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‡小説‡
『その腕の中の幸福』(1)





(10年前のツナさんと獄さんは未だ付き合って無い前提のお話です)









獄寺は、今日も今日とて綱吉の家にて−
宿題を手伝うという名目で、2人きりの時間を満喫する…ハズ…だった。




ガチャッ!



「お邪魔します、十代目!」


「ご、獄寺くんっ!?
に、逃げてー!!」


「え?えっ?十代…」


「ランボさん知らないもんねー!!」


「!!!」


「獄寺くん!!」




ボフンッ!!




爆音と共に目の前が白煙に包まれたかと思うと、体が何かに引っ張られる感じに流されていく。


だんだんと目の前の白煙が薄れて来た頃、なんだか懐かしい…まるで子供の頃に住んでいた城とよく似た、マフィア特有の屋敷の匂いが鼻を擽った。


目の前の白煙が晴れた時、獄寺は洋館の長い回廊の真ん中で、沢山部屋が並んでいる中、その中でも一番重厚な作りの扉の前に立っていた。



(せっかく、十代目のお家に来たのに…)

とか、

(あのアホ牛!今度見たら果たしてやる!!)

とか、色んな思考を巡らせながら、

(ところで、どこだ…此処…?)

と、目の前の扉のノブに手を掛けようとした瞬間!

無数の針を突き立てられるかのような殺気が獄寺の躯を貫いた!!


「っ!!!」


心臓を鷲掴みにされるかのような、
本能が自分に『危険』を知らせて警告しているかのような…

身体中から冷や汗が溢れ出し、心臓が早鐘を打つ!


「ぐっ!!!」


(「ヤバイ!!」)


恐怖にも似た緊張感が走り、獄寺は思わず後ずさろうとした。


するとあまりの緊張感に、自分の足に足が絡んでしまい、情けなくも…

転んでしまった。




途端に、扉の向こうから突き刺さるように向かってきた殺気がフと緩んでいった。



カ…チャ…。



目の前の重厚な扉がゆっくりと開くと、扉の向こうには(男性の中でも小柄であろう)青年が立っていた。


琥珀色の瞳と髪が、その青年の纏っている真っ白なスーツによく映える。


その姿に、獄寺は暫し瞳を奪われていた。



その瞳は、獄寺を見下ろしながら、驚きに少し見開かれていたが、暫くすると


「フフッ」


と微笑み、情けなく尻餅をついた格好で、自分を見上げていた獄寺に手を差し伸べた。


「なんて恰好してるのさ。」


その手に誘われるまま、思わず伸ばした獄寺の手を取った青年は、獄寺の記憶にいる少年より力強い力で獄寺を引っ張り上げる。




「じゅぅ…だい…め?」


思わず零れた言葉に、目の前の青年は小首を傾げながら


「ん?」


と、優しい声音で返す。


そこで改めて我に返ると、獄寺は慌てて捲くし立てた。


「じゅ、十代目!?10年後の十代目ですか!!!?

あ、あの!俺、獄寺です!!
多分、この時代から10年前の!
あのアホ牛のせいでこんな事になっちまって。せっかく、十代目の宿題を見て差し上げる予定だったのに!
あぁ、きっと十代目が困っていらっしゃる……って……あぁ!!そうじゃなくて!

…お、俺の事…分かりますか…?」




……

…………

………………



「……あの…十代目…?」


「ブッ!
アッハハハハハハ!!」


「じゅ、十代目!?」


「そ、そんなに慌てなくてもー
アハハハ!」


「十代目ぇ〜(泣)」


獄寺が、緊張と困惑でいよいよ涙声になると、目尻に涙を溜めてお腹を抱えて笑っていた青年は、改めて獄寺の手を取り


「オレが、君を解らない訳無いだろう?」


と微笑むと、その何とも言えない優しく柔らかい綺麗な微笑みに、目を奪われた獄寺は…


再び、盛大に転んだ。







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