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攻殻機動隊※not夢
※もしアオイが9課のメンバーになっていたら、のif話です。ついでに色々と間違ってるかも知れませんので、使い方の違っている用語等の指摘は全然構いませんし寧ろお願いします。当方はテレビ放送とOVAのSSS視聴の浅い知識しかありませんので悪しからず。
此処まで読まれて無理だと感じた方は即戻る事をお薦めします。












豪奢な外装や内装とは異なり、図書博物館内は展覧棚に並べきれない陳列を待つ本が床にまで山を作り、図書運搬ロボットが忙しなく稼働する音だけが響く空間となっていた。何千、何万もの今や絶滅に近い昔発行された紙媒体の出版物が著者、出版社別に区切られ、迷路の様な本棚の配置に陳列コードを探すだけで一苦労だろう。運搬ロボットが目の前を通過するのを梯子の上から見下ろし、適当に山となった本の一つを手にする。中を開けば情報を纏めたバーコードの並びではなく、インクで刷られた文字が目に飛び込んでくる。電脳に素早く関連する情報も同時に表示される訳ではなく、一文字一文字目で追いながら理解するのは電脳化された今と逆行する行動なのかもしれないが、紙を捲る音とインクの匂いに魅せられ、未だ紙媒体の書籍を好む者が多いのも頷ける。自分はどうだろうか、と問われれば、恐らくその愛読者に含まれる。ネットに深く潜り、様々な情報に触れた。それは曖昧な憶測の域を脱しない噂から、強固に暗号化された機密文書に至るまで。他人の電脳に忍び込み情報を盗み制御プログラムを書き替え、時にゴーストを操った。紙書籍の方を好むのは、そういった経緯があるからだろう。電子情報は簡単に改変出来る。虚偽を真実に、真実を闇に。ネットの、世界の裏を知ったからか、尚更簡単に書き替えの効かない書籍を好む様になった。今手に持つ書籍は以前電子書籍で読んだ事のあるフィクションだが、やはり『目』で見た方が楽しい。

『うわ〜、また珍しいもの読んでるねぇアオイくん』

文字の羅列を追うこと数分。視覚野の隅から今は慣れた小さな青い多脚戦車が、まるで其処に居る様に自分と同じ様に本を覗き込む。実体があるのなら手の平サイズのソレは、かしゃかしゃと脚を動かし本からこちらを見上げた。

『あ、そうでもないか。アオイくんは国立図書博物館の司書だもんね』
『やぁ、タチコマ。今日は何の用だい?』
『うん。これ少佐から預かってきたんだ』

器用に片足を上げ挨拶をするタチコマに回線を通じて返せば、薄い円盤状のデータを渡される。それを受け取り開けば、次々と電脳に資料と思しきファイルと画像などの情報が流れ、視覚野に表示されていく。国家機密に関わる項目も幾つかあるが、特殊な暗号化を施した公安9課の監視網を通し転送されたので、傍受の可能性は低い。しかも運んだのがタチコマならば、更に低くなる。それに自分のカスタマイズされた攻性防壁を突破し盗み見る様な凄腕のハッカーなど、世界に数人と居ない。それでも最善を考慮し、別の防壁も展開していく。

『何でも第四次非核大戦時に内密にプルトニウムが持ち込まれた可能性があったらしいんだ。当時の外交下の取引で『日本の奇跡』の再演出の為だったか分からないんだけど、その痕跡があったんだって』

