EternalKnight
第一部終幕+後書き
<SIDE-Leon->
「消えるのは、貴様だぁぁぁぁ!」
そんな叫びと共に、ジュリアス――否《擬態》は超大なエーテルを纏った刃を振り下ろし、それと同時に、暴虐的な破壊の力――極光――となったエーテルが放たれる。
当然の様に、俺は思考を加速させる。極限まで――己に可能な最高の速度まで――一瞬で、一気に加速させる。
SクラスとAクラス直列励起の全力の一撃――そんな物にまともに当たればどんな生物だろうと一瞬で消し飛ぶだろう。勿論、俺だってその例外ではない。
直列励起――聖具によって能力を引き上げられた聖具の力を使う、裏技。本来クラス毎に制限されている一撃に込められるエーテルの上限量を跳ね上げる為の力。
しかし――残念ながらどれだけ強力であっても、俺にはそもそも届かない。何故なら――
(久しぶりの完全開放か――言っては見たが、今回も使えんと思っていた分、かなりうれしいぞ、俺は)
――シュウが、居るから。そして、俺達は世界と契約を交わしているから。だから、負けない。負けれる筈が無い。
(まぁ、確かに元々の俺の力じゃ、直列励起の一撃は止めれんからな――さて、それじゃあ始めようか、レオン!)
――応よ。久しぶりの開放だ、一瞬だけになるだろうが、はりきって行こうぜ!
――制限(――解除)
瞬間、封じていた力が――制限された力が、一気に解き放たれた。
同時に訪れる、圧倒的な開放感。そして、右手に収まったシュウの刀身に、蒼いフォトンが浮かび上がる。
制限――本来の階位を意図的に落として力を制限する為の聖具の機能。制限した状態でのシュウのクラスはS。そして、制限を外した今は――
(レオン、そんなことはいいからさっさとあの能力を終わらせろ)
その言葉で、俺は右手のシュウを迫ってくる破壊の光に向けて伸ばす。そして――
「――END」(――END)
小さく呟く様に、詠唱を上げる。――《擬態》には、おそらく聞こえていなかっただろう。
唱えると同時に、シュウの刀身のフォトンがいっそう強く輝いて、止まる事無く迫り来る破壊の光が、その刀身に接触する。
その接触と同時に、破壊の光は一瞬で掻き消えた――正確には、その役割を終えて消滅したのだが。
「馬鹿な……何故、あの力が消えた? 否、それよりも……貴様、一体――」
絶対の自信を持って放ったであろうその一撃を防がれた事がよほど驚きだったのだろう、こちらを見つめる《擬態》は、その瞳を見開いて愕然としていた。
まぁ、直列励起を使えるぐらいなんだし、流石に名乗り返さないのも可哀想か……
「あぁ、そうだな――お前も名乗ったし、俺も名乗っておこうか、礼儀として」
そう言って、俺は《擬態》の元にゆっくりと歩み寄る。その間に、シュウに念を飛ばす。
――シュウ、もう開放状態で居る理由はないんだし、さっさと制限を掛け直してくれ。
(ふむ、少しばかり名残惜しいが――まぁ、仕方ないか)
その言葉と同時に、開放されていた力に一気に制限が掛かった――これで、シュウの放つ力は並みのSクラス程度になる。
(やはり、元の姿の後だと制限状態の力が如何に矮小かが気に掛かるな……)
そう言うなよ、俺だって開放状態で入れるならそっちの方が良いんだ。お前だけが我慢してる訳じゃねぇさ。
(その程度の事は分かっているさ――まぁ、この状態にはずいぶん慣れている。期間だけなら開放状態よりもこの状態で居る方が長かったのだしな)
そんなシュウとの掛け合いを、ゆっくりと《擬態》の下に歩みながら交わす。そして、名乗りを上げる。
「俺の名は、果ての存在レオン、レオン=ハーツィアス。Sクラス聖具《最果》の使い手だ――少なくとも、今はな」
そう――嘘は言っていない。今この瞬間、間違いなくシュウはSクラス聖具《最果》であり、俺はその契約者だ。言葉通り、今は――
そうして俺は、シュウを構えてさらに数歩《擬態》の下に歩み寄る。決着はついたも同然だ。
直列励起を行えば、一撃に用いれるエーテル量こそ激増するが、本来のエーテル量の少なさから、手数が絶対的に制限される。
先程の《擬態》の一撃から感じたエーテルの量を考えれば、あの一撃が彼のエーテルを全てつぎ込んだ物だと言う事が分かる。故に、勝敗は既に決している。
「私の、負けか……最強を自負していたんだが、こんなものか……」
最強――ね。それはちょとばかし、自分達を過大評価し過ぎだろう。
「そんなものだ――」
そも、クラスと相性と経験が強さの基準と言えるこの広大な多元世界の中で、自分が絶対の最強だと思うなど、どんな立場の存在であろうと思い上がりも良い所だろう。
