EternalKnight
二つの事実
<SIDE-Leon->
「――なっ、何故そんな事を?」
聞かれる筈の無い――否、聞かれたく無い質問に対して明らかに動揺している。まぁ、無理も無いだろう――が、よく考えればわかる事だ。
王族の中で、優先的に護衛が付くのは誰か――まず王、次にくるのは王妃、或いは時期王である第一王子、以下が残る王子、王女達になる筈だ。
そして、時期王の座に着くであろう第一王子は、間違いなく厳格な教育を施される。
――だが、ロイドにそんな教育が行われていたとは思えない。酷い言い方かもしれないが、王族として纏うべき覇気が圧倒的に足りない。
なのに、ライルが護衛に就いている。――団長が死ねば、士団最強の戦力はほぼ間違いなく副団長になる筈なのに、だ。
護衛の最強戦力を、態々優先順位の低い者につけるか? 否――だ。普通に考えればそんな事はありえない。
ロイドが第一王子だという可能性があったのは確かだが、先程のライルの反応がそれは違うと言う事を表していると考えて良いだろう。
まぁ、例えどんな立場だったとしても――現在アルティリア王国の王族で、ロイドより上の王位継承権所持者が存在しない、と言う事実だけは変わらないだろう。
先程から、ライルは一言も発さずに俯いている――別に、俺に話した所で現在の状況が変わる訳では無いと思うのだが……なんで、言わないんだ?
あぁ――そうか……まぁ、ロイドが居れば確かに話辛いわなぁ……仕方ない。とりあえず、別の話に変えるか。
「いや、やっぱりその話は――「待ってくれ、ライルは答え難いみたいだからさ、俺がその質問に答えさせてもらうよ」
だが、話題を変えようとした俺の言葉をロイドが遮った。
「ロイド様……よろしいのですか?」
「俺に気を使わなくても良いよ、ライル。だけど、お前の口から言い辛いなら、俺の口からレオンさんに伝える、それだけだ」
なんだか盛り上がってるが、別にさっきのライルの反応で知りたかった事は大方知れたから別にもう良いんだが――
――まぁ、なんかココで話を止めさせると気を使ってるとしか思われないだろうし、聞いとくかな。
「今、生き残ってる王族は……俺を含めて三人しか居ない。第三王子である俺と、今はここに居ないが、妹と弟が生き残ってる」
――三人……か、下が何人だったかに寄るが、随分とまた殺られたもんだな。いくら永遠の騎士相手でも――大勢に分散して逃がせばそこそこ逃げられると思うんだが……
全員同じ経路で逃げようとしたのか? いや、それだと三人だけ生き残ってる理由にはならない筈だ。
「何故――三人だけ生き残れた?」
別に必要な情報では無いのだが――気になる事を聞かずに居るの少しもどかしい。故に、質問を続ける。
その質問に、ロイドは何の逡巡もなく答えを述べる。
「生き残った俺達以外の王族が参加していた王族会議の最中に襲撃を受けたって話を聞いてる――俺が参加出来なかった理由は、二十歳から参加可能だったからだ」
「なるほど……」
一箇所に集まっている時に襲撃したのか……なら、次に出来る疑問は、どうして態々会議のタイミングを狙ってまで王族をほぼ全て殺したのか――だな。
まぁ、コレばっかりは、ロイドやライルに聞いても分からないだろうし、質問は打ち止めにするか……
「他に――俺に応えられる範囲で聞きたい事はないか?」
やっぱ王族の喋り方に見えないが――まぁ、第三王子ぐらいになれば、余程の事が無い限り王位継承権はないんだろうし、作法を最低限習う程度だろうから納得は出来るが。
「それじゃあ最後に一つ――お前等は俺に何を手伝って欲しい?」
何を応えても――相手が永遠者である以上、俺は動くつもりだが、俺がどこまで戦力として手を貸せばいいのかを、まだ聞いていない。
その言葉に――ロイドは一切考えるそぶりを見せず、間を置かずに応えた。
「勿論、この国を解放するまで――だ」
――解放? ジュリアスを倒して、この国を再び統治するまでって事か? 俺としては、ジュリアスを倒すまでとしか考えてなかったんだが……
確立は50%――半々でこの世界に居られなくなる可能性があるのだ――中途半端な約束は出来ない。
仮にゲーティの生まれ変わりだとしても、既に別の人間で――しかもゲーティとは無関係な他人の空似かもしれない。
それでも――ゲーティの面影を持つロイドと、半端な約束はしたくなかった。