タチコマの説明を聞きながら資料を進めていく。先日政府要人暗殺未遂で捕らえた犯人の電脳に、当時極秘で処理された資料の一部が記憶されていた。投下されるのではなく、自爆式の核爆弾らしい。何とも確実性に欠ける作戦だ。だが誘導ミサイルは事前に打ち落とされる可能性があるが、自爆式ならアンドロイドに持たせれば低いながら確実性は上がる。生身の人間に命じなかったのは流石に良心の呵責に触れたのか分からないが、資料の一部には記されていなかった。あるいはあったのかも知れないが、犯人が処分した中に記載はない。アンドロイドに任せた場合、爆発の衝撃で証拠や痕跡など吹き飛んでしまうので後始末に困らない利点はあるが、今ほど高度な人工知能が開発されていない時代だ。時間と所定地をアンドロイドに命じた所で、不確定要素に対処出来なければ全く別の場所で爆弾が起動してしまうか、不審人物と取り押さえられ作戦が明るみになる最悪のシナリオとなってしまう。博打よりも確立の低い賭けだが、当時の上層部が本当にこんな作戦を練ったと考えるのなら、日本の先は悲嘆的だろう。まぁ、だからこそ企画段階で破棄された作戦なのだろうが、それでも日本に持ち込むと云う記載があり、同時期に海外から内密に運び込まれた物資があるなら調査するのが公安の仕事だ。

『で、僕は何をすればいいの?』

ほぼ生身で義体化していない自分は足を使った捜査に向いていない。それは『笑い男』事件で皆、知っている。それは義体化率が低い課員も同じなのだろうが、民間人と元警視庁刑事や軍人と同じカテゴリーには入れて欲しくない。自分の身すらまともに護れず、犯人に対して反撃も捕縛も出来ない人間が共に行動しては邪魔以外の何物でもないので、現場に駆り出される事は先ずない。それに自分が上司にスカウトされた理由は、この卓越したハッカーとしての腕だ。転送された資料を閉じタチコマに問えば、少佐の声で返ってきた。

『犯人の電脳に、当時同じ作戦執行中の仲間の姿もあった。半数の隊員は大戦中に戦死、終戦後は“一身の事情”により全員退役』

資料には入隊時に撮られた写真や任務中の荒い映像もあったが、所属後半の写真や映像、記録は全て末梢されている。

『大戦後の退役は然程珍しくはないが、その全員が退役後完全義体化し、性別や年齢まで替えその後消息不明と云うのは誰の目から見ても不自然だ』

どうやら義体化した病院の過去の医療記録から洗い出したらしいが、この記録には色々と改竄された形跡があり、一部の閲覧には軍上層部のパスワードが必要らしい。当時の義体化した姿も資料にあったが、これは記録と合わない義体パーツから予測した姿で、世間に多く出回っている標準型義体だ。

『イシカワとボーマには病院と関係者、家族にも接触した可能性が高く、その方面から探って貰っている。が、情報は少ないだろう』

そこで、お前には別の線から洗ってもらう。そう続けた少佐の声に笑みが滲んでいた気がしたのは、気の所為ではない。

『“余り”違法な捜査はしたくはないのだが、事が事だけに重要でな。アオイには捜査上に上がってきた元政府官僚の“電脳に潜り込み、記憶を漁ってきて欲しい”。犯人が記憶で口にした名前だが、それだけでは任意で聴取出来ない。もっと確証たる事実がなければ課長も動けなくてな。この際証拠としては使えないが、手掛かりが全く無い今の状況では何か一つでも欲しい。間違っても捕まるなよ』

一方的且つどう解釈しても違法な命令。しかもかなりの重労働に、頭が痛くなった。ウィザード級の能力がある少佐なら、その作業の大変さを十分に理解していての命令だろう。元政府官僚とは云え極秘任務に関わった可能性となれば、現在でも軍が護衛しているのは必然。現実でも電脳でも、厄介な相手だ。直接繋がれば簡単なのだが、それが出来ないから自分に任されたのだろう。

『タチコマ、バックアップ出来る?』
『もっちろん!少佐から手助けしてやれって命令は下りてるよ!あっ、援護にあと二機来るから頑張ろう!』

元気良く身体全体を使い頷くタチコマに、アオイは苦笑を滲ませながら深くため息を吐いた。







※軍の攻性防壁って破れたよ、ね?色々矛盾はありますが、目を瞑って頂けると嬉しいです。

つかアオイ君やっぱ良い!久しぶりにDVD観てまた再ハマり。次はアオイ君夢書きたいが、それもif設定予定。

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あきゅろす。
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