EternalKnight
<新たな力>
<SCENE060>・・・夜
真紅は……俺をかばって――
斬られた――
赤い液体、膝を折りゆっくりと崩れ落ちる体。
「何で……何でなんだよっ」
視界が滲んでゆく――
「私……いつも、お兄ちゃ……んに――」
「守ら……れて――、ばっか……りだった――から」
「もういい! 喋るなっ!」
自分の傷の痛みも忘れて、声を荒げる。
「最後に……お兄……ちゃんを……守れて、よかっ……た」
「最後なんていうなよっ、なぁっ!」
「ごめん……ね」
「そんなに死にたいんだったらさぁ、お前から殺してやるよ……」
低いトーンの男の声。
そして、巨大な刃は、真紅に向かって――
振り落とされた。
「せっかく可愛い子みつけたのになぁ」
「まぁ、もう殺しちゃったし、他の子でもさーがそっと♪」
一気に声の調子が元に戻った優男の足元――
つまり、俺の目の前には……
真紅が、真紅だったモノが倒れている――
もう、息はしていないだろう。
―――プチン―――。
何かが切れる音がした――
頭の中が真っ白で、何も考えられない。
たった一つのこと以外――
何も……考えられない。
(相棒、落ち着け)
何か《創造》が言っているけど、聞き取れない。
――まぁいい、そんなことはどうでもいい。
「そういやぁ、あんたもいたんだっけ?」
「次の子探したいし、さっさと殺しちゃおっと」
「黙れ……」
俺の頭の中で考えられる唯一の事――
「はぁ?」
「黙れ……」
それは――
「おいおい、頭がおかしくなったか?」
「――あんたは今から殺されんだよ?」
ただ。目の前に男を――
この手で殺すことだけ。
「黙れ――」
「俺が、お前を殺してやる」
「はぁ? 片手と両足なくてどうやって俺を殺すっての?」
「あんた、やっぱおかしくなったのか?」
――手足がない?
だったら作り直せばいいだけだろ?
俺は《創造》を持ってるんだぞ?
「クリエイション……」
優男に斬られて転がっていた俺の腕と足は分解され――
俺自身の体に元の状態で再構築された。
「へぇ……そんなことも出来るんだ?」
体は……コレで問題ない。
立ち上がり《創造》を構える。
優男を殺す為に――
俺は剣を構えたまま、走り出した。

<Interlude-聖五->・・・夜
目前に迫っていた拳を前に俺は瞳を閉じる。
この閉じた瞳は二度と開くことは無いだろう。
――しかし、いつまでたっても衝撃は来ない。
あのタイミングでは誰も援護できないだろう。
ひょっとしたら、俺はもう死んでいるのかもしれない。
(マスター……)
どうやらまだ死んで無いらしい。
――目を開くと、そこには拳があった。
「どうなってる……?」
(私にも解りません)
誰にした訳でもない、一言に《叡智》が答えた。
男は、俺にあたる直前に攻撃を止めたのか?
――春樹達が何かした訳でもなさそうだしな。
「どういうつもりだ?」
春樹達が何もして無いなら――
この男が自分で止めたとしか考えられない。
「あぁ、一つ思いついた」
「何だ?」
「どうやったら、この戦いを楽しめるか、だな?」
「聖五っ!」
春樹が槍を構える。
「おっと、動くな?」
今の男の背中はがら空きだが、俺を人質にしている。
「で、何がしたいんだ?」
「なに、お前らの一人に残りの奴の聖具を壊してほしんだ」
「どういう……ことだ?」
「どうせなら、強い奴とタイマンで勝負したいと思ってな」
「しかし、今のお前達では役不足だ」
「だから、壊し合わせて……進化した奴とやろうってのか?」
「まぁ俺としては、女よりはお前等のどちらかとやりたいのだが?」
(どうするんですか、マスター……?)
俺は――
「解った」
「春樹?」
「俺は冬音を危険な目に合わせたくない」
いつになく真剣な声で春樹が言った。
「じゃあどうする? 俺はお前等二人ならどちらでもいいぞ?」
「もし、どちらかの聖具を進化させて――」
「そいつが負けたら、残りの二人はどうする?」
「俺は強い奴と戦うこと意外興味は無い」
「そうか――」
もし俺が負けて死んでも、あいつ等は助かるんだな。
「俺がやるよ」
「そうか……」
男は俺から離れる。
「いいのか?」
春樹が聞いてくるが、もう決まっている。
「ああ、俺がやる」
(しかし……マスター、あちらの聖具は認めるのでしょうか?)
「そいつ等は、お前等の聖具は……なんて言ってる?」
「私の《守護》は……いいっていてるわ」
「《突破》は多少納得して無いようだけど、こいつだってわかってると思う」
「そうか、じゃあ――」
「ああ、こいつ等を……砕いてくれ」
冬音と春樹が聖具を差し出してきた。
「いくぞ?」
「バイバイ《守護》」
「今までありがとよ《突破》」
俺は二人の聖具を砕いた。

