EternalKnight
<少年の心>
7月25日木曜日
<Interlude-翼->・・・早朝
「――サ」
声が聞こえてくる、裕太の声だなぁコレは――
「翼ぁ!」
「んだよ……うっせぇな! 裕太」
「ちょっといいから見ろよコレ!」
裕太の指差す先には――
昨日夜中までやりこんだゲームを繋ぎっ放しにしたテレビがあった。
「んだよ、ニュースがどうかしたのか?」
キャスターの声でわかるが、コレは早朝にやっているニュース番組だな。
「いいから聞けよ! お前の家、大変なことになってるぞ!」
「あぁ?」
一体何なんだよ、こっちは眠いんだよぉ……ったく。
仕方なく目を開き、テレビ画面を見ると――
そこには、見慣れた自分の家が映っていた。
「どういう……ことだよ」
眠気が一気に覚めた、だって画面端には――
―行方不明者、死者多発の町今度は強盗殺人!?―
などと、ふざけた文字が書いてある。
それで……何で俺の家が映ってんだよ!
『……の夫婦が殺害されているのをこの家の長男が昨夜12時頃に発見しました』
「!? 馬鹿な、母さんが? 嘘だろ!」
親父と兄貴なんて……どうでもいいんだ。
どうして……母さんが殺されててあの馬鹿が生きてんだよ!
「くっそ!」
「待てよ、翼!」
「待ってられっか! 家に戻るんだ!」
「もう……遅い、昨夜十二時って聞かなかったのかよ?」
「……っく!」
俺が馬鹿騒ぎしながらゲームしてる間に――
母さんは殺されたってのかよっ!
「そんなもん……納得できっかよぉ――」
俺は、ぶつけ様の無い怒りを感じて、床に拳を叩きつけた。

<SCENE067>・・・朝
「んぁ……」
目が覚めるとそこは俺の部屋だった、まぁ当然のことだが。
「昨日のは――、いや今まで見てきたの全部が夢なんてことは……?」
自分の左右の手を見る――
そこには銀の指輪と紅の指輪があった。
「やっぱり……ないよなぁ」
真紅が死んだという事実は――
やっぱり変わらない。
認めたくないけど、それでも認めるしかないんだと思う。
真紅の魂が近くにある……それだけが救いかもしれない。
「さてと、まだ戦いは終わった訳じゃないんだ、しっかりやらないとな!」
時計を見ると短針は10と言う数字を指していた。
「ちょっと寝すぎたなぁ、あれ……なんか忘れてる気がするなぁ?」
何だったっけ?
[ピーンポーン]
あれ? 誰だろ?
俺は玄関に向かった。
[ピンポーン]
[ピンポーン]
「はいはい、今でますよっと」
[がちゃ]
「おい、紅蓮!」
扉を開けるとそこには聖五が居た。
「何だ聖五か、何のようだよ?」
「お前……昨日の晩のこと覚えてるか?」
思い出さないようにしてたのに――
「忘れたくても忘れられねぇよ……」
「違うって、帰ってきてからの話だ――」
「帰ってきてからだ、お前と互いの状況報告したろ?」
「ああ、覚えてる」
「その後のことは?」
「その後……?」
なんかあったか?
「やっぱり忘れてたかぁ――」
「今日は俺達と冬音と春樹で永十のとこにお見舞いに行くんだよ!」
「あぁ……そんな事いってたなぁ」
「はぁ、まあいいや、さっさと着替えろよ?」
「ああ、冬音と春樹は?」
「いつものとこで待ってるってよ」
「わかった、着替えてくる、チョイ待ってろよ」
「早くしろよぉ?」
「はいはい」
俺は自分の部屋に戻った。

