EternalKnight
<響く声>
<SCENE063>・・・夜
叩きつけた二本の剣は、光の刃を叩き折った。
「なんでなんだよ! いくら七枚分だからってぇ折れるなんて……」
両手の剣を構えなおす。
「コレなら……」
「ふざけんなよ! なんだよお前、調子のんなよ!」
自分でも驚くほど冷静に、両手に剣を握る。
「ふざけんな、ぶっ殺してやる!」
三枚の光の輪をあわせられる、光は槍の形をかたどる。
それが三本、同時に俺に向かって放たれた。
一本をかわし残りの二本を剣ではじく――
その瞬間に体勢を整えて地面を蹴り優男との間合を詰める。
「っそがぁっ!」
優男が残っていた光の輪をあわせて盾を作るが――
両手の剣を連続でぶつけると光の盾はあっさりと砕け散った。
全ての光の輪がなくなったので一撃を加えるために踏み出す――
《創造》で切りかかろうとするが――
(後ろからくる)
「っ!」
振り下ろすつもりの剣で背後から迫る光の槍を弾いた。
その一瞬の隙を突き、優男は俺との間合を取った。
「くそ、くそ、くそ!」
光の輪はおそらく全て戻ったのだろう。
その合計枚数は、動いている為かやはり数えられない。
「なんなんだよ、何でアイツのあの剣は消滅しねぇんだよ!」
(今までの戦いから、作り上げたモノがすぐに消滅すると気づいていたようだな?
冷静に、敵の動きを見つめる。
(そういえば相棒、その剣の名前は?)
「《真紅》だ」
(……そうか)
そうだ、コイツは真紅の魂が入った剣なんだ。
コイツがあるから負けれねぇ――
いや、負ける気がしねぇ!
双方の動きが止まる、互いに動くタイミングを見極めている。
負ける気がしない――
だから、俺から攻撃を掛ける!
俺は地面を蹴り、優男との間合を再び詰めた。

<Interlude-聖五->・・・夜
一気に接近して拳を突き出す、俺の速度は今までの倍に近い――
「っ!」
男は後方に跳躍する。
――が、俺はさらに速度を上げて距離を詰める。
その動きを見て男は上空に跳んだ。
上方に飛んでも動けないので的になるだけだ……
何か考えでもあるのか?
だが、このチャンスは見逃さない!
俺は地面を蹴り、上空の男に追撃を掛ける。
ッ!?
一瞬見えた男の口元は――
笑っていた。
(マスター!)
ッ!?
男は空中の何もない空間を蹴って、俺に向かって突進してきた。
どうなってる! いや今は防御を――
[ガキン!]
両腕を交差させて攻撃を防ぐ――
衝突の衝撃で地面に落下していく。
何とか踏ん張って倒れずに着地するが、すぐさま男が迫る。
そのまま地面を蹴り、さらに後方に飛ぶ。
くっそ……なんだよ、今のは?
(おそらく、フォースで一時的な足場を造ったのだと思われます)
「っくそ……」
つまり奴は空中でも身体能力の高さを活かした戦法で戦えるって事かよ
「コレが俺の能力、その一部だ」
ところで《聖賢》お前の能力は……?
(私の能力は今までと同じものが強化されたのと)
と……なんだ?
(マスターへの戦術サポートです)
どういうことだ?
(あらゆる戦闘法とその対処方をマスターに教えることが出来ます)
なるほど……
「おもしろい……」
「まさか進化したことで、コレ程までのスピードが出せるとは思ってなかったぞ?」
男が構える、つられるかの用に俺も構えなおす。
さぁ、次のタイミングはいつだ……

