EternalKnight
<狂い始めた平穏>
<Interlude-永十->・・・夜
右手には青白い光を纏った剣が握られている。
「あなたも……参加者なの?」
「それが、どうだっていうんっすか!」
「あなたも私と同じ人殺しでしょぉ? だったら楽しめそうだわぁ」
光の宿ってない眼……口元はつりあがっている。
「俺は、誰も人を殺していないっす。そんな事するつもりもないっす!」
「力を持っていても、それを扱う事も出来ないなら、楽しめないわ……」
「楽しむって……さっきから何度も――」
「そんなに人を殺す事が楽しいんっすか!」
静寂……そして
「当たり前でしょ? こんな力使わなきゃ勿体無いじゃない?」
「!?っ」
「何驚いてるの? 現に誰か知らないけど――」
「私以外も一人殺しちゃってるじゃない?」
何のことを言ってるんだ?
「……俺はあんたみたいな人をほっとけるほど――」
「穏やかな心は持ち合わせてないっす!」
「誰も……殺した事の無いあなたが……私を殺せるって言うの?」
「さっきも言ったっすけど……殺したりはしないっす」
「あんたの聖具を砕いて戦闘力をなくすっす!」
「やってみなさい?」
青白く光る剣と赤黒く光る剣が交錯する。
[キィン!]
繰り出す一撃は弾かれ、次の相手からの一撃を弾く――
一撃、それより早い一撃、さらに早い一撃。
剣戟は激しさを増していく……
こちらが速度を上げれば相手も早く――
相手が早くなればこちらも早く――
身体能力を互いに聖具の力で引き上げて――
人間の限界を遥に超えた速度で斬りあう。
弾き損ねた相手の剣は皮膚の薄皮と服を切り刻んでいく。
こちらも同様に相手の隙をついて決定打になるわけでは無いが服と薄皮を刻んでいく。
相手が攻撃を止めて一歩引いた――こちらも同様に後方に多少退いた。
互いに服はきざまれ体のあちこちから血が流れ出ている……
「はぁ、はぁ……」
「楽しい、コレだわぁ! コレが私の求めていたモノよ!」
「ッ! とことんふざけた奴っすね……」
「あぁ……もっと、もっと私の求めていたモノを頂戴!」
再び剣戟が始まる――
しかし一向に戦況は進展がないまま、数十分戦っている。
互いの傷は少しずつ増えていく――
剣戟の速度は落ちない―――が増す事も無い。
恐らく俺も、相手も限界まで能力を引き上げて戦ってるんだろう。
全身の傷から血が流れ出ていて……意識が朦朧としてきた――
折れそうになる膝で、必死に踏ん張る。
「まだっす、アイツを倒すまで膝を折るわけにはいかないっす」
向こうも相当重症のようだ――
次の打ち合いで、勝負がおそらく決まる。
赤黒い光が動き出す、死ぬわけには、負けるわけには行かない!
《永遠》を構えた瞬間―――不思議な感覚に襲われた。
ソレに気付いたのか青髪の女性も立ち止まり、違和感の発生源を見据える。
「両方とも中々消耗しているみたいだねぇ――」
「しかも片方女じゃん、しかも上玉!」
何故か近くの家の屋根に男が座っている。
その手には杖のようなものが握れれていた。
「何者っすか!」
「君等と同じ、ただの参加者さ、真正面から戦うよりさぁ――」
「こうして潰しあってる所を奇襲した方が楽だと思ったからねぇ?」
ふざけた性格の優男だけど、参加者である以上油断できない……
「あなたでもいいわ、誰でもいいの……私の餓えを満たして頂戴!」
「……いや、君にはボクの飢えを満たしてもらおうかなぁ♪」
杖から光の輪が現れる、あの優男の能力っ!?
「まぁ……男の方はどうでも良いや、適当に殺そっと」
光の輪は五つ現れて、その内四つが俺の方に向かって動き出す。
「っく……」
あの光の輪の力がわからない以上……防御に徹するしかない。
《永遠》の能力を発動させる。
女性も能力を発動させたようだ。
(主、私の能力は前面にしか防御壁を展開できませんよ?)
「それは一回きいたっす」
光の輪は《永遠》で展開した防御壁にぶつかる。
軽い衝撃が数回来るが……たいした事無い。
先ほどの女性も聖具の力で《永遠》に似たような能力を発動している。
光の輪はどうやら同時には五枚までしか出せないようだが――
次々と際限なく光の輪は現れる。
光の輪の飛んでくる方向に《永遠》の力を展開し続ける。
しかし光の輪は意思を持つかのように――
防御壁をよけて背中に回りこんできた。
「っ!?」
今までの戦闘の疲れのたまった俺は回避しようとするが……
光の輪は容赦なく《永遠》を持つ俺の腕を切り落とした。
「ぐぁぁあああ!!?」
腕は地面に転がる。
「はぁ、はぁ……はぁ」
腕から血が流れ落ちていく――
今までの出血量から考えても……いつ意識が無くなってもおかしくない。
「踏ん張らないと……いけないっすねぇ」
しかし……目の前には絶望的な光景が広がっていた。
《永遠》を持つ腕を切り落とされた事により防御壁は消滅した――
しかしそれでも次々と光の輪が迫ってくる。
残った左腕が切り落とされたら―――《永遠》を握れない。
もう……だめか?
迫る光の輪の一撃に歯を食いしばる……が、痛みは訪れない。
【主……しっかりしてください!】
なぜか光の輪は停止している……なんで?
それを考える前に脳が指令を送ってくる、ただ《今の内に逃げろ!》と――
逃げろ……逃げろ……逃げろ……逃げろ――
奴の狙いは俺じゃない《永遠》だ。
【主……逃げてください。奴の目的はあなたの考え通り私でしょう】
俺が逃げたら……《永遠》はどうなるんだ?
【私の事はもういいんです!】
「それでも……俺は仲間を見捨てたりは出来ないっす!」
そうだ、仲間を置いて逃げるなんて――そんなことできるわけない。
【主……】
「何カッコつけてんだよ――」
「泣いて命乞いすれば、逃がしてやろうと思ったのによぉ」
声のトーンがガラリと変わった。
「え……?」
「気ぃ変わった――お前、殺す事にするわ」
杖が光り、光る輪は再び動き出す。
その輪が俺の残った四肢を切断していく――
「っぁぁああ!?」
激痛が走る――
切断されて地面に転がる両腕と両足は――
どれも原型をとどめぬ程ばらばらにされていく。
その時になって、あぁ――俺は死ぬんだ……っと改めて悟った。
【主……】
「お前は、ここで退場だ」
《永遠》が砕かれた……コレで本当にどうすることも出来なくなった。
《永遠》を砕いた瞬間、男の持つ杖は強い光を放った……
「んだぁ?」
男はまの抜けた声を発する――
光が晴れると男の手には形の変わった杖が握られていた。
「進化か、で? 名前が変わったのか?」
聖具と話しているようだ。
「《革命》か、まぁ良いや、強くなったんだろ?」
男は俺のほうに見向きもせずに違う方向――
その先には俺と戦っていた女性がいる。
「さて……っと君はどうしよっかなぁ」
女性は聖具を持っていない、男に砕かれたんだろう。俺の《永遠》のように。
意識が朦朧としてきた――
俺はここで死ぬんだ、本当に確実に……
「アイツを片付けてる間に逃げりゃよかったのに」
声が聞こえる。
「まぁ……聖具もって無い人間が聖具を持ってる人間から逃げれるとは思ってねぇーけどぉ」
もう内容は理解できない。
「それじゃあ、君はお持ち帰りしようかな♪」
こんどこそ、死ぬんだ……ここで――
それ以上、何も見えないし……聞こえなかった――

