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Accesses The Reality Cruelty
人質
「っ……」
 ドクンッと、心臓が一度だけ大きく跳ね上がり、この世界に来てからよく感じるようになってしまった感情が、体を駆け巡る
 ……これは、怒りだ。憎い。殺したいという気持ち
 この世界に来さえしなければ、俺の中に存在しないはずだった気持ち
 ……俺には善しかなかった。それが、今は違う。人を憎いと感じている
俺は、人間らしくなっている。普通という存在に、近づいている
 ずっと子供のままだった意思は、随分と変貌を遂げていた
「あー、なんだよ面白くねーなー。そいつとも戦おうかと思ってたのに」
「相変わらずの戦闘狂ですわね。でも今回は団長命令ですので、最善の手を打たなければいけませんのよ?」
「わかってるよ」
 動け……動け、俺の体!
 ーー魔王の力で、麻痺を拒絶(レジスト)する
「おっと、それ以上の覚醒はゆるさねーぜ?」
 エヴィンが首にナイフを当て、ララも螢の首に強くナイフを突きつける
「っ……!」
「にい……さん……」
 ……急速に広がり始めていた力を、元に戻す
するとまた麻痺状態にさせられ、今度は地面に倒される
衝撃で、今まで背負っていたことすら忘れていた宝箱が地面に転がる
「……で、リノはどうした?」
「ここに向かっていたノアたちを足止めしてますわ」
「……あの裏切り者か」
 ……どうすればいい?
どうすればいいどうすればいいどうすればいい
 考えろ考えろ、螢を助けろ……その方法を考えろ!
「それはそうと、ちゃっちゃと仕事進めちまおうか」
「そうですわね……それでは、そこの化け物さん?」
 化け物……?
 俺、か?
「なんだよ……」
「この子を助けてほしいのなら、あなたには私たちの指示に従ってもらいますわ」
「……」
「まぁ簡潔に言ってしまえば……魔神の器になりなさい」
「魔神の……器?」
「っ! だめ! にいさ……」
 叫んだ螢に、ララがナイフを強く押しつけた
……血が、流れる
「や……やめろ! わかった、言うとおりにする!」
 両手の武器から手を離し、それぞれ指の動きだけで遠くに飛ばして降伏を意思表示した
「兄さん……」
 螢の首から、少しナイフが遠ざかった
「エヴィン」
「ああ」
 エヴィンは頷くと、ララの後ろまで歩いていく
そして身動きの取れないララの代わりに、彼女が背負っていたリュックサックの中身を取り出した
「っ……」
「これが、魔神の核だ」
 心臓のような鼓動を続ける、黒の塊……
 ……あの巨鳥と同じ、悲しい力を感じ取れた
「……どうすればいい?」
「持て。勝手にお前を取り込もうとするはずだ」
 そう言って、俺に近づ……

「トルネード!」

 近づこうとしたエヴィンに、どこからか現れた竜巻が襲いかかった

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あきゅろす。
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