EternalKnight
説明〜宿〜
<SIDE-Leon->
まぁ――その……なんだ? あんな辺境の森の奥の小屋から一番近いって町らしいから、大して期待はしてなかったさ――
(これは……また、なんと言うか――)
《町》にたどり着いた俺が見たのは、想像を絶する《町》の姿だった。
建っている建物は見た感じ全てが木造で、十数軒しか存在しない木造建築物はその全てが平屋だった。――いや、敷地面積の広い建物もあるけど。
って言うかこの《町》に宿とかあるのか? そしてあった所で、俺の居た小屋との違いって正直布団の有無ぐらいじゃないか?
――いや、そうじゃない。肝心なのは其処じゃない。俺が今最も突っ込みを入れたいのは――
「これは、誰がどう見ても明らかに《町》じゃなくて《村》だろ……」
誰に放ったつもりでもなかったが、小さく呟いた俺の言葉に、ライルが答えを返してくる。
「そうですね――現在では村の様な規模ですが、数十年前までは城下と同程度発展していたので、地図などでの扱いが町になっています」
だから町と言った訳か……しかし、この辺りは国の端――辺境と呼ばれてもおかしくない場所の筈なんだが、どうして数十年前には発展してたんだ?
仮に発展していたとして――
「――それっておかしくないか? 別に人口が減少しても建物に影響はないだろ? 建物がほぼ全部木造で平屋しかないのはおかしくないか?」
「ここは五十年ほど前に立て続けに起きた災害によって壊滅的な被害を受けたのです」
(そう言えばそんな事があったな――と、言うか半年前に壊れた小屋を立てたのがその災害の後になるのか……)
あぁ〜アレが原因か……立て続けに起きた災害か……一回台風来て小屋壊れた立て直したら地震で倒壊して立て直しになったんだっけな……
「その後、再復興が進む事無く、朽ち果てた町の残骸は全て現地民によって撤去されたそうです」
「なるほど、別に其処まで詳しく知ろうとは思ってなかったけど参考になった――んで、宿を取るんじゃないのか、ライル?」
俺のその言葉を聞いて思い出した様にライルが頷いて応える。
「そうでした――では、宿にて話をつけて来ますので、ロイド様、レオン殿ここで少々お待ちください」
それだけ言って、ライルは村で一番の規模の家に向かって歩いて行った。
(まぁ、宿の手続きならさして時間はかからんだろうな)
だな――まぁ、宿って言う位なんだ、ある程度まともな寝具は揃っているだろうし――久々に本格的に寝ようかな。
(お前が完全に寝ると外部への流出の管理を俺が一人でしなけりゃならんのだが?)
あぁ――ソレはダルそうだなぁ……まぁ、頑張ってくれや。
(ちょっと待て――何故そうなる?)
いや、だってさぁシュウ――お前、寝る必要ないじゃんか。
(ソレはお前も一緒だ!)
一緒じゃねぇって。ほら別に俺にとっても必須じゃないけど、俺には人間の三大欲求的なモノがあるしさ――
(っく――仕方ない。……だが、その場合お前はその三大欲求の一つに当たる行為を既に何千年も実行していないので不能と言う事になるが、それで良いな?)
野郎っ……そう来たか。ソレはこう、男として絶対に認めるわけには行かない、マジで。
(ソレを認めないなら、管理を全て俺に任せるなど言うなよ――まぁ、外部流出の自動管理状態を維持してくれるならいくら寝てくれて構わんがな)
いや、アレだとあんまり寝た気がしないんだって。――等と俺が念話でシュウと討論していると、俺の傍で無言で立っていたロイドが、口を開いた。
「……なぁ、レオンさん――あんたに聞きたいことがある」
そう言ったロイドの表情は何処か硬く、緊張している事が見て取れた。……やはり、その表情はゲーティに似ている。
(だが、別人だ――アカシックを辿って出た結論は覆らん)
んな事ぁ、言われなくても理解してるさ――とりあえずシュウ、お前との話は後だ。なんか妙に真剣だし、話をしっかりと聞いてやろう。
(まぁ、好きにしろ――お前と話す時間など、幾らでもあるしな)
そう、シュウが言い終わるのと同時に、俺はロイドの声に応える。
「なんだか豪く気を張ってるみたいだが――どうした?」
その俺の言葉に応えを返すのに、ロイドは初めての逡巡を見せた。――そんなに聞き辛い事なのかね、聞きたい事ってのは?
