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べるぜ(男鹿?
※アニメ放送記念に





「男鹿ァ!!」

校舎に咆哮の様な怒鳴り声が響き渡る。女子にしては低く、男子にしては高い声が石矢魔高校で知らぬ者は居ない男の名を轟かせて、前方を同じ速度で逃げる男を追う。毛先に伸びるにつれ癖のある髪を靡かせ、鋭い眼光を更に細める姿に巻き込まれない様に避けた生徒から歓声の声が上がる。

「いいぞ名前!そのまま男鹿を叩き潰してやれ!」
「ぎゃははは、情けねぇぞ男鹿!」
「うるせぇ!後でぶっ飛ばすぞテメェら!!」

蔑む冷やかしの声に男――男鹿は怒鳴り返しながらも足は止める事なく、殺気に似た怒気を飛ばす名前から内心必死に逃げていた。魔王が居るなら悪魔も居る。悪魔が居るなら多分、天使も居る。天使が居るなら悪魔を滅ぼす剣を授けた勇者が居たって可笑しくない。……そう、自称でも自意識過剰でも妄想でイかれた馬鹿でもなく、正真正銘、今背中にしがみ付いた未来の魔王たる赤ん坊。その親である現魔王と実際争った事のあるらしい勇者の末裔も、実際に存在したのだから笑うしかない。魔王の親と云うどんな育成ゲームかと突っ込み満載な設定も頭が痛いが、この、RPGの主人公らしいベタな設定を与えられた勇者が、石矢魔高校の不良に負けず劣らずな表情で自分を追い掛けている女だと云うので更に痛い。つか、信じられない。勇者の末裔っつうツラか?そう疑問に首を傾げつつも、魔王と戦うべくして日々鍛練に勤しんだ身体は正しく一騎当千。スカートではなく男子の制服を纏い、一瞬でも気を抜けば教室から勝手に持ち出したチョークが背中に襲い掛かってくる恐怖は絶叫マシーンの比ではない。一発でも当たったら死ぬ。確実に死ぬ。後頭部目がけ飛ばされたチョークをお辞儀をする様に避ければ、男鹿の変わりにチョークと云う弾丸が被弾した校舎の壁には蜘蛛の巣状の皸が刻まれ、教室からそろりと覗いていた古市の喉から小さな悲鳴が上がった。

「つか、何時も言ってんだろうが!俺は全面的に被害者だっつーの!!こいつの親になりたくてなったんじゃねぇって、何回言わせが気が済むんだよお前は!!」
「ンなの知るか!俺はただヤれねぇ怒りをテメェにぶつけてるだけだ!!」
「何その超俺様思考!?いい加減俺もキレるぞ!」
「はッ!ヤれるモンならやってみろ!生きながら地獄を見せてやる!!」

お前ぜってぇ勇者の末裔じゃねぇだろ!そんな叫びが脳内に響く。主人公(勇者)=美形の論理通り、見目麗しい容貌だけに、ニヤリと笑うと壮絶なまでに恐ろしい勇者の末裔こと名字名前。喧嘩早く俺様思考。売られた喧嘩は嬉々として買う、どう考えても勇者よりも悪魔よりな思考の勇者の末裔様は、例え女子供老人だろうと悪魔なら躊躇いもなく切り捨てる、非情とも呼べる強い精神を宿している。だが、そんな勇者の末裔様にでも芯として決めた決意というか信念があるらしく、それが三歳未満の赤子だけは決して害さない。と云う、今の男鹿からしたら最悪な信念故に、こうして逃げ回っているのだから理不尽だと叫びたくもなる。魔王の子ことカイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世は見た目的にどう考えても三歳児未満。剣を向けられる訳がない。だが赤子は魔王の息子。倒さなくてはならない。でも倒せない。……あぁ、イラつく。でもその苛立ちを一般人に向けられない。でもムカつく。ストレスが蓄まる。なんで悪魔が目の前に居るのに倒せないんだよ。その蓄積する憤りの発散方法が、

「あぁ、なら育ての親の男鹿にすりゃいいんだ」

と云う理不尽の固まりの理由で、今男鹿は現在進行形で名前から追われているのだった。

「バブー」
「ッ!止めろ!俺をそんな目で見るんじゃねぇ!!」
「テメェは悲痛な表情でチョーク投げんじゃねぇ!」

背中に張り付いたベルゼバブが楽しそうに名前を見、その純真な眼差しに名前が何故か感じる罪悪感を振り払う様に男鹿に向けチョークを飛ばす。ヒルダと名前の壮絶な人外戦闘は色々と危なく恐ろしい事この上ないが、場所を考慮してくれればこちらに被害は全くなく格闘技でも観戦している感覚で眺めていればいいのだが、最近では街を破壊するのを躊躇ってか、双方ともに睨み合うだけで互いに剣を抜かない。その分、男鹿への八つ当りに全力を注ぐのだから、威力が日に日に増し、明日辺りは画鋲をマシンガンの如く連射されそうで末恐ろしい。

「古市!テメェも隠れて眺めてねぇで、ちっとは助けようとは思わんかい!」
「いやいやいや無理無理無理。俺だってまだ死にたくないから」
「男鹿ァ!テメェ何関係ねぇ古市を巻き込もうとしてやがる!ぶっ飛ばすぞ!」
「古市と俺とのこの扱いの差、何!?」

頑張れぇ、と小さく激励する古市に覚えとけ!と恨みを吐き出しつつ、今日も今日とて理不尽な鬼ごっこは続く。







※恋愛要素?話の展開からしたら男鹿に、なる、かな?

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