<SCENE061>・・・夜
俺は《創造》を振るい続けた。
優男の張る光の輪に何度も叩きつけた。
何度も、何度も、何度も、何度も――
自分でも何度叩きつけたか解らないくらい。
その間に何度も体を斬り落とされた――
――その度に作り直した。
(相棒、落ち着くのだ)
さっきまで聞こえていなかった声……
ソレが聞こえるようになってきた。
それでも――
剣を叩きつけ続ける。
俺は絶対にコイツを許さない。
――殺さないと気がすまない。
(いいから、落ち着け)
(怒りに任せた戦いでは、いくらオーラ量が高くても勝てはせん)
関係ない。
――殺す。アイツは俺が……今すぐ殺す!
「お前は! 俺がこの手で―――殺すんだよぉ!」
「はぁ……厄介な相手だな、いい加減に死ねよ? お前」
光の輪は体を斬り裂かず、貫いた。
「ぐっ……」
斬り落とされていない以上――
分解して再構築は出来ない。
「直さないのかぁ?」
「どうやら……直せるのは切断された時だけみたいだなぁ?」
「うぉぉおおお!」
痛みを無視して――
《創造》を叩きつける。
どんなにがんばっても、光の盾は砕けない。
そして、叩き続けている間も、光の輪は俺を貫き続ける。
「……っぁ」
もう……だめなのか?
ふと、そう感じた瞬間――
まるで、燃え尽きた線香花火のように全身からオーラの力が消えた……
《創造》を叩きつけていた腕の速度が……落ちる。
――駄目なのか、俺じゃぁ?
そして……腕が動きが、止まる。
―――俺を支えていた力は、こんなにも弱かったのか?
―――もともと、真紅を護る為に欲しいと思った力だもんな。
膝が折れて、俺の世界の音が止まる。
―――そうだ、俺を支えているものは……
前を映し出す光景も、真っ黒に塗りつぶされる。
―――もう、何も無いんだ。
(……そんな事無いよ?)
――――え?
真紅の声が《創造》に話しかけられる時の様に――
心に直接響く声で聞こえた。
(お兄ちゃん? もう……立ってられないの?)
―――真紅、駄目なんだよ、俺はもう立てない。
(そんな事無いよ、お兄ちゃんは、まだ……倒れてないじゃない)
―――もう、駄目なんだ。
(お兄ちゃんは、私だけ護りたかったの?)
―――お前だけじゃないけど……
―――でも、俺はお前を一番守ってやりたかったんだ……
(それでも、私以外の人も護りたいんでしょ?)
―――だけど……俺はっ!
(私以外の、お兄ちゃんが護りたいっ想う人達は――)
(お兄ちゃんを立ち上がらせる力にはならないのかな?)
―――それでも、たとえ……まだ立ち向うことが出来たとしても……
―――あいつは強すぎるんだ。
―――戦っても、俺には勝てないんだよ。
(どうしてそう思うの? お兄ちゃんはまだ生きてるんだよ?)
―――もう、殺されるんだ。
(決まった結果なんて……何も無いんだよ?)
―――お前を守る為に今まで頑張ってきたんだ。
―――お前がもう死んだなら……居ないなら、俺にはもう……
(魂は……たとえその命が尽きたとしても……)
(一緒に居たかった人のそばで、ずっと輝き続けるんだよ?)
―――真紅? 何を言って……
(さぁ、立ち上がって)
(お兄ちゃんを支えているモノは、私は……ここに居るよ?)
―――あぁ、そうか。
―――お前はまだ俺のそばに居てくれるんだな……
(ずっと……お兄ちゃんを支えられる力になりたかった)
(だから私はコレでいいんだよ)
(だから、一緒に居るよ、ずっと……ずっと)
「真紅ッ!!!」
目の前は一瞬で元の景色に戻る――
折れそうだった膝は折れずに踏みとどまる――
全身から、魂から――
オーラがあふれ出してくる。
(相棒?)
「消えかけてたオーラが元に戻った!?」
「真紅……見ててくれよ。お前は俺を守りたかったんだろ?」
(相棒? 何を言ってるんだ?)
「俺に出来る……全てを見せるから」
(何を……する気だ?)
どうやらさっきの俺と真紅の会話は相棒には聞こえてないらしい。
「お前に辛い思いをさせるかもしれない――」
「それでも……お前が一緒に戦いたいって願ってるなら――」
(まさか!?)
「その手段を……俺がお前に与えてみせるから――」
「何するきだ、おい!?」
優男が騒ぎ立てる、アイツの言葉なんてどうでもいい。
「最低の行為かもしれない――」
「でも……それでも、お前が胸張って自慢できる兄貴になりたかったんだ」
(駄目だ、相棒そんなことが成功すると思ってるのか!?)
《創造》が気付いたようだ――
でも関係ない、もう決めたんだから。
「クリエイションっ!!」
俺の持てる全てのオーラを収束させた。

