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兄弟仲良きかな(静雄と臨也+トム)


可愛い可愛い弟達はもう既に成人し、自分と同じく実家を出て働いているが、時折手紙が届く。――そう、手紙だ。メールでなく手紙。しかもかなり簡潔な。

『兄貴へ。頑張ってます』
『兄さんへ。生きてます』

それ、わざわざ手紙で云う必要なくね?二つ下の弟は否が応にも伝説として高校には名が残り、今もその原因である同級生と出会っては殺し合ってるから街を歩けば噂を耳にする。頑張ってるのも分かる。更にその下の弟は液晶越しによく見るので、生きている証明は簡単に出来る。だからもっとこう、近状やら季節の話題やら、兄さんどうしてる?くらい、こちらの事を気にしてもいいと思うのだけれど、可愛い弟達は全く気にしない。いや、生まれてこの方、病気類に一切罹らない体質つか健康体だからいいんだけど。だけどさ、あの電報かと見間違う手紙って何だよ。一行に満たない手紙ならメールにしろよ、メール。

「………はぁ、静雄も幽も可愛くなくなったよな」

新宿の安いアパートの一室。流石兄弟というべきか、弟二人の手紙が同時に郵便受けに入っていた。白い封筒にこれまた白い便箋に一行、冒頭の一言が。悲しくはないよ、男兄弟なんてこんなもんさ。

「……池袋に行くかな」

可愛くないとか云いながら、頬をだらしなく緩めながら丁寧に二人の手紙を仕舞い、出掛ける用意をする。短い手紙で気遣いの欠片も感じられないが、かなり嬉しい。散歩の距離にしては遠いのだが、弟達から手紙が届いた時は嬉しさの余りつい行ってしまうのだ。確立はかなり低いが、弟達に逢いたくて。

「本当、麗司さんって変」
「何処がだ。臨也だって妹達が可愛いだろ?」
「いいえ、まったく」

珍しく同じく新宿に住む臨也と池袋で出会い、池袋に出没した理由を話せば苦虫を噛み潰した表情で毎度の事ながら『その顔でブラコンは、ねぇ』と肩を竦められた。うっさい。だって、照れ屋な静雄に少し無表情だけど甘えん坊な幽。もう本当に可愛くて自慢なんだからな!

「まぁ、いいや。で、目的のシズちゃんですが、上司の人と料金回収に出回ってましたよ」
「詳しいな」
「えぇ、もう、ついさっきまで追い駆けっこしてましたから」
「臨也、笑顔がキモい」
「あはは、麗司さんに云われたくないなぁ」

お前、喧嘩売ってんの?NO.1ホスト捕まえてキモいは何だ。あはは、と笑い合うが纏う空気は冷たい。本当に生意気な餓鬼だ。出会った時から生意気だが、近年は更に生意気度が増しやがる。くそっ、その品曲がった性格直してやりてぇ。

「そっか、んじゃ、また静雄に見つからない内に家に帰れよ」
「えー、一緒に帰りましょうよ。麗司さんも同じ方向じゃないですか」
「目的に逢わずして帰れってか」
「いやいや、可愛い弟。臨也君に出会ったじゃないですか」
「うん、さよなら」
「心の距離が一気に開きましたね」

下らない冗談を云う臨也に満面の笑みで手を上げれば苦笑が返された。可愛いって自分で云うな、寒い。しっしっと犬を追い払う様に帰れと示せば肩を大袈裟な程竦め、踵を返した。お、珍しく素直に帰るな。片手を軽く上げ振りながら進む臨也に見えないだろうが同じく振り返せば、

「兄貴?」

人込み中、一つだけ飛び出た金髪が唖然とこちらを眺めていた。やや険のある瞳をサングラスの下に隠し、幽から大量に贈られたバーテン服に身を包んだ二つ下の弟の一人。隣には同級生のドレッドヘアーが。

「お、久しぶりだな。麗司。元気にしてたか?」
「俺が元気じゃなかったら大変だろ」
「まぁな」

ちらりとトムの視線が静雄を映すが、当の静雄は照れた様に頬を掻くだけで気付かない。そんな静雄の胸元を軽く叩き、にっと笑えば静雄の表情が柔らかくなる。

「よ、元気にしてたか?」
「兄貴は元気そうだよな」
「おぅ。つか、俺の取り柄と云えば健康体なだけだし」
「……その、どうしたんだ?兄貴が池袋に来るなんて珍しい」
「来ちゃいけねぇの?」
「いや、そういう事じゃなくて……」

久方の再会。多分、半年振りか?昼夜逆転の生活をする自分と静雄や幽は合わなく、前の時なんて二、三言話しただけだし。幽なんて遠目でアイコンタクト。だから何を話したらいいのか分からないんだろう。珍しく瞳を泳がし、恥ずかしげに頬を染めて髪を掻き上げたり挙動不審な姿に、トムが引きつった笑みを浮かべた。失礼だぞ。

「手紙、くれたろ?嬉しくて、逢えるか分からなかったけど来たんだ」
「………あ、届いたんだ」
「幽からも届いたんだけどよ、お前ら、もっと長い文章書こうと思わねぇの?あれじゃ電報だって。まぁ、嬉しかったからいいんだけどさ」
「いや、何書いていいか分かンなくて」
「それも一利あるな。お前ら口下手だし」
「麗司。それ、関係ないと思うぞ」

うっさい、トム。実際、静雄にはこう言ったが、自分が出すとしても簡潔な手紙になるだろう。静雄と同じで何書いたらいいか分かんねぇし。

「トム、仕事はもう終わりか?」
「うん?……そうだな。静雄、今日はもうあがっていいぞ」
「トムさん?」
「兄貴に寿司でも奢って貰え。んじゃ麗司、今度逢った時は俺にもなんか奢れよ」
「おーう」

臨也と同じく、踵を返して手を振り去っていく背中。直ぐ様人込みに紛れて見えなくなるドレッドヘアーには学生の頃、よく静雄に関して迷惑を掛けたが、まさか成人しても世話を焼いてくれるとは。本当なら兄貴である俺がするんだけど、そしたら過保護になるからなぁ。母さんに紐は離しなさいって説教されたし。

「……兄貴」
「んー?」
「俺、頑張ってるから」
「ん」
「今度こそ兄貴に迷惑掛けねぇから」
「無茶はすンなよ。兄貴は頼られてなんぼの生物だから、迷惑なんて余り気にすんな」
「…………ん、有難う」

ばしばしと静雄の背を叩く俺に通行人は青ざめて逃げていくが、その叩かれた当の本人は気恥ずかしげにサングラスの位置を直すだけ。いやぁ、可愛いなあ。

「静雄、夕飯は寿司でいいか?」
「兄貴が行きたいなら何処でもいい」
「そういう事は女の子に言ってやれ」

天然静雄を引きつれ、同じく静雄と臨也が迷惑を掛けている寿司屋へと、向かった。







※なんか色々と説明不足に感じる。

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あきゅろす。
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