EternalKnight
到着〜リウ=レイオス〜
<SIDE-Leon->
結局、ライル曰くの問題点は、ライルとロイドが俺を呼び捨てにする――と言う形で決着が付いた。
逆に、俺がライルとロイドを呼ぶときは様をつけて呼ぶことになったのだが――別段気にする事でも無いだろう。
まぁ、うっかり忘れて呼び捨てしてしまう可能性も否めないが、ソレはソレだ。その時に考えれば言い。
それは兎も角――
「やっと到着か……」
レオ=レイアスを出発して丸四日程して、俺達はようやくリウ=レイオスにたどり着いていた。
町の規模は、月明かりだけで判断し辛いが、少し離れたここから目に見える範囲の情報だけで、ココがレオ=レイアスと比べると遙かに町と呼ぶに相応しいのが判る。
(そうだな、町と呼ぶには十分すぎるだろう――広さだけでレオ=レイアスの三倍はある)
……お前は便利だな、目で見なくても周囲の情報がわかるし。まぁ、聖具は全部そんなものなんだが……いや、シュウの補足範囲は並よりも遙かに広いんだが。
「で――深夜で出歩いてる奴なんて誰も居ないだろうし、どうするんだ、ライル?」
町の入り口へと歩きながら俺はライルに問いかけた。
ココまで夜遅くだと、宿も開いてないだろうし……結局今日も野宿なんだろうか?――いや、俺は慣れてるから別に良いんだけど。
(まぁ、慣れたくはない事ではあるがな……いや、今更だが――っと、この時間にも起きてる奴が居るみたいだぞ、レオン。人数は三……四人だ)
へぇ……そりゃまた物好きな奴も居るもんだな。
「いえ、恐らく士団の者が数人起きて哨戒をしていると思いますので、大丈夫だと思います」
……成る程、起きてるのは見張りか、それならまぁ、おかしくはない。
(頑張っているようだが……哨戒など圧倒的な力の前では何の意味も無い――万全の状態で正面から戦って勝てない相手が攻め込んで来れば、結果など目に見えている)
確かにその通りだが……こうして深夜に町に着いた俺たちは野宿せずにすみそうじゃねぇか――
(別に、俺はどちらでも構わん。どうせ眠らないしな――と言うか、お前も似たようなものだろう、レオン?)
――まぁ、確かに眠らなくても体に変調は出ないけどな。
「成る程――それで、ふと疑問に思ったんだが、どうしてこの町が生き残った士団の集合場所になったんだ? 別に防衛力が高そうには見えないけど……」
もっとも、防衛能力の高い城砦だったとしても、この世界の科学力程度では永遠の騎士と戦う事等到底出来ないのだが……
――まぁ、相手の永遠の騎士の階位や能力次第では足止めぐらいにはなるかも知れないが。
「それはですね、リウ=レイオスにはギルドの本部があるのです」
ギルド――つーとアレか、何でも屋の集団って所か? この世界に戦闘専門の傭兵みたいな制度があるとは思えないし。
「つー事は、この町を集合場所にしたのはそのギルドにも力を借りて、一気に戦力を増強する為か……」
(数が増えた所で、実力が無いなら居るだけ邪魔だがな――)
まぁ――どんなに実力があっても人間である以上、結局は永遠の騎士が相手となると殆ど戦力にならない訳だけどな。
「はい、それが狙いでこのリウ=レイオスが集合地点に選ばれたのです――もっとも、相手が人を超えた存在なら、幾ら数を集めても無駄でしょうが……」
そう、頭数だけではどうにもならない――相手が次元違いの存在なら、寧ろ無駄な死人を増やすだけになるだろう。
「だろうな――聖具持ちが居ないなら、第五階位程度の魔術持ちが最低でも五人は必要になってくるだろう――もっとも、聖具持ちの俺なら一人で十分だけどな」
実際の所、味方など一人も必要ない。否、居るだけ巻き込む可能性も出てくるので、寧ろ居ない方が戦いやすいぐらいだと言える――
だけど――俺が一人で全て解決するのは簡単でも、それをすれば、この世界は何も発展しない。――否、寧ろ腐っていくだろう。
それは、俺の望むところじゃないし、誰の為にもならない。故に――それは避ける様にしなければならない。
「レオン殿に助力を求めて正解でした――我々だけではまず勝てなかったでしょうし、その事実に自体気がつけなかったでしょう」
だろうな――仮に絶対自分には勝てない相手だと気が付くとしても、その瞬間には既に手遅れになってるだろう。
