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Accesses The Reality Cruelty
最後の大魔法

 ……その日の夜
街のある一件の家で、私とエミア、そしてフェルが集まっていた
そこに、一人のお婆さんが寝入っている
 ……霊介の体も……ここまで担いできてしまった
「それじゃ……錬金、しよっか」
 エミアが言う
……マヤがかかった病気は、絶対に目を覚まさない正体不明の不治の病
 それを助けたかった私とエミア、フェルは……万病に効く薬を作り出す錬金方法を知った
それには、バルハルトの肝が必要だった
 他にもいろいろあったのだけれど、バルハルトの肝が最後だった
「わかった」
 フェルが錬金を始める
壷の中に材料を入れて、混ぜる。それだけだ
「……」
 マヤのために、兄さんが死んだ
兄さんは……ずっと悩んでいたんだ
 それに私は、気づけなかった
ただ、それだけ
「……」
 フェルは、私たちがこれまで手に入れてきた材料を入れて混ぜてゆく
最後に……
「……バルハルトの肝を」
 フェルは霊介の体に、クナイを突き立てる
……そしてその心臓を……その手に持った
 見ていられなくて、目を反らす
フェルはそれを壷の中に入れて、さらに混ぜていく
 ……薬が、完成する
壷から飛び出たそれは、小さなたったひとつの球体だった
「できたぞ、二人とも」
 ……私たちは、素直に喜べなかった
「……」
 フェルはそれを、マヤの口元へと持っていき……その中へ飲ませた
私たち三人が静かに見守る中、マヤは……一度だけ、指先を動かした
「あ……!」
 そしてゆっくりと、その体が持ち上がる
「……フェルちゃん、エミアちゃん……それに、リリィちゃん」
「マヤ……!」
 フェルやエミアたちが、それに深く感激していた
……なのに、私は……
 記憶を取り戻してしまったから……
「……悲しいことが、あったんだねぇ」
 ……マヤが、何もかもを見通したように……私の頭を撫でてそう言う
「……うん」
「……見てたのよ」
「……え?」
「全部、私はあなたたちがやってきたことを……知ってる」
 ……マヤは……なにを……?
「夢を、見てたの」
「ゆめ……?」
「あなたたち三人が、私のために頑張ってくれる、夢」
「え……?」
「……」
 マヤは静かに、その目を兄さんのほうへと向けた
「まったく……こんな老い耄れのために、若いもんの命を……あんたの大切な人を、犠牲にして……」
「……」
「あなたたちには、自由な人生を歩んで欲しかったのにねぇ……」
 マヤは立ち上がって、ゆっくり兄さんの元に近づいて……その場に座った
「……三人とも」
 私たち三人を、マヤは見渡す
優しい瞳で……私たちを見つめて、言う
「もう、私には構わなくていいんだ。みんな……自由な人生を歩んでおくれ」
 マヤは両手を広げて……その手を合わせた
それを中心にして、まるで月のような丸く立体的な赤い魔法陣が広がってゆく
窓の外の月が、反響するように赤く光った
「マヤ、なにを……!」
 エミアの問いに答えず、マヤは言う
「私の人生、一世一大の大魔法」
 マヤはその目を、閉じた
「この世界唯一の蘇生魔法を、ここに顕現させる」
マヤは口を開き……

「エグジスタンスエクスチェンジ」

 それを、唱えた

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