EternalKnight
自己紹介
<SIDE-Leon->
「どうも眠った気がしないんだよなぁ……」
いつもの浅い眠りから目覚めて、十数分――起きてから何度目かになる小言を呟いた。
(だから、ぐっすりと眠りたいなら自由にすれば良いと言ってるだろ? 何、たいした事じゃないさ、俺が飽きるまでお前の事を不能と呼ぶだけだ)
それが嫌だからエーテル流出の自動管理を切らずにぐっすりと寝ない訳なんだが――
それは兎も角、昨日の話では親衛士団の連中と顔合わせが今朝ある筈なのだが、まだ誰も俺を呼びに来ては居ない。
正直な所、暇なんで早く呼びに来て欲しい訳であるが――勝手に一人で部屋出ると、俺の事知らない士団のメンバーに絡まれるかもしれない。
朝飯時も過ぎているし、そろそろ呼びに来てのおかしくは無いと思うのだが……と、言うか――別に必要な訳じゃないけど、俺の分の朝飯は用意されないのな。
(まぁ、誰かに言えば出して貰えると思うぞ?)
そんな事したら俺が余計に腹ペコキャラだと思われるじゃねぇかよ……もう手遅れかもしれないけど。
等と考えていると、あまり人通りの無い廊下をこちらに向かって進んでくる足音を察知した。――まぁ、起きてから二度目の接近してくる足音な訳だが。
因みに、一回目に接近してきた足音は部屋の前を華麗スルーして行ったので、今現在接近してきている足音にも別に期待はしていない。
(暇だから早く誰か呼びに来てくれと、思ってたのにか?)
……期待してないって言うか期待しても無駄だって悟ってるって言うか――……つーか足音が部屋の前で止まってないか、コレ? って事は、もしかして――
そう思った瞬間だった、ドアがノックされる音が静寂した部屋に響き、続いてドアの向こう側からライルの物と思われる声が聞こえてきた。
「レオンど――レオン、皆に紹介するので出て来てくれ」
なんかいきなり殿つけて呼ぼうとしてるな……寸前で踏みとどまったけど。
「心得ました、しばしお待ちを――」
(お待ちをって――別にお前、何の準備をする訳でもないだろ?)
いや、呼ばれて直ぐに部屋から出たら、来るのをずっと待ってたみたいじゃねぇか――
(待ってたみたいじゃねぇか、って――実際ずっと呼びに来てくれるのを待ってたんじゃねぇかよ、お前)
そうなんだけどさ、俺にもこう――立場って物があるんだよ、お前になら分かるだろ?
(さぁな――お前の立場とか俺の知った所じゃないし、そもそも分かろうとも思わん)
それが八千年近く一緒に戦ってきた相方に言う言葉かよ! 分かろうとも思わんって……
(俺に言わしてもらえば、立場云々など何故気にする必要がある? どうせ短い付き合いなんだ、どうだって良いだろ。俺達は俺達の役目を果たす――それで十分な筈だ)
それでも、円滑な人間関係を気付いた方が――……って、何回やっても飽きないな、俺等。なぁシュウ、立場云々の言い争いって何度目だっけ?
(覚えている筈ないだろ、そんな回数――まぁ、討論するだけ意見が割れて平行線になるし、討論はココまでだな――部屋の前に既に三分はライルを待たせてるしな)
おいシュウ――そりゃマジか? あれだけの言い争いで三分とか――アホ臭いにも程があるだろ……
つーか、ホントに三分もたったのか? どう考えても一分も掛かってないだろ――だけど、意識を内に向けていると時間間隔が狂うのも確かだしなぁ……
(とりあえず、そんな事を考える前にさっさと部屋を出ろ、まだライルを待たせるのか?)
そうだな――しばしってのがどれくらいの時間を指すのか微妙だけど――そろそろ出て行った方がいいだろう。
そう決定付けて、俺は扉を引いて、部屋の外に出た。勿論其処にはライルが居る。
「もうよろしいので――ゴホン、準備はもう良いのか? レオン」
……正直それだと逆に変なのだと思うのだが――まぁ、慣れれば大丈夫……だよな? それはそうと――今は俺の方が立場が下なんだから、ちゃんと謝っとかないとな。
「少し待たせてしまった様で、申し訳ない限りです」
言って、俺はライルに軽く頭を下げ、直ぐに頭を上げた――が、頭を上げた俺が目にしたのは……なんだか微妙に困った様な表情のライルだった。
「いえ、全然待って――じゃない、否――殆ど待っていないから気にしないでくれ」
ライルの喋り方も気になるが、先程の妙な表情の方が気になる――が、何が原因なのかは大方分かっている。
――シュウ、三分とか嘘を言ったな? ホントはどれぐらいの時間だった?