<Interlude-???->
「なかなか、面白いことになってるな」
口元が緩んでいるぞ……ロギアよ。
「それにしても、一気に二人も脱落とはな……」
「いいんじゃないか? それより今はアレを楽しむべきでだろ?」
「そのようなものに……興味は無い」
永久を生きるようになってから――強き者との闘い以外に興味は無い。
「まぁ、楽しまんなら別にいいが――」
「それにしても―――あんなのもありなんだぁ……」
「勝手にしておけ」
それにしてもコレで六、七、十番が退場で進化したのが四、八番か……
「拙者達が掛けた一、二番は健在か……」
どうなることやら――
「そういえば一番は五番と手を組んでるようだしな」
三番と九番も組んでいるようだ――
共同戦線……か。
今までには三回程行っても――
一組出来るか出来ないか程度だったのだがな……
まぁ、どうなろうが結果は変わらんが――

7月23日火曜日
<SCENE051>・・・朝
[ピンポーン]
[ピンポーン]
「……んだよ、こっちが気持ちよく寝てるのに! 一体何時だとぉ――」
枕もとの時計に目をやると……九時。
[ピンポーン]
「あー……俺が悪かった。はいはい、今行きますって」
ふと、自分の服装を見る、まぁいいや。
俺はドアを開けに玄関に向かった。
[ピンポーン]
「わかったから、ちょっと待てって」
鍵を開けドアを開くとそこには見知った顔があった。
「って……何だ聖五かよ」
「何だじゃねぇよ! 落ち着いて聞けよ」
「なんだよ?」
「永十が……病院に運び込まれた」
「っ! でもそれって……俺等に関係あんのか?」
「多分……参加者にやられたんだと思う」
何……だと!?
「どうして判るんだよ!」
「切断面から見るに――」
「とてつもなく鋭利な刃物で切断されてたんだそうだ」
「それが、どうしたってんだよ!」
聞かなくても……わかってるのに――
「判ってんだろ……そんな事、そんなの聖具にしか無理だろ?」
「わかんねぇーだろ! そもそも、何で永十君が……」
信じたくないから……意味もないのに聖五にあたる。
「アイツも参加者だったから……あるいは運悪く巻き込まれたか」
「ゆるさねぇ」
「でも、参加者だったんだと思う、そうじゃなけりゃぁ……」
「何だよ!」
「わざわざ、両手足を完全に潰したりしねぇだろ」
!? 両手と両足だって……
「なのに、殺してない相手の意図がつかめないんだけど」
「……ならやっぱり参加者じゃ」
「まぁ実際に生きてても何を言っても信じてもらえないんだが……」
「それは……」
「普通そこまでやるなら、殺すだろ?」
「もういい! ともかく病院にいくぞ!」
「そのつもりで来た」
「んじゃ、さっさと見舞いに!」
「意識が戻ってないんだって、それから着替えて来い、で落ち着け!」
「……判った」
俺は家の中に戻って着替えることにした。

