EternalKnight
出発〜憧れ〜
<SIDE-Leon->
「何も忘れてる物はないな?」
――俺はシュウしか持って無いから忘れようが無いが、ロイドとライルは違う。まぁ――二人とも抜けてる訳じゃないから大丈夫だろうけど。
(俺を物扱いするな、不能)
その事ある毎に不能呼ばわりする脅しっぽいの止めてくれないか? それじゃあ、いつまでも俺お前の言いなりじゃねぇか。――聖具と契約者は対等なもんだぞ、普通。
(俺の力が無ければ大した力も無いくせに……対等とはよく言う様になったな、不能――まぁ、その通りな訳だが)
だから不能呼ばわりするな! つーか貶すだけ貶して対等な事は認めるのかよ!――なんてシュウと念話してる間にロイド達から答えが帰ってくる。
「荷物なんか元々多くないから俺も大丈夫だ」「私の方は問題ありません、レオン殿」
と、そんな感じで出発の準備は完了し、俺達は親衛士団の団員が集合する手はずになってるリウ=レイオスに向かう為、レオ=レイアスの宿を後にした。

<SIDE-Leon->
レオ=レイアスからリウ=レイオスへ向かう街道を歩く途中――朝に森の広間で聞けなかった事を聞こうと思い立った。
まぁ、実際唯単に歩いてるだけって結構暇だしな――つーか、馬とかそう言う移動用の動物とか確保できなかったんだろうか?
流石に車やらの機械がこの世界にあるとは思ってないが、馬ぐらいの生き物は居てもおかしくない。――まぁソレについてもその内聞いてみよう。
だが――今は朝ロイドに聞き損ねた事が気になる。アレだけの技量を身に付けるには生半可な努力では無理な筈――
下流貴族が成り上がる為に騎士として力をつけたのなら、不思議では無いが――生まれながら特権上の最上位に居る王族にはどう考えても不必要なモノだ。
王族であれば、余程大きな何かをしでかさない限り、一生遊んで暮らせてもおかしくは無い筈なのに――
ジュリアスが現れるまではライル程の実力者が居るのだし、少なくとも平和であった筈なのに――何故、ロイドはコレだけの力を身に付けているのだろうか?
「なぁロイド、一つ聞いて良いか?」
「あぁ――はい。なんですか、レオンさん?」
先頭を歩くライル、その後ろにロイド、最後尾に俺と無駄に一列になって歩いていたので、俺のほうへ振り返りながらロイドが応える。
「いや、大した事じゃないんだけどさ――お前、何であそこまで強いんだ? 否、そもそも――何故強くなろうと思った?」
その俺の問いに、ロイド軽く頭を掻いきながら照れくさそうに「別に――俺なんてまだまだ未熟ですよ」と、応えてから天を仰いだ。
未熟――ねぇ? 確かに、まだ発展途上だが、アレで未熟なら、全世界の九割九部以上の人類が未熟と言う事になると思うんだが……まぁ、ソレはソレだ。
「俺が強くなろうと思ったのは――単なる憧れからだった」
憧れ――ねぇ……まぁ、判らなくもない。男なら力が欲しいいと思うことがあっても不思議じゃない。
「ぬるま湯の様な生活をずっと繰り返してたある日さ、城の中庭でライルとフィーエが訓練がてらに打ち合いしてたのを見たんだ」
――まして、ライル程の実力者の存在を知ってしまえば尚更だろう。
「広い中庭で繰り広げられていた剣舞――ソレを見て、驚いたし感動したんだ。だけど――何よりも……俺もあの人達の様になりたいって――そう思った」
その対称が何であれ、憧れるまでの過程は誰だって似た様なものだ――だけど、憧れであるからこそ、自分には届かないと諦めてしまう事が殆どなのもまた事実だ。
「偏見かもしれないが、憧れたからって理由で、一生楽に生きていけそうな王族がその強さになるまで挫折せずに鍛え続けれたってのが、俺にとって一番の疑問なんだが――」
「あー……普通がどうなのかは知らないけど、俺の場合はその逆なんです」
――逆? ソレはつまり……どういう事だ?
