Accesses The Reality Cruelty
撤退
「っ! フレイムブレード!」
俺は、高速で近づいてくる巨鳥へ、さらなる炎を纏った巨剣を振り下ろした
が、何度もそう攻撃が決まるわけもなく
「オォ!」
巨鳥は口を閉じ、そのクチバシを使って俺の一撃を迎撃した
「っ!」
なんていう一撃だ
俺の剣は大きく弾かれ、危うく手から離れそうになった
「オォァアアアア!」
さらに、巨鳥は吠え、地面や空から大きな黒い柱が次々と出現していった
「く……」
とてつもない魔法だ
これまで見てきた魔法なんかとは、ケタが違う
……だめだ。冷静になれ
俺は霊介たちのパーティリーダーだ。熱くなりすぎて冷静な判断ができなくなるのは、リーダーとして失格だ
……ここは、逃げるしかないんだ
「……撤退しよう。霊介、あいつの攻撃は闇属性のものが多い。お前はかなりの耐性があるから、できればみんなの援護をしてくれ」
「……あいよ」
さすがにこの場面だ。霊介も真剣な表情でそう言った
「俺は足止めをするんだが……レミリナ・アヴァンストリームは、できれば俺の手伝いをしてくれないか。だが君は部外者だ。嫌なら逃げても構わない」
「ただの人間が戦うのに、私が逃げるわけないでしょ」
「ありがとう。次に、巳依さんと葵さんは様子を見ながら逃げてくれ。巳依さんは召還魔法を使ってみんなが逃げる援護をしながら。葵さんは魔法が得意のようだから、もし攻撃がそちらに飛んだ場合の迎撃を頼みたい」
「しかたないな」
「うん」
「レートさんは負傷をしてるから、なにもしなくていい。速やかに撤退してくれ」
「っ……」
「妹さんを連れ戻したい気持ちはわかるが、冷静になってくれ。ここは戦場だ。一歩間違えば、死ぬ」
「……わかっている」
「《死神(ヘル)》……いや、ノアには霊介と同じことを頼む」
「わかった」
「よし……なら、作戦開始だ」
「ふぅん……やっぱりノアちゃんは、そっち側についたかぁ」
さすがリョウスケは、僕のみこんだ人間だ。敵を仲間に加えるとは
「くふふ……さて、君たちはこの局面をどう乗り切るのかな」
少し楽しみだ
……はぁ、それにしても両手痛いなぁ
「オォァアアアアア!!」
巨鳥が吠えて、雄叫びをあげた
それだけでこの場に地震が起こり、危うく転びかける
「魔神……」
前回も、そいつを完全に倒すことはできなかった
ただ、膨大な傷を負わせたけど撃退しただけ。まだ生きている
それにあれはお兄ちゃんがいたからこそできたことだから、いまは逃げるしかない
「お兄ちゃん……早く来て……」
願うしかない、それを
「葵、大丈夫かー?」
余程不安な顔をしていたんだろう。巳依ちゃんが気にかけてくれる
「うん、平気」
なるべく笑うように努めて、私はそう言った
「……本当に、平気か? 顔が青いぞ」
……前回も、そうだった
初めて魔神を見たときは吐き気に襲われて、お兄ちゃんに宥められるまで凄く苦しかった
「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても平気」
確かあの時は、魔神が見たことのない三次元の大型魔法陣を纏っていて……
「……あ」
……まずい。そのことを忘れてた。早くこのことを、足止めしてくれてる二人に教えないと……まずいことになる
「ちょっと私、戻る」
そう言って私は、急いで二人の元へと戻っていった
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