EternalKnight
実力〜剣舞〜
<SIDE-Leon->
今回もまた、浅い眠りから開放されて意識を取り戻す。――かれこれ千年は深い眠りについていない気がする。
睡眠が必要ない以上、深い眠りもまた必要としてはいないが、どうも浅い眠りだけで満足できない。
深い眠りに付けない理由は一つ。外部へ漏れるエーテルを限りなく零に近づけるエーテルの外部流出の管理のせいだ。
一時の休みも無く持続させ続けるその力の管理は既に意識下になく、発動時と終了時のタイミング以外は完全に無意識下で制御されいている。
故に、発動すれば終了を意識的に指令しない限り効果は永遠に持続する。
そして、無意識下とは言え、能力を発動している事に代わりは無いので、深い眠りに付くことが不可能なのだ。
「久しぶりにぐっすりと寝たいなぁ……」
(そんなにぐっすり眠りたいなら、寝れば良いじゃないか。――不能と呼ばれて良いのなら、俺は止めはしないぞ?)
「ソレは嫌過ぎるって……何度言えば――」
って――この部屋にはロイド達もいるんだっけな……声に出さない方が良いか。独り言だと思われるの嫌だし。
(ロイドとライルなら、お前が起きる数時間前に部屋から出て行ったぞ?)
部屋から出て行った? ――そりゃまた一体なんでだよ? つーかなんでそん時に起こしてくれなかったんだよ。
(何故か等と俺に聞くなよ、 分かるわけ無いだろ? それから、何故態々俺がお前を起こさなきゃいけない――別に外に出ただけだろう? 荷物も置いていってるしな)
部屋を見回すと、確かに部屋の隅には、ライルとロイドの持っていた荷物等に置かれたままになっている。
(だいたい、何故物音で起きない? 浅い睡眠をしていたのだから、物音に反応して起きるなど難しい事でもなかっただろ?)
いや、一大事ならお前が教えてくれるだろうと思ってさ――まったく警戒してなかった。そもそも、こんな世界で一大事なんか起こると思ってなかったってのもあるけど。
(あまり俺を信用しすぎると、いつか痛い目にあうぞ? ――それで、これからお前はどうするつもりだ?)
――どうするって、ロイド達を探しに行くべきだろ? 別に何をしてても構わないけど、このまま待っとくのは暇だしな。
(成る程、確かにこのまま暇を持て余すぐらいなら、何をしているのか見に行った方が幾らか有意義だろうな――だが、何処に居るのかわかるのか?)
そんなの、この宿の人に聞いたらたぶん分かるだろ?
(分からなかったらどうするんだ?)
さぁ? そん時はそん時だよ――仮定で話しても仕方ないだろ? 実際に聞いてみるのが一番早いに決まってるって。
(――それもそうか、仮定の話をしてもしょうがないな。まぁ、お前の好きな様にやればいいさ)
――なんか引っかかる言い方だな……
(気にしすぎだ、さっさと行かねばロイドたちが戻ってくるかもしれんぞ? まぁ、そうなれば、何をしていたのか話を聞けばいいだけだがな)
だな――折角だし、ちょっと急ぐか……って、誰も居なくなったら無用心じゃないか? 鍵も無いみたいだし。
(流石に、その辺りは大丈夫だろ――別に取られて困るものなど大して無いだろうし)
いや、金とか取られたら拙いだろ――ずっと野宿になるぞ、これから。
(俺からすれば、別にどちらだろうと違わん。大体、リウ=レイオスとやらに着くまでの三日はどうせ野宿になるだろう?)
いや、まぁ――確かにその通りか。……そうだよな、どうせ俺は寝ない訳だし別に野宿でもいいか。――んじゃ、さっさと行くかね、シュウ。
(だから、行くのなら早く行けと言っただろう?)
――だな。うっし――んじゃまぁ、とりあえずこの宿で働いてる人にどこに行ったのか聞くかなぁ。

