EternalKnight
<届かぬ声>
<Interlude-聖五->・・・夜
俺の肋骨は先程の一撃で数本折れただろう――
しかし、俺の一撃は男の顎にまともに入った。
男の顎の骨は砕けているだろう。
「くッ……そ」
いてぇ、だけど――
俺に聖具を……仲間を託してくれたあいつ等の為にも――
「こんな所で、へばってられるかよっ……」
(マスター、一時的にフォースで骨を補強します)
そんな事できるのか?
(ですが、そこにオーラをまわすので――)
(全身体能力が多少低下します――)
「問題ない、やってくれ」
痛みが引いていく、コレなら……まだやれる!
男は立ち上がりこちらを見据えている。
「今のは……きいたぞ?」
どうやら向こうも補強をしたらしい。
そうでもなきゃ……顎を砕かれて喋れる訳がない。
まぁあくまで予測に過ぎないが――
「面白い、面白いぞ! もっと俺を楽しませろ!」
(いきましょう、マスター?)
そういえば《聖賢》……《叡智》の時の能力、使えるのか?
(確かに可能ですが……体にかかる負荷が――)
「かまわない、勝てるなら……それで」
(解りました――)
瞬間、全身の力が今まで以上に引き上げられる。
「なッ!? まだ引き出すだけの余力が――」
「いや……無理に増幅させているだけ……か?」
《叡智》の時とは比べ物にならない程のオーラが全身を包んでいる。
「ならば、こちらも同じ事をするだけだ!」
男のオーラも爆発的に跳ね上がる。
だが、この消費の仕方じゃ、俺はもって後三十秒――
それまでに倒す!
地面を蹴り、一瞬で距離を詰める。
十数メートルの距離をコンマ一秒秒程でつめる。
拳を繰り出すが拳で叩き落される。
次の瞬間に拳が打ち出される。
――が、ソレを打ち落とす。
一秒に繰り出される拳の数は、もはや何回かわからない。
いや……早すぎる拳に時間間隔を狂わせられだけだ。
今が殴り合いだしてから何秒たっているのか見当もつかない。
神速での殴りあい、どちらも何度も相手の拳が当たっている。
それでも当たったところからフォースで補強してき、殴り合いは続く。
しかし……ついに――
「グッ……」
効果が切れた。
同時にフォースの効果も切れたのか、全身に激痛が走る――
下半身はあまり拳で殴られていないのでまだ立っていられる。
相手にはまだしばらく時間は残っていそうだ。
「ここまで……か」
「ガッ……」
どうやら、向こうも効果が切れたらしい。
それにしても……俺も男も全身血まみれだ。
純白に輝き、紫紺のラインが走る《聖賢》も朱に染まっている。
「さぁて、じゃあここか・・・らは――」
「聖具の加護な・・・しで行・・・こうかぁ?」
「くっ……そがぁ」
突然、男が俺に背を向けた。
「逃げ……るのか……よぉ?」
振り返らずに男がつぶやく。
「あいにく……強い奴とは戦いたいが……死にたくは無いんでな?」
「根性なし……が、俺はお前を倒さなきゃ……いけないん……だよぉ!」
「ふん……何とでも……言っていろ」
「それに……しても、また・・・戦いたいものだな?」
「どっちも・・・生きてりゃ・・・な? 俺の目的は……殺すことじゃねぇ」
「戦えば同士討ち、やらなくても……お前はおそらく死ぬ」
「死なねぇよ」
「最後に……名前を聞いておこうか?」
「西野……聖五だ」
「俺は無我……いや、この男の名は東……四郎だったか?」
「そうか……最後に……一つだけ聞いて……くれるか?」
「なんだ?」
「次に俺とやる時まで……もちろん俺が生きてたら……の話だが」
「死なないん……だろ?」
「お前はそれまで……誰も、殺すなよ?」
「いいだろう……お前ほどの猛者とやれるなら――」
「その約束を護れよう……ではもう行くぞ?」
「じゃあな」
「ああ」
男は、……無我は立ち去っていった。
俺の意識も・・・そこで途絶え・・・た

