれ出す。
「へぇ……二本の剣を融合させて進化させるとはね」
余裕で居られるのも今のうちだ!
「さぁ、行くぜ相棒!」
(おうよ!)
「調子付くなよ!」
[ガキィィィン!]
相棒と黒い刃がぶつかり合う――

<Interlude-???->
「まずいな、最後の二人が戦い始めてる……」
もうすぐそこだ、決着が付く前に間に合ってくれよ――
「あっちゃん、準備は出来てる?」
「リズィこそ大丈夫か? 今回は《運命》と戦うことになるんだぞ?」
右手の手袋……《救い》をはめた手を握り締めながら――
リズィに声を掛ける。
「私も……大丈夫、準備も万全だよ」
純白のローブ《神聖》を纏う彼女の手は少し震えている。
「大丈夫、怖がらないでいいよアイツは俺が倒す――」
「リズィは俺をサポートしてくれればいい」
「うん……」
「大丈夫、今までだってずっとそうしてきただろ?」
「そう・・・…そうだよね!」
「ああ、さぁいくぞリズィ?」
「うん」
俺達は世界をつなぐ門を抜けた。

<SCENE084>・・・夜
[ガキィィン!]
戦いは続く、高速の太刀で互いの剣を弾きあう。
[ガキィィン!]
速度は全くの同等、同じペースで打ち合いを続ける。
[ガキィィン!]
このままじゃ、いつまでたっても進まない――
(一度敵と距離をとるべきだな――)
(何とかこの場面を切り抜ける方法を考え出す、時間を稼げ)
やってみる……
剣を全力で叩きつける。
一瞬敵に隙が出来る――
が、全力で叩きつけたのでバランスを少し崩し、次の攻撃へは移せない。
両者が一瞬、攻撃に移せなくなった瞬間――
地面を蹴り後方に跳躍する。
よし……追撃は来ない。距離は開いたぞ、相棒?
(おう、しばらく待てよ)
そうも言ってられねぇよ――
おそらく数瞬後にはまた打ち合いが始まるだろうし。
突然、何の前触れも無く俺と蒼二の間の空間がゆがみ始め――
門のような物が現れた。そして門がゆっくりと開いていき――
その中から俺と同じくいの歳に見える男女が現れた。
「何者だ? まぁ見られたからには例外なく消えてもらう!」
俺よりも先に蒼二が動きだす。
「あんた達、逃げるんだ!」
どうして突然現れたか、そんなことはどうでもいい。
脳内が一瞬でクリアになる。
次の瞬間には盾の図面が脳内で組みあげる。
(詠唱はいらんな?)
頼む!
動き出した蒼二の攻撃が当たる前に男女の前面に盾を構築した――
詠唱を破棄した為、形は歪になるが強度は確かなものだ。
[ガキィィン!]
黒い刃は俺の組み上げた盾が確かに止めていた――
が、盾の発生したその後ろに……男女は居なかった。
「速い……」
攻撃があたる直前で男女は移動していた。
それもとんでもない速度でだ……
相棒の力で動体視力が上がっていなければ、消えたようにすら見えただろう。
「あっちゃん?」
「あぁ、今の掛け合いだけでどっちが話し通じるかよくわかった」
男女は会話をしている……何の話だ?
「なら……ちょっと待ってろよ?」
「何者なんだ……君達は?」
蒼二の質問に男が、いや青年が答える。
「俺の名は救世主アレン」
続いて女性、いや女の子が答える。
「私は侵されぬ聖域リズィと言います」
……救世主?
「救世主だと? 何をふざけた事を……」
「本名じゃなくて通り名だ、もちろんリズィのもな」
それにしても、さっきの動き……参加者?
いや、人数が合わない。
七壬さんが参加者じゃないと考えても、《無我》以外は後一人しか居ない筈だ。
じゃぁ一体……
「SummonFantasy」
不意に青年の声が聞こえると突然周りが霧に包まれていく。
「何!?」
辺りは一面の霧……周りが全く見えない
「どうなってやがる?」
(わからん、しかし……微かにこの霧……マナの気配がする)
「やっぱり、あの男は契約者でアイツの能力なのかな?」
(おそらくそうだな)
霧が少しずつはれてくる。
「そこの君」
背後からの突然の声に振り返ると――
そこには先ほどの青年と女の子がいた。
「何者だ……あんた等?」
構えを解かずに見つめる。
「さっきも言ったろ?」
「――救世主アレンだ、まぁ肩書きみたいなモンだからアレンでいい」
「侵されぬ聖域リズィ、あっちゃんと同じ理由でリズィって読んでください」
「……」
「君の名前は?」
「一宮紅蓮……紅蓮でいい」
「そうか、解った、で……構えといてもらえないかな?」
「――俺らは君の敵じゃないんだし」
「理由はどこにあんだ?」
「そうだよな……まぁいいや」
「そのままで聞いてくれ、今君が置かれている状況についてだ」
「俺が置かれている状況?」
「生徒会長が参加者で戦ってる時にあんた等が乱入してきた・・・だろ?」
「説明するぞ?」
どうやら違うようだ。
「あぁ、でもその前に……」
アレンは目を閉じ、何かつぶやいてから再び目を開けた。
「待たせて悪い、俺達について説明しよう」
「その前に一ついいか?」
「いいけど?」
「あの霧は一体なんだ?」
(確かに……その疑問は解決しなきゃな)
「まぁ、俺の聖具の能力に……なるのかな?」
「あっちゃんの《救い》の能力の一部って言うのが一番いいのかな?」
(あいまいな答え方だな)
「……効果は? 味方なんだったら教えてくれるだろ?」
「まぁいいけど、効果は対象を選んで対象に幻想を見せるってとこかな?」
「それ……だけ?」
「発動時に色々条件が付くけどな」
「じゃあ今俺の前に居るのも……」
(――幻か?)
「あぁ、それはない今さっき君のも戦ってた相手のも効果は解いた」
「じゃぁ……ここは?」
周りを見るとそこは見たこと無い部屋、といっても結構広いが。
「今君が居るここは《時閉の世界》って言う」
「特定の《EternalKnight》が作り出せる――」
「外界からの干渉をほとんど受け付けない空間だ」
「よく解らない単語が出てきたんだけど?」
「だからまず俺達付いて話そうと思ったんだけど――」
「まぁいいか、それは今からするから」
――と言ってから、アレンはなかなか喋ろうとしない。
「ん? どうしたんだよ」
「じゃ、私がまずは説明するね? あっちゃん説明苦手だから」
「……頼むよ、リズィ」
「まず私達はさっきの説明にも出てきた《EternalKnight》と呼ばれる者で」
「《EternalKnight》?」
「えぇっと、元いた世界の時間と物質から解放された人の事で――」
「時間と物質からの開放って?」
「言葉の通り、まず存在情報が書き換えられるの、それでね――」
説明は長くかかりそうだ……

to be continued・・・

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