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Accesses The Reality Cruelty
決断
「吸血鬼最強の自己エンチャント。それが、これです」
そう言うマスターの体に、赤い……血のように赤いオーラが纏われ始める
「これは私の全能力を1.5倍にし、全ての攻撃に毒の追加攻撃を与える。ただ、発動条件に『3日間吸血をしない』『HPが半分以下になる』というものがありますが……」
よくいるよね、こうやって自分からいろいろ説明してくれる敵って
「それに、これを使うと……私自身、強烈な吸血衝動にかられてしまうのです。いやはや、困ったものです」
へえ
「吸血、受けないように頑張ってくださいね? 当ててしまうと、このエンチャントが解けてしまいますので。まぁ、吸血は通常攻撃の何倍も威力がありますし、毒と麻痺の状態異状……それに、15秒間私の全能力値を2倍、吸収した分のHPを回復というものがありますし、さしたるものではありませんが」
「ご親切にどーも」
つまり要約すると、ここからは本気の本気でやらなきゃ死ぬと
 ……なるほど
「なら、望むのは短期決戦だ」
あいつのHPは今、半分以下だ。今なら……

「っ……!」
ベースナイフを防御に構え、相手の拳を受け止める
そこにDEを突き出し、引き金を引こうとするが、もういない
「後ろですよ」
「っ!」
背中を、蹴りとばされる
 いくつものイスや机に体をぶつけながら、最後に壁に当たり、めりこむ
「っ……く……かはっ」
うぁ、やばい……人生で初めて血、吐いた
「く、そ……」
速さで言えばカカシの方が圧倒的に上だ。そして、それを俺は捉えられる
 だけど、今はこいつの動きさえも見えない
腹筋一回すらまともにできなかったこの体じゃ、捉えきれない
「拍子抜けですね……もう少し強いと思っていましたが……」
だが……だけど、殺す方法なら……こいつを殺せる方法なら、ないわけでもない
 DEのある特殊効果が、それを、一発射殺を可能にする
あくまで、殺す場合は、だ
「……やらなきゃ、だめなのか……?」
殺されるからって、相手を殺して……いいのだろうか
 いい、わけがない
だけど、こいつを殺さずに倒す方法なんて……まったく、ない
 なら、殺すしか……
 だけど、殺すのは……
…………そもそも俺は、どうしてこんな選択を迫られてるんだ?
ただの依頼という理由で、殺さなきゃいけないのか、こいつを
それなら、その依頼は破棄すればいい
破棄して、何もなかったように逃げればいい
 そうすれば、誰も殺さず、俺も殺されず……それで、いいんじゃないか?
「……いや」
違う。これは、俺は、依頼のためにここに立ってるわけじゃない
仲間だ。仲間がいるから、守らなきゃいけないやつがいるから、立ってるんじゃないのか?
俺が逃げれば、あの吸血鬼の幽霊が殺される
なにもしなければ、二人とも殺される
「……やるしかない、のか?」
迷え、迷え。迷え迷え迷え迷え!
 これは人の死を選ぶ決断だ。迷いたきゃ迷え、迷いたいだけ迷え!
そうして何度も迷って行き着いた答えが、変わらないのなら……
「やるしか、ない」

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あきゅろす。
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