<SCENE068>・・・朝
「おはよ」
集合場所にはすでに春樹と冬音がいた。
「遅いぞ紅蓮、聖五!」
「わりぃなぁ」
「お前が起きないからわりぃんだよ、俺までとやかく言われたくねぇ」
「でさぁ……なんでこの四人なんだ?」
呆れた顔をした三人が俺を見つめている。
「全く、本当に忘れてるんだなぁ」
「やれやれだなぁ」
「春樹、お前にだけは言われたくねぇ、昨日は疲れてたんだ――」
「まぁ、それはそうだろうが、さすがに忘れるのはどうかと思うぞ?」
「で、何しに行くんだよ?」
「現状確認だ」
「はぁ?」
「いや、だから現状、今現在残っている聖具の確認だよ」
「残っている参加者が誰なのか考えるって事よ」
「なるほど……って、お前等はもう聖具無いんだろ?」
「親友として情報を持ち合うのは普通だと思うが?」
「そうそう」
「そっか、ありがとな……みんな」
「似合わないこと言ってんじゃねぇよ」
「当然の事するだけだって」
「さて、じゃあ永十の所に行くか」
「そうだな」
「じゃ、しゅっぱーつ!」
俺達はそのまま病院に向かった。

<SCENE069>・・・朝
[がらがら]
「おーっす」
「先輩、それに皆さんも、どうしたんですかぁ?」
あ、そうか永十君はまだ冬音と春樹が参加者だったて知らないのか。
「あのな、永十君」
「永十、こいつ等も参加者だ」
聖五に先に言われてしまった、まぁ別にいいけど。
「そうなんっすか……で、今日は何しに来たんですか? 皆さんで」
「それなんだけどよ、お前をやった奴は紅蓮が倒したらしい」
「それは……殺したんですか?」
「いや、聖具を潰しただけだ」
「そうっすか、ならいいっす」
永十君は真剣な表情から一気に楽な表情に戻った。
「それでだな――」
「この中じゃもう聖具を持ってるのは紅蓮だけなんだけど……」
「えぇ、先輩も潰されたんっすか!」
「いや、微妙に違うけど、まぁそんなとこかな?」
「結論として今日来た理由は残っている聖具の個数――」
「そしてその能力は何かの情報の出し合いだな」
「そうだったんすっか」
「で、まず俺が見た奴等の情報だけど――」
こうして俺達はわかる範囲で残っている聖具の情報を洗い出した……

<SCENE070>・・・昼
「話をまとめるとだなぁ」
なんだかんだで、もう二時間ぐらい話をしている訳で――
「現在はっきりと確認されている聖具は九個、だよなぁ?」
「その内《真紅》は《創造》で組上げた聖具だからカウントせずに八個だ」
元々は十本だから《真紅》を含めて全部で十一個在った事になる。
「俺達と《無我》の使い手、青髪の女性、永十をやった奴、だな?」
「残りの未確認の内、一つはおそらく七壬さんの物でしょ?」
あのメッセージ、《9/10》と書かれたアレは明らかに参加者あてのメッセージだと思う。
「残っているのは二つから四つっすね」
「紅蓮、《無我》の使い手、後は七壬さんが参加者じゃないなら二つで計四つ」
「参加者だったなら、残り三つね」
「《無我》が進化してるからひょっとしたら残りは二本かも知れないな」
《無我》、格闘タイプで身体能力を引き上げた高速戦闘――
空間に足場を作って空中移動可能……か。
「《無我》は強いぞ?」
「お前が負けるんだ、相手は強いに決まってるさ」
「負けたわけじゃないけど……まぁいいや」
「それにしても変だよね?」
「なにがだよ、冬音?」
「だってさぁ、紅蓮の《創造》って進化した聖具一つ壊したんでしょ?」
「――そうだな」
「じゃぁ何で進化しないのよ?」
「……確かに言われてみれば変だなぁ」
「内包しているオーラ量を二つに分けたからじゃないか?」
なるほど……そういわれればそうか?
「余計な会話が入ったけど結論は――」
「残っているのは俺と《無我》、多くてプラス二人だな?」
「そんじゃ、まとまったところでそろそろ帰るとするか」
「だな……もう十二時半だし、そろそろ帰って飯でも食うかな」
「じゃぁな、永十」
「はい、またいつでもお見舞いに来てくださいっす」
俺達は病室を後にした。