(さぁな――三十秒前後じゃないのか?)
何で曖昧なんだよ――しかも、さっき言ってたのと全然違うし!
(何を言う、三十秒も、三分も、無限に近いの時間を生きる我等にとっては一瞬でしかない)
確かにその通りだけど、違う! 今はそう言う事を言ってるんじゃねぇ! つーか、お前絶対にわざとやってるだろ!
(なんだ、今頃気付いたのか?)
今頃気付いたのか?――じゃねぇよ! ふざけんな、また俺が変人扱いされそうなフラグが立ったじゃねぇか!
(心配するな、もう十分変人だと思われてるさ。それに、さっきも言ったが付き合いの短い相手になるのは分かってるんだし、そんな細かい事を気にするな)
つーか、その話しだすと長くなるからしばらくは念話は禁止だ、つーか必要な時以外は無視する、出来る限り。
(なんだ、つまらん――折角人がからかってやって居るというのに――)
ありがたくもなんとも無いわ!――って、いかん……また周囲を気にせずシュウと盛り上がってしまった。自重しなきゃな。
「それでは付いて参るが良い、これから共に戦う親衛士団との顔合わせだ、レオン。皆もお前を待っている」
「はい、了解しました」
――って、コレはなんか硬すぎるか……もう少しガチガチに固めずに喋らないと、後で疲れそうだしな。
そんな事を考えながら、俺の返事を聞いて軽く頷いてから、歩き出したライルの後を追い始めた。

<SIDE-Leon->
俺達が通され、昨日一晩を過ごした場所――それは、宿というよりは、兵舎と呼んだ方が的確だった。と、言うか――兵舎その物だろう。
そして、恐らくはこの町のギルドが管理していた物だと考えて良い。そうなると、兵舎よりもギルドに所属する者達の寮と考えた方が的確だろうか?
ギルド本部があるとは言え――否、だからこそこの町に王国兵の兵舎があるとは考えにくい。――同じ町に、防衛拠点は二つも必要ないからだ。
まぁ、この建物がなんであろうと、俺には関係ないのだが……と、そんなつまらない事を考えている間に、廊下を抜けて、少しばかり開けた空間に出た。
そこには――ざっと見た感じでは30人程の男女の姿があった。比率で言うと男が3に対して女が1と言った所だろうか?
つーかコレ、全部士団員――なんだよな? さっきから、視線が俺とライル居る場所に集まってるし。
(さぁな、俺に聞くな――まぁ、恐らくそれで間違ってないだろうがな)
うん――覚えられる気がこれっぽっちもしねぇよ、俺の記憶力的に。まぁ、コレだけ居るんだし、部隊分けはされてるだろうから、各隊の隊長だけ覚えれ良いか――
(そんな都合よく、部隊に分かれているとは限らんがな――三人一組等だったらそれぞれのリーダーだけで10人を超えるぞ?)
……そんな不安になる様な事言うんじゃねぇよ、シュウ。って言うか流石にそれは無いだろ? 指示出す側が大変だろうし。
(そうだな、この人数なら部隊長は多くて五人といった所だろう)
「それでは皆、紹介しよう。私がココに来るまでに出会い、我等と共に戦ってくれる事を約束してくれた、レオンだ」
多少のざわめきがあった広間が、ライルが喋るとほぼ同時に、ライルの声だけが反響するほど静まった。
そして、ライルが言い終わると同時に、広間に居た恐らく全員の視線が『ライルと俺』という目標から、一気に『俺一人』に変化する。
――コレは、あれか? 自己紹介しろって事か?
(この状況で、それ以外に何か考えられるのか、お前には?)
あー、はいはい。大勢の前で話するのはあんまり好きじゃないんだが……まぁ、我慢しよう。
さて、自己紹介と言っても、何をどう言うべきなんだろか――まぁ、とりあえずは……名前か。まぁ、それだけ言えれば、後は質問に答える形でも構わないだろう。
そう結論付けて、俺はライルの隣から一歩だけ前に出て、言葉を紡ぐ。
「これから皆さんと共に戦わせて頂くレオン=ハーツィアスです、よろしくお願いします」
そう言って、俺は軽く一礼した。
(しかし、驚くほど普通で何の捻りも無いな、レオン)
いや、何の捻りも無いって、お前――寧ろ何で捻り加えた挨拶する必要があるんだよ。
(目立たなければ、今この場に居るレオン以外の士団員全員のお前に対する評価が、自身を主役とする物語の脇役に位置づけられる事になるから――だが?)