(そんな事、俺の知った事か)
否、別に聞いてないっての。――等と、念話でシュウと漫才じみた話をしている間に、ロイドは覚悟を決めたのか、その口を開いた。
「無礼なのは分かっている――ライルも聞こうとはしてなかったしな。だけど――あえて聞きたい。レオンさん、あんたは何者なんだ?」
(何者なんだ、とはまた――答えに困る質問だな……適当にはぐらかすか?)
別に隠す程の事でもねぇし――んでも簡単に言っていい事でもないか――まぁ、とりあえず適当にはぐらかして、追求してきたら教えてやるって事で。
(最期まで適当にはぐらかすのが一番良いと思うがな――)
最期まではぐらかすったってよ、シュウ。何をどうするんだよ? そんな即興で設定作れねぇよ? 少なくとも俺には。
(だったら、好きにすればいいだろ? 別に俺はお前にどうしろとも言っていない――意見の一つとして言っているだけだ)
そうかよ――まぁ、最初は適当にはぐらかせればいいだろう。
「何者なんだ? ――って質問の意味がよく解らないんだが?」
その俺の質問に、ロイドは一瞬視線を落としながら押し黙り、ゆっくりと続く言葉を紡ぐ。
「何故、あんたは今もそうして生きている? おかしいだろ――150年間も人間が生きてる筈がない」
(実に的を射た質問だ――説明した所で信じるかは別として、お前が永遠を生きる存在だと、教えるか? 教えるのが面倒そうだが――)
否、まだだ――まだもう少し言い訳出来なくは無い。
「俺が建国時に力を貸した獅子の子孫だって可能性は考えられないのか?」
その俺の言葉を「有り得ない――」と、ロイドが強く否定する。その自信は、何を根拠に生まれて来るか――
「何故其処まではっきりと有り得ないと断言できる?」
その俺の質問を答えられるのが当然であるかの様に、ロイドは俺に言葉を返す。
「建国の立役者である獅子と初代国王が二人で写実された絵画に描かれた獅子の絵と貴方はあまりにも似すぎている。否、俺には同一人物だとしか思えない」
(写実された絵画か――そんな物が残っていたか……しかし、ココまで言われたのなら――)
分かってるよ。俺がどんな存在か――分かりやすく簡単に、深い部分に触れずに説明してやるさ。
「成る程――んじゃ、隠す必要もあんまりないし、折角だから話してやるよ――俺が一体《何》なのかをな」
「拒否されると思って、駄目元で聞いて見ただけなんだけど――教えてくれるのか?」
駄目元かよ――まぁ、もう教えてやるって言ったし、説明してやるか……
「教えてやるよ――でもまぁ、二回説明するのは手間なんで――ライルが戻ってくるまでは我慢してくれや」
その俺の言葉に、ロイドは驚いたのか目を丸くしながら「――ライルにも聞かせていいのか?」等と聞いてきた。
どうせ一人に話すのも二人に話すのも一緒だし、別に隠すほどの事でもない。そも、ロイドに話せばいずれライルにも伝わるに決まっている。
「別に構わないさ、中途半端に脚色されて話されるよりは、自分で話した方が理解されていいだろう?」
俺の言葉に頷きながら「確かにその通りだ」――とロイドが言っている間に、ライルが宿らしき店から出て来て、こちらに向かって歩み始めた。

<SIDE-Leon->
予想外と言うかなんと言うか――
ライルが取った宿屋の部屋は相当良い部屋だった。――三人とも同じ部屋だが。全て木で作られた室内には、独特の雰囲気が出ており、広さや綺麗さなど申し分ない。
置かれている物の殆どが木製の中に木製ではないベッドが置かれているが、これも高級感を感じさせ、寝心地が良さそうだ。あぁ、本格的に眠りたいなぁ……このベッドで。
(別に寝ても構わんのだぞ、お前を《不能》と俺が呼ぶだけの事だ――)
ソレは勘弁して欲しい。一回や二回言われるだけなら、我慢できなくも無いが、ずっとそう呼ばれるのは我慢出来る自信が無い――男として。
そんな事はともかく――恐らく……否、間違いなくこの宿でここが一番よい部屋なのだろう。
(だろうな――既に寂れてると言って良い村なんだ。客の数が少ない以上、こんな部屋は一つあるだけだろうよ)
まぁ、そんな事は今は正直どうでも良い。――さて、一体何からどう説明するべきか?