<SCENE071>・・・昼
「お昼〜お昼ごはん〜♪」
「何でまた学食なんだ?」
「何でだろうなぁ、病院の近くにファミレスとかあったのになぁ」
「冬音は今月の小遣いがヤバイんだってさ」
「彼氏のお前が冬音の分も払うって言ってれば、ファミレスで飯食えたのに……」
「何で俺が!」
お前等ホントに付き合ってるのか?
「今日は何にしようかな〜♪」
向こうは向こうでやけにテンション高いし。
「はぁ、エビフライ定食にするかなぁ、今日は?」
早速注文して番号札をもらって席に戻った。
俺のすぐ後に聖五と春樹も帰ってくる――
冬音はまだ考えているみたいだが……
俺はテレビに視線を動かした。
学食にはテレビがあったりする――
何故かニュースしか流れてないが。
『……最近死者、行方不明者が多発している宮ノ下町ですが――』
宮ノ下? ここじゃないか……
『昨晩、殺人事件が発生しました』
『被害者はこの町に住む、三枝蒼一(さえぐさ・そういち)さんと麗羽(れいは)さんの夫婦で――』
サエグサ? どっかで聞いた苗字だな、まぁ聞いたことのある苗字なんていくらでもあるか……
『第一発見者はこの家の長男で、家の中が荒らされる事から警察では強盗殺人として……』
コレは聖具に関係あるのか?
他の件はともかくこれはただの強盗殺人だと思うけど――
どうなんだろうか?
「それにしても、冬音の奴、遅いなぁ」
「まだ悩んでるよ、そんなに悩むようなことかぁ、昼飯って?」
「アイツにとっては重要なんだよ、きっと」
「なんだかなぁ……」

<SCENE072>・・・昼
「そういえばさぁ」
「どうした?」
昼飯を食い終わって家に帰る途中
春樹達とは別れて今は俺と聖五しかいない
「さっき思い出せなかったけど生徒会長も三枝だよなぁ?」
「そうだけど……何の話だ?」
「いや、学食においてたテレビで流れてたニュースの被害者の苗字だよ」
「俺は見てなかったなぁ、それがどうかしたのか?」
「いや、たまたま思い出しただけだけど――」
「昨日この町で起こった殺人事件だって――」
「今までにないケースで強盗殺人だってさ」
「参加者が犯人かどうかは知らないけど、なんか気になるな?」
「どうせ暇だし、ちょっと見に行ってみるか?」
「だな、行ってみるかぁ」
「そうと決まれば移動開始!」
「場所……知ってるか?」
「……いや」
両方とも場所知らないって、どうよ?
「どうすんだよ?」
「まぁ町適当に歩いてりゃそのうち人だかりでも見つかるだろ」
「そんなんでいいのかよ紅蓮……」
「まぁそれしかねぇだろ?」
「仕方ないか……」
俺達はとりあえず、適当に町を歩き回ることにした。

<SCENE073>・・・昼
「あそこ……みたいだな」
かなり大きい、家の前に人が集まっている。
思ったより野次馬が集まってるわけでもないが――
それでも何人かいるみたいだ。
「パトカーも止まってるしここだろぉ……見に行くか」
野次馬、おそらく近所の奥さん方だ、何か話しているのが聞こえてくる。
「強盗殺人ですって、物騒ねぇ」
「三枝さんの所はお金持ちですからねぇ」
「そうよねぇ……大きな休みには必ず海外旅行に行ってたし?」
「両親が二人とも殺されるなんてあの子達もかわいそうねぇ」
「蒼二君は優秀だからいいとして、あの弟君はどうするんでしょうね?」
「成績も悪いし……来年は私立に行くつもりだったんでしょうけど」
「親御さんがいなければ私立のお金なんてどうするんでしょうねぇ……」
「両親が亡くなったのにここに一回も来てないみたいなんですよぉ」
「まぁ……なんて子かしら!」
気がつくと俺達の隣に中学生ぐらいの男の子が二人立っていた。
片方は話を聞いて震えている……
まさか……あのおばさんたちが話してた生徒会長の弟か?
突然少年が走り出してその場を離れようとする。
「まてよ! 翼!」
それを見たもう一人の少年はその後を追いかけていった。
「紅蓮、俺達も追うぞ!」
「どうして?」
「・・・なんか、ほっとけないんだ、それになんか聞けるかもしれないし」
「わかった、俺はここいらで少し聞き込みでもしてるから一人で行って来い」
「わりぃ」
聖五も少年達の後を追って走り出した。
……ほっとけない、かぁ
[メキッ!]
!? 久しぶりだなぁ・・・この感覚も――
まだ出てきやがるか。
さすがにここでやるのはまずい――
どこかに移動して戦うかぁ
俺は公園に向かって走り出した。

to be continued・・・

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