<SCENE064>・・・夜
「っそが!」
優男が光の輪のおそらく全てを防御に回している。
一気に間合を詰めた俺は《創造》を叩きつける。
光の輪は二枚砕け一枚が再生され始める。
そこに《真紅》を叩きつけ二枚破壊――
一枚再生しきって次の一枚が再生し始める。
一瞬で次のモーションに移るが――
この間に一枚再生される次の再生が始める。
さらに《創造》でもう一段斬りつけもう二枚。
さらに再生されて一枚。
さらに《真紅》で斬り裂く――
二枚破壊されるが破壊中にさらに一枚再生される
そして次の再生へ――
四段斬りの後一呼吸置いて、再度四段斬りに移る。
一呼吸の間に光の輪は三枚再生する
四段斬りも三回ほど続けるとそこからまた始めるのに余分に一呼吸必要になる。
(このままじゃ永久に終わらんぞ?)
攻撃を続けながら考える――
もちろん考えている間も攻撃の手は全く衰えさせない。
(どうする?)
今考えてるんだ!?
――いい手があったぞ!
(そうか、思うようにやればいい)
まぁ、俺が思いついた事は筒抜けなんだが……
何だかんだで四段斬りを何百回も繰り返している。
その中で――
決定的なタイミングを見定める――
――――今だ!
ループの中の三回目の四段斬りに入る瞬間――
脳内に剣の図面を広げ――
四段斬りの三段目が入った瞬間に図面が組み上がる。
そして四撃目が入る――
一呼吸を入れる直前
「クリエイション!」
剣は、突如構築され光の盾を貫いていく――
剣は全ての盾を貫いたところで消滅した――
能力の発動によって、全身から力が抜けていく――
このままじゃ、次の一撃が入る前に――
また光の輪が再生されてしまう。
――届かなかった……
オーラ量が減少している。
――今までのスピードは出ないだろう。
――剣を振っても間に合わない。
光の輪は再生を始める――
違う! 間に合わないじゃない――
――――間に合わすんだ!!
「うぉぉぉおおおお!!!」
[ドスッ]
「ガハァ……」
俺の一撃が男の腹に入った……
そう、俺は剣を離して、拳を握り締めて――
優男の腹に、全力の一撃を叩き込んだ――

<Interlude-聖五->・・・夜
地面を蹴り、空中に飛ぶ男。
しかし、奴の能力がある以上うかつに飛ぶことはできない……
何もない空間を何度も蹴りながら、俺の真上に迫る。
真上を取られるのは危険だろう。
真上に移動されないように立ち居地を変え移動していく。
しかし男はその俺の後を上空から追う。
どうすればいいんだ?
(マスター、しばらく真上を取られないように移動していてください)
何とかする、なるべく早く頼むぞ?
(わかっています)
俺は出来るだけ高速で移動する。
上空は確認せずにただひたすら移動する。
10秒程経過すると……
《聖賢》の声が聞こえてきた。
(戦法を送ります)
脳内に戦術が流れ込んでくる。
コレなら……いけるか?
立ち止まって上を見据える。
「ほう、何かいい案でもあるのか?」
男はすぐさま俺の上空に移動すると――
何もない空間を蹴り高速で垂直に落下してきた。
とてもかわせる速度じゃない。
――が、フォースを頭上に展開し防御体制に入る。
男はフォースの障壁に接触する直前――
何もない空間を殴り、その反動で横に飛んだ。
そのまま落下先の空中を蹴り、俺の真横から迫る。
――が、それも予想の範囲内!
すぐさま迫ってくる男に向かって拳を突き出した。
上から重力も味方につけて迫る一撃――
ソレと横からの一撃では、おのずとその威力も変わってくる。
もちろん、横からのほうが威力は小さい――
ぶつかり合う拳、その衝撃で火花が散る。
距離はほとんどない、ここで接近戦に持ち込む!
男もそのつもりだったのか俺達はさらに接近する。
(戦術を送ります)
膨大な情報量が頭の中を駆け抜ける――
そして、コンマ数秒を競う戦いが始まった。
繰り出されるのは高速を超えた神速――
人間の目で追える速度ではない。
一秒間にどちらも十発近い数の拳を繰り出す。
勿論、かすりはするがどちらも致命傷とは程遠い傷ばかり――
神速でぶつかり合い、弾きあう拳――
一瞬の遅れが文字どうり死に繋がる闘い。
だがこのままじゃ終わりが来ない。
何とか……この状況を脱しないと。
隙を突くことはこの距離ではもはや不可能だろう。
……《聖賢》
(何ですかマスター、集中していないと危険です)
奴の攻撃……俺が食らったら何発までいける?
(一発、何とかそれだけですが……マスター?)
――なら仕方ねぇか、ここは強行突破だ。それしかない。
「うおぉぉおお!」
男の拳が俺の腹に迫る――
今だっ!
わざと一撃を受けるッ!
「ッァ……」
一撃で何本も骨が折れた、だけど今は――
この勝機を……逃がしはしない!
俺は男の頭部に全ての力を込めた拳をたたきつけた。