<SIDE-Leon->
結局、宿の人に聞いても情報を得られなかった訳で――
「ロイド達、どこで何してるんだろうなぁ……」
半径三百メートルはカバーできる探知も、分かるのはどこに人が居るか程度でしかない。
エーテル関連物の大小から固体識別も可能だが、ソレはあくまでエーテル保持量に差がある永遠の騎士や魔獣に対してだけだ。
下位聖具所持者も聖具を展開させていれば分かるが、待機形態にされていれば発見する事など出来ない。
まして人のエーテル量など、誤差が小さすぎてどれがどれかなど判別できないのだ。挙句の果てに、オーラ量は感情にも左右されるので、固定値ではない。
そんなもので、個人を特定して探すのは、事実上不可能に近い。だいたい、仮に範囲の外に居るとするなら、補足する事すら出来ない。
しかし、微弱なオーラを検知できる精度を保つには、これ以上探知領域を広げることは出来ないし……
ライルが魔術でも使えば、オーラが魔力へ変換されるので場所を特定出来るのだが……そもそも、今使う理由が無いのでコレも当てにならな――ん?
(……使ってるな、魔術。ちょうど探知での補足可能範囲のギリギリの場所……位置的には村の外れの森の中――と、言った所か?)
ちょっと待て――ライルは魔術なんざ使わなくても並みの人間には負けないんだぞ? 魔術が行使されてるって事は――
(別に、その魔術反応を出しているのがライルと決まった訳ではないがな――)
ソレこそ無いだろ。魔術ってのは、会得するのにそれなりの時間が掛かるんだぞ? ――生半可な覚悟で覚えれるもんじゃない。
(否、Lv1程度なら才能さえ有れば、半年と掛からんだろ――お前は、自分が会得するのに苦労したから大変だと思うだけだ――普通、お前ほど才能の無い奴は居ない)
何気に酷いこと言ってるな、シュウ――事実だから反論できないけどさ。
(それで、どうするんだ? 変換反応の元にでも向かうか? ――誰にしたって魔術使いが反応のあった場所に居ることはほぼ間違いないぞ?)
まぁ……なんにせよ、ライル達って可能性が高い以上、向かわない理由が無い――か。
「んじゃ、切り上げて戻って来られる前に、こっちから向かわせて貰おうかな――」
その一言だけつぶやいて、俺は反応の感じる方向へ向かって軽く走り出した。

