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‡小説‡
未来編(終結)(4)




「獄寺君!」




何かを大事そうに抱えて、その人は立ち上がる。




一気に力が抜けてその場にへたり込んだ獄寺の姿を見て、その人は抱えていた物も放り出し、フラつきながらも駆け寄ってくる。


しばらく寝たままになっていた為に、体が直ぐには上手く動いてくれないのだろう。

そんな事を頭の片隅で思っていると、フラつきながらも駆け寄って来たその人は、へたり込んだ獄寺の体を、力強く抱き締めた。



途端に広がる愛しい香。

頭を抱えるように抱き込んだ腕の感触に、自分の腕もその人の背へ回してみる。





「獄寺君…」



穏やかな声が降り注ぐ。

腕の力を強めると、甘やかな匂いが鼻腔に広がる。

この方を包んでいた花の香なのか、それともこの方自身の香りなのか。



「……ぃめ…」


「…ん?」




小さく零された獄寺の声に反応して、獄寺を抱き締めていた腕が、名残惜しげに緩められる。






「獄寺君…」






獄寺が見上げると、そこには写真よりも、夢よりも、目蓋の裏の記憶よりも、優しげに揺らめく琥珀が、鮮やかに広がる青空を背に、獄寺を見下ろしていた。


フと視界が歪むのと同時に、頬に温かい感触が辿っていく。





すると一層優しく細められる、琥珀の瞳。


頬に伝う温かい感触を拭うように触れると、


「男前が台無しだよ」


と、柔らかく笑いながら、目蓋の上に柔らかい感触が降り注ぐ。


次いで、頬へ、顎へ…

落ちていく雫を辿るように、ゆっくりと唇が辿っていく。




「…ゅうだいめ…」


「うん」




「10代目」


「うん」




止め処なく溢れ出る滴を拭っている彼の手を握り締め、真っ直ぐに見つめると、獄寺はずっと言うことを阻まれて来た言葉を、肺の息全てを吐き出すような思いで彼の人に告げる。












「お還りなさい」













一瞬、驚いたように見開かれた瞳。

するとその瞳からパタパタと大粒の雫が溢れ出す。










「ご、ごくでら…く…」


「はい…」


「獄寺君!」


「はい!」






止め処なく溢れる雫を拭うこともせず、

獄寺の腕に飛び込んでくる愛しい人。




この時を、どれ程待っていたか…

どれ程望んでいたか…

その度に思い知らされる絶望と孤独を…
自分をどれ程呪った事か…








しかし、もうそれらの荷物は全て捨て去っても良いのだろう。

ここに、この腕の中にある感触は、紛う事なき現実なのだから…








「獄寺君」


「はい」











「ただいま」











返事の代わりに、獄寺は強く強く、腕の中の宝物を抱き締めた。























‐END‐







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あきゅろす。
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