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Accesses The Reality Cruelty
復讐

私は、みんなが大好きだった
 周りにはみんながいて、みんなの中に私も入っていて……
寂しくなかった。それは、温かかった
 ずっとこのままでもいい。そう思えるほどに……
優しい両親に心良い友達……私は、凄く恵まれていたんだ
 そしてある日、男の子の友達が言い出した
『肝試し』をやろうって
乗り気じゃなかったけど、みんなといっしょなら大丈夫だと思って、参加した
 結果は、ぼちぼち
でも楽しかった。みんなといっしょで……
 でも次の日
……肝試しに行った友達が、全員死亡した
なんで私だけは、平気だったんだろう
 私自身も、それが疑問だったのに……
私は、肝試しに行った友達の親からこう言われた
『この《死神》が……村から出ていけ』
 私だけが、生き残った
それが私にとって、一番苦痛だったのかもしれない
……両親は、死んだ
 両親は、私を殺そうとした。悪意からじゃない。たぶん善意からだ
『いっしょに死のう。またあっちの世界で、楽しく生きよう?』って、二人は言った
それもいいかな、なんて思ったりもした
 けど、やっぱりだめなんだ。やり残したことを、やりきらないと……まだ私は死ねない
私は村を出た。もう一度肝試しに行った墓地まで行ったりしたけど、やっぱり私は死なない
 調べた。徹底的に、調べた。あの村と同じ現象を……あの事件の犯人を、突き止めるために
そいつに、復讐するために
 そしてある時、私は彼に出会った。リビングデッドの、リーダーに……
彼は、言った
『それは《死神(ハデス)》というモンスター……いや、化け物が関わっている』
そして、彼は力をくれると言った
 そいつに対抗できる力を。そいつと同じ力を
 その力は私の感情を喰らい、他のいろんなものも喰らっていった
 それでも、私はその全てに耐えて、力を支配した
私は彼に付いていき、頑張ってもっと強くなろうと努めた
いつか、《死神(ハデス)》を倒すために


 なら、《死神(ヘル)》なんて呼ばれたのは……なにかの因果だったのかもしれない
「そいつを、殺して」
 私は、悪魔どもに命じた
悪魔は雄叫びをあげて、次々とリョウスケという少年に襲いかかった
いくら闇属性にかなりの耐性があると言っても、そろそろHPが危険な域に達してるはずだ
 なら、押し切れるはず
私のHPも、もう1/10くらいしかないけど、今はもう関係ない
「人を殺すのは簡単だけど、人を生き返らせることは、誰にもできないんだよ。それがどういうことか、わかってるのか」
「……うるさい」
 そんなことは、ずっと昔からわかっている
「わかってるのか、本当に」
未だに呟いている彼に、悪魔たちの攻撃が襲いかかる
 しかしそれを……
「……え?」
 彼は、なにもせず受けた
死ぬはずだ。そんなことをしたら
もう彼だってHPは残り少ないはず……
「お前はわかっているんじゃない。わかってるつもりでいるんだ」
攻撃を受けながら、彼が前へと一歩足を踏み出す
 どうして、死なない
「たとえば、いま死んだ人たちはどうなんだ? そいつらの人生は、どうなったんだ」
 彼らは、どんな命令にも従う覚悟でいた。だから……
「そいつらは……いいかもしれない。もしかしたら満足して死ねたかもしれない。だけど、残された奴はどうなんだよ……大切な奴を失った方は、そいつみたいに割り切れるのかよ! そいつの知り合いは、全員が全てを受け止められるのかよ!」
「っ……!」
 ……なんだろう、この人は
私のことを、知ってる?
 ……いや、違う
この人は、きっと私と『似てる』んだ
「殺した数以上の重みを、背負えるのか、お前は」

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あきゅろす。
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