<Interlude-無我->・・・夜
「くっ……意識が途絶えそうだ――」
「新しい肉体がほしい所だが、今はまともに動けそうにないな……」
早く寝床に戻らなければ――
いや、この血だらけの服もどうにかせねばならん、服の調達も……
寝床に戻るのが先であろうか?
「――戻るか」
「残念、君はここで死んで……終わりだ」
何?
振り返ると、そこには――
黒いコートを羽織った男がいた。
その手には漆黒の剣、その黒い刃は振り上げられる。
「こんな所にぼろぼろの参加者がいるなんて――」
「僕はなんて運がいいんだ……」
発せられるオーラは……たいした事はない――
いやアイツと……聖五と比べるからだろうか?
実際は進化する前の聖五と比べるとかなり上だろうが――
今はそんな相手にも勝てる気がしない……
「じゃあさ、潔く死んでくれよ?」
黒い剣は振り落とされ――
すまない聖五。
お前との約束は……護れそうにない。
俺の意識は……そこで消えた。

<Interlude-聖五->・・・夜
(……スター)
(マスター)
あれ? 俺は、どうしたんだ?
《聖賢》?
(目は覚めましたか?)
(――深層心理内だから《目を覚ました》は違いますかね?)
それがどうかしたのかよ?
(今から、マスターの傷を私の力で治します)
出来るのか?
(私に内包されている全てのオーラを使えば……可能です)
ちょっと待て!
そんなことしたら、お前は――
(消滅するか、よくて解放前の状態になって、ずっとそのままか……)
――なんだって?
それじゃあ、もうお前とお別れじゃねぇかよ!
いいのかよ! お前はそんなんで!
(どの道マスターはこの方法以外では助かりません)
そんなの、お前が責任取るようなことじゃないだろ!
(マスターがお亡くなりになれば私もそこまでですし、それに――)
(マスターがこんなになるまで戦ったのは――)
(そもそも私と契約して、戦う事になったせいですから)
違う! 力を望んだのは俺だ!
(マスター、短い間でいたけど……お世話になりました)
待て! 待ってくれよ!
(それじゃあ、さようならマスター)
《聖賢》! おい! まてよ!
――もう、俺の叫びは……声は届かない。

<Interlude-聖五->・・・夜
意識が戻った……
ここは、《無我》と戦ったあの場所か……
あそこで……あの後、すぐ倒れてたんだよなぁ俺、そして――
「そうだ! 《聖賢》!?」
俺の手にはもう《聖賢》がない。
首元にも、ネックレスに戻ってる訳でもない――
「そんな……なんでだよ――」
「せめて、もう少し……ちゃんとした別れでもよかったじゃねぇかよぉ」
くそ、俺に力があれば――
もっと、力があればっ!
外傷は何一つ残っていない――
服は血だらけだが。
少しぐらい……俺の傷を残してりゃ、お前も助かったんじゃないのかよ?
「くっそぉ」
怒りに任せて電柱に拳を叩きつける――
衝撃が伝わってくるが、痛……くない?
電柱を殴りつけた拳を見ると――
そこには、純白に輝く指輪がはまっていた。
――なんだよ、まだここにいるじゃないか?
オーラのコントロールの仕方はなんとなく体が覚えている筈だ。
オーラを全て使って俺を治したんだろ?
だから、少し……少しずつでも、毎日オーラをこめれば――
お前にいつか……また、会えるよな?
そうだ、俺はお前にもう一度会って、ただ一言伝えたいんだ。
気が動転していて、最後までいえなかった言葉を……
ただ『ありがとう』って一言をアイツに……伝えたいんだ。
――さてっと。
くよくよしてても仕方ないか?
帰るかなぁ……ってまて俺の服、真っ赤だ。
家に帰ったら、姉貴になんて言おう?
「とりあえず紅蓮の家にでも行って服着替えさせてもらうかぁ?」
って……紅蓮の家には真紅ちゃんがいるし。
どうしようかなぁ、そうだ!
春樹か冬音が、って……どっちも妹いるじゃんかぁ!
どうしよう? そうだ!
とりあえず、紅蓮の家だ! そう決めた俺は走り出した。
誰かに見られると、この血だらけの服はまずいしなぁ?

