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‡小説‡
嵐でも、台風でも…(5)
「じゅ?…え?…な?」





先程まで思い浮かべていた人物が、突然目の前に現れて、思考が上手く働かない獄寺は、訳の分からない言葉を発する事しか出来ずにいた。




「雨足もちょっと弱まってきたから大丈夫かな〜って思って来ちゃったんだよね」



綱吉は明るく言い放つ。
心配させないようにと…。


それでもまだ固まったままの獄寺を見ると、綱吉はイラだったように



「……って……会いたかったんだよ!悪−!!」


綱吉が逆ギレしたトコロで、言葉の最後まで言わせる前に、ずぶ濡れの衣服も構わずに綱吉を抱きかかえて風呂場に直行する獄寺。


「10代目!今すぐ風呂………」


まで言った時に、お風呂の湯なんて沸かしていない事に気付く。



「…風呂…を沸かしますんで、着替えて待ってて下さい」





着替えとタオルを用意して綱吉をリビングへ案内した獄寺は、急いで風呂を沸かす準備に取り掛かる。







お風呂が沸くのを待つ間、2人はリビングのソファーに並んで座っていた。

触れるか触れないかの距離がもどかしい。


2人の間には、何故か気まずい空気が流れる。


その時、獄寺は、綱吉が小さく震えているのを目の端で捕らえた。





「…寒いっスか?10代目…」


「えっ?へ、平気っ!」




と言ったそばから、『はくしゅっ』と小さなくしゃみが聞こえた。




「ごめん!本当に大丈夫だから!」




照れ隠しからか、笑って取り繕う綱吉を、獄寺は思わず後ろから抱き締めた。




「ちょっ?えっ?獄寺く…」

「あの!
…風呂が沸くまでで良いんで、しばらく俺が暖めてて良いっスか…?」




「…うん…(暖かぃなぁ…)」




冷え込んだ自分の体を後ろから包み込む暖かさを心地良く感じながら、



(「…お風呂…当分沸かなくて良いんだけど…」)




綱吉は心の中で呟いた。















嵐でも、台風でも…




君が居ればいつでも晴れ!






-END-






2010.07.24

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