<SCENE065>・・・夜
「ガッ……」
優男が腹を抱えてうめく。
――が優男は立ち上がる。
「調子にノンなよ、この糞ヤローが!」
優男が逆上している――
こっちはというとオーラを使い切って酷いだるさが残っている。
「くっそぉ」
「限界まで力を使ってまで――」
「足掻くんじゃねぇ……死ねよ、死んじまえよお前!」
優男が光の輪を全て杖に集めると、巨大な光の刃が出来上がった。
「テメェはバラして……魚の餌だ!」
巨大な刃は振り上げられる。
体が言うことを利かない。
――でも……死ねない。
――いや、死ぬ訳にはいかない。
――真紅が命を散らせてまで、護ってくれた命、無駄に出来ない。
(相棒……そうだ、あきらめるな? あきらめたら終わりだぞ?)
――あきらめない……だから!
「俺の魂よ、あと少しでいいから、力を引き出すんだ!」
「なに叫んでんだ! きもいんだよ!」
刃は、振り下ろされた――
何とか反応して二本の剣を交差させ受け止める。
――が、衝撃で握っている手に痺れが走る。
手から落ちそうになった剣を落さないように必死で握り閉める。
「おらおら、どうした! ウゼーんだよ、さっさと死ねよ!」
刃に加わる力が増していくのがわかる。
「っそぉ、あきらめてたまるかぁ!」
剣を押し返す。
――が離れた優男の剣はすぐに横薙ぎになって迫る。
二本の剣で再度止める、さっきより一撃が軽い?
――がそれも剣どうしが接触した瞬間のみ。
――後の重さはほとんど変わらない。
再び刃を弾く。
流れるように光の刃は流れ、またも横薙ぎ、今度は逆からの一撃。
一本しか追いつかない――
――なら一本で防御すればいい。
残った一本で攻撃すればいいじゃないか?
右手に握った《創造》で攻撃を止める。
威力は殺しきれない。
――もとより多少の傷は招致の上。
右腕が地面に落ちる――
優男の表情が勝利を確信した色に変わった。
――が瞬時に顔色が変わる。
「しまったッ!」
俺が傷(切り離されたモノに限る)を直せるのを忘れていたのだろう……
左手に残った《真紅》を高々と振り上げる。
――今度こそ、全身全霊を掛けて。
《真紅》の周りを紅のオーラが包む。
優男を殺す……
その為に紅い剣を振りおろ――
【殺しちゃ駄目ぇ!】
真紅の声が頭の中に響いた――
振り下ろした剣は……頭部から軌道そらして、優男の聖具を砕いた。
砕いた聖具は粒子になって《創造》と《真紅》に吸収されていく。
「ひぃ……」
優男は聖具が砕かれたのを知ると、怯えながらあとずさっていく。
俺が攻撃しない事に気づくと、背中を見せて走って逃げていった。
「どうして……殺したら駄目なんだよ! あの男はお前を!」
――しかし、真紅の声は返ってこない。
【相棒……】
「どうして……なんだよぉ」
【あの娘は……お前に誰かを殺してほしくなかったんじゃないか?】
「俺は仇を、とりたかったんだ」
【自分の為に……復讐の為にお前が人を殺す――】
【それが嫌だったんじゃないのか?】
「それでも……」
【そんなことより、お前は自分の腕を直せ】
「そう……だったな」
《真紅》を地面に刺して《創造》を拾う。
「クリエイション」
転がっていた腕は分解されて、俺の腕が再構築されていく。
(後で……お前の疑問は聞けばいいさ)
(進化すれば声も聞こえるようになる、その時まで生き残るんだ)
「そうだな……って意識が朦朧としてきたんだが」
(今は休め、疲れたであろう?)
こんなとこで寝るのもは……
(なら家に帰れ、そして家で寝ろ)
「そうするか……」
二本の剣は指輪になる。
そういや、《真紅》の開放条件って何だろ?
まぁ明日にでも《創造》に聞けば良いや……
だるい体を引きずって、帰路に着いた。
――真紅、俺は生きるよ。
絶対に死なない、だから一緒に戦っていこう。

to be continued・・・

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