いや、別に脇役で良いよ、つーか寧ろ目立たない方が良いから。ってか、なんで言い切ってるんだよ、お前。捉え方は人それぞれだろうが。
「と、言う事だ皆――何か質問は無いか?」
そんな風にシュウと会話していると、ライルの声が聞こえてきた。――いけない。またシュウとの会話に没頭しちまう所だった。
後で質問は無いか聞くつもりだったが、ライルが先に質問があるか聞いてくれた様だ――まぁ、俺から質問があるか聞くのもなんかアレだし、ありがたくはあるか……
そのライルの質問から一瞬の間をおいて、手前の方に居た銀の長髪の男が手を上げる。――つーか手を上げて質問って……
「サバスか――それで、質問は?」
手を上げた男の顔を見て、ライルが言う。――成る程、彼はサバスと言うのか……覚えられるかは謎だけど、まぁ記憶の片隅には置いておこう。
「共に戦うと言うが……実力は十分なのか? 自分から名乗り出た戦力ならそれに越した事は無いが、実力が伴わないなら危険なだけだぞ?」
(随分と舐められてるな、俺達も――否、俺の存在を知らない訳だから、舐められているのはお前一人か)
舐めて掛かってる訳じゃないだろ。お前の――と、言うより聖具の存在を知らないんだし、俺の事を何も知らないんだ。
間近で永遠の騎士の力を見た奴にすれば、これから化物の相手に行くような気分な訳だろ? 共に戦う仲間なら、実力の心配ぐらいしたくなるだろうさ。
その俺の言葉を聴いて、シュウは納得したのか、それ以上念話を続ける事は無かった。
『はぁ……やっと自重してくれるようになったか』
等と、そんな事をシュウに聞こえない様に思いながら、俺はライルと、サバスとやらの会話に意識を集中させた。
念話を行って居た時間は、俺の感覚が正しければ一秒前後――先程の流れから続くと考えて良い。
「レオンの実力に関しては何の心配もない――私が一度手合わせを行ったが、その力は十分……否、十二分だと言える」
そのライルの言葉と同時に、広間に居た士団員達から一瞬どよめきが起きる。
ちょっと待て――一応俺はライルより弱いって事になってないと拙いんだぞ? このどよめきの起こり方ってなんか勘違いされてるんじゃないのか?
そのどよめきを掻き消すように、聞き覚えのある声が広間に声が響く。
「副長、十二分とはどの程度の物なのでしょうか?」
そう、この声は確か昨日の番兵……名前は確か――ル、ル?……えっと、なんだっけ?
(もう忘れたのか? ライルにはルゼルと呼ばれていただろ?)
そう――そんな感じだったよな、確か。つーか、俺の変わりにお前が名前を覚えてくれれば良いじゃんかよ、よく考えたら。
(断固拒否させてもらう。大体、昨日名前を聞いた一人分の名前を思い出すのと、三十余人分の声と名前を合わせて覚えるのとではまったく別次元の難易度だろう?)
それもそうか……反応の大して変わらない唯の人間三十人以上の名前を声とだけで識別するのは難しいよな。聖具には視覚が無い訳だし。
(――分かれば良い)
シュウがそういい終わると同時に、ライルがルゼルの質問に対する答えを返す。
「彼の実力は部隊長――ルゼル、お前やサバスにジルムそれからノイエと同格……否、それ以上だ」
そのライルの声で、一度静まったどよめきが再び起こる。しかも、先程よりも大きなどよめきだ。
――が、それとは反対に俺の心は少しばかり落ち着いた。ライルも分かってくれた居た様だ。
自分よりも俺のほうが強いなどライルが言ったならば、ライルがジュリアスを倒した、と言う事実にここに居る者達が疑問を抱く可能性があった。
――そうなる心配が、少なくとも消えたのだ、落ち着かずには居れらない。強いてもう一つ、落ち着いた理由を言うならば――
名前を覚えるつもりで居た部隊長と呼ばれる面子が四人だったという事と、既にその内二人の顔と名前を認識できる様になったから、なのだが。

――to be continued.

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