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Accesses The Reality Cruelty
カグツチ

「っ!」
 また、消えた
だがいまは、さきほどとは違う
 呼び出した二匹の狼のうち一匹が、空に向けて吠えた
「上か」
 剣を下段に構え、振り上げる準備をする
「フレイムブレード」
 激しい炎に包まれた剣を、俺は頭上に迫っていると思われし雷獣に斬り上げた
「キッ!」
その一撃はレイボルの振り下ろされていた拳と激突し、弾く
「フレイムスラッシュ!」
そして、後ろへ下がったレイボルへ追撃も繰り出した
 しかしそれは、消えて避けられる
俺はそいつを捉えられない
 だが
「いけ!」
 俺の指示の元、二匹の狼は命令通りに俺の死角へ迫っていたレイボルに、攻撃をしかけた
「フレイムアップ」
 エンチャントをかけ直し、相手の位置を確認することに努める
そいつは、30m以上遠くで……なにかをしていた
 ……嫌な予感がする
「……少し、様子を見てきてくれ」
 指示通り、狼たちはそいつにゆっくりと近づいていった
 ……その瞬間

 ドグゥゥォォゴァァォォオンッッ!!

信じられないほどの光と衝撃が、目の前に突然現れた
 地面が、揺れる
「なんだ……これは……」
 なんとか声を出し、起こったことを確認する
「……おいおい、なんだ、これは」
 ついさきほどまで目下にあった広場は、1/5ほどが壊滅していた
石や土が焼け焦げていた
 狼たちも消えた
……俺は、アーミーの人たちがこいつらをどう呼んでいたのか思い出していた
『第一防衛兵器』『落雷モンスター』
 そうだ。これは、落雷だ
「一人でボス戦をするときは……そのボスをみんなで倒せるときより、Lvが10以上ないとだめだな」
 そう、呟く
正直言って、俺は怖い
 こんな攻撃は一撃でも食らったら、ひとたまりもないのではないか?
逃げたい。周りには誰もいない、文句は言われない
「……そうじゃないだろ」
 決めたんだろ、俺は。勇者になるって。勇敢な戦士になってみせるって

 俺が、世界を救ってみせる

 そう決めたはずだ、俺は
俺がやるんだ。誰でもない、俺が
 それなのに、ここで逃げてどうする?
「……嫌だ」
 だめだ。逃げるな。勝てよ
俺ならできるだろ? レートは、作戦上でそう言った
 そうだ、不可能じゃないんだ
期待にも答えられず、なにが勇者だ
「……俺が、やるんだ」
 ……集中しろ
本気でいるときの霊介を思い出せ
一瞬で霊介を倒したときの蒼都を思い出せ
 俺も、集中しろ。目の前のことに
「中ボスはおとなしく、やられてろ」
 ……体が熱い。手が熱い
なんだ、これは
「キキィッ!?」
 見ると、剣からは放射状に炎が纏われて、3mほどの大剣になっていた
……それだけじゃない
体を見れば、その装備のあちこちから炎が放出されていた
 ……剣はともかく、防具にこんな効果はあったか……?
「……違う」
 わかる、なにかが変わっている
体の構造……? 違う。だが、なにかが変わった
 それは……その感じる『力』は……
「データスキル……!」
 思わず俺は、ウィンドウと呟いた
そのステータス表示をみた時、それを確信した
「職業、『カグツチ』」
 俺はそれを、知っていた
確かこれは、記紀神話における火の神の名だ
 イザナギとイザナミの間に産まれ、火の神であったために不幸にも、母親イザナミを殺してしまう。その後は、怒りに狂ったイザナギに殺されてしまうが……
いまはとにかく、そんなことはどうでもいい
「……俺は、レイボルごとき、もう敵ではない」
 見せてやる、俺の力を

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あきゅろす。
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