<Interlude-???->
「だいぶ数が減ったな?」
「残るは残りは1と2のみか、私達の予想通りだなぁ?」
「しかし今回は……我々が予想していないことが起こりすぎている」
「確かに所有者の為に命を掛ける聖具……そして新たな聖具の創造」
「計画に影響が出ねばいいがな?」
「それは問題ないだろう」
「どうしてそう言い切れる?」
「誰が勝ち残っても、私達が勝ち残ったモノを壊して……終わりだ」
「そうだが……」
少しは警戒するに越したことは無いだろうに――
「そういえば、そろそろ奴等が来るな?」
「そうか……」
警戒か……
「まぁ楽しめるなら、拙者はそれでいいが?」
「ふ……他の楽しみを見つけるのもいいことだぞ?」

<SCENE066>・・・夜
眠い……とりあえず着替えてから寝るかなぁ?
いや、先にシャワーでも浴びとこ。
これじゃあ服を着替えるだけじゃたいして変わらないから。
俺は風呂場に移動した――
って……何で電気がついてんだ?
しかしシャワーの音もするし、一体誰だ?
息を殺して、風呂場に近づく。
風呂場のドアを開けるとそこには……
「うぉ……見つかっちまった! って……紅蓮かよ」
「何で、ここにいるんだ?」
「それはとりあえず後で説明する」
「わかった、俺も入りたいから早く上がってこいよ?」
「わかった」
気付かれないように目線を下げる――
「それで、いつまでそこのドアを開けているつもりだ?」
「いや――」
勝った……な。
――って……そうじゃなくて。
「じゃあ、早く上がってこいよ?」
「何回も言われなくても解ってるって」
俺はドアを閉めてリビングに移動した。
――しばらくして
「待たせたなぁ、さっさと入って来いよ」
「――話はそれからでもいいだろ?」
「ああ」
「そんな血みどろの服着てるんだ――」
「なんかあったのは見りゃわかるからよぉ」
「……入ってくる」
「おう」
――シャワーを浴びる
着替えは、適当に選んで着た。
服を着終わると、俺はリビングに移動した。
「じゃあ、話を始めようか?」
「そうだな、そっちは何があった?」
「そっち……って、お前もなんかあったのか?」
「まぁな」
「そうか……とりあえず俺のほうから話そう」
「ああ……」
「まずは、朗報からかなぁ? 永十君をやった奴の聖具を潰した」
「――持ち主は?」
「……逃げていったよ」
「そうか……」
聖五は複雑な顔をした。
「で、もう一つ報告しなきゃいけない事が、あるんだ」
一瞬……言葉を止める。
「真紅が……死んだ」
「!!!?」
聖五の表情が驚きに変わり……固まる。
「冗談……きついぞ?」
「事実だ」
「お前は……どうしてそんなに冷静でいられる!?」
叫ぶなよ――
俺だってホントは――
「真紅の魂は、まだ俺の近くにいるから……」
でも、死んだ事実は変わらない。
「どういう、意味だ?」
俺は左手を聖五に見せる。
「それは?」
「真紅の魂の入った、聖具だ」
「!!!? マジかよ――」
「冗談で言う……内容かよ?」
また複雑そうな顔をする。
「俺はそんだけだ……」
「……」
「お前は?」
「ああ、俺のことも報告しなきゃな」
ゆっくりと聖五が口を開いた。
「聖具は三つ分リタイヤだ、そしてもう一人分正体がわかった」
「どういう、意味だ?」
「まずは三つの聖具の内二つ、コレは春樹と冬音が持ってた」
「!? そうか――」
あいつ等が……
「で、正体のわかったのは《無我》だ」
「ムガ?」
「格闘タイプの聖具の所持者――」
「いや、アレは……多分聖具に乗っ取られてるな」
「……」
「強い奴と戦う事が目的の戦闘狂だ――」
「……」
「コイツは、取り逃がした」
「そうか――」
「春樹と冬音の聖具はコイツと戦うために潰したんだ」
どういうことだ?
「強すぎる奴を相手するのには……力が足りなかった」
「そんなに強かったのか?」
「ああ、それで俺の聖具を進化させて《無我》と戦った」
「その為に春樹と冬音の聖具を壊したのか――」
「で、残りのリタイヤのもう一つって?」
「《聖賢》……だ」
「セイケン?」
「俺の……聖具だ」
「!? でもじゃあお前はどうやって、その《無我》を退けたんだ?」
「相手が退いてから、俺の傷を治すために、アイツは全部の力を使ったんだ」
「そう……か」
「俺には、もう戦う力は残ってない――」
「お前は、どうするんだ?」
「俺は誰にも負けない、負ける訳には行かないんだ」
「その聖具に真紅ちゃんの魂が入ってるからか?」
「それも、あるけど……俺は絶対に生き残るって、決めたんだ」
「そうか――」
そうだ、生き残るって……決めたんだ。

to be continued・・・

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