「……悔いの残らない様に、最期に教えてやるよ。俺は……完全なる六の一人だ」
これから消える存在に、それを伝えた所で意味などないけれど――否、消えるからこそ完全なる六だと教えて大丈夫なのだが。
そうして、俺はシュウを振り上げて、巨大な剣の形状となった《擬態》の刀身に、躊躇う事無く振り下ろした。
シュウには何の力をも付与してはいない。だけれど、エーテルを大量に失った《擬態》を砕くのには、その状態でも十分で――
巨大な刃は、ただの一撃で両断――否、砕け散った。それと同時に、わずかに残ったエーテルも、金色の霧となって霧散した。
「これで、終わりか――」
金色の霧が完全に世界に融け込むのを確認して、俺は小さくそう呟いた。そう、この世界で俺が行うべきことは、今この瞬間終わった。
事前に展開した結界によって先程までの爆発的なエーテルの反応は観測されていないだろうが、それでも結界自体がSクラス並の反応となっている。
故に、すぐにという事こそ無いだろうが、遠くない未来永遠の騎士が介入してくるだろう。それは――良くない。
永遠の騎士の介入がこの世界に影響を及ぼさない筈が無い、故に――ある程度反応を出して世界の外に出る必要がある。
その後、反応を消してもう一度この世界に入る事も不可能ではないが――この世界にはもう俺がいない方が良い。この世界を、腐らせたくないから。
そういえば、他の戦いはどうなったのだろうか? 少なくとも《擬態》――いや《死操》が消滅した今、動いていた死体は全てその動きを終わらせた筈なのだが……
(ふむ、なら広範囲のエーテル反応を探してみようか? と、言っても人間の放つエーテル量程度なら補足できる範囲に限界があるが)
それで良いさ、とりあえずは王城に入った二人を補足できれば良い。王都に残った士団の連中はとりあえず後だ。
(そうだな、王城内程度ならば余裕だが、王都全ての検索は厳しい。まずはそれでやらせて貰う――)
言って、そのままシュウは押し黙る――俺はその間に発動した結界の維持を放棄して、周囲に広がる最果ての荒野を崩壊させた。
視界が再度暗転し、最果ての荒野は消えうせ、俺は再び王座の間に舞い戻ってきた――実際には、先ほどから変わらずにここに居て、単に結界を解除しただけな訳だが。
さて――シュウ、流石にもう結果は出ただろ、どうだったよ?
(……残念ながら、エーテルの反応は一人分しか発見できなかった)
っ――そうか……それで、どっちかは分かるか?
(反応から見分けはつけれないから断定は出来ないが、現在位置から考えれば――ライルだろうな)
――と、なるとこの戦い……俺達の負けか。そう、ロイドが生きていないなら、この戦いは負けと一緒だ。
ロイドがいなければ、この国、この世界は平和にはならないのだから……ライルに報告だけして、俺達はこの世界から引き上げるべきだろう。
無責任かも知れないが、干渉する永遠の騎士を排除する事以外で、俺はこの世界に介入するべきではない。それだけは、絶対だと言える事だ。
(お前の考えを守るなら、そうするのが最善だろうさ――まぁ、そうと決まったのなら、さっさと報告を済まそうじゃないか)
……そうだな。そう、小さくシュウの言葉に応じて、俺は王座を後にして、来た道を引き返した。
――そうして、ライルを残して来たフロアに到着する。
そこで、俺が見た物は――
首から上を切り落とされた男女の死体と、地面に転がる女の頭と――頭だけになったライルを抱える、ロイドの姿だった。
(成る程、そう言う事か……)
反応は、一つ――生き残っていたのはライルではなく、ロイドだった。
故に――前言を撤回しよう、勝敗だけ言うなら――この戦いは俺達の、否……ロイド達の、この世界の住人の勝利だ。
……だけれど、どちらであったにせよ、多くの命を失った事に変わりは無い。だけれど――否、だからこそ……この世界は、本当の意味で解放された。
自らの力で、未来を切り開いた。たとえそこに俺の介入があったとしても、それが未来に残らなければ、それで良い。
「ロイド――ジュリアスは消滅した。この世界は……国は……解放されたんだ。此処からは、俺は一切お前達に介入しない」
俺の言葉に、ロイドは反応しない。だけれど、――此処からは俺の干渉して良い領域じゃない。
後は、この世界に住む人々……それらを引っ張って行く存在であるロイドの仕事だ。
「これで、俺の仕事は終わりで、ついでにお前達との契約も終わりだ――じゃあな、ロイド」
ライルの頭を抱えて俯くロイドに、別れの言葉を継げる。俺はもう、この世界に介入すべきでは無い、例えそれが、たった一人を励ます一言だとしても――だ。