<Interlude-聖五->・・・夜
俺の周りを光が――
《叡智》からあふれた光が包み込む。
その光が晴れたとき、《叡智》はその形を変えていた。
(改めて名乗らせてもらいますマスター、私の新しい名は《聖賢》)
聖賢?
(知恵を司る者、聖具のセイに賢者のケンです)
「それにしても、コイツが新しい力か?」
「中々のオーラだな、コレで……心置きなく戦えると言うモノ」
「ちょっと待て……春樹、冬音?」
「どうした?」
「――逃げてろ」
「え? どうして?」
「ここが危ないからだ、分かるだろ?」
「そんな、戦いの結末は見せてもらいたいわよ!」
「……いくぞ、冬音」
春樹が冬音の腕を強引につかんで走っていった。
冬音は嫌がってるみたいだが――
「ほう、もう他人の心配か?」
「ああ、悪いか?」
「――俺は友達を……俺の知る人たちを護りたいから戦うんだ」
「その信念が、進化してない聖具であそこまで戦えた理由か?」
「さぁな?」
「まぁいい、コレで俺も全力で戦えそうだ……」
「そうかよ!」
俺達は互いに構える、どちらかが動けば戦いは始まる。
静寂が辺りを包む――
このままじゃ拉致が開かないな……
(マスター、次の相手の瞬きした瞬間に動きましょう)
タイミングは――
今だ!
俺は地面を蹴って男との距離を一気に詰めた。

<RECOLLECTION-7/13->・・・夜
《創造》と契約したあの日の夜。
(能力、《クリエイション》の細かい内容についてだが……)
「ああ」
(マナを原子に干渉させ脳内で思い描いた物を物質化する――)
(物質化した物は思い描いただけで構成に無理が生じている――)
(よって完成後数秒足らずで元の状態に戻るのだ)
「不便だなぁ、じゃあさ――」
「もしその構成が完璧だったらどうなるんだ?」
(まず無いだろうが、その場合も無理に作った物よりは長く物質化していられる)
(しかし結局は元の状態に戻る)
「どうしてだ?」
(魂が無いからだ)
「そんなこと言ったら――」
「生物と呼ばれるもの意外は全部存在できなくなるんじゃないのか?」
(それは、もともとそれになるべくした因果を内包しているからだな)
「よくわからんが、結局お前の能力だと完全な物質化は無理って事か?」
(構成が完璧でその物質の中に内包できる魂があれば出来る――)
(その魂の同意が必要だがな)
「なんだ、結局無理ジャン」
(まぁな、それに今のお前の力量では――)
(どっちにしても完璧な構成など組めないがな)
「そうか……」

<SCENE062>・・・夜
オーラが収束する――
左手には質量を感じる。
そこには限りなく深く赤い剣が握られていた。
その形状は《創造》とまったく同じ――
「何だよ……その剣は!」
鼓動を感じる、声は聞こえないけれど――
俺の左手には確かに真紅の魂の鼓動を感じる――
(まさか、成功するとは……)
「コレで、一緒に戦えるぞ……真紅」
「何ぶつぶつ言ってんだ! キモイんだよ!」
光の輪が迫る。
――が、二本になった剣で俺はその全てを切り落とした。
体が軽い……今まで以上に――
(何を言っている? お前はさっきまでその動きをしていたぞ?)
この速さで勝てないのか?
(怒りに任せて戦っては正気は見えん)
(しかし冷静にさえなれば、二本の剣を持つお前ならば、勝てる)
「馬鹿な……まぁいい、本気でやってやる!」
真紅はどうなったんだろう、魂の鼓動や、その息吹は感じるけど――
(なに、今はまだ完全な状態じゃないからだろう)
(魂が内包されてすぐの状態で喋れるわけ無いだろ?)
「そっか、そうか――」
優男が光の輪を集めて剣を作り上げる。
「なに笑ってんだ――」
「ぶっ殺すぞ、今すぐだ!」
優男が俺に向かって走ってくる。
優男の光の刃をかわして――
その刃に二本の剣を同時に全力で叩きつけた。

to be continued・・・

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