EternalKnight
<居候>
<Interlude-聖五->・・・昼
「で……彼の名前は三枝翼(さえぐさ・つばさ)――」
「君の名前は鏡裕太(かがみ・ゆうた)君でいいんだな?」
「兄さんは西野聖五さんでいいんですね?」
「――所でどう呼べばいいですか?」
「好きなようにどうぞ、俺は君の事を……裕太君でいいかな?」
「あ、それで結構です。じゃ僕は聖五にぃって呼ばせてもらいますね?」
聖五にぃ……まぁいいか。
「おう……じゃあ翼君の事を聞きたいんだけど――」
裕太君が少し表情を暗くさせる。
「まぁ出来るだけ本人に聞いてほしいんですけどねぇ……」
「重要な話は本人に聞くよ、一つだけ聞かせてくれ」
「――何が聞きたいんですか?」
「あぁ、翼君のお兄さんの名前は……」
「あぁ、蒼二さんですか?」
「やっぱり、そうか」
「それがどうかしたんですか?」
不思議そうな顔をしている。
「いや、どうって事は無い――」
「ただ事件が起こったのが生徒会長の家かなぁって思ってさ」
「それだけ……ですか?」
驚いた顔をされてもなぁ……
「ああ、そうだけど?」
「まぁ――それだけでもアイツは嫌な顔するでしょうけどね」
「どうしてだ?」
「アイツは自分の兄貴の事を嫌ってるんですよ」
「……それは?」
どういうことだろうか。
「兄貴は優秀なのに――」
「どうしてお前はクズなんだって父親に何度も言われてたみたいですから」
「そっか」
そりゃ捻くれるわなぁ……
「さて、じゃ翼君を捕まえに行くか?」
「場所、さっきもわかるって言ってましたけど、どこなんですか?」
本気で不思議そうな顔をしている、まぁどうせ俺の当ては勘なんだけど……
「あぁ、彼の家だけど?」
「どうして言い切れるんですか」
「勘だよ、勘」
「――ホントにいるんですか?」
あぁ、疑われてるなぁ、勘とか言わずに他の事考えとくべきだったか?
「別に絶対に今日捕まえて話し聞かなきゃいけないわけじゃないし」
「そんなもんですか?」
なんか、あぁ自信ないんだぁ〜見たいな目で見られてるわけだが――
この際気にしないでおこう。
「ホントはそれだけ聞きたかったんだけど、さっきの話聞いて気が変わったんだ」
「?」
「なんかふてくされてるみたいだから励ましてやろっかなぁーって思ってさ」
「優しいんですね?」
「そんなこと無い、単にほっとけないだけ、優しいのとはまた違うって」
「俺には同じように感じますけど?」
「まぁ、そういう尊敬みたいな見かたされるんなら悪い気はしないからそう思っててくれ」
さてっと、俺のただの勘だけど翼君の家に戻ってみるかな?
「じゃぁ行こうか、裕太君」
「はい」
俺達は来た道を引き返しだした。

<SCENE076>・・・昼
「ふぅ、何とかなったか――」
体がだりぃな……同時に三つも組み上げるのは無理があったか?
(いや、中々の作戦であった)
[パチパチパチ]
!?
突然の音に驚きながらも、手を叩く音の方向に振り向く。
そこには生徒会長がいた――
(まずいな……見られたか)
「最近起こっている殺人事件の犯人があんな化け物だったとはねぇ……」
「どうして……こんな所に?」
「たまたま通りがかっただけさ」
「……」
「それにしても僕と同じくらいな歳なのに――」
「あんな化け物を倒せるなんてすごいねぇ」
「いや、あんたとは同い年だけど?」
「? どういうことかな?」
「俺はあんたと同じ高校通ってるんだけど?」
「そうだったのかい? いや私服だったんで解らなかったよ」
赤髪は目立つと思うから知っててもおかしくないと思うんだが――
まぁいいか……
「所で君の名前は?」
「あぁ、俺は一宮紅蓮って言う」
「そうか、僕は……いや名乗る必要もないかな?」
「ああ、知ってる」
「それにしてもその剣、普段どうやって持ち歩いてるんだい?」
「あぁコレは……」
(ふむ、元に戻るべきか?)
そうだな、これ以上人に見られるとまずい。
(解った)
《創造》と《真紅》は形を崩して光の粒子になり――
指に収束して指輪となった。
「すごいな! どうなってるんだい? これ――」
「あぁ……気になるのはわかるがな生徒会長――」
「あんたは首突っ込まないようにな?」
「一般人を巻き込むのは望ましくないって事かい」
「そういうことだな、話が早くて助かる」
「まぁ僕も命は惜しいから係わらないし、誰かに言うつもりも無い」
「そうか、忘れろってのは無理だろうし、そうしてもらえると助かるよ」
「さて、私はそろそろ帰るとするよ、警察に色々聞かれて疲れもたまってるし」
やっぱり事件が起きたのは生徒会長の家だったか。
「そうか、じゃあな」
「あぁ、また」
生徒会長は走り去っていった。
「あ・・・聖五どうしてるだろ? まぁ生徒会長の家の前でいれば戻ってくるだろ」
ってもう角曲がって見えなくなってる、まぁいいや歩いて行こう――
俺も生徒会長の家に向かって歩き出した。