「解放と言ったけどな、どの状況まで行けばその解放とやらになるんだ?」
その俺の言葉に――
「決まってる、ジュリアスとか言う男を倒すまでだ――その後は、仕切るのなんか向いてないけど、生き残った王族である俺の仕事だしな」
――当然の様に、決意を秘めた眼差しを向けながら、そうロイドは答えた。世界に介入する永遠の騎士を排除するまでが約束であるなら、俺としては文句など無い。
「なら、ジュリアスとか言うのを倒すまで、俺の力をお前に貸そう」
報酬として何か貰えるにしても、俺からすれば何の意味も無いモノでしかない。この世界の物は、この世界でしか使えないし。
「ありがとう――ライルの認めるあんたの力なら、なんとかなると信じてるよ」
「レオン殿、感謝致します……あなたの力があれば、必ずジュリアスを倒す事が出来るでしょう」
二人が互いなりの言葉で感謝の言葉を俺に向ける――しかし、まだ倒した訳じゃないのにえらい感謝のされ様だな……
まぁ、負ける気なんてしないけどな。例え、力を抑えたままだとしても――だ。

<SIDE-Leon->
とりあえず、この小屋で一晩過ごすのは、王族――現在は元王族だが――には些かアレなのか、それとも、急いでいるのか……
――俺達は森を出て一番近場にある町に向かっていた。
まぁ、狭いし布団も無いしな……あの小屋。つい十数日前まで天蓋とか付いてるだろうベッドで寝てりゃ、そりゃ無理だろうけどさ……床で寝るとか。
歩き続けて二時間程――今だ延々と続く木々を横目に歩きながら、ライルに声をかける。
「んでさ――後どれぐらい歩けば良いんだ?」
俺の問いに、前を歩くライルが「そうですね、後二時間程でしょうか?」と、振り向きながら答えた。
今の段階で二時間以上歩いてる気がするんだが……後この倍は歩くのかよ。否、どうで何もしてなくても暇だから良いんだけどさ。
つーか……この二時間程で進んだ距離ってシュウが居て本気で移動すれば五分も掛からないよな……絶対。
シュウが居ない今でも、三十分もあれば移動できるだろうけど……まぁ、それはシュウなしの俺に近い力を持つライルも同じだろうけど。
ロイドが居るってのが早く移動できない理由な訳で――コイツの運動能力は常人程度でしかない筈だから仕方ないんだが。
護衛をライルに任せて先に行きたくはあるが、正直町がどこなのか分からない以上、黙ってライルについて行くしかないない。
「後二時間か……大変だな、畜生」
等と小声で言いながら先を進むライル達を追って歩いていると――不意に、シュウの力が体に還って来たのを感じた。
(調べてきたぞ、レオン。因みに――ロイドから潜り込んでどれぐらい掛かった?)
お疲れさん。それにしても、随分と早いなシュウ……俺の予測してた最速タイムとほぼ同じ、三時間ぐらいだ。
(ほう、三時間程か……確かに俺にしては相当早いな――それにしても、アカシック内では時間感覚などやはり当てにならんな……)
へぇ……どれくらい掛かったと思ったんだ? 後、結果はどうだったよ?
(俺の体感時間で言うなら九時間程だな――早速だが結果……結論から言うぞ? ロイドはゲーティムの転生体ではない)
そうか――だけど、俺の記憶が間違ってない限り、まったく瓜二つだぞ、ロイドとガキの頃のゲーティの顔は?
(先程言ったのは結論だ。だがロイドがゲーティムに似ているのは他人の空似などではない。しっかりとした理由があった)
理由? そりゃ一体なんだよ――転生体以外で似ている理由が他人の空似以外に在るって言うのか?
(有ったモノは仕方ないだろう? 俺も見つけた時は驚いたんだがな――否、それがゲーティムの転生体にあたったと言う事に驚いた訳だが)
なんだよ、もったいぶらずに説明してくれ、シュウ。
(無論、そのつもりだが――今のこの状況はなんだ? もう手を貸すことで話は決まったのか?)
あぁ、決まった。詳しくは俺から勝手に読み取れ――説明が面倒だ。それより、お前の読み取りはどうせ一瞬なんだから、先に説明を頼む。
(仕方ない――分かった、では説明しよう。何、簡単な話だ――ロイドの魂は今より四代前の段階でゲーティムの転生体と一度同化していた)
つまりロイドの魂は四代前の段階で、聖具か或いはその契約者で、ゲーティが余ったもう一方の魂で、その二つの魂が同化したって事か?
