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デュラララ★(平和島家長男
※爆走女主は『凜』で固定してます。





セルティが渦中の騒動の中心人物達と出会ったのは、同居人である新羅が来神高校に通い始めた時だった。それと同時に、ある意味恐怖を刻まれたのも、その時だったりする。中学から友人となった臨也と、高校で再会した静雄との変わらない何時もの喧嘩と云う名の殺し合い。それは場所と時を選ばず始められ、大半が臨也の軽口が発端となる。学校、公園、池袋の路地裏。二人が揃えば其処が何処であろうと戦場となり、その日も本来なら子供連れの親子が楽しげに笑う声が聞こえる筈だった公園にて、喧嘩が始まったのだ。

「いぃざぁやあぁぁあ!!」
「あははっ、怖い怖ーい」

そんな怒鳴り声に交じる不快な愉しげな声。遊具や街灯が破壊される音に悲鳴。まだこの頃は破壊神やら情報屋やらと、池袋の街に浸透していなかった二人の喧嘩は、野次馬が生まれる事も多くない。騒めきの中、まるで特撮映画の様に宙を舞うベンチ。それを人込みの死角になる位置からセルティは胸の前で手を組み、そわそわと動く野次馬の頭の間をヘルメットを動かしながら眺めていた。二人が怪我をしないか、ではなく、

「こ、腰が抜けた……」

何があったか、途中参加のセルティには分からなかったが、少女が荒れ狂う公園の隅にて何やら情けなさそうに俯いてたから。少女との直接の面識はないが、誰かは知っている。新羅の卒業アルバムに載っていた、小学校時代の数少ない友人の一人である少女。名前は確か、五十嵐凜。静雄の長い片想いで初恋の相手だよ、と新羅が教えてくれた。その少女が何時二人の喧嘩の巻き添えになるか、心配で不安で仕方がなかったが、不思議と少女の方に被害はなく、静雄は分かるが臨也まで気に掛けている光景はかなり不気味で。だが全ての被害を防げる筈もなく、時折少女の近くに降り注ぐ元道路だったコンクリの破片に、声なき息を飲んだ。杞憂で終わって欲しいが、いざとなったら助けなくては。腰が抜けている様だし。だがその場合、自分は首なしライダーとして有名、しかも初対面なのに助けても大丈夫だろうか。抜けて天然で変な所で馬鹿だから大丈夫だよ、とは新羅の言葉だが、だからといって突然手を伸ばしたら確実に恐がらせてしまう。そうなったら申し訳ない。その前に二人が喧嘩を止めてくれれば問題ないのだが。―――と、ふと、セルティの気が他に向いた一瞬、

「あ、ひっ、ひぇーん!」

突然、甲高い泣き声が辺りに響いた。幼子の様に盛大に、壁に反響して通り過ぎ様としていた喧嘩に興味のない一般人さえ驚いて、公園に目を向けた。その泣き声の発生源はこの場で一人しかいない。な、何があったんだ!?慌てて戻した視線の先、固まる静雄と慌てる臨也の先にて、何故か全身ずぶ濡れの凜が居て、

「うわぁん!酷いよ臨也!酷いよ静雄君!わ、私っ、私が虫苦手だって知っててー!うわぁあん!」

怒る所違くね?と、誰もが思う突っ込みを胸に顔を両手で隠して泣く凜をよく見れば、濡れた服にはおたまじゃくしがうねうねと張り付き動き、水蜘蛛がかさかさと這っている。他にも幾つか虫や水草、藻が頭やら肩に付き、まるで池に落ちたかの様な有様に。視線を其処から横にずらせば噴水に突き刺さる様に落ちたベンチがあり、跳ねた水が少女に降り注いだのだろう。泣く少女に喧嘩処でなくなった静雄と臨也は謝りながら付いた虫やらを取り、カバンからタオルを取出し顔や服を拭うのだが、

「……おーけーぃ、死にたくなかった其処に正座しろ糞餓鬼共」

ぞくりと、地獄の底から這い出てきた様に低く、恐怖を感じる静雄とよく似た声に、宥めるのに必死になっていた二人は盛大に肩を跳ねらせると、二の句もなく、直ぐ様正座を披露した。す、凄いっ!あの二人を言葉だけで素直に従わせた!確かに声に籠もる怒気に無意識に従いたくもなるが、静雄と臨也がそれだけで従順になる程、素直な性格でないのも知っているので、純粋に驚く。心なしか震える肩の二人に、何処からか響いた声を聞いた野次馬が淀めいた中、誰かが悲鳴た。

「げ、平和島名前だ……!」

その名は確か、静雄の兄の名前だった筈。新羅や静雄達よりも二つ年上で、あんな問題だらけの子供に好かれ恐れられ、兄の様に慕われている人間。ならばあの二人を大人しくさせられるのも一利ある。騒めく野次馬の一人があ、あそこ、と指を差した先、ぐにゃりと歪んだ公園の柵を跨ぐ様にして、静雄によく似た男がゆっくりと歩み寄って来ていた。満面の笑顔で。

「あ、兄貴……」
「名前さん……」

確実に青ざめていく二人ににこりと微笑み、名前と呼ばれた静雄と髪色以外は双子と勘違いされる容貌の兄は涙目で見上げる凜に、優しく羽織っていた上着を掛けた。

「っ、名前さぁん、ひく、む、虫、嫌いなのにぃ〜」
「あぁ、分かってる。昔から絶対無理だったもんな、特に蜘蛛とか百足は」
「ひぇ〜ん、臨也も静雄君も酷いよぉ」
「ほんっっっと、酷いよなぁ」

泣く凜に眉尻を下げ、労る様に柔らかく慈愛に満ちた眼差しで頭を撫でる名前の姿はまさしく長男。静雄と瓜二つだが、やはり長兄らしく何処か責任感を漂わせている。そんな名前の宥めに凜の泣き声も次第に嗚咽へと変わり、ぐずぐずと鼻を啜る音にぽんぽんと頭を撫でると、今度はくるりとその背にて正座決行中の二人に向き合い、ぽんと同時に二人の頭に両手を伸ばした。

「言い訳、聞く気、ある?」
「あ、あの、兄貴……」
「はい、土下座」

必死に弁解と云う名の言い訳を延べようとする二人に名前は気持ちの良いくらいに一刀両断すると、

『ぶふぅッ!!』

勢い良く二人の頭を地面に沈めた。ごづん!と、今まで聞いた事のない重い音、コンクリと頭蓋骨が奏でる音に無意識に背筋が凍り付く。あの程度の衝撃で二人がどうにかなるなら可愛い物だが、初見の野次馬には分からないらしく、小さく悲鳴が漏れた。名前は笑顔のまま頭部をぐりぐりと地面に押し付ける。

「臨也くん、静雄くん?女の子には優しくしなくちゃいけないよ、って何度も言ってるよね?つか、人様に迷惑掛けるなって何度言わせんだよオラ」

御免なさいと小さく地面との隙間から聞こえるも、名前は聞こえないのか無視しているのか、擦り付ける力は微塵も揺るがない。あの不良達に恐れられている静雄と臨也が何も抵抗もせず、逆らわず、逆に恐れている人間。平和島名前。

『新羅が素直に云う事を聞く訳だ』

泣き止んだ凜が二人を許し、漸く制裁から解放された静雄と臨也が再度、自主的にした土下座は後々まで伝説となって語られたりするのだが、まぁ、その辺は割合する。





※リクにありました、セルティとの(一方的な)出会いです。

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