<SIDE-Leon->
短い距離を軽く走りきり、その先……村の外れの森の中の小さく開けた場所――魔力反応の発生源――で行われている光景を見て、俺は自分の目を一瞬疑った。
そこで繰り広げられるのは、限りなく人に可能な限界に近い領域の速度で行われる剣戟――勿論それに驚いたのではない。ソレを行っている人物に驚かされたのだ。
剣舞の如く繰り広げられる攻防――それを編むのは俺の知る二人……言うまでも無く、ライルとロイドだ。
ライルに関しては驚く程の事じゃない。――シュウの加護無しにとは言え、魔術を行使して戦う俺とタメを張れる強さを持っているのだ、その程度は不可能でも何でも無い。
――と、言うか実際魔術を行使していない様に見える。だが、それでもまだ理解できるレベルだ。
俺が驚かされたのは、無論ロイドの技量や能力について――だ。見たところ、魔術を発動している様だが、それでも十分すぎる程の力だと言える。
そして、俺とシュウが見つけた魔術反応はライルの物ではなくロイドの物だった――と、言う事になる。別に見つける事が出来たのでどうでも良いが――
しかし、見たところ魔術込みでライルの魔術なしと同等の技量――って、所か。……基準がライルだから見劣りするが、並と比べれば十分過ぎる力だ。
――等と考えている間にも、剣舞の如き剣戟は続く……否、ライルが押し始めて来ている。
だが、それは単純に体力量の問題だ。全力で剣を振るっていれば、いつか体力に限界が来るに決まっている。
空の魔術でカバーできるのは所詮身体能力のみだ。結局の所、技術や体力は地道な努力で磨き上げるしか無いのだろう。
そして――ついに、剣舞とは呼べない程にまで剣戟の質は劣化して――勝敗が決した。
(なぁ、レオン――そろそろ出て行かないか? 別に俺たちは何もしていないんだし、いつまでも木の陰に隠れているのはどうかと思うぞ?)
分かってるよ――でもな、きっと隠れてないと、さっきの剣戟がちゃんと見れなかったかもしれないんだし、別にいいだろ?
(別に――もっと高度な剣戟をいくつも見てきたし、そんなもの見た所で今更どうだと言うんだ?)
いや、スゲェじゃねぇか――普通はヌクヌクと温室で育てられるもんだろ、王族なんざ。なのに――ロイドはあれだけ戦えてるんだぞ?
アレだけの腕を身に付けるには相当な時間を費やすだろう。良い指導が付いて努力を惜しまず、それで居て才能があって零から初めて八年――って所か。
それだけの条件などまず揃わないと考えればアレだけの強さを得るのに凡そ十数年はくだらないだろう。
(否――意外に全条件揃っていると思うぞ、ロイドの場合……で、この木陰から出るんじゃなかったのか?)
うん、まぁ出ようとは思ってるんだが――隠れてるとさ、思いの他出辛いんだよ、コレが。何て言うの? ――覗き見である事には違いない訳だしさ。
(そう思うなら、初めから木陰になど隠れるなよ……)
そうだな、たった今後悔し始めた所だ――まぁ、俺が気にしなければそれで済む事なんだけどさ。このまま木陰で待つのもなんだし、さっさと出よう。
そう結論を出して、俺は「ロイドも少し戦えるんだな――正直関心したぞ」等と、違和感を出来るだけ出さない様に木陰から出て、ロイド達の居る開けた場所に踏み出した。
「レオンさん――……一体いつから居たんですか?」
その俺を見て、驚いた様にロイドは言う――対するライルは驚いている様子は無い。――まぁ、ライル程なら気配で俺の居る場所には気付けてもおかしくは無いだろう。
寧ろ、別段気配を消していた訳でも無い以上、当然と言えば当然なのだが――
「――そうですね、私が認識できた段階からですと、最後の打ち合いを始めて直ぐ……ぐらいでしょうか?」
まぁ、ライルが言うからにはそうなのだろう。――正直、自分の見始めた所からしか知らない俺に、いつから居たのか? 等と聞かれても答えに困る。
「そうか、それならまぁ良いかな、最後の打ち合いは過去最高の動きが出来てたと思うし――って、ライル! 気付いてたなら教えてくれよ!」
おー、すげぇ一人ノリツッコミだ……久しぶりに見た。
(昨日まで八十年近く俺意外に会話可能な生物と関わって居なかった以上、久しぶりなのは当然といえば当然だがな)
なぁ、テンション下がるからそう言うツッコミは無しにしようぜ?
(――そう簡単に止める訳には行かん。俺なんて既に1000年は今の状態で居るんだぞ? お前の嫌がらせでもしてストレスを発散しないとやってられん)
それは仕方ない事だろ? お前だって自分が解放されればどうなるか分かってるだろ? 寧ろそうなった方がストレスが溜まるっての。
(だから、そうならない様にお前を弄って嫌がらせして、ストレスを発散しようとしてるんじゃねぇか)
もういい、好きにしろ。『まぁ、シュウが開放された後の面倒事に比べれば、弄られたり嫌がらせ受けた方がまだマジな訳だが――どうせ直ぐに飽きるだろうし』
『――等と、思考の流出を止めながら考えていた所で――』
「所でレオンさん、どうしてココに来たんだ?」
などとロイドの質問が耳に入ってきた。――どうやらライルを問い詰めるのを止めたらしく、質問の対象を俺に切り替えた様だ。
「いや、起きたら誰も居なかったんで、探しに来ただけが――どうしてそんな事聞くんだ?」
大体、ロイド達を探しに来た以外の理由で俺がココに来ること等有り得ないのは聞くまでも無く分かってるだろうに――
「いや、俺はまだまだ未熟だから――レオンさんには見られたく無いなと思っただけで……」
あの実力で未熟って――聖具持ってなかった頃の俺と比べれば十分強いと思うが……
「その歳であれだけやれれば十分だと思うけどな、俺は……俺がお前ぐらいの時には、あんな動きは絶対出来なかったしな」
(その頃のお前を知らんから言い切れ無いが、ソレはお前が魔術に関してまったく無才だったからだろ? 魔術の強化無しであの実力は普通出せる様な物では無い)
いや、分かってるけどさ。魔術だって本人の実力の内だろ? 使える様になるまでに相応の時間をかけて本人が学んだ物なんだから。
(まぁ、どう考えようとお前の自由だがな――。そも、昔の実力と比べた所で、ソレは過去に話だ。今は関係無い)
「でも――やっぱり未熟な腕は出来る限り人には見せたく無いと思うんで……」
どのぐらいの強さを基準に言ってるのか知らないが、未熟って基準が高すぎるだろ、ソレは流石に――
まぁ、自分の実力を過大評価してるやつよりはよっぽどマシだが――
「もうその話は終わりでいいだろ? さっさと宿に戻って準備して、出発しようぜ――少なくとも目的地まで三日は掛かるんだしさ――」
「そうですね、早く行動するのに越した事は無いでしょう」
俺の言葉にライルが同意し、俺達は森の開けた空間に背を向けて、宿に向かって歩き出した。

――to be continued.

<Back>//<Next>

7/28ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!