(流石にそれぐらいの行為は干渉にはならないだろ――まぁ、お前がそれでいいなら俺はどうだって構わないがな)
……まぁ、それもそうか。流石に一言ぐらい励ましても干渉にはならな――
「――レオンさん、どうも……ありがとうございました。貴方のお陰で、俺はこの国を、この世界を守る事が出来た……本当に、ありがとう」
――って、俺が一声かけるまでまでも無かったか。やっぱり人は――強いな。
「いや、何――当然の事をしたまでさ。お前が王になる事が使命だったように、こういう戦いが俺にとっての使命だったってだけだ、気にすんな」
世界を守る……それが俺とシュウに与えられた役割。もっとも――本来はもっと広義的な意味なのだが。
一つ一つの世界を守る仕事は、俺が行わなくても、守護者と呼ばれる永遠の騎士によって行われているのだから――
「じゃあな、ロイド。後はまぁ――お前の思うように世界を導け。死んでいった人間の為にも、強く……生きろ」
そう言って、俺は眼前に門を展開させる。できれば王都に来ている親衛士団の生存も確認したかったが、確認した所で事実が変わる訳では無い。
そも、俺はこの戦いで死んだ事になる筈だ。故に誰かに見られる危険性を冒してまで王都の生存者の確認しに行く必要はない――無いのだ。
重い音をたてながら、門がゆっくりと開く。そうして、その向こうに虹色の世界が見える。ここをくぐれば、外の世界。
150年程の休憩が終わり、次なる安息の地を探す為の旅が始まる。或いはコレが――最期の安息の地になるのかもしれない。全ては……世界の情勢次第になる。
他の完全なる六が復活する前兆が少しでもあるのなら、全力でそれを阻止する為に動かなければならない。特に、あの二つの復活だけは絶対に――
そんな事を頭の隅で考えながら、俺は完全に開いた門に足を踏み入れた。そうして、振り返ること無く、小さな――だけれど貴重な世界を後にした。

EternalKnight-FinalChapterEpisodeOne-
――――TheEnd.
―――――to be continued
EternalKnight――NextEpisode.

――中書き――
始めまして、お久しぶり、いつもお世話になってます、永久恭介です
今回は最終章は完結していないので中書きと言う形でコメントを残させてもらいます、はい
さて、最終章第一部どうだったでしょうか?――お楽しみいただけたでしょうか?
なにぶん素人の作品ですゆえ、誤字やらおかしな表現には目をつぶっていただけるとありがたい限りです(勿論報告してくださるのが最善ですが
報告くださいましたら、出来うる限り最速で修正しますゆえ――
さて、本題に入ります。今回の最終章一部は、とにかく後のシナリオの複線が多いです
それ故に意味不明な表現がされてたりもしますが、そう言うのは軽く流してくれれば幸いです
さて、これ書いてる今現在の管理人は社会人一年生になってしまっています……別に読者様的にはどうでも良い事なんでしょうが、一応報告?として(何
それは兎も角、一章後書きの頃は高校生活全て費やすかもとか言ってたシナリオが社会人になっても続いてたりするのは一体なんでなんでしょうか?
しかも二部三部の内容とか考えると明らかにあと一年かけても完結しそうにありませんorz
……ホントね、どうするべきなんでしょうね、自分――いや、社会人しながら執筆は続けますが
――あれ?本題からそれてね?とか何とか言ってますが本題が何か詳しく考えて無いんですけど(待て
あぁ、そうだ――今回の章では世界に留まった人々のその後とかが一切書かれてません(書いて無いし
コレはですね、めんどくさかったとかではなく(ぇ)読み手にこの後を想像して欲しいとかでもなく、ある意図があったりする訳です
最終的に説明しなきゃ分かってもらえそうに無いけど(いや、書くのが面倒だったってのも嘘じゃないんですがね<待て
まぁでも、この世界のその後は読者様の想像に任せても良いと思います。結構色々投げっぱなしてるんで外伝とか書きやすそうだし(無茶言うな
さて、そろそろ第二部の予告ですが、主人公は変わらずレオンで行きます、が今度は一つの世界じゃなくて他世界に干渉する物語になったりします
はい、それだけです(ぇ
プロットよかはある程度脳内に浮かんでますが、細かい所はこれから作るので(汗
そんな訳で、EK最終章二部も、よろしくお願いしますです
最後に一つ、お約束の台詞で閉めます
誰か、感想下さい、マジで、切実に――
以上、永久恭介でした

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