大方、親衛士団の団長だったというフィーエと言う奴もそうだったに違いない。
構成されている因子から違う別種の圧倒的存在だと気が付いていれば、逃げる事も出来ただろうに……まぁ、今更言ってもどうしようも無いわけだが。
「あぁ、そうだ――言い忘れてたが、この戦いが終わった後の話だが、ジュリアスを倒したのはライルって事にしとけよ?」
危うくこのまま言い忘れる所だったが、思い出したので良いとしよう――と、言うか俺的にはコレがもっとも大事な話なんだよな、実際。
「そんな、レオン殿の功績を私の物にするなど――その様な事は……」
ライルはそう言うが、正体不明の謎の人物が王国を奪還した英雄になる――それだけは絶対に起こっては行けない事だ。
そんな事になれば、自分達を脅かす者が居れば、誰かが助けてくれる――そんな甘い考えを持つ人間が出てくる。
だからこそ、たとえ戦力にならないとしても、共に戦ってもらう必要がある。そして、最終的にライルがジュリアスを倒したと言う事にすればそれで万事解決だ。
ライルが英雄として担ぎ上げられる事になるが、元々王族直下の親衛部隊の副隊長なので、何も知らない民衆も元の地位が高ければ納得する事だろう。
「良いんだよ、俺は功績なんか必要ないさ――それに、俺みたいな永遠の騎士は世界に極力干渉をするべきじゃない。アルティリアの建国に携わってそれがよく判った」
永遠の騎士と言う存在は、世界に影響を与えすぎる。それが世界にとって良い方向に向かう事であろうと――だ。
《広域次元世界の意思》は全ての世界を安定させようとしている――だが、ならば何故、聖具……永遠の騎士などをシステムに組み込んだのか?
そこに、いつも矛盾を感じる。もっとも、考えた所で答えなど出ないのは判り切っているが――
何せ、シュウがアカシックを調べても得れなかった情報だ、考えた程度で答えが出てくる筈は無い。
アカシックへのアクセスを専門とする《根源》ならば――それを知る事も不可能ではないとは思うが……無い物は仕方がない。
否――仮に目の前にあった所で、アレの契約者はアイツだ……調べてくれる訳もない。もっとも――別に知る必要がある事ではないのだが。
「レオン殿がそう言うのなら――仕方ありませんね……ジュリアスを倒した折は私の功績と言う事にしましょう」
俺が思考している間中、頭を押さえて悩んでいたライルが、ようやくそう言って頷いた。
――と、言うか早速忘れてたよ、呼び方変えるの……ライルもまったく変えてないけど。
「では、そう言うことでよろしく頼みます、ライル様」
「ライル……様?――ぁ……あぁ、そう言えば、そうでした。じゃない、えっと――了承した」
凄いグダグダだが――これでホントに大丈夫なんだろうか? つーかロイドは大丈夫なんだろうか?
そこで、人影を見つけた。この暗闇の中、俺の視力でようやく見える程度は離れているが、このまま歩みを進めれば、気が付けれるのも時間の問題だろう。
「ロイド様、町の入り口に番兵が立っている様ですが、どうしましょう?」
「問題ない、恐らく親衛士団の者――つまりは、我々の味方だ。しかし、この距離から良く見えるな、レオン」
おぉ――先にライルに不意打ちしたからある程度覚悟は出来て居たただろうが、まさかここまで上手く王族の威厳を孕んだ言葉を返してくるとは思って居なかった。
とりあえず、呼び名や口調に関して、ロイドの方は安心できる――って事か。
「まぁ、視力は良い方なので――」
等と適当に答えつつ、そのまま俺達は歩みを進める――そうして、俺の視力で番兵を捕らえられた地点から歩く事数十秒――
「そこの三人組、止まれ!」
と、叫ぶ声が聞こえてきた。――どうやら、ようやく俺達に気が付いたらしい。抵抗する理由など無いので俺達は三人ともその声で足を止めた。
それにしても、気付くのが遅い。まぁ、来るか来ないか判らない上、どの方向から来るか判らない相手をこの暗闇の中見つけるのは大変だとは思うが――
流石に、この距離まで接近を許すのは正直な所頂けない。相手が人間だったとしても、弓や銃なんかの狙撃武器を持っていれば、間違いなく負傷を負わされているだろう。
もっとも、どちらの場合も相当な名手であることが条件だが――と、言うか……この世界に銃って概念はあるんだろう?
