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Accesses The Reality Cruelty
VSフェル 2ndステージ

 師匠こと霧林蒼都は、紛れもない天才だった
勉強もスポーツも、初めてやることさえも楽にこなしてみせる
この世界で生き残るために、自分の行ってきた剣道の流派に更なる工夫を加えて、この世界に対応したりもしていた
 二刀流。俺の小刀二本の付け焼き刃とは違う、完璧な二刀流
それに師匠は、かなりの観察眼も持っていた
 見た相手の動きを自分に照らし合わせ、一瞬のうちに技術のコピーを計ったりできる。しかも3回ほど練習すれば99%まで扱えるようになる
 《鏡映し(ミラー)》などという、相手とまったく同じ動作を1%のズレもなく行う技術なんて、神業の域に達しているとも思う
けどあいつは、それほどの天才だったんだ


「……」
 まずひとつ。コールネスに頼ることをやめろ
「……」
 次にひとつ。五感に頼ることをやめ、勘に近い第六感を表にさらけ出せ
「……」
 最後。全ての思考をシャットダウンし、無心になれ
意識を自分の心から外にさらけ出し、この空気全体こそが『俺』という感覚。それを感じ、異常に反応すればいい
やることは、それだけ
 あとは勘だ
「……」
 何かがこちらに殺気みたいなものを送ってるのを感じて、その方向に向けて横凪ぎに切り払う
「っ……!」
 殺気が消え、より存在感が増したそいつが後ろへ下がった気がした
そのまま左足を踏み出し、左手の小刀を縦一線に振り下ろす
ギンッという金属音が聞こえ、相手が攻撃を防いだのがわかった
「タイムロック」『認証しました。スキルを発動します』
 攻撃を防がれたことで、相手がそこにいるということを考えるより早く『感じ』、自然に口からその言葉が飛び出した
 そして時間が止まった1秒の間、居場所の明らかになったフェルへ疾風怒濤の両手連撃を繰り出す
 時間が、元に戻る
「くっ……」
 目の前に姿を表したフェルが、呻きを漏らす
「……違う」
 なぜかとっさにその呟きが俺の口から放たれて、俺は勘で右手の小刀を振り返り気味に振り回した
再びギンッという金属同士がぶつかり合う音が響きわたり、目の前に『二人目』のフェルが実体化する
「……」
 後ろのあいつが消滅したことを、感じる
分身だったんだろう
 ……けど
「こいつも違う」
俺は目の前にいるフェルを無理矢理蹴り飛ばし再び神経を集中させる
 上……下……二カ所か? いや、違う。この気配は今倒した二人の分身と同じ
本体は……
「スプリング」『認証しました。スキルを発動します』
 ジャンプ力を10倍にし、飛び上がる
目の前に、見えないフェルの分身がいることを感じ取った
 けど、違う。こいつはただの経路に過ぎない
その見えないフェルを切りつけ、空中バランスを崩させる
 そして反撃のままならなくなった分身を足場にし、もう一度10倍のジャンプ力で飛び上がる
「天井で観察しながら見えない分身を送り続けるなんて、趣味が悪いな」
 そうだ。フェルは洞窟の天井に張り付いて、俺が見えない分身にやられる様を眺めようとしていた
 いくら戦おうとも絶対に本体が現れない。敗北の絶望に染めるために分身だけを送り続けていたんだ
「よく気づいたな。誉めてやる」
 と、姿を表してクナイを手に襲いかかってきた
「フェイントなんて、効かないよ」
 けど違う。これは攻撃とは違う
目の前に集中させて、下からやってくる『もう一体の分身』を気づかせないための大げさな攻撃
 下に向き直り、斬り裂く。そのままそいつを足場にして、天井へ飛ぶ
フェル本体はこっちに体を向けようとしてるけど、遅い。上から下に向くより下から上に向くほうがきついからな
 そのまま天井を蹴って、俺は両手の小刀をフェルに突き刺した

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