「えっと……すいません、言い方が悪かったです。逆ってのはですね、一生楽に……何もせずに生きていくってのが嫌だった――ってコトです」
楽に生きていくのが嫌って……マゾヒストか? 否――そう言う意味じゃ無いってのは判ってるんだが。
「兄さん達は帝王学を学んでるけど、俺には何も無かった……だから、憧れを求め続けて来れたんです――まぁ、九年も続けてきてまだ未熟なんですけどね――」
人の身で九年で其処まで強くなるのは十分凄い事だと思うんだが……見た感じ、聖具持ち相手でもEクラス程度までなら普通に戦えるだろうしな、アレだけ出来れば。
まぁ、上位聖具になると契約するだけでとんでもなく強くなるからなぁ……実際。十数年かけて磨いてきた肉体とか技術とかが馬鹿らしくなるくらい簡単に力が手に入るし。
(――もっとも、永遠の騎士になれば肉体を成長させるのは難しいから、鍛えるなら人の身である内が好ましいんだけどな)
ソレは今のロイドよりも弱かった時点でお前と契約した俺への嫌味と受け取っていいのか、シュウ?
(そんな事はないぞ? 寧ろ、鍛えにくくなってから実力を上げたお前を讃えていると言っても良いぐらいだ)
永遠の騎士になる前なら数十年で鍛えられる程度の実力付けるのに数百年かけた俺に対する嫌味にしか聞こえないんだがな、ソレ。
(ソレはお前の考え方が捻じ曲がってるだけだろ? 褒めてやってるんだから、素直に喜べよ)
シュウに褒められてもなぁ……っと、いけない――またシュウとの会話に集中してた。つーかシュウ、ホントに自重してくれ、お前の相手をするのにも疲れて来た。
(俺とて別に好きでお前とこうしてべらべら喋っているのではない。しかしだな――実際お前に話しかけないと暇で仕方ないんだ)
「あの……レオンさん?」
――って、見てみろずっとお前と話して喋ってなかったからロイドが困った顔してるじゃねぇか。
(まぁ、そりゃ――話題を振って来た相手が急に喋らなくなったら誰でも困るだろ、普通)
とりあえず、今はしばらくシュウを無視してロイドに対応しなければ――
「お、おう――どうした?」
自分でも明らかに動揺を隠しきれてないと思うがソレはソレだ。
「いえ、ボーっとしてたので呼んでみただけです、所で俺の話――聞いてました?」
うっ……ばれて当然なんだろうが、話を聞いてなかった事がばれてるな、こりゃ……
「悪い、九年続けてるけどまだまだ未熟だって辺りまでしか聞いてなかった――」
……そんな対応に困るみたいな複雑な表情をされると正直ヘコむんだが――まぁ、話を聞いてなかった俺が悪いんだし、我慢しよう。
「あー……えっと――俺、其処までしかないですよ?」
だがしかし、なんだか凄く申し訳なさそうにロイドはそんな事を言った。
「――あ、あぁ……そうか、そうだよな。悪い悪い、ホントにボーっとしてたわ、俺――ってか、アレで終わりなのかよ!」
思わず一人ノリツッコミしちまったじゃねぇか。
「まぁ……えっと、とりあえずは――強くなろうと思った理由はそれだけだし」
「そう言えば、きっかけしか聞いて居なかった気がしなくも無いな……いや、スマンかった」
その言葉で、ロイドは先程の複雑な表情に戻り「えっと――はい、また何か聞きたい事があれば聞いてください」とだけ言って、口を閉ざした。
(良かったな、レオン。ロイドの中でお前は腹ペコキャラから話聞かない奴かノリツッコミの人に格上げになったぞ)
良くねぇよ! つーかシュウ、誰かと話してる時位で良いからマジで頼むから自重してくれ。
暇で仕方ないから適当にアカシックでも散策してこい。あそこなら飽きる事なんか無いだろ?
(アカシックに居ると時間間隔が狂う、それに――あそこは確かに全ての情報が飛び交う場所ではあるが、幾ら情報があろうが、興味の無い情報など見ても仕方ないだろう?)
まぁ、そりゃ確かに興味の無い事など調べるだけ時間の無駄だけど……それならそれで、興味のある情報を探せばいいだろ?
(出来なくは無いが、あそこは居るだけで負担が掛かる。魂と言う情報体だけで、情報の渦に飛び込み、その中で自我を保つ事がどれ程の負担か、お前に想像できるか?)
シュウ――お前……今までそれだけの負担が掛かるのを黙って、俺の頼みを聞いてアカシックに接続してたのか?
(あー……変に感謝されるのが嫌だから言うけどな、ソレはあくまで何の目標も無しにアクセスした場合だけだぞ?)
すまん、お前が毎回その負荷を負ってる訳じゃないのは判ったんだが、もう少し判りやすく頼む。
(つまりだ、昨日の様な魂の入り口をしっかりと利用した履歴検索や、簡単な調べ物程度ではそんなに負荷は大きく無いという事だ。まぁ、零と言う訳でも無いがな)
成る程――まぁ、考えてみれば、そんな危険な事をシュウが頼んだ程度でやってくれる訳無いよな。
(……聞こえてるぞ、レオン?)
