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Accesses The Reality Cruelty
友達
 やはり、少年は死なない
「……痛い」
「っ……!?」
だから私は、すぐにこの少年から離れようとした
 でも彼は、私を攻撃するでもなく、抱きしめてきた
「!?」
「はは……これ、セクハラとか言われても文句言えないなぁ」
「は……離せ……!」
「……離さない」
「おま……え……は……」
 ……なんだろう、これ
なんだか……とても、温かい
 人に触れたのなんて、いつぶりだっただろうか
……こんなに、温かかったんだ……
「心に……まるで心臓の辺りに、ぽっかり穴が開いたみたいだった」
「……え?」
「そこに何があったのか、なにもわからない」
 ……わかるのだろうか
この少年には、私の気持ちが……
「かきむしりたいくらい、むず痒くて……凄く不安で……それを抑えるには、どうすればいいのか、わからない」
「ぁ……」
「だから、復讐する。この穴を埋めるためには、それしか方法がないって……」
「そう、だ……だから……私は……復讐を「でも、違ったんだ」」
 ……違った?
「復讐が悪いとは、俺は思わない。したければすればいい、とも思ってる」
「……」
「でも、違うんだよ。穴を埋めるのは、そんなものじゃない」
「っ!? だったら……いったい……なんだって……」
 私は、みんなの仇を取る。そうすることが穴を埋めることなんだって……
「……それは、そんな小難しいものじゃなかったんだ。もっと単純で、簡単に埋まるものだった」
「……それは……」
「……いま、まだ苦しいか」
 急に、話を変えてきた
「なにを……」
「いま、穴が開いてる? まだ、苦しいか?」
「……え?」
 ……苦しく、なかった
なんだか……とても温かくて……
「……寂しかった、だけなんだ」
「っ……」
「急に周りから大切なものがなくなっていって……ただ、不安なだけだったんだ。寂しい、だけだったんだよ」
「さび、しい……?」
「俺には、友達がいた。みんな、実はお人好しの優しい友達だ。そいつらがいたから、俺は穴を埋めることができた」
 ……あぁ、そうだ
たぶん、わたしも、そうだ
 急に周りが、世界が変わったような感じがして……
みんなが、いなくなっちゃって
 不安で、寂しくて……ひとりぼっちで……
ずっと変わらなかったものが、急にどうにかなってしまって……
 怖かったんだ、寂しかったんだ
「でも……」
 涙が、出ていた
みんなのことを、みんなといっしょだった頃を思い出して……
「私は……もう、一人なんだ……大切な人たちなんて……友達なんて、いない」
 ……そしてこの少年の発言は、私の穴はもう埋まらないと、決定付けるものだった
「……なら、いまから作れよ」
「……え?」
「……俺が、友達になってやる」
「どう……して……私、は……敵、だよ……?」
 そんなのが、友達なんて……
「違う」
「ち、違わない」
「……違うよ」
「……」
「俺はもうお前を、友達だと思ってる」
「……え?」
「だいじょーぶだって。みただろ? 俺は絶対に、死なないから」
 ……ひどく、目の前が霞む
水滴が溢れて、間近にいる少年の肩へと落ちた
「……絶対に、どこにもいかないの……?」
「あぁ」
「絶対に……?」
「あぁ」
「…………ぅ」
 流れていく水滴が、もう止められなかった
私はしばらくの間、少年の……リョウスケのそばで、泣いていた

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あきゅろす。
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