(そうだ。だが、明確には同化していたのは一定期間だ――一度同化したが、その後再び分離したらしい。契約者側の意志力が強かったのだろう)
つー事は何だ、ロイドがゲーティに似てるのは……
(あぁ、同化してゲーティムの転生体の存在情報と、自身の存在情報を複合させた時、肉体の基本情報の外見と言う部分がゲーティムのソレに書き換えられたのだろうな)
なるほど――確かにそうなれば外見が似るのも頷けるな……んで、一応聞いとくけど、そこからゲーティの情報は追えたか?
(無理に決まっている――《根源》ならともかく、俺に其処までの事は出来無い。旧世を辿れるのは入り口となった魂の課程のみだ、そんな事は知っているだろう?)
まぁ……そりゃそうか。んじゃ、お前の意見を聞かせてくれ、シュウ。お前は――聖具と契約者、どっちがゲーティだったと思う?
(聖具――だったと俺は思うが? 悪いが理由など無いぞ? ただの勘だからな)
そうか――否、聞いてみただけだ。んで、四代前って言ってたけど、具体的に時間で言えばどれくらい前だ?
(およそ100年程前だ……正確には分からんが、その程度だった筈だ)
100年か……割りと最近だな。聖具だとしたら、今もどこに存在するかもな……まぁ、おそらく壊されてて次以降の転生体なんだろうけどさ。
(仮にロイドの四世前が聖具だとしても、人間なら100年も生きれんだろうしな)
まぁ、数え切れない程の魂が存在する中で、コレだけ近い転生体と出会うのも十分奇跡みたいなもんだしな――やっぱり腐れ縁なのかねぇ?
(さぁな――俺の知った所じゃないさ)
だよな――まぁいいさ、この話はコレで仕舞いだ。今度はお前が今の状況を把握して来い。直ぐに終わるだろうけどな。
(そうだな、では――お前の記憶を読ませてもらうぞ、レオン)
だから勝手にやってくれて良いって――
(――なるほど、事情は分かった。確かに、相手はまず間違いなく永遠の騎士だろうし――俺達が動くしかないな)
あぁ、永遠の騎士に対抗できるのは永遠の騎士だけだしな。俺らがやらなきゃ、この世界は拙いことになる。
200年近く世話になった世界――そして、運がよければこれからもしばらく世話になる世界だ。だから、外からの敵は外の存在である俺達の役目――そうだろ、シュウ?
(勿論だ――だがそれだけではない。世界を守る事は――俺達に課せられた広義的な使命だ。本来の目的と離れるとは言え、流石に目の前の世界を守らない訳にはいかない)
よっしゃ、久しぶりに暇じゃなくなったし――いっちょ気合を入れて、徹底的にやらせてもらおうかね――っと。
とりあえず、今は今日の寝床となる近場の町の宿へと向けて、歩を進めるしかないだろう。
(歩いている間は結局暇だな――)
確かにそうだろうけど、暇なのは後たったの二時間だ。今までの暇さに比べれば、大した事ないさ。
(実際その通りなんだが……それは果たして自慢げに言う事なのか?)
別に言ってない、思ってるだけだろ? ソレをシュウが勝手に読んでるんじゃないか?
(別に好きで読んでる訳じゃない。待機形態に成れないのは俺に問題があるから我慢するが、其処まで言われる覚えは無い――と、言うのはコレで何回目だ?)
さぁ? 同じ掛け合いを既に気が遠くなるほどしてるからな――伊達に7000年以上一緒に生きていないって事だろ?
(まぁ、ソレもそうか……しかし、本当に長い付き合いだ――別に終わることを望んでは居ないが、いつまで続くのだろうな……俺達の関係)
んな事ぁ、分からないさ。だけど――終わらない物語なんて存在しないと俺は思ってる。だから、8000年前から続く俺達の物語――いつかまとめて終わらせてやるさ。
『――そしてシュウを無限の鎖から解放して、その上でゲーティとの約束を果たす……ソレが、いつになるか分からない未来で、俺が成すべき事――』
最後の部分だけは、気恥ずかしいので思考の流出を止め、シュウに伝わらない様にして――心の中でつぶやいた。

――to be continued.

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