(否、科学技術が殆ど進行してなさそうだし、無いだろ)
まぁ、そうだろうなぁ、普通に考えると。
「――こんな夜更けにこの町に何の用だ、答えによっては生かして返さんぞ」
夜中に町にやってくる旅人とかは居ると思うんだが――そう言う人達にもこんな対応なんだろうか。物騒だなぁ……いや、別に構わないけどさ。
「番兵はお前だったか、ルゼル」
そう言って立ち止まった位置から、ロイドが一歩前に出て今度はこう告げた。
「――到着が遅れて悪かったな。だが、確かにロイド様をお連れした。それから、我等と共に戦ってくれる戦力を一人もな」
先ほどのグダグダ感は何処へ行ったのか――立派に部隊を纏める副長としての、風格を持ったライルの姿が其処にあった。
まぁ、きっとコレがライルの普通なんだろうけどさ。
「その声は副長ですね? ――後ろに居るのはロイド様と、仰った共に戦ってくれる協力者ですか?」
「あぁ、そうだ。――紹介は明日の朝、皆の前でするつもりだ。所で、今日は少し疲れているので、眠れる場所を用意してくれるか?」
と、言うか親衛士団って何人ぐらいの規模なんだっけ? 人数多いと名前なんて覚えれないぞ、俺――時間をかければどうにかなるだろうけど……
(今までの移動ペースで移動しても一週間もあれば王都に付くだろうし、その程度の付き合いだが、覚えられるか?)
……二十人ぐらいなら覚えられる――かな?
(まぁ、お前の記憶力ならその程度だろうな……もっとも、同時に数十人に自己紹介されてそれが混ざり合わなくて――だがな)
うーん……無理臭いな、それ。まぁ、頑張って覚えよう――うん。
そんな微妙な不安に駆られながら、番兵――ルゼルとやらが「了解しました、直ぐにでも休める場所を手配します」と言っている声を聞いた。

<SIDE-Ryle->
先ほどのルゼルとの会話から数分程度で用意された三つの部屋に、私達はそれぞれ通されていた。
態々三つも部屋を用意することは無い、とは思ったが、コレはコレで気を使わなくて済むので助かる。
ルゼルには疲れているとは言ったし、それは嘘ではないのだが――私にはやらなければ行けない事はある。
同じ部屋なら、私だけが休まずに居ると、ロイド様やレオン殿に気を使わせてしまいかねないので、気兼ねなく私のすべき事を実行できる。
現在、親衛士団の指揮権を持つ私がすべき事……今現在リウ=レイオスに集まってきている士団員がどれだけ居るのか――その確認を。
こんな考え方をするのは最低なのだが、ジュリアス一人ならレオン殿がどうにかしてくれるだろう。私達に出来る事があるのなら手を貸すが、その必要すら無い様に思える。
だがしかし、敵は恐らくジュリアスだけではない。少なからず居るであろう以前の王政に不満を持つ者も、私達の行く手を阻む事になるだろう。
レオン殿の考え――自らは世界に介入すべきでは無い、と言う――先ほど聞いたその内容から考えると、ジュリアス以外の相手とはまともに戦ってはくれないだろう。
だからこそ、残る我々の戦力を確認しておく必要がある――総数50人で構成された親衛士団、その内の何人がここに集結してきているのかを。
さて、それでは――ルゼルにでも聞きに行きましょうか。少なくとも、三番隊の隊長である彼に聞けば、三番隊の状況だけは確実に聞けるだろう。
ルゼルに聞いて士団全体の事が判らなければ――サバスとジルム、それにノイエの居場所だけでも聞けば残りは彼らに聞けば大丈夫でしょう。
否、ノイエの居場所は判っても聴きには行きづらいですが……流石に、この夜更けに女性の寝所に男の私が行くのは少し気が引けますし……
――それでも、士団の状況を把握できないなら、聴きに行かざるを得ない訳ですが……
「まぁ、恐らくルゼルに聴くだけで判るでしょうし、早く聴きに行きますか――」
私も、やるべき事を終わらせて早く休みたいですし――急ぎましょうか。
それだけ思考して、私は部屋のドアを開けてルゼルの元に向かう為に踏み出した。

――to be continued.

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