<Interlude-聖五->・・・昼
「予想通りだな」
「翼って以外に単純だったんだ――」
三枝邸に戻ってみると家の前には翼君がいた。
「翼ぁ!」
「……」
まだ怒っているのだろうか? 何も喋らないし――
まぁさっきよりは落ち着いたみたいだな……
「どうやら少しは落ち着いたみたいだな」
「聞きたいことって……何だよ」
「あぁ、それはもういいんだ」
「なんでさ!」
「裕太君に聞いたから」
「おい、こら裕太! テメェ何コイツに話しやがったぁ!」
翼君が裕太君の服をつかみ激昂する……
「何ってたいした事は……」
「うるせぇ! コイツに俺がどれだけ駄目な奴言ったのか? あぁ!」
「離してやれ、俺が聞いたのはお前の兄貴が生徒会長かどうかだ」
翼君はつかんでいた裕太君の服を離す。
「……スマン裕太、柄にも無く熱くなっちまった」
「お前らしくないぞ、ったく」
「それじゃあ、あんたは何で俺を追いかけてくんだよ?」
「見てらん無くてな、なんか昔のアイツ見てるみたいでさ――」
「アイツ?」
「あぁ気にしなくていい」
そうだったな、アイツも親父さんとお袋さん死んだ時はああやって荒れてたっけなぁ?
「まぁ、親が死んじまえば大概の奴は荒れるってことだ」
「そんなもんですかぁ?」
「普段は明るくていい奴でもそういうときは大概荒れるもんだよ」
「親……か、俺はあんな親父の為に暴れてんじゃねぇよ――」
「俺は母さんが……」
「全く、思い出して泣きそうになるならな――」
「もっと今日のうちに泣けるだけ泣いとけ」
「……っく」
「そんで、泣けるだけ泣いたら明日から泣いたりすんじゃねぇ」
「聖にぃ……」
「思い出すななんて言わない、むしろ絶対に今の気持ちを忘れたりすんな」
「わかってる、絶対に……忘れるかよぉ」
「泣いても、何も帰ってこない――」
「だから明日から泣くな、でも今は――」
「今日だけは泣きたいだけ泣けばいい」
「カッコ……つけやがって」
翼君の頬に涙がつたっていく――
次の瞬間……彼の涙は溢れ出した。

<SCENE077>・・・昼
生徒会長の家の前にたどり着いた俺の目の前には――
不思議な光景が映っていた。
「聖五に……翼君だっけ?」
聖五の近くに翼君がうずくまっている? どうしてんだろうか。
俺は歩いて二人に近づいていくっと――
「おぉ紅蓮! どこ行ってたんだよ!」
よく見ると翼君はうずくまって泣いていた。
「どうしたんだよ、彼?」
名前があってる自身があんまり無かったので代名詞で聞いてみる。
「あぁ、まぁ詳しいことはいい、お前の家に行くぞ?」
「おい、待てよ聖五少しは説明してくれたって、お前の家で説明してやるよ」
「・・・まぁいいならさっさと行くぞ?」
「裕太君は翼君連れて来てくれ」
「解りました、ほら行くぞ翼」
「……」
後ろを振り返って翼君を見る。
目が赤く腫れ上がっている、相当泣いてたみたいだ――
俺は視線を前に戻して自分の家に向かって歩き出した。