予備知識の無い相手――俺の話を待ちながら座っている二人には一体どこから説明すればいいのやら……
――と、言うか永遠の騎士について等を説明をするのは久しぶりな気がする。この世界を隠れ蓑にする前も、基本的には見つからない様に世界を渡り歩いていただけなのだ。
なぁ、シュウ? 予備知識の無い相手には何から――
(知らん。俺に聞くな――自分で考えろよ。そもそも、俺は面倒そうだとちゃんと事前に言っただろう?)
言ってたけどさ、少しは一緒に考えてくれてもいいだろ? ほら――なんかロイドもライルも待ってるし。
(だから知らん――だいたい、適当に話していれば向こうから分からない部分は聞いてくるだろ?)
うーん……そんなもんか?
(さぁな――聞く気があるなら質問ぐらいしてくるだろ、普通。聞いてこなけりゃそれ以上説明する必要もないしな)
まぁ、そりゃそうか――んじゃまぁ、適当に説明するかな。
「今から話すことを信じる、信じないはお前等に任せる――信じないならそれでも良い。信じられない様な話だからな――」
事前の注意としてそう言った俺の言葉にロイドとライルは――「わかった」「承知しました」――それぞれの言葉で返事を返してきた。
「よし――それじゃあ、始めようか」

<SIDE-Leon->
「――と、このぐらいかな。んで、最後に質問受け付けるけど……なんかあるか?」
一時間程で説明が終わった。正直自分でもかなり分かり辛い言い方だったとは思う。
(思う――では無く実際分かり辛かったがな。途中、俺がフォローしてやらねば後何時間掛かった事やら……)
悪かったな、話下手で――そもそもまったく聖具とかに関して知識ない奴に説明するとか始めてだったんだよ。
それは置いといて――細かい話は無しにしてコレだ……細かいことまで言うなら何時間掛かるか想像も出来ない。
まぁ……そんな事を話す必要はまるで無いからするつもりなど一切無いが――
そも、ロイド達にしてみれば、何故俺の外見が変わっていないか、何故頂上的な力を持つのか等の理由が分かればそれで良いだろう。
「一つ、質問があるのですが――」
先程の俺の問いかけから少し間をおいて、ライルがそう言った。――つーか、あんな説明で質問が一つだけなのか……
「一つで良いのか?」
「はい、一つだけです。レオン殿はその聖具とやらの契約によって基本的な身体能力が引き上げられる、と仰いましたが、それはどのくらいなのでしょうか?」
(どのくらい――か、また答えにくそうな質問だな)
――でもまぁ、答えるしかないだろ? コレは分かりにくいが、難しい答えじゃないしな。
「身体能力の上昇率は、聖具毎の固有値で決まる。契約者の元の力次第で補正値が同じでも結構な差が出たりするな」
「成る程……つまり、契約前の力が強いほど聖具と契約した時の能力も跳ね上がる――と、いう事ですね?」
あんな説明で理解できるのか……すげぇ理解力だな、ライル……流石に、あの年で空属性とは言えLv4まで会得してるだけの事はある。
「あぁ、その考え方で問題ない。詰まる所、ライル――お前程の能力を持つ奴契約すれば身体能力補正は半端無いだろうって事だよ」
その俺の言葉に、ライルは不思議そうな表情で「私――ですか?」と、自分を指差しながら言った。
「あぁ、お前だ。――お前の身体能力は普通、人として発揮できる限界に限りなく近い。俺の人だった頃の身体能力はお前に遠く及ばない」
永遠の騎士になった時に、聖具の補正値とは別に、本来人間には自動的に備わっている負荷に対する自衛機能が消滅する。
ライルとの腕試しでは、シュウの補正こそ使っていないが、外された負荷に対する自衛機能はそのままだった。
その状態で互角だったのだ。ライルの負荷への自衛機能が外れれば凄まじい力を発揮できるだろう。
「まぁ、とりあえず――コレぐらいでいいか、質問への回答は?」
「はい、ありがとうございました」
ベッドに腰を下ろしたまま、ライルは小さく頭を下げた。

――to be continued.

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