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さぁ、二次元の世界へ行きましょう(ワゴン組)



自分とは違う趣味を持つ人間を、特別偏見も差別もしたりしない。それはその人、本人の趣向であり、それを他人がとやかく言う資格はないのだ。

「―――って、数分前まで思ってた俺は偉いだろ」
「いや、あの、すみません」

きゃっきゃっ騒ぐ、所謂オタクと分類される人種である二人の男女を無機質な瞳で見据え、呟いた言葉に、元後輩が額を抑えて謝罪の言葉をくれた。いや、お前が謝るのはお門違いだし、それに俺はこの二人に対して怒ってもいない。二次元好きが三次元の人間相手にでも『萌え』を感じられる所に驚き、同時に呆れているだけなのだ。特に男女の女の方――狩沢に。

「イザイザとシズっちのBLもいいけど、麗司っちとイザイザも良くない!?大好きな兄が実は仇敵と愛し合っていて、それを知ったシズっちが本当は麗司っちの事を愛していたって気付いての三角関係とか!」
「だから、どうしてそう何でもBLに結び付けるんスか!こういう時は麗司さんが好きな女性が実は悪魔で何でも願いを叶えてくれる代わりに寿命を奪ってしまうんスけど、最終的には麗司さんが悪魔になる事で二人は結ばれるんスよ!これぞ、王道!」
「えぇ!それならイザイザが実は悪魔で、麗司っちとシズっちに一目惚れして人間界に降りてきたってのはどうよ!」

いや、どうよってどうよ。つか、頭が痛いんだけど。人様の趣味をどうこう言わないといったが、それは自分が出ない、もしくは関わらない場合のみだ。つか何で相手が静雄と臨也なんだ。可愛いと憎たらしい二人限定なのは可笑しいぞ。女優とかアイドルとか、幅なら広いじゃないか。

「ッお前等!麗司さんの前でなんつー会話してんだ!」
「えぇー、だって、シズっちもイザイザも麗司っちの前じゃ大人しいし、シズっちなんて、すんごい笑顔なのよ」
「そりゃ、懐いている兄貴の前で仏頂面なんてしねぇだろ」
「そうそう、門田さんも嬉しそうっスよね」
「あ、もしかしてドタチン、自分も入れて欲しかったの?イザイザとシズっちを混ぜての四角関係!」
「だから、そういう事を麗司さんの前で言うな!!」

怒鳴る門田に二人は余り反省の色を見せないが、不服の表情で口を閉じた。やべぇ、もう少しで意識が飛びそうだった。二次元ならば詳しくないのであっさりと流せるが、三次元の威力は半端ない。しかも自分が出演となれば、出演する面々は当たり前に知った人物であり、それが狩沢の熱弁で生々しく脳内で演技を披露し初めて意識がやばかった。

「麗司さん、本当にすみません。こいつらには後でよく言い聞かせとくんで、許してやって下さいませんか?」
「ドタチンが敬語使ってる様って、萌よね」
「門田さんって麗司さんには常にデレ期っスからね」
「…………あぁ、うん、まぁ、俺の前で萌えてねぇなら、幾ら話しててもいいけどよ。静雄の前では止めとけよ」

ぜってぇ殺される。そう続けた宣告は心得ているらしく、二人は輝かしいまでの笑顔で頷いた。ついでに『自分をモデルにした萌語り』の許可まで出したのが余程嬉しかったのか、また何やら二人の熱弁が始まった。

「……あの二人に付き合ってるお前を心から尊敬するよ」
「いや、それはお互い様です」

――あぁ、なんか門田と酒を飲み交わしたくなった。





お題:魔女のおはなし

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あきゅろす。
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