<SCENE078>・・・昼
「ところで生徒会長はどうしたんだ?」
「何言ってんだ、今頃警察で話でも聞かれてんじゃないのか?」
「いや、途中であって話して帰るって行っちまったんだよ」
「見てないなぁ、帰りになんか買い物でもしてるんじゃないのか?」
「……」
疑問が残るがまぁいいだろ、っと家についたな――
鍵をポケットから出してドアの鍵を開ける。
[ガチャ]
で……なんで俺の家なんだろぉか?
リビングに三人を招きいれてから深呼吸をする。
「まず、最初に聞きたい」
「なんだ?」
「その子……誰?」
俺の指差した先には翼君と同じくらいの歳の少年が座っていた。
「あ、自己紹介がまだでした、俺は鏡裕太って言います」
「俺の方こそ自己紹介がまだだった、俺は一宮紅蓮だ」
「翼君に言ってなかったから言い直すけど俺は西野聖五だ」
「俺は……三枝翼だ」
自己紹介が終わった、ここからは……何の話するんだ?
「でだ、気分は晴れたか翼」
「呼び捨てにすんな、だいぶ吹っ切れたあんたのおかげかもしんないな」
聖五の顔を見ないように顔を背けながら翼君が言った
「で、聖五にぃどうして紅蓮さんの家に来たんですか?」
「外で話すような内容じゃないからな、後は家に誰も居ないってとこが重要だな」
「誰も・・・居ない?」
不思議そうな顔をする裕太君。
「そんな事は今言わなくていいぞ聖五?」
「別に詳しく言ったりするつもりはねぇよ」
「で……結局なんだよ外で話すようなことじゃない話ってのはさぁ」
「いやどうも翼君が父親と兄弟が嫌いって話だから――」
「その理由は何かなぁってな」
そんなことどうでもいいんじゃないのか?
「……話さなきゃいけませんか?」
「あなた達の兄のイメージが崩れますよ?」
イメージが崩れるって……
「別に、友達って訳でもないからこっちは問題ない――」
「お前はいいのか?」
「わかりました、話しましょう」
翼君の話は始まった。

<SCENE079>・・・夕方
「要約するとだな」
翼君の話が終わって周囲を包んでいた静寂を聖五が破った。
「はい――」
「お前の兄貴は外面は超絶エリートのキングオブ猫かぶりって事か?」
今までの真面目で悲痛な説明が台無しだなぁ……
「まぁ、そう言う事です」
あ、そういう言い方でいいんだ。
しかし、そんな家庭状況で母親が死んだなら、荒れたくもなるか……
父親はどこぞの会社の社長、成績のいい兄貴と比べられて――
どうしてお前は蒼二と違ってクズなんだとか毎日のように言われる。
その兄貴が成績優秀で優しいとかならまだ――
兄貴を目標に頑張るとか出来そうだけど。
兄貴は家の中でも親父が居る時は猫かぶって――
いない時は好き放題するような奴。
少しでも逆らえばすぐ殴る……
唯一自分の味方で暖かい存在だった母親の死は――
きっと耐えられないだろう。
たとえ父親が死んでも――
一番の障害になっている兄貴が健在だから関係ない。
加えて言えば、父親も死んでいるので猫も家では被らないだろう。
「――そう言う事って……お前等いくらなんでもそれは」
「まぁまぁ、それで、もう夕方だけど家には帰りたくないだろ?」
「それは……そうですけど」
「俺の家には姉貴居るから泊めれないけど、紅蓮の家は大丈夫だから」
「へ?」
「だから紅蓮、夏休みいっぱい位泊めてやるよな?」
「……うぅーん、まぁ事情を聞いちゃったし仕方ないか」
「本当ですか! ありがとうございます紅蓮さん!」
「ってなんで紅蓮に敬語を! 俺にはタメ口じゃんか!」
「あんたはいいんだよ、紅蓮さん俺のことは翼って呼んでください」
「わかったよ翼、で裕太君はどうする?」
「俺は今日は家に帰りますね、あ……紅蓮にぃって呼んでいいですかね?」
「好きなように呼んでくれ」
「はい、それじゃ聖にぃ、紅蓮にぃ、翼、また明日来るな!」
「おぅ、好きにしろ」
裕太君は家を出て行った――
「さてっと、そんじゃ俺も帰るか」
「おう、また明日」
「またな〜」
聖五も家を出て行く。
「さてと、二人になっちまったな」
「そうですね」
「飯の準備でもするかぁ――」
「紅蓮さんできるんですね!」
「まぁ……」
いつも真紅に作ってもらってたからなぁ――
でも手伝ったりしてた時もあったし。
自分の分として食べる分にはどんなのでもいいから――
昨日は適当に創作料理を作ったけど……
さすがにあの料理を人に出すわけにはいけない気がする……
「あのぉ、もしかして料理……出来ないんですか?」
「ほんの少しなら出来るけど――」
「味は気にしないんで何とかなりませんか? 俺、料理はさっぱりで」
「どうなっても知らんぞ?」
俺はキッチンに向かった。

to be continued・・・

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