<Interlude-永十->・・・朝
「……あれ?」
目が開く、なんで生きてるんだ、俺?
夢だったのか? あの戦いは……
目をこすろうと手を……手が動かない、どうして?
自分の腕に目をやるとそこには……何も無い。
つまり……夢じゃなかったって事だ。
それじゃぁ、なんで生きてるんだ?
「目が覚めたのか!」
父さん?
「生きてるんだな!」
「大丈夫ッス、両手足ないっすけど……」
確認はしなくてもわかる――
あれが夢じゃないならなくて当然なんだから。
「俺は、お前が生きてるだけでいいんだ――」
「母さんが死んでから俺はお前だけが……」
「心配掛けて……悪かったっす、でも仕事はいんっすか?」
「一日ぐらいかまわんさ……それより色々と見舞いに来てるぞ、会うか?」
「別にかまわないっす」
「俺は、席をはずしたほうが良いか?」
「どっちでも……いいっす」
真実を話すつもりは無い。
話した所で……精神科にでも運ばれるだけだから。
だから誰にも話すつもりは無い。

<SCENE052>・・・夕方
「面会、やっと人がいなくなったなぁ」
「どうして待つ必要があったんだ?」
「誰かに聞かれて良い話だと思うか?」
「それは……」
「紅蓮、いきなりあの話題を出すのは気が引けるから……」
「最初はなんでもない話から……だな?」
無言で聖五がうなずき、病室のドアを開けた。
「よう……」
「見舞いに来たぞ」
「先輩、紅蓮先輩も」
どこか疲れたように……永十がつぶやく。
「人が多くてさ、ならぶ気になれなかったんだよ、遅れてすまんな」
「そうっすか……」
「でも、見舞いに何も持ってきてねぇんだよ、わりぃな」
「別にいいっすよ、色々もらったっすから」
確かに、ベッドの隣にある机にはお見舞いの品らしきものがいくつもあった。
「そっか……他の奴等とはどんな話したんだ?」
「みんな、生きててよかった、とかっすよ」
「案外普通だな……」
「警察とかも来たっす、『犯人の顔は見たか』……とか聞かれたっすね」
「見たのか?」
「見て……ないっす」
一瞬、永十君の表情が曇ったように見えた。
「『生きててよかった』……ってなんか馬鹿にしてるみたいだなぁ?」
「へ?」
「だってさぁ? これからどうするんだ?」
「それは……」
「俺は、永十君をこんな風にした奴を――」
絶対に許さない。こんな事をする奴を、許せるわけがない。
「待てよ紅蓮、俺の話も聞いてくれるか? 永十」
「……なんっすか」
「俺はさぁ、お前をあんまかわいそうだとは思わないんだよ」
「何言ってんだ! 聖五!」
「だってさぁ、まだ大切なもんが……二つも残ってるだろ?」
「なんっすか?」
「命と……その声、いや……ノドだ」
「へ?」
「お前には……まだ歌を歌えるノドが残ってるだろ?」
「俺の歌なんてたいした事……」
そう言って言葉を濁す。
「――俺もさぁ、初めは歌なんて、たいしたことなかったんだ」
確かに、聖五は中学の頃は歌が音痴ってわけじゃないが下手だった。
「部活入って……そんですげぇー練習して、やっと今の状態なったんだ」
「それは先輩の才能――」
「お前は……三年もあれば俺なんか足元にも及ばない位になる」
永十君の言葉をさえぎり、聖五が言った。
「先輩……」
「それでも、俺は紅蓮と同じで、お前をこんなにした奴を許せねぇ――」
「本当の事を話せないか?」
「俺は……」
それでも、永十君は顔を伏せている。
どうしても、話す気はないんだろうか?
「――聖具って、知ってるか?」
ついに、聖五がその単語を口にした――
その単語に反応して永十君が一気に顔を上げる。
「そうか、お前をやった相手も、お前も……」
「どうして、先輩は知ってるんっすか?」
「俺等が二人とも参加者だからに決まってんだろぉ?」
「お前をやった奴の外見は?」
「それは……」
「今まで誰にも言わなかったのは、相手にされ無いと思ったからだろ?」
「アイツは強すぎるんっすよ」
「大丈夫だよ、永十」
「そうだ、俺達は負けたりしねぇ」
「相手の外見はどうだった?」
「アイツは黒目黒髪の……優男だったっす」
「情報は少ないけど……見つけだす、待ってろよ」
聖五が部屋を出て行こうとする、俺もその後を追った。
「無理しちゃいけないっすよ?」
部屋の出口で突然聖五は振り返り……
「心配すんなって」
そういって俺達は病室を後にした。

to be continued・・・

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