聞こえるようにしてるんだよ、ソレぐらいいい加減判れって。――……で、この掛け合い何度目だっけ?
(さぁ?――俺に聞くなよ)
と、言うか――俺はお前とこうして念話してるから良いけど、ロイドとライルって無言で歩いてて飽きないのかね?
(だから俺に聞くなって……まぁ、あの二人は自分の故郷――祖国の命運が掛かってるし、アレぐらい気合を入れてた方が良いと思うがな)

<SIDE-Leon->
街道をひたすら歩くこと四日――結局、その間もロイドとライルはあまり口を開かなかった。
――流石に、適当な場所で取る食事や仮眠前などは話はしたが、こちらから話しかけた際の対応と、必要最低限にしか喋っていないと言っていい。
(流石にコレだけ会話がないと空気が悪いな……)
まったく持ってシュウの言う通りだ――が、楽しく話をしながらってのも、状況的には違う気がするので、特にロイドやライルに俺からは何も言っていない。
まぁ、シュウと話してればそれで無言で歩くって重い空気からは自分だけ抜け出せるけど。
と、言うか――目標となる町は随分と前から見えているのだが、見えてから到達するまでに結構な時間が掛かる訳で、今もこうして歩いている。
既に日は随分と沈んでいるが、今のペースであるき通せば夜中には町にたどり着くことも可能だろう。
――最も、俺一人なら今からでも一分もあれば余裕で到達できるのだが。別に急ぐ必要も無いし、そもそもロイド達と一緒に居ないならあの町に行く意味など無い。
突然、先を行くライルが、ふと何かを思い出したかの様に立ち止まり、振り返って口を開いた。
「そう言えば、一つ尋ねておきたい事がありました、レオン殿」
ソレは、街道を歩き始めてから、恐らく初めてであろうライルからの問いかけ――だからどうと言う訳では無いが、それだけで、何か重要な話題である様な気がした。
「俺に答えられる範囲なら答えるけど――急にどうしたんだよ、ライル?」
「はい、このまま行くと今日の夜中にはリウ=レイオスに到着するのは目に見えています。そして――リウ=レイオスには親衛士団のメンバーが集つまって来ている筈です」
まぁ、そりゃそうだろ――と、言うか集まって来て無いと、あの町に態々寄った意味がなくなる。そもそもこの町に立ち寄るのは親衛士団との合流の為だ。
「そうじゃなきゃ困るだろ? で――ソレがどうかしたのか?」
俺に尋ねたいことで、この話を前振りとして使うって事は……――駄目だ、さっぱり判らん。
「はい、レオン殿をどの様に団の皆に伝えようかと思いまして……建国の英雄だと教えても信じる者等ほぼ居ないでしょうから」
まぁ、150年程前の人間が自分の目の前に居るなどと言われても、普通は誰も信じる事は出来ないだろう。
(いや、ロイドが言っていた絵画があるだろ。それだけで十分な証明になるんじゃないのか?)
――そうか、確かにそう言われればそうだったな。
「ロイドが言ってた俺と初代国王が書いてある絵画ががあるじゃねぇか。ソレがあれば、信じれなくても、現実を受け止めるしかないだろ?」
俺の言葉に、首を横に振りながら、ライルは答える。
「残念ながら、絵が飾ってある場所は王族以外が簡単に立ち入れる場所ではありません。故に――はっきりと覚えている者は居ないでしょう」
まぁ……それなら仕方ないか。だが――そうなるとまた聖具について説明しなければいけないのだろうか?
「いや、そもそも――どうして真実を伝える必要があるんだ? ロイド達の力になりたいと付いてきた一兵士、って事じゃ駄目なのか?」
「はい、私もソレを考えて居たのですが――そうすると一つ問題が発生するのです」
深刻そうに、ライルは視線を落として喋る。しかし……深刻な問題なんてあるか?
「何か問題があるのか? 俺には思いも付かないんだが――」
「問題あります、レオン殿を一兵士として扱うと、決定的な矛盾が発生する――そうなると、確実に団の皆に疑われます」
コレだけライルが深刻そうにしているのだ、俺が気づいて無いだけできっと何か問題があるんだろう。
「団長の居ない今、副団長の私が士団のトップです。その其の私が、一兵士にレオン殿等と呼んでは、確実に団の皆に――」
あぁ、いや――訂正しよう。何も問題なかった。つーかライルって其処まで考え方が硬い奴だったのか……知らなかった。
まぁ、付き合い短いから仕方ないんだけどさ……

――to be continued.

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