Accesses The Reality Cruelty 現実 「う……ぐ……ぁあ!」 「痛いよねぇ……ボク最近は、全然実体化してなくて吸血もしてないから、飢えてるんだよ」 「ぅあ……」 「でもボクは、お兄と同じハーフの吸血鬼だから、あんまり吸血衝動はないけどね」 そう言って、ボクはガルバから離れる。と同時に、ガルバは倒れ伏す 「そういえば、麻痺の効果があったっけ。最近使ってなかったから、忘れてたよ」 まぁ、好都合だ ボクはポケットからナイフを取り出す 「さぁ、ボクの言うことを聞いてもらおうか。もし断るのなら、刺して刺して刺して回復して、また刺して刺して刺して……ずっと無限に繰り返してあげるよ」 痛みの地獄には、誰も耐えられない 「うーん。おにいちゃんが勝っちゃうとなんか面白くないなー」 「あ、あはは……そう言われても……」 俺と巳依はあのデュエルの後、ギルドの情報収集班から連絡を受け、事情を詳しく聞くために校長室へと戻っていた その他の人たちは全員、夕希がいる第一理科室へと向かっていった 「レートくんや巳依ちゃんを呼ばなかったのって、どうしてなの、おにいちゃん?」 「巳依は、まだ危険なことに巻き込むには力が足りな過ぎる。レートは……」 「……もしかして、妹さんが関係してるから?」 「あぁ……あいつは、リノさんをリビングデッドから連れ戻すためにアーミーに入ったんだけど……リノさんのことになると、冷静さがなくなる。戦略的勝利が得意なあいつにとっては、危険なことだ」 「……どうしてみんな、私たちみたいになれないのかなぁ」 「この世の全ての人間に……それぞれ自分の正義があるから。自分にとって危害になるものは、自分にとっての悪、自分にとって手助けになるものは、自分にとっての正義。俺と葵だって、ただ、互いの正義が手助けしているだけなんだよ」 「難しいなぁ」 「はは……」 「でも……なんかそれって、寂しいね」 「さび、しい?」 「うん。だって……おにいちゃんの言い方だとまるで、人と人は永遠に理解し合うことができない、みたいに聞こえるんだ……」 「……」 「昔はもっとファンタジーみたいな空想的だったのに」 「……大人になったんだよ」 「おにいちゃんが変わったのは、霊介の家族が死んじゃってから」 「!……」 「気づいてないかもしれないけど、おにいちゃん、変わってきてる。まるで、おにいちゃんの『才能』だけがお気に入りだった私たちの両親みたいに」 「……俺は、天涯孤独になって、ふぎこんでいたときの霊介の顔を、見たんだ」 「……」 「見て、思ったよ。あぁ、これが現実なんだなって。現実は物語みたいにはならないんだって」 「……」 「霊介に、なんの言葉もかけてやることができなかった。霊介は立ち直れたけど、もし俺が霊介だったら? たぶん、俺は立ち直れない」 「おにい、ちゃん……」 「俺は、弱いんだよ……みんなみたいに、強くないんだ」 「もういいよ、おにいちゃん。もっと楽しいこと……話そ?」 ……妹にすら、励まされる 「……あぁ、ごめん」 その後はきちんと楽しいことを話し続けて、校長室の前までたどり